ツール・ド・熊野第1ステージは選手の安全確保のためレース途中でキャンセルに

第20回記念大会のツール・ド・熊野は、6月1日の第1ステージからロードレースステージがスタート。この日は和歌山県新宮市の赤木川清流コースででの113.2kmのレースが実施された。スタート直後こそ順調に進行したレースだったが、中盤を前にコースのトンネル内に設置されたフェンスが倒壊。コミッセール、オーガナイザー、チームマネージャーのミーティングにより、選手の安全確保を第一としてステージがキャンセルとなった。

ツール・ド・熊野第1ステージ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日のプロローグでは、0.7kmの個人タイムトライアルが行われ、キナンサイクリングでは中島康晴の25位がチーム最上位。落車に見舞われた新城雄大をのぞき、5選手がトップから5秒以内につけ、今後のステージへの期待をふくらませている。先のツアー・オブ・ジャパンからの連戦となるマルコス・ガルシアやトマ・ルバ、サルバドール・グアルディオラは好調を維持。この大会に合わせてきた山本元喜も調整が順調であることを証明している。

この日は、2017年3月に新庁舎となった新宮市役所前をパレードスタート。しばらくのニュートラル走行で同市熊野川町へ。実際のレースは赤木川沿いの16.3kmをおおよそ7周回する113.2kmで争われる予定だった。コースは細かなアップダウンこそあるものの、例年このステージはスピード感に満ちたレースとなり、スプリント勝負となることも多い。キナンとしては、この先に続く本格山岳ステージを視野に入れつつも、チャンスとあれば逃げやスプリントでの上位進出をねらってスタートを迎えた。

メインスポンサー「キナン」のお膝元とあり、新宮市役所からの出発ではプロトン(集団)の最前列に位置したキナンメンバー。晴れやかに出発し、レースが行われるサーキットコースまでを移動した。そして迎えた本番、1周目から山本らが果敢に先頭をうかがう動きを見せる。しばしの出入りが続いたのち、飛び出した1人を集団は積極的には追わず、単独逃げの状態となる。

キナン勢は2周目の前半に中島が集団から抜け出し、そのままの勢いでトップをいく選手に合流。逃げが決まったかに思えたが、集団ではこの周回に設けられた山岳賞をねらってスピードアップを図る選手が次々と現れる。こうした状況もあり、中島は集団へ戻ることを選択。山岳ポイントへの上りを前に集団は1つに戻った。

ふりだしに戻った3周目、集団から新城がアタック。もう1選手が加わり、2人逃げの態勢を築いていく。ところが、集団とのタイム差を広げようかというタイミングで、コースに含まれるトンネル内で落車が発生。複数の選手が巻き込まれるとともに、左右の車線を隔てていたフェンスが倒壊。これにより、選手とコース内の安全を確保するためレースがストップとなる。

選手たちはレース再開を待ったものの、倒壊したフェンスは修復不可能と関係者が判断。コミッセール、オーガナイザー、チームマネージャーによるミーティングが行われ、このステージがキャンセルされることが決定。認められたのはレースストップ前、2周回目に設けられた山岳賞のみとなり、その他の総合成績はプロローグから引き継がれることとなった。

この決定後、開催地の人たちや観戦に訪れたファンへのサービスとして、出走ライダーによる2周半のパレード走行が行われ、ホストチームであるキナンが途中まで先導役を務めた。

思わぬハプニングに見舞われた大会だが、仕切り直しの一戦が翌2日にやってくる。三重県熊野市が舞台となる第2ステージは、109.3kmの本格山岳ステージ。大会の目玉でもある激坂「丸山千枚田」を通過後、一度下って、次に目指すは最大の山岳ポイント札立峠。長い下りを経て、2回目の丸山千枚田へ。毎年ここで総合争いが最重要局面を迎えており、2018年も王座をねらう選手たちが激しい争いを繰り広げることが見込まれている。今大会のハイライトとなることは必至。

キナンとしてもこのステージでの戦いを見すえて準備を進めてきた。今大会の頂点に立つためには絶対に落とすことのできない1日。いかにして戦うのか、そして誰で勝負にいくのか、チームにこれまでにない注目と期待が寄せられる中でのレースとなる。

ツール・ド・熊野 第1ステージ結果(113.2km)
レースキャンセル

個人総合時間賞
1 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) 50秒
2 カーデン・グローヴス(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +1秒
3 黒枝士揮(愛三工業レーシングチーム)
4 秋田拓摩(シマノレーシング)
5 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) +2秒
6 大久保陣(チームブリヂストンサイクリング)
25 中島康晴(KINAN Cycling Team) +4秒
36 山本元喜(KINAN Cycling Team) +5秒
45 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +5秒
63 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +6秒
66 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +6秒
108 新城雄大(KINAN Cycling Team) +23秒

ポイント賞
1 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) 10pts

山岳賞
1 畑中勇介(チームUKYO) 2pts

チーム総合
1 宇都宮ブリッツェン 2分34秒
11 KINAN Cycling Team +10秒

新城雄大

新城雄大のコメント
スタートから(山本)元喜さんと自分とで動くことができていて、そうした中から自分が3周目に逃げを決められた。スプリントポイントがかかっていた周回でもあったので、そこまでしっかり逃げられれば、その後は集団が容認してくれるだろうという期待をしながら攻めていた。それだけに、レースが止まってしまったことは残念。一方で、疲労が残ることはないので、“本番”である明日に向けて準備を整えていきたい。前日の落車の影響はまったくない。第2ステージは、山岳でクライマーのケアをしながら、勝負どころに向けて活性化する動きを見定めていきたい。

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