トマ・ルバが意地の逃げで区間2位…ツール・ド・熊野最終ステージ

第20回ツール・ド・熊野は6月3日、第3ステージをもって閉幕。4日間にわたる世界遺産・熊野路での戦いに終止符が打たれた。この大会にシーズン最大目標として挑んだキナンサイクリングは、個人総合でサルバドール・グアルディオラの5位がチーム最上位。長年の悲願である、個人総合優勝は次回へ持ち越しとなった。最終の第3ステージでトマ・ルバが前日の遅れの雪辱を期してアタック。勝利こそ逃したものの、意地を見せてステージ2位で大会を締めくくった。

ツール・ド・熊野第3ステージを走るトマ・ルバ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日の第2ステージでキナンはグアルディオラがステージ5位。個人総合でも5位につけ、最終日を迎えることとなった。熊野の山々をめぐった戦いは、前々日の第1ステージがコース内トンネルでのフェンス倒壊によるレースキャンセルも関係してか、例年以上にサバイバルなものになった。

最終ステージを迎える段階で、個人総合でチーム最上位のグアルディオラは総合タイム差45秒。8位に続くマルコス・ガルシアは57秒差。個人総合上位9人が1分以内にひしめく大接戦だが、キナンとしてはグアルディオラとガルシアを軸にレースを組み立てていくことになる。

最終の第3ステージは、クジラを目玉とする観光振興で知られる太地半島をめぐる1周10.5kmのサーキット。これまで採用されてきた対面通行区間が廃止され、わずかな距離ながら国道42号線を通過する新ルートでのレースとなった。それでもコースの注目ポイントは変わらず、太地港からの上りや、テクニカルなコーナーが待ち受けるダウンヒルなど、細かい変化に富んだルート設定。全10周回、104.3km(パレード区間は含まず)のレースは、有力チームが真っ向からぶつかり合うレースとなることが予想された。

その通り、スタート直後からアタックの応酬。力のある選手たちが自ら動くような状況となるが、1周目の終盤にガルシアが抜け出す。すぐに2人逃げとなり、メイン集団に対し徐々にその差を広げていく。しかし、両者のスピードが合わなかったこともあり、いったん集団へと戻り、新たな展開を模索することとなる。プロトン(大集団)は再びアタックの応酬が始まった。

3周目に、上りを利用して数人が次々とアタック。ガルシアが再び前方に入り、9人の逃げグループを形成する。さらに4周目にルバがアタック。これに続いた選手たちが追走態勢となり、逃げグループに合流。最大で20人を超える先頭集団となる。次の周回では、1名のアタックに反応しルバが加わり、集団との差を広げていく。

6周目にこれら状況が一変。個人総合首位でこの日を迎えた入部正太朗(シマノレーシング)が後退。これを見たチームUKYOのアシスト陣がペースを上げ、ルバたちをキャッチ。再び20人以上がレースを先行する状況へと変わった。この間、中島康晴やガルシアが前方をうかがう動きを見せたが、逃げを決めるまでには至らない。

出入りが激しいレースの均衡を破ったのはルバのアタックだった。前日の第2ステージでチェーントラブルがあり、最終的に15分以上遅れてフィニッシュ。総合争いに関係していないことから、集団がルバの動きを容認。その後、追走を試みた佐野淳哉(マトリックスパワータグ)がルバに追いつき、2人がフィニッシュに向けて先を急ぐことになった。

ルバと佐野はともにステージ優勝にフォーカスし、協調体制を組んで後続とのリードを保つ。最終周回に入る時点で、追走とは約30秒、さらに約30秒離れてメイン集団が続いた。

ハイペースを維持したルバらはそのままトップをキープ。その流れでステージ優勝をかけたマッチアップへ。フィニッシュまで残り1kmを切るとルバが前に出て、佐野が背後につく。そして残り200m、佐野が加速すると、ルバも懸命に追ったが届かず、ステージ2位で終えた。あと一歩、本拠地・熊野地域のファンの前での勝利に届かなかったルバだったが、前日の悔しさをこのレースにぶつける意地を見せた。

総合上位陣を含むメイン集団はルバたちから約20秒差でフィニッシュへ。グアルディオラとガルシアはこの中でステージを終了。さらに中島と新城雄大もレースを終えており、チームは5選手が完走。山本元喜はこのステージ途中でバイクを降りている。これらの結果を受けて、個人総合時間賞ではグアルディオラが5位をキープ。ガルシアも8位で続き、トップ10に2人を送り込んだ。また、山岳賞ではガルシアが2位、チーム総合はルバの逃げ切りによってタイム差を縮めたものの、トップまでは届かず2位だった。

第20回の記念大会として行われた2018年のツール・ド・熊野。キナンは個人総合優勝者の輩出を至上命題として臨んだがかなわず、その夢は2019年へとつなぐこととなった。厳しいメンバー先行の末に出走した選手たちは、一様にレース結果とその内容に悔しがる姿を見せたが、その思いを糧に1年後の再チャレンジを目指していくことになる。

大会はインターネットによるライブ配信がこれまで以上に精度アップしたことや、現地ではレース終了後恒例の「餅投げ」といったイベントで選手とのふれあいを楽しめるなど、ツール・ド・熊野ならではの魅力が詰まった4日間だった。また、熱い応援はもとより、主催の「SPORTS PRODUCE 熊野」をはじめ、地元の人々による運営や大会成功に向けた尽力も、選手・スタッフを盛り立てる原動力となった。

チームはツアー・オブ・ジャパン、そしてツール・ド・熊野とビッグレースを立て続け手に戦ってきたが、すぐに次の目標に向かって進む。そしてその先に2019年のツール・ド・熊野があることを強く意識しながら、レース活動に力を注いでいくことになる。

ツール・ド・熊野 第3ステージ結果(104.3km)
1 佐野淳哉(マトリックスパワータグ) 2時間35分39秒
2 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) +2秒
3 チェン・キンロ(香港、HKSIプロサイクリングチーム) +12秒
4 ライアン・キャバナ(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +24秒
5 黒枝士揮(愛三工業レーシングチーム)
6 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)
15 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +26秒
16 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team)
17 中島康晴(KINAN Cycling Team) +2分30秒
30 新城雄大(KINAN Cycling Team) +5分33秒
DNF 山本元喜(KINAN Cycling Team)

個人総合時間賞
1 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) 5時間22分47秒
2 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +18秒
3 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +35秒
4 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)
5 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) +38秒
6 マーカス・カリー(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +39秒
8 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +50秒
16 中島康晴(KINAN Cycling Team) +5分59秒
23 新城雄大(KINAN Cycling Team) +10分59秒
29 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +15分2秒

ポイント賞
1 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) 29pts
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 23pts
13 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 13pts
16 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 8pts

山岳賞
1 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) 24pts
2 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 12pts
6 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 3pts
7 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 1pts

チーム総合
1 セントジョージコンチネンタル 8時間24分51秒
2 KINAN Cycling Team +15秒

トマ・ルバ

トマ・ルバのコメント
力の限りを尽くした。本当は最終周回に佐野(淳哉)選手を引き離したかったのだけれど、それができなかった。スプリントでは彼の方が力があるし、この結果は仕方がない。その前日は悔しいレースになったが、もう一度トライすることができ、チームとしてよい走りができたと思う。先週(ツアー・オブ・ジャパン)と違って、今回は苦戦を強いられたが、これもレースとして受け入れるしかない。来年こそは勝ってみせるよ!

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