上位進出ならずも世界の一線級相手に臆せずスプリント ジャパンカップクリテリウムのキナン

10月19日から各種イベントが行われているジャパンカップサイクルロードレースは、20日に宇都宮市中心部でクリテリウムを開催。翌日のUCI(国際自転車競技連合)公認の国際レース出場チーム・選手を対象に行われた38.25kmのクリテリウムで、キナンサイクリングは中島康晴の18位がチーム最上位だったものの、UCIワールドチームを中心に展開された主導権争いに挑み、スプリント態勢を形作った。上位入賞こそならなかったが、翌日に控える本戦へとつなげる果敢なトライとなった。

ジャパンカップクリテリウムをパレードするキナンチーム ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日は大観衆が詰めかけた中でのチームプレゼンテーションで、ファンの心を惹きつけるパフォーマンスを披露したキナンの選手たち。一様に笑顔を見せ、ムードのよさをアピールした。一転して、この日はハイスピードバトルに挑むとあって、各選手が集中した姿を見せた。

宇都宮市大通りを周回する、1周2.25kmのコースは、高低差こそほとんどないものの、たびたび訪れるヘアピンカーブでのポジショニングや、コーナークリア後の加速などが勝負するうえでのポイントとなる。スピードとバイクテクニックが要求され、優勝争いのスプリントは時速60km近くなることも。キナンは山本元喜、山本大喜、サルバドール・グアルディオラ、トマ・ルバ、中島康晴、新城雄大の6選手をセレクト。中島を軸にレースを展開することを確認した。

2周回のパレード走行後、15周回する総距離38.25kmの戦い。129選手が一斉にスタートすると、序盤はアタックと吸収の繰り返し。3周回目に2人が飛び出し、しばし先行するが、これは4周回目に設けられた1回目のスプリント賞通過を機にメイン集団へとバック。その後も7人程度の先頭グループが形成されかけるが、集団に対してリードを得るまでには至らない。8周回目に設定された、この日2回目のスプリント賞では、先に仕かけた選手を新城が猛追。しかし、わずかの差で届かず、スプリント賞獲得とはならなかった。

レースが後半に入ると、UCIワールドチーム勢を中心に主導権争いが本格化。トレック・セガフレードやミッチェルトン・スコットが前方を占める中、キナン勢は中島を中心に陣形を整え、好位置を確保。山本元や新城らが中島のポジションキープに従事し、残り周回が減るにつれてルバやグアルディオラも位置取り争いに加わる。その間、12周回目に設定された3回目のスプリント賞に山本大が挑む。1位通過はならなかったが、積極的な姿勢を見せた。

決定的なアタックはなく、勝負は戦前の予想通りスプリントにゆだねられることに。キナン勢はグアルディオラが集団最前列でリードアウト。フィニッシュ前600mでの最後の折り返しで絶好の位置をキープした中島が勝負に臨んだ。

満を持してスプリンターとの争いに挑んだ中島だったが、周囲の選手同士で起きた接触の影響で加速しきれず。番手を下げ、挽回できずにフィニッシュラインを迎えることとなった。結果は18位。レースを終えた中島は、イメージとはほど遠い結果と、上位進出を託されていた責任から悔しさをにじませた。

一方、リザルトに現れる形での好結果とはならなかったものの、各選手がチームオーダーに基づき走り終え、世界の一線級の選手・チームを相手に戦った点では大きな収穫となった。心身ともにポジティブな状態で、次なる戦いへ向かう。

翌21日は、いよいよ大会の華であるロードレースが行われる。宇都宮市森林公園へ舞台を移し、10.3kmのコースを14周回する144.2kmで争われる。注目は、標高差185mを一気に駆け上がる古賀志林道の登坂。特にレース終盤は、有力選手の攻撃が活発となる区間。登坂後のダウンヒルや平坦区間も見もので、上りで仕掛けた選手たちと、それを追う後続選手たちとの激しい攻防が見られることが予想される。

UCIが公認するカテゴリーでは、アジア圏で行われるワンデーレースとしては最上級のHCクラスに位置付けられている。グアルディオラはクリテリウムのメンバーから、中島とマルコス・ガルシアを入れ替え。6選手がチームとしてはこの大会初タイトル獲得と、UCIポイントの獲得を目指してスタートラインにつくこととなる。

<strong>ジャパンカップクリテリウム(38.25km)結果</strong>
1 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード) 42分38秒
2 キャメロン・スコット(オーストラリア、オーストラリアン・サイクリング・アカデミー) +0秒
3 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ宇都宮ブリッツェン)
4 ロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
5 レイモンド・クレダー(オランダ、チームUKYO)
6 ローガン・オーウェン(アメリカ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
18 中島康晴(KINAN Cycling Team)
65 山本大喜(KINAN Cycling Team) +15秒
89 新城雄大(KINAN Cycling Team) +30秒
91 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +32秒
105 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +43秒
111 山本元喜(KINAN Cycling Team) +47秒

中島康晴

中島康晴のコメント
今回は自分が勝負する役割を担うことになったので、メンバー間の連携を心がけて最終局面へと持ち込めるように走った。残り5周以降から(山本)元喜たちが中心になって動いてくれて、残り2周からはサルバが牽引、そして最後の半周は(新城)雄大が引き上げてくれて、自分としてはベストな状態でスプリント態勢に入ることができた。
トレック・セガフレードのトレインをマークしながら加速を始めたが、周りで接触があった関係で、それを避けるのに減速せざるを得ず、ねらい通りのスプリントとはいかなかった。チームがいい仕事をしてくれて、あとはそれに応えるだけだったので、みんなに申し訳ない。
明日はレース出走はないが、やるべきことは残されている。実際にレースを走るのは6人だけれど、応援してくださる方々が“7人目のライダー”だと思っている。その“7人目のライダー”たちを引っ張って、みんながチームとして戦えるよう盛りあげたい・