キナンのシーズン最終戦ツール・ド・おきなわは山本大喜の14位が最高

2018年の最終戦となったツール・ド・おきなわ2018は11月11日、沖縄県名護市を発着とする210kmで争われた。キナンサイクリングは新城雄大がレース前半に形成された先頭グループに加わったものの、その後展開された優勝争いに加わることはかなわず。チーム最高位は、メイン集団からの追い上げを試みた山本大喜の14位だった。

14位でゴールする山本大喜 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

プロライダーからホビーレーサー、さらにはキッズまで参加できる幅広いカテゴリーが魅力のツール・ド・おきなわ。そのなかでもメインレースに位置づけられる男子チャンピオンレースは、UCIアジアツアー1.2クラスに設定される。同ツアーはすでに2019年度のレースカレンダーに加えられていて、このチャンピオンレースもそれに該当する。

レースの特徴は、210kmと国内のレースでは屈指の長丁場であること。11月の開催はシーズン最終盤とあり、百戦錬磨の選手といえど過酷な戦いとなる。コースは、名護市を出発したのち、名護湾と東シナ海に面した本部半島を時計回りに進み、海岸線を北上。沖縄半島最北端の国頭村に入って反時計回りに向きを変え、レース後半は太平洋沿いを南下して名護市へと戻ってくる設定。沖縄半島北部をおおむね8の字に進むルートは、中盤に2カ所の山岳ポイントが待つほか、後半にかけても細かなアップダウンが控えている。

キナンはこのレースに山本大と新城のほか、山本元喜、トマ・ルバ、中島康晴の5選手が出場。シーズンを通して主力として走ってきたメンバーをそろえて、2018年最後のタイトル獲得をかけた戦いに挑んだ。

18チームから85選手が、午前6時45分の号砲とともに出発。すぐにリアルスタートが切られると次々とアタックが発生するが、集団から抜け出すまでには至らない。激しい出入りを繰り返しながら、レース序盤は進んだ。

その状態が落ち着いたのは、40km地点に差しかかろうかというタイミング。10人が飛び出すと、ここに新城が加わる。この動きをきっかけにメイン集団が落ち着き、快調に飛ばした新城らは約9分のリードを得た。一方のメイン集団は、新城らを見送るとサイクリングペースに。集団に残ったキナン勢4選手は、次なる展開に備えながら淡々と距離を減らしていった。

レースが少しずつ動きを見せたのは、中盤に入ってからのこと。内陸部を通過する山岳区間のうち、2回目の登坂で先頭グループから新城が遅れ始める。前方への復帰を目指しての粘りも届かず。タイミングをほぼ同じくして、メイン集団ではルバが牽引して山岳区間へ。一気の引きに集団の人数が減っていき、力のある選手だけに絞られる。こうした動きによって、先頭グループとのタイム差は4分台に縮まった。

追撃ムードが高まったかに見えたメイン集団だったが、チーム間での思惑が交錯してか、ペースがいまひとつ上がらず、先頭を走る選手たちとのタイム差に大きな変化が見られなくなっていく。他チームの動きに合わせた山本元が5人の追走グループに加わったものの、やがて後退。かたや、先頭グループは協調体制が続き、後続の追い上げをかわすほどの勢い。結局、レース前半に集団から抜け出した選手たちの逃げ切りが濃厚な情勢となった。

上位フィニッシュが難しくなったキナン勢だが、1つでも上の順位を目指す姿勢は崩さない。先にポジションを上げつつあったルバに続き、山本大も終盤の登坂区間で合流。以降はルバの引き上げを受けた山本大がチーム最上位となる14位でフィニッシュラインを通過。ルバが16位でレースを終えたほか、中島、山本元、新城も走り切り、出場5選手全員が完走した。

順調に調整し、好調でレースに臨んでいただけに、上位フィニッシュが果たせなかったことに選手たちは一様に悔しさをにじませた。一方で、選手間で要所での動きについて意見が交わされるなど、フィニッシュした瞬間からその視線は来季へと向けられている様子。今回のレースで明白となった課題を、来シーズンのチーム力アップに反映させる強い意志が選手たちの姿からうかがえた。

