キナンがホームタウンのツアー・オブ・ジャパンいなべステージでチーム力をアピール

キナンサイクリングが世界に誇るホーム、いなべステージ。ツアー・オブ・ジャパン3日目となる5月22日は、チームにとって前半戦のヤマ場となった。美しい自然とはるか遠くを一望できる景色、そしてファンの熱狂と、日本国内最大級のレースにふさわしい盛り上がりを見せた1日は、トマ・ルバのステージ5位を筆頭に、マルコス・ガルシア、サルバドール・グアルディオラが上位フィニッシュ。期待されたステージ優勝には届かなかったが、チーム力を証明し、残るステージへの希望がふくらんだ。

キナンチームのホームとなるツアー・オブ・ジャパンいなべステージ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

三重県最北端に位置するいなべ市を舞台に行われた第3ステージ。三岐鉄道北勢線の終着駅である阿下喜駅前をスタートし、阿下喜温泉前をパレード、その後1周14.8kmのサーキットコースへと入るルート。サーキットは8周回とその前のパレードを含め、この日の総距離は127km。注目は周回前半に設けられる最大勾配17%の激坂区間と、その後のテクニカルなダウンヒル。そして、周回残り1kmを切ってから始まる急坂“イナベルグ”が選手たちの真の実力を試す。

20日の開幕以降、順調に戦いを進めるキナンは、この大会が定めるホームチームとして上位進出をねらうとともに、今後のステージにつながる走りに集中。また、年間を通して同地でサイクリングイベントや小学校での交通安全教室など、地域の人たちとの交流を深めてきた。その集大成となる1日であり、「自転車の街いなべ」をチームの活躍からアピールする役割を担った。

レーススタートに先立って行われたセレモニーでは、いなべ市の日沖靖市長、三重県の鈴木英敬知事のあいさつに続き、中島康晴がチームを代表してコメントし活躍を誓った。そして迎えたパレードスタート。鈴木知事、日沖市長の先導に続き、出走ライダーもコースへ。キナンメンバーがプロトン(メイン集団)の先頭に立って正式スタートを目指した。

3.1kmのパレードを経て始まったレースだったが、約1km進んだところでメイン集団に大規模な落車が発生した。集団前方から次々と選手たちが地面にたたきつけられた中に、山本大喜と新城雄大も巻き込まれてしまう。山本は早々に集団復帰したものの、新城は一時5分以上の遅れとなるが、少しずつタイム差を縮めて集団へと戻った。この間、レースはサーキットコースへ。2人の逃げが容認され、メイン集団はバーレーン・メリダがコントロールを開始。その後ろにキナン勢が続き、次なる動きに備える。

序盤・中盤と形成に大きな変化はなく、逃げとメイン集団とのタイム差は1分前後で推移。6人全員が前方を固めて、たびたびやってくる急坂区間や難所をクリアしていく。やがて集団のペースが上がると、逃げる2人との差はみるみるうちに縮まっていく。その結果、6周回目に逃げグループを吸収。それからもバーレーン・メリダのレースコントロールは変わらず、残り2周回へと入っていった。キナン勢は前方をキープするルバ、ガルシア、グアルディオラのほか、中島も3人のケアに従事。さらに山本と新城も落車のダメージを抱えながら粘り、最終周回へと突入した。

集団ではチャンスにかけてアタックが頻発したが、いずれも決定打には至らず。キナン勢もルバ、ガルシア、グアルディオラが好位置を押さえる。そしてスプリント。フィニッシュラインに向けて上り基調のレイアウトで、4選手が抜け出して優勝争い。その後ろからルバ、ガルシアが続き、5位と6位を確保。さらにはグアルディオラも同集団で12位と続いた。

最終局面で至るところに中切れが発生したが、総合成績を視野に入れるキナン勢3選手はしっかり走り切った。これにより、個人総合順位が上昇し、チーム最上位の10位にガルシア、11位にルバ、13位にグアルディオラとした。さらに、チーム総合でもトップから5秒差の3位に浮上。ねらっていたステージ優勝こそならなかったが、チーム力をホームタウンのファンに示すことができた。

レース後には選手・スタッフが表彰台に登壇し、熱烈な応援への感謝と、残るステージでの上位進出を約束。また、主会場となったいなべ市梅林公園には、チームのサプライヤーである「ヨネックス」「アイ・アール・シー井上ゴム工業」「和光ケミカル」「ディッセターレ」「ウィンクレル」の各社が出展し、レースに訪れた人たちに向けて製品の紹介やブランドアピールを行った。キナンもブースを設置し、今後のレースに向けて調整を進める山本元喜と雨乞竜己のほか、鈴木新史アドバイザー、「SPORTS PRODUCE熊野」からもスタッフが参加し、会場の盛り上げに一役。チームグッズの販売なども行われ、一部商品が完売となるほどの盛況ぶりだった。

23日に行われる第4ステージから大会は中盤戦へ。岐阜県美濃市を舞台に、同市の名所「うだつの上がる町並み」からパレードスタートしたのち、1周21.3kmのサーキットを6周。計139.4kmは、今大会の最長ステージ。ロングストレートや直角コーナーなど、多彩なレイアウトが特徴で、レース全体を通しておおむね平坦。これまではスプリントで勝負が決することが多いが、2018年は果たしてどのようなレース展開となるか。キナンは逃げやスプリントなどあらゆるレース展開を想定しながらチャンスをうかがっていくことになる。

ツアー・オブ・ジャパン第3ステージ結果(127km)
1 グレガ・ボレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 3時間11分57秒
2 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +0秒
3 イアン・ビビー(イギリス、JLT・コンドール)
4 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)
5 サム・クローム(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム)
6 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +3秒
7 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team)
12 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team)
47 中島康晴(KINAN Cycling Team) +2分41秒
56 山本大喜(KINAN Cycling Team) +4分20秒
75 新城雄大(KINAN Cycling Team) +7分48秒

個人総合時間
1 グレガ・ボレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 6時間4分24秒
2 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ) +5秒
3 イアン・ビビー(イギリス、JLT・コンドール) +9秒
4 サム・クローム(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +17秒
5 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
6 ミッヘル・ライム(エストニア、イスラエルサイクリングアカデミー) +18秒
10 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +26秒
11 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team)
13 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team)
42 中島康晴(KINAN Cycling Team) +3分2秒
54 山本大喜(KINAN Cycling Team) +5分37秒
65 新城雄大(KINAN Cycling Team) +9分5秒

ポイント賞
1 グレガ・ボレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 49pts
7 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 16pts

山岳賞
1 小石祐馬(チームUKYO) 10pts

チーム総合
1 チームUKYO 18時間14分25秒
3 KINAN Cycling Team +5秒

トマ・ルバ

トマ・ルバのコメント
スプリント勝負としては惜しいものとなったが、長く続くレース全体を見通せば上々の内容だったと思う。総合成績と明日のステージが楽しみに感じられるものとなった。いなべステージは昨年以上の盛り上がりで、チームにとっても素晴らしい1日だった。その甲斐あって全力を尽くすことができた。美濃ステージはスプリントで決することが多い。個人的にはその先に控える山岳ステージを意識しながら、コンディションのキープに努めたい。チームとしては中島のスプリントで勝負しながら、トラブルやクラッシュに細心の注意を払いながら走りたい。

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