キナンのトマ・ルバがツール・ド・バニュワンギ・イジェンで個人総合3位

インドネシア東ジャワ州を舞台に開催されてきたインターナショナル・ツール・ド・バニュワンギ(International Tour de Banyuwangi Ijen、UCIアジアツアー2.2)は、9月29日に4日間の戦いを終了。キナンサイクリングは最終の第4ステージでトマ・ルバがステージ3位に入り、個人総合でも3位フィニッシュ。個人総合5位でスタートした山本元喜が順位をキープしたほか、大会後半に猛追したサルバドール・グアルディオラも同9位。総合トップ10に3人を送り込み、チーム力をアピールした。

ツール・ド・バニュワンギ・イジェン総合優勝のベンジャミン・ダイボールを中央に左が2位ジェシー・イワート、右が3位トマ・ルバ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

26日に開幕した総距離599kmのレースは、山頂フィニッシュだった第1ステージでルバが4位、山本が6位。続く第2ステージは、グアルディオラが8位に入り、いい流れで前半戦を終えた。前日の第3ステージでは、勝負どころと見られた激坂区間で5選手が次々とアタックを決める奇襲攻撃に成功。ルバと山本がそれぞれ個人総合順位を上げ、3位と5位につけた。

そしていよいよ大会はフィナーレを迎えた。最後を飾るのは、この地域のシンボルでもある秀峰イジェン山のヒルクライム。鋼青色の炎で知られるこの山の頂上にフィニッシュラインが敷かれ、選手たちの登坂力を試す。特に2018年は最終日にこの区間が設けられたこともあり、総合成績を決定づけるものと予想されてきた。

127.2kmのステージ全体では、スタート以降しばらくは平坦が続き、残り30kmを切ってから山岳区間へ。4級山岳ジャンベサリ(Jambesari)、3級山岳カリベンド(Kalibendo)を続けて越え、そのままイジェン山へと入る。登坂距離6.3kmで、平均勾配13%の上りは、登坂に入ってすぐに急坂が訪れる。中腹で最大の22%、その後も20%前後の激坂が立ちはだかるばかりか、路面が滑りやすいのも特徴。レース終盤に3つのカテゴリー山岳が連続するコースレイアウトだが、緩急さまざまな勾配がフィニッシュまで続いていくイメージだ。

キナンは、このステージに総合での逆転をかける。首位と3位のルバとの総合タイム差は2分58秒。難所のイジェン山での走り次第では、逆転は大いに可能だ。

レースはアクチュアルスタートとともにアタックがかかり、やがて7選手が逃げグループを形成。序盤はコース幅が狭いことを生かして、リーダーチームのセントジョージコンチネンタルが7人以上の逃げを封じ、プロトンのコントロールを開始。キナン勢5人はその背後につけ、終盤の勝負どころに備える。

逃げグループとメイン集団とは、最大で約6分差まで拡大。この中に個人総合で上位に位置する選手が含まれ、集団はその差を慎重にコントロールする必要があった。

終盤の山岳区間に入った時点でタイム差は約4分。4級山岳ジャンベサリまではセントジョージコンチネンタルが牽引した集団は、3級山岳カリベンドから新城雄大がペースアップを担う。新城の強力な引きによって、集団の人数が絞り込まれていく。カリベンドを越え、イジェン山へ向かうタイミングでさらにキナン勢がレースを動かす。まずアタックを仕掛けたのはグアルディオラ。これはセントジョージコンチネンタル勢のチェックにあうが、有力選手たちの争いを活性化させるきっかけとなった。

いよいよ勝負は大会の華であるイジェン山へ。長く続く激坂に各選手の登坂力と消耗度の差がそのまま反映される。1人、また1人と遅れていき、クライマーによる本格勝負の様相になると、ここまで個人総合2位につけていたベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル)が抜け出し、ルバと前日ステージ優勝したジェシー・イワート(オーストラリア、チームサプラサイクリング)が追う形となる。序盤からの逃げメンバーも数人が先頭付近で粘っていたが、クライマーとの勢いの差は歴然。少しずつリードを広げていくダイボールがトップに立ち、ルバとイワートによる2位争いへと変わっていった。