これをもって、2018年のロードレースシーズンは終了。キナンは2018年、9つの勝利を含む多数の上位進出を果たした。成果を挙げ、来季へ向けた指標となる1年とした。今後チームは、各種イベントや小学校での交通安全教室などへの出席を予定。引き続き精力的に活動していく。

ツール・ド・おきなわ 男子チャンピオンレース(UCIアジアツアー1.2、210km)結果
1 アラン・マランゴーニ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) 5時間5分4秒
2 フレディ・オヴェット(オーストラリア、オーストラリアン・サイクリング・アカデミー・ライド・サンシャイン・コースト) +19秒
3 フェン・チュンカイ(台湾、チャイニーズタイペイナショナルチーム)
4 デルク・アベル・ベッカーリン(オランダ、WTC de アムステル) +50秒
5 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +1分29秒
6 畑中勇介(チームUKYO) +1分31秒
14 山本大喜(KINAN Cycling Team) +4分37秒
16 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +4分40秒
35 中島康晴(KINAN Cycling Team) +14分56秒
36 山本元喜(KINAN Cycling Team)
47 新城雄大(KINAN Cycling Team) +16分3秒

山本大喜のコメント
力のある選手が逃げに入った状況で、チームとして後手を踏んでしまった。集団内での協調がうまくいかず、追う体勢がいまいち整わなかったことも展開を厳しくしてしまった。追走グループが形成された時は高強度の動きに対応できず、(個人として)勝負するには力が足りていなかった。
(シーズンを振り返って)アジア選手権で勝てて、全日本選手権でも個人タイムトライアルを勝つことができた一方で、後半戦で個人・チームともに成績が残せなかったことが悔しい。今年はナショナルチームで走ることが多く、チームにあまり貢献できなかったと思っているので、もっと強くなって今度はチームに結果をもたらすことができるようになりたい。

トマ・ルバのコメント
チームとしては(新城)雄大が先頭グループから下がってしまった時点で、難しい状況になってしまった。個人的にはベストコンディションではなかったので、チームメートのサポートができればと考えていた。順位がともなわなかったことは悔しい。長かったシーズンを無事に終えることができた。今年が格別よかったとは思っていないけれど、また勝利を収められるようトライし続けていきたい。

中島康晴のコメント
逃げに(新城)雄大ともう1人加えることができれば、違った展開になったのかなとは思う。先頭グループに選手を送り込まないという判断をしていたチームもあったので、彼らの様子を見て動こうと思っていたが、結果的に(先頭グループに)タイム差を広げられてしまった。それが順位に反映されてしまっただけに、悔しい形で終わることになった。
1月のシーズンインから多くのレースでメンバー入りができ、チームメートとうれしいことも悔しいことも共有してきたことがなにより。このレースでしっかりシーズンを締めくくることができればよかったけれど、全体としてはよいシーズンになったと感じている。ただ、レースによっては大きな失敗もあったし、まだまだ改善の余地はあるので、より選手間の連携を深めてチーム力を高めていきたい。

⚫関連ニュース

アラン・マランゴーニが引退レースのツール・ド・おきなわで逃げ切り優勝

⚫最新ニュースへ

自転車の落車事故に特化した救急救命講習が12月24日開催

自転車の落車事故で想定される外傷を伴った事故に対しての応急処置を学ぶ「サイクルセイフティサミット」が12月24日に神奈川県の向ヶ丘自動車学校で行われることになり、その参加者を募集中。初回開催から3年になるが、これまではショップやイベント主催者らが参加しやすい平日開催。今回は初めて祝日の開催となり、一般サイクリストも参加しやすくなった。

【主催】サイクルセイフティーサミット(Cycle Safety Summit)実行委員会
【協賛】フィジオコントロールジャパン・東京海上日動株式会社(予定)
【開催日】2018年12月24日(月曜・祝日) 8時30分開場 17時終了予定

