究極レベルで曇りにくい「ESS」アイウエアを高温多湿の環境で実験してみた

アイウエアを購入するときは、気に入ったカラーやデザインを最優先に選んでも構わないとは思う。そのうえで設計された機能性を十分に発揮させるにはフィッティングが重要だし、なにをするときか、どんな条件下で使うのかで求められる機能も変わる。じつは意外と難しいのがアイウエア選びだ。

梅雨どきの晴れ間を縫って鎌倉の里山を走る

ボクが10年以上愛用しているのはアイウエアのトップブランドであるオークリーだ。通常レンズのモデルをベースに、度付きレンズでカスタマイズしたスポーツタイプ、日常生活の中で着用するモデルに度付きレンズを入れたものなどを所有し、出張取材やサイクリング遠征などのときは3種類ほど持っていき、気象条件や状況に応じて使い分けている。

信頼あるメーカーのものは間違いはないのだが、ただしすべての状況で万能ともいえない。例えば値段として高額な偏光レンズはクセモノだ。海面のギラギラがなくなりマリンスポーツではとても役立つ。アウトドアライフの中でも景色が鮮やかに見える。路面の障害物が視認できるなどロードバイクでもさまざまな恩恵がある一方で、なぜかマンホールが濡れて見える。トレイルランでは落ち葉に霜が立っているように見える。そんな幻覚にとまどうことがあるのは確かだ。要は「値段が高ければいい」ということではなくて、レンズなどの特性を把握した上で適正に愛用することが求められる。それにはかなりの知識も必要だ。

群馬・長野両県の境にある「ぶどう峠」 © 井上琢磨

オークリーのミリタリー部門からスピンアウトしたESS(Eye Safety Systems)というブランドが米国にある。米軍や日本の自衛隊を含む世界120カ国以上の軍隊、警察、消防、特殊部隊やレスキュー隊で使用されている。そのスペックの高さから、自転車やマリンスポーツなど強い日差しのもとで長時間過ごすアウトドアアクティビティでも日本では浸透しつつある。

有事や事故現場で従事する人たちが着用するため、弾丸もはね飛ばす最強アイウエアなのだが、実用レベルとしては曇りにくいという性能がオススメのポイントとなる。湿度の高い日本では通気性をうまく設計した海外モデルを駆使しても、例えばトレイルランのように移動スピードが遅いわりに発汗量が多いスポーツをしているとレンズの内側が曇ってしまう。さらには、欧米人と比べると彫りの浅い日本人が着用すると、どうしても設計された眼球や皮膚との距離が確保できず、効果的な通気性能が発揮されないという現象が、レンズ内側の曇りを誘発する要因となる。

サイクリングでは平たん路での高速巡航で曇ることはないと思うが、運動量が高い夏場の山岳コースで、しかも木々が生い茂って湿度が充満している谷間の道になると、もう間違いなく曇る。ボクが何度も走っている西上州・上野村のぶどう峠にもそんなポイントがある。神流川という渓流沿いにひなびた集落が点在する上野村は、渓流釣りの人たちだけが行き来する道が長野県境のぶどう峠まで伸びる。その途中に、どんな地形のイタズラなのか着用するアイウエアが必ず曇るゾーンがあるのだ。

ぶどう峠の多湿ゾーンを上る。ESSだけが曇らなかった © 井上琢磨

その地点にさしかかると決まって視界が確保できなくなって、ボクはたまらずアイウエアを外すしかない。度付きアイウエアの場合は視力が落ちてしまうので、一旦停止を余儀なくされる。そんな多湿ゾーンに「究極に曇りにくい」というESSを持っていきチェックしてみようと考えたのは2017年の冬だ。ESSの担当者から「レンズの内側に曇り防止加工が施されているので、どんな条件でも曇りづらく最高レベルのクリアな視界を提供するんです!」と説明されても、お愛想程度にうなずいてみたものの実際に自分でテストしてみないことにはすべて資料通りに受け取れない。6月のこの時期まで10カ月待っての、満を持してのテストだった。

今回は4人グループで行って、うち1人はアイウエアなしの走行。ボクと友だちの1人がESSで、今回のカメラ役を務めてくれた若手サイクリストが他社モデルだった。で、簡単に結果を言ってしまえば、ESS着用の2人はまったくレンズの曇りに悩まされることなく、多湿ポイントをクリアしたのだ。これはさすがに驚いた。カメラ役の若手サイクリストも「なんで曇らないんですか?」と不思議そうだった。

巡航速度の高いレーサーならある程度の通気性は発揮されるのだが、ボクのようなへなちょこサイクリストは夏場になると上り坂では止まるようなスピードになる。それでいながら大汗をかいて、レンズ内側が曇ってしまう。速度は遅めでも運動量は高いスポーツでよく発生する現象だ。キャップをまぶかにかぶってトレイルランをしているときや、MTBなどに乗っているときもよく曇る。

ESSのクロスボウは太陽光の届かない林間部もクリアに見える

トレイルランの「ハセツネ」で優勝経験のある上田瑠偉選手が「ESSは曇らないのがいい」と絶賛しているのもようやく理解ができた。トレイルランニングは運動量が多く、発汗量も多い。山では気候、気温の変化も大きく、普通のサングラスでは曇る。これでは木の根っこ、石ころなどの多い不整地では危険だ。曇りにくいESSは視界が確保でき、捻挫などのリスクも減るという。

さりげなくテスト結果を書いてみましたが、ESSの曇りにくさは驚愕モノのレベルだった。高温多湿な日本でアクティビティするみなさん、一度お試しあれ。

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