雨乞竜己が区間5位と手応えつかむ好スプリント…ツール・ド・コリア最終ステージ

キナンサイクリングが参戦しているツール・ド・コリアは6月3日、韓国の首都ソウル市街を駆ける最終ステージが争われ、雨乞竜己が集団スプリントで5位に入る活躍を見せた。惜しくも表彰台を逃したが、今後に向けての課題と確かな手応えをつかんだ。また、ジャイ・クロフォードはトップと同タイムでフィニッシュし、個人総合20位でUCIポイント3点を獲得した。

ツール・ド・コリア第5ステージ ©︎KINAN Cycling Team / Naoi HIRASAWA

1988年ソウル五輪のために作られたオリンピック公園をレース会場、スタート・フィニッシュ地点とする65.0kmのレース。40kmほどのラインレースの後に、1周5kmのオリンピック公園外周を約5周する平坦なコースレイアウト。スプリントはフィニッシュの4周前と2周前に設定された。会場にさまざまなブースが出展されることもあり、大会で最も多くの観客が集まる注目のステージだ。

キナンの最終日の目標は、雨乞がスプリントでステージ上位をねらうことと、総合20位のクロフォードがスプリントポイントでボーナスタイムを獲得し総合順位を上げること。中西にはそのアシストとして動くことが求められた。レース開始が近づくと、クロフォードが早めにスタート地点に現れ、隊列の前方に位置取り。ボーナスタイム獲得への強い意思を感じさせた。レースがスタートすると、雨乞は集団後方で温存し、クロフォードと中西はアタックに備えた。

アタックがかかるも逃げが決まらない展開が続いたが、残り29kmでクロフォードがアタック。短い上りを利用して集団から飛び出し、追ってきた数人の選手とペースアップを図った。しかし、この動きは集団に飲み込まれ、続いて中西も逃げに入ろうと試みたがこれも不発に終わった。逃げが決まらないまま集団は周回コースに突入。2度のスプリントポイントでクロフォードが上位に入ることはできず、キナン勢は雨乞のスプリントへと気持ちを切り替えた。

集団後方に控えていた雨乞は、残り2周をきると徐々に前方へとポジションを上げていった。こうした集団内での動きは雨乞の得意とするところ。途中で中西のアシストを受け脚を休めながら、最後は10番手あたりで最終コーナーを回った。

好感触でスプリントに臨み数名を抜き去りながらフィニッシュラインに迫ったが、優勝争いにはわずかに届かず5位。優勝はチームUKYOのレイモンド・クレダー(オランダ)だった。雨乞は最高の成績は残せなかったものの、落ち着いたレース運びから脚を残した状態でスプリントに参加し、勝負できたことで大きな手応えをつかむレースとなった。

クロフォードも集団内で危なげなくフィニッシュし、ジャンプアップこそならなかったが個人総合20位を守り抜いた。前日逃げた疲れが残るなかアシストに奮闘した中西は、トップと同タイムの59位となった。

キナンにとっては第1、2ステージと落車リタイアが続いたが、中西が第4ステージで逃げに乗り、厳しい山岳を乗り越えた雨乞が最終ステージで上位進出。クロフォードがUCIポイントを獲得と、3選手それぞれが役割を果たし、成果を残した大会となった。(Text:平澤尚威)

ツール・ド・コリア第5ステージ結果(65.0km)
1 レイモンド・クレダー(オランダ、チームUKYO) 1時間21分5秒
2 ミヒケル・レイム(エストニア、イスラエル サイクリングアカデミー) +0秒
3 セオ・ジュンヨン(韓国、KSPO ビアンキ アジアプロサイクリング)
4 ルーカス・セバスティアン・アエド(アルゼンチン、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム) 
5 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) 
6 ルカ・パチオーニ(イタリア、ウィリエール トリエスティーナ・セッレイタリア) 
36 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) 
59 中西健児(KINAN Cycling Team) 

個人総合時間
1 セルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム) 18時間59分37秒
2 ステパン・アスタフィエフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナ モータース) +28秒
3 マッテオ・ブザート(イタリア、ウィリエール トリエスティーナ・セッレイタリア) +37秒
4 アルテム・オヴェチキン(ロシア、トレンガヌ サイクリングチーム) +43秒
5 レイモンド・クレダー(オランダ、チームUKYO) +1分41秒
6 ベン・ペリー(カナダ、イスラエル サイクリングアカデミー) +1分42秒
20 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) +2分0秒
47 中西健児(KINAN Cycling Team) +19分54秒
87 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +1時間2分52秒

ポイント賞
1 レイモンド・クレダー(オランダ、チームUKYO) 63pts
22 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) 11pts
32 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) 3pts

山岳賞
1 クォン・スンヨン(韓国、KSPO ビアンキ アジアプロサイクリング) 20pts
20 中西健児(KINAN Cycling Team) 1pts

チーム総合
1 ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム 57時間3分5秒
16 KINAN Cycling Team +1時間20分32秒

ジャイ・クロフォード

ジャイ・クロフォードのコメント
今日の雨乞のリザルトはとてもよかった。彼はとてもいいスプリンターだ。いい結果を残せば自信を得て、もっといいスプリントができるようになる。今日は雨乞にとってのファーストステップ。大会中、落車などがあったが、今日のレースはチームにとってとてもポジティブだ。総合ジャンプアップのため何度かアタックしようと思ったが、毎回他のチームが追ってきたので難しかった。今日は“スーパーファスト”なステージだった。次のレースでは勝ちたいので見ていてほしい。総合20位はものすごいリザルトというわけではないし、もっといい成績残したかったが、いまのコンディションに戻れたことをうれしく思う。退院してから短い時間しかトレーニングできず、パワーが落ちていたが、すぐにカムバックできたから。

中西健児

中西健児のコメント
今日走ってみたら、昨日の逃げの疲れが残っているのを感じた。ジャイさんの逃げにつなげられるように、カウンターのアタックに付いていってみたが、その一発で終わってしまった。ただ、雨乞さんが上がろうとしたところで風よけになれた。そういうアシストは今まであまりやったことがなかったので、違うことができたのはよかったと思う。今大会は去年よりコースが厳しくなり、総合系の選手が増えて難しいレースだったが、自分の感触としては前よりもよく走れた。今回の経験を次のレースに活かせればと思う。ハイレベルななかでレースできてよかった。

雨乞竜己

雨乞竜己のコメント
去年出場してどんなレースかわかっているので、終盤までは集団後方にいて残り7kmくらいから上がっていった。脚を使わずに前に行けて、(中西)健児が風を浴びそうなところで来てくれて、数秒から十数秒だったが風よけになってくれて助かった。そこからは集団の中を縫っていった。最後まで脚を使わなかったのは初めてで、自信をもって臨めたので、スプリントはいい感触だった。ただ、勝つにはもっと力が必要だった。今大会は去年より厳しいコースで、第1ステージは逃げ切りが決まってしまったので、大集団のスプリントになる時は必ず絡んでいかなければという戒めになった。スプリントは少なかったのでできることは限られていたが、それぞれができることはやったと思う。ジャイさんがリーダーシップをとってくれて、レースでも精神的にも助けになった。

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