イジェン山で独走に持ち込んだダイボールが後続に1分近いタイム差をつけて、今大会のクイーンステージを制覇。2位争いはフィニッシュを目前にイワートが抜け出し、ルバはダイボールから1分4秒差のステージ3位とした。

さらに後ろでも熾烈なステージ上位争い。山岳アシストを務めたマルコス・ガルシアが4位で走り切り、グアルディオラも6位。個人総合成績がかかる山本も9位に入り、キナン勢は4選手がトップ10圏内でステージを終えた。

このステージの結果によって、総合上位陣にシャッフルが発生。ルバは順位を保ち個人総合3位で表彰台の一角を確保。山本も同様にスタート時の個人総合5位をキープ。変動が起きた中で、ここ数ステージで好走を見せてきたグアルディオラが9位に浮上。キナン勢が総合トップ10に3人を送り込んだ。これにより、UCIポイント44点を加算することに成功している。個人総合優勝はダイボールだった。

このほかキナンは、各ステージのチーム内上位3選手のタイム合算で競うチーム総合で2位、山岳賞ではルバが3位となり、それぞれ総合表彰台へと上がった。

これらをもってアジア屈指の山岳ステージレースである大会が終了。キナンとしても、9月中旬から始まったインドネシア遠征が終了。今回のテーマであった、UCIポイントの獲得と総合上位進出は今大会で果たすことができ、一定の成果を残して遠征を終える。

インターナショナル・ツール・ド・バニュワンギ・イジェン第4ステージ(127.2km)結果
1 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) 3時間49分44秒
2 ジェシー・イワート(オーストラリア、チームサプラサイクリング) +47秒
3 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team)+1分4秒
4 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +4分6秒
5 マルセロ・フェリペ(フィリピン、セブンイレブン・クリックロードバイクフィリピンズ)
6 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +4分9秒
9 山本元喜(KINAN Cycling Team) +5分20秒
29 新城雄大(KINAN Cycling Team) +14分3秒

個人総合時間賞
1 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) 15時間8分7秒
2 ジェシー・イワート(オーストラリア、チームサプラサイクリング) +58秒
3 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +1分14秒
4 マーカス・クレイ(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +5分38秒
5 山本元喜(KINAN Cycling Team) +6分47秒
6 マリオ・フォイト(ドイツ、チームサプラサイクリング) +10分23秒
9 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +14分14秒
16 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +17分17秒
34 新城雄大(KINAN Cycling Team) +28分5秒

ポイント賞
1 ジャマリディン・ノウアルディアント(インドネシア、PGNロードサイクリング) 24pts
8 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 14pts
12 山本元喜(KINAN Cycling Team) 9pts
13 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 8pts
24 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 3pts

山岳賞
1 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) 33pts
3 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 22pts
5 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 12pts
10 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 8pts
12 山本元喜(KINAN Cycling Team) 6pts

チーム総合
1 セントジョージコンチネンタル 45時間40分13秒
2 KINAN Cycling Team +2分26秒

山本元喜

山本元喜のコメント
チームオーダー通りにレースを運ぶことができ、特に山岳に入ってからの(新城)雄大の素晴らしいアシストによって、自分が想定していた以上に重要な局面まで脚を温存して走ることができた。その甲斐あって、総合成績の維持ができた。順位アップこそならなかったが、結果としてUCIポイントの獲得につなげられたのはよかった。
インドネシア遠征を通して、スプリントにトライするといった新たな試みもできて、山岳での走りも含めて自らの可能性が広がっている実感がある。調子も上がっているので、残るシーズンもコンスタントにUCIポイントを獲得しながら、持ち味を生かしていきたい。

トマ・ルバ

トマ・ルバのコメント
今日の結果そのものには驚いていない。山岳で全力を尽くし、実力のある上位2選手とよい勝負ができたと思う。大会初日のミスが最終的な結果に直結したように感じている。ただ、その後もトライを続け、第3ステージでの攻撃や今日の山岳に挑むことができた。今後もレースが控えているので、コンディションを整えて本番を迎えたい。