山本大喜がU23タイムトライアル制覇…チーム発足4年目で初の日本チャンピオン

2018年の個人タイムトライアル日本チャンピオンを決める全日本選手権自転車競技ロードタイムトライアルが6月17日、石川県志賀町で行われた。2選手が出場したキナンサイクリングは、男子アンダー23に出場した山本大喜がトップタイムをマークして優勝。チームに初めての日本チャンピオンジャージをもたらした。

山本大喜が全日本選手権個人タイムトライアルU23制覇 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

数分おきに選手が個別に出走し、フィニッシュタイムを競う個人タイムトライアル。各々の走力がダイレクトに反映され、それぞれの持つパワー、そしてペース配分が勝敗を分ける種目である。2018年は能登半島のほぼ中央部に位置する志賀町に設けられた1周13.1kmのサーキットコースが舞台となった。

そのコースは、おおよそ南北を往復するルート設計。周回中盤に連続するアップダウンが待ち受け、部分的に急勾配となる区間も存在する。またテクニカルな下りもあり、コース取りやバイクコントロールの技術も必要となる。この日の天候は晴れで、コースコンディションは上々。ひと踏ん張りが必要となる復路で向かい風が吹く。そんな中で行われた、ナショナルチャンピオンを決める年1回の大一番、男女計7カテゴリーで争われ、それぞれの勝者には日の丸があしらわれたナショナルチャンピオンジャージを1年間着用する権利が与えられる。

この大会にはキナンから男子エリートに山本元喜、男子アンダー23に山本大喜が出場。ともにシーズン当初から目標に設定していて、チャンピオンジャージ獲得に向けて準備を進めてきた。男子エリートは3周回・39.3km、男子アンダー23は2周回・26.2kmで争われた。

午前9時40分に競技が開始となった男子アンダー23。2周回・26.2kmに18人が出走した。そのうち山本大は14番目でレーススタート。有力選手がひしめく第2ウェーブに振り分けられ、各選手が2分おきでコースへと繰り出した。落ち着いた入りとなった序盤。1周目の中間計測こそ3番手のタイムだったが、そこからペースに乗せていき、繰り返し訪れるアップダウンも難なくクリア。1周目を終えた時点では、トップと約5秒差の2番手につける。

真価を発揮したのは最終の2周目だった。ライバルが軒並みペースの維持に苦しむ中、山本大はさらに攻めの姿勢を見せる。1周目同様にアップダウンを危なげなく抜けると、フィニッシュへ向けてラストスパート。記録は34分14秒23。1周目のラップタイム17分9秒に対し、2周目は17分4秒と、このカテゴリーの出場選手では唯一ラップタイムを上げてみせた。

この結果、2位に13秒差をつけての優勝。男子アンダー23カテゴリーの頂点に立った。そしてキナンにとっても悲願だった日本チャンピオンジャージの獲得。将来を嘱望される大学生との勝負となった山本大だったが、プロ選手としての責任をしっかりと果たす快勝となった。

●男子エリートの山本元喜は11位

大会の最終種目、男子エリートには山本元喜が出場。3周回・39.3kmで争われた日本頂上決戦に挑んだ。競技は午後0時40分に第1走者がスタート。出走29人中22番目、第2ウェーブの最後に登場した山本元は、前走者から1分後にスタート。中間計測では、通過時点で5番手前後のタイムで走行。2周回目はペースを落ち着かせて、終盤勝負に備える。

そして上位進出をかけた最終の3周目。順位のジャンプアップを目指した山本元だったが、暫定5位でのフィニッシュ。タイムは53分10秒63。スピードの落ち込みをとどめ、ほぼイーブンペースで走り切った。その後に出走した第3ウェーブの選手たちが次々と山本元のタイムを上回ったこともあり、最終順位は11位。優勝をねらって準備を進めてきたが、悔しい結果となった。

順位だけ見れば明暗分かれる格好となった両選手だが、それぞれに可能性と課題を認識するレースでもあった。次戦となる、翌週の同大会ロードレースに向けて調整と修正を図っていくこととなる。山本大にとってはロードタイムトライアルの2冠、山本元にとってはタイムトライアルの雪辱を期してロードに挑む。全日本選手権自転車競技大会ロードレースは22日から24日までの日程で、島根県益田市で開催される。キナンのロースター(出場選手)については近日中に発表を予定している。

全日本選手権自転車競技大会ロードタイムトライアル結果
●男子アンダー23(26.2km)
1 山本大喜(KINAN Cycling Team) 34分14秒23
2 石原悠希(順天堂大学) +13秒12
3 中川拳(早稲田大学) +39秒09
4 松田祥位(EQADS) +52秒14
5 大町健斗(Team Eurasia – IRC TIRE) +55秒50
6 小山貴大(シマノレーシング) +1分20秒03

●男子エリート(39.3km)
1 窪木一茂(TEAM BRIDGESTONE Cycling) 50分23秒92
2 近谷涼(TEAM BRIDGESTONE Cycling) +1分2秒68
3 小石祐馬(チームUKYO) +1分30秒09
4 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +1分36秒43
5 渡邊翔太郎(愛三工業レーシングチーム) +1分39秒11
6 佐野淳哉(マトリックスパワータグ) +1分42秒81
11 山本元喜(KINAN Cycling Team) +2分46秒71

山本大喜

山本大喜のコメント
今回は自分との戦いだと思い、一定ペースで走ることを心掛けた。レーススケジュールの関係もあり、タイムトライアルに特化したトレーニングは少なめだったが、その中でもできる限りの準備をして本番を迎えられた。調整もうまくいったので、レースではペース配分に注意して、実力を発揮できれば勝てると自信をもって走った。タイムトライアルで勝つことができたが、それ以上に重要視しているのがロード。次のターゲットはアンダー23カテゴリーでのロード日本チャンピオン。しっかりと集中して臨みたい。

山本元喜

山本元喜のコメント
パワーを見ながら走ってはいたものの、中盤から後半にかけて失速してしまったことと、イメージしていた出力に達していなかったことが敗因。思っていたレースとはいかなかった。コースに対応することはできていたと思うが、なによりパワーが足りていなかった。ペース配分も含めて、走り方を見直さないといけない。翌週のロードに向けては、コースを念入りにチェックしながらコンディションと集中力を高めていくことになる。調子は悪くないので、あとはいかに本番にピークを持っていけるかにかかっている。

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