【参加費と参加形態】
・一般参加費1万円
・早期申込割引8500円(2018年11月15日まで)
・大学生・専門学校生・高校生3000円(数量限定)
・法人複数割引 ショップなど自転車業界関係者で3名以上で参加する法人は、まとめて割引受講が可能。法人あての領収書も発行可。
・過去のサイクルセイフティサミット参加者で再度希望の人 メッセージで連絡ください。半額で受講可能。過去の参加が確認でき次第、割引コードを通知。また、補助スタッフとして参加することも可能。早朝の準備、イベント後の撤収に協力すると、アシスタントスタッフとして動きながらファーストエイド内容の復習が可能。補助スタッフは過去のサイクルセイフティ受講者に限定。

【費用に含まれるもの】会場利用料・講師謝礼・事務局費・保険代・テキスト代(1週間前にPDFデータで配布。各自プリントもしくはipadなどで持参。約130ページ)
【修了証明書・ステッカー】受講証明書・ステッカーを希望の方は1500円で発行。エントリーの際にお申し込みください。
【復習者】過去開催のサイクルセイフティサミット受講者で再度受講を希望する方
【場所】向ヶ丘自動車学校
【講師・アシスタント紹介】
(10月25日時点での予定。都合により変更の可能性もあります)
平泉裕氏  昭和大学医学部整形外科学講座 客員教授
      日本整形外科学会専門医 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
      日本トライアスロン連合メディカル委員 他
橋隅和明氏他 横浜市消防局 元司令課 実業団チームFARs代表
高山真由子氏 看護師 保健師 自転車実業団登録選手
      ツアー・オブ・ジャパン医療班やJBCFレース救護班
安藤隼人  株式会社スマートコーチング代表取締役 
      日本スポーツ協会公認自転車競技コーチ 日本登山医学会評議員
      日本登山医学会認定ファーストエイド夏季研修終了 
【内容】(10月20日時点での予定。都合により変更の可能性もあります)

○9:00-10:30 講義
 ・サイクルセイフティーサミットを開催するにあたって
  自転車・トライアスロン界の現状と問題〜各種統計データより〜
 ・ラグビー・マラソン等他競技での安全管理事例
 ・119番と消防の出動体勢
 ・ファーストエイドの基本
○10:30-12:30、13:30-15:30
 ・「安全確保」「初期評価」「全身観察」「搬送」の4セクションに分かれて各1時間ずつ、サイクルスポーツ現場での落車や事故状況を再現し、ファーストエイドのシナリオトレーニングを行います。
○15:30-16:30
 ・「2017-2018年国内サイクルイベントで発生した複数落車事例・頚椎損傷落車事例の総合シナリオ実習」
○16:30-17:00
・自転車保険・AED導入について
・事業主・イベント主催者が加入すべき損害賠償保険、レクレーション・イベント・事業保険・AEDの導入方法について

【準備するもの】
・筆記具・事前配布資料(1週間前にPDFデータで送付します。プリントするかipad等にダウンロードしてご持参ください)
・ホイッスル(持っていない場合はご自身で購入し準備するか、エントリー時にご購入下さい)
・ロードバイク(推奨:シナリオトレーニングでロードバイクを使用します)
・バイクウェアー・ヘルメット・グローブ、寒くない格好(屋外での実習でアスファルト上に横になる、講師の話を立ったまま聞くなど運動を行わないため)
【駐車場】
・駐車場1000円/台。20台限定。自転車での自走、もしくは乗り合わせの上お越しください。

【参加証明書・ステッカー】任意。希望の方はエントリー時にチケットを購入ください。
本サミット参加コーチやショップ関係者には、安全対策に意識のあるサイクルセイフティーコーチ、セイフティーショップとして、実行委員会認定の参加証とステッカーを発行します(別途手数料必要)。ステッカーを店舗に貼り、お客様へ安全管理意識の高いコーチやショップというアピールに使っていただけます。遅刻ならびに途中退場の方には発行できません。

●詳細サイト

●過去の取材記事

サイクリングでケガした仲間を救えるか?…自転車の落車事故に特化した救急救命講習