脂肪が一番燃える心拍数…40歳で安静時60なら144、50歳なら137

フィットネスする際は、ただがむしゃらに身体を動かせばいいってワケじゃない。身体に蓄えられた脂肪を減らすにはつとめて有酸素運動をする必要がある。さらにはその運動強度が脂肪を効率よく減らすために重要だ。その目安となるのが1分間に心臓がどれだけ鼓動するか。つまり心拍数である。

プロロードレーサーのボディは研ぎすまされている

「最も効率的に」体脂肪を落とすためには絶妙の運動強度で

過去コラムで
「てっとりばやく体脂肪率を下げるなら有酸素運動じゃなくて筋トレ」
と紹介しておきながら、結局のところ体脂肪を燃焼させるのは有酸素運動なのである。呼吸をしない無酸素運動は爆発的なパワーを発揮させる糖質しか燃焼させない。脂肪をしっかりと燃焼させるには有酸素運動しかない。呼吸によって肺の中に取り込まれた酸素は血液と一緒に身体じゅうに運ばれる。毛細血管のすみずみまで行きわたる。このときに皮下脂肪を燃焼させて、脂肪をエネルギーに置換させる。脂肪はゆっくりと燃焼するものなので大きなパワーは出せない。でも持久的運動をこなせるのである。

有酸素運動の代表は自転車、ランニングだ。ちょっと速めのウォーキング、エアロビクスなどもいい。どれも継続的にこなせば体脂肪は必ず落ちる。しかし「最も効率的に」体脂肪を落とすためには絶妙の運動強度で身体を動かす必要がある。つまり重要なのは「有酸素運動の強さ」だ。感覚的には「ハアハア」とちょっと胸がはずむくらい。それ以上の激しい運動でも、それ以下のマッタリとした運動でも脂肪燃焼効果は期待できなくなる。

腕時計タイプの心拍モニターがあれば装備は十分

この感覚を数値で表示してくれるのが心拍計(ハートレートモニター)。クルマで言えばエンジンのタコメーターだ。1分間の心拍数を身体に取りつけたセンサーによって検出し、ワイヤレス送信などによってモニター表示される。これまでは胸にセンサーベルトを装着する必要があって、それはとても恥ずかしくてわずらわしかったのだが、最近は各社から手首で計測するタイプが市販されるようになり、腕時計のような気軽さで心拍数が分かるようになったのが画期的だ。

体脂肪率はおそらく全員が10%以下だ © LaPresse – Fabio Ferrari

最大心拍数の65〜75%の心拍領域が効率よく脂肪を燃やせる

脂肪を最も効率的に燃焼させる心拍ゾーンは年齢などによって個体差がある。でも安心してください。効率的な心拍ゾーンを算出する計算式があります。

最も一般的なのは、自分の最大心拍数を算出してその65〜75%の心拍領域をキープして効率よく脂肪を燃焼させる計算式。最大心拍数は「220−年齢」でいい。心拍デバイスを持っている人ならフィットネスに有効なターゲット心拍領域の「上限」と「下限」をアラームセットしておけば、運動の強さを自分でコントロールしてその境域をキープし続けることが容易。

上記は最も簡単でざっくりとした計算式。ところがひとつ問題があるのは、その人固有の平常時心拍数をまったく考慮していないという点だ。人によっては日常生活における心拍が低い「徐脈」の人もいるし、スポーツ心臓のアスリートもいるし、逆に高い人もいる。

それを補うのが以下の専門的な計算式。
①220ー年齢=最大心拍数
②(最大心拍数ー安静時心拍数)×0.7で算出された数値にさらに安静時心拍数を足す

ターゲット心拍数の上限に近いところで有酸素運動!

こうして算出された数値が「ターゲット心拍数の上限」だ。この数値を超えると運動が激しすぎるので毛細血管に血がめぐらず体脂肪が燃焼されない。だから心拍計でこの上限を超えないように運動する。その上で「ターゲット心拍数」にできるだけ近いゾーンで「ハアハア」と運動すればいいわけである。

例えば40歳で安静時心拍が60の場合、
220ー40=180が最大心拍数
180ー60=120
120×0.7=84
84+60=144

1分間144拍が目標心拍数となる。この目標心拍数に近い下限値でできるだけ長く有酸素運動すればいい。カンタンでしょ。144を超えると運動強度がキツすぎて持続できないし、血液は太い血管ばかり流れるので毛細血管が刺激できずフィットネスとしては効率よくないのだ。

50歳で安静時心拍が60の場合、1分間137拍が目標心拍数となる。経験から推奨すると 125〜135くらいの心拍数がちょうどいい。このレベルの運動をランニングでやったら意外とキツくて30分しか持続できないと思うが、サイクリングはギヤの重さやペダル回転数を自分で調節してターゲット心拍数をコントロールできる。だから自転車がフィットネスには一番いいと言われているのである。

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