【ツール・ド・フランス現場雑感】猛暑のオーベルニュ・ローヌアルプ

ビルバオが亡き友ジーノ・メーダーに捧げる初勝利

第110回ツール・ド・フランスは7月11日、ブルカニア〜イソワール間の167.5kmで第10ステージが行われ、バーレーンビクトリアスのペリョ・ビルバオ(スペイン)が初優勝した。

第10ステージを制したビルバオが天国のジーノ・メーダーに勝利を捧げる ©A.S.O. Charly Lopez

総合優勝争いでは首位ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)と2位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)がタイム差なしでゴールし、その差17秒は変わらなかった。

感染予防のマスク、猛暑対策の冷却ベストで出走サインに登壇するビンゲゴー ©A.S.O. Charly Lopez

この勝利を天国のジーノに捧げたい(ビルバオ)

ステージ優勝のビルバオは2023年の開幕地と同じ名前。スペイン・バスク地方という地元で勝利を狙ったが果たせず、初優勝を目指して再挑戦した。

チームはエースナンバーである下一桁の1がいない。6月のツール・ド・スイスで所属するジーノ・メーダーが落車死し、追悼の意を込めて欠番としたからだ。「この勝利を天国のジーノに」とビルバオ。

第10ステージのスタート ©A.S.O. Charly Lopez
2023ツール・ド・フランス第10ステージ ©A.S.O. Charly Lopez
ツール・ド・フランスは町中のど真ん中を通過していく ©A.S.O. Charly Lopez

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マイヨベール(ポイント賞)ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ニールソン・ポーレス(米国、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

第10ステージで形成された第1集団 ©A.S.O. Charly Lopez

クレルモンフェランは日本語の通じない日本料理店が多い

プルミエールクラスに宿泊したときは、たいてい隣にある同系列の格上ホテル、カンパニールで5%引きでレストランに入れるんですが、この日は「チームでいっぱい」と断られました。チームスタッフも駐車場にテーブルを並べてディナー。よほどレストランに許容スペースがないんですね。

1つの寿司ネタを頼むと3貫出てくるのか

ということで入るつもりはなかった日本料理店へ。経営者は東洋系で、日本語は通じないと思ったので最初から話しかけていません。いわゆるフランスによくある中華料理の食べ放題ビュッフェ形式です。料金は20ユーロちょっとということなので、3500円といいお値段を取りますね。

チームスタッフは駐車場でディナー

寿司屋を標榜しているので、オーダーはタッチパネルで。1つオーダーすると3貫出てきたのは失敗でした。シャリが大きいのでお腹いっぱいになる予感。アサヒスーパードライの330ml瓶を600円で注文し、食べることに専念しました。やはり日本料理店と言うよりもフランスによくある来々軒でした。

日本酒もオーダーできる

翌朝にラン練習に出かけたら、日本料理店がもう1軒。クレルモンフェランって日本の人が多いんですか? 以前、ツール・ド・フランスのプレスセンターに、おにぎりを差し入れしてくれた取材仲間の友人夫妻がいて、とてもしみじみと日本の味を楽しんだことを思い起こしました。

2023ツール・ド・フランス第10ステージは中央山塊を走る ©A.S.O. Charly Lopez

この日も暑くなりました。そしてホテルはピュイドドームのゴール後から3連泊なので、チームのホテル班はまったりした感じでした。

中央山塊の東にあるオーベルニュ・ローヌアルプ地方

連泊するときは不要だと思った荷物を置いてくるので、たまに大失敗することもあります今回は短パン持ってこなかったのが失敗でした。フランスも直射日光は強烈です。

この日は猛暑。プレスセンターの室内で32度、クルマの外気温は38度だった

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【ツール・ド・フランス現場雑感】文献でしか読んだことなき伝説の地

ピュイドドームはウッズ優勝…ポガチャルがビンゲゴーから8秒挽回

第110回ツール・ド・フランスは7月9日、サンレオナール・ド・ノブラ〜ピュイドドーム間の182.5kmで第9ステージが行われ、イスラエル・プレミアテックのマイケル・ウッズ(カナダ)が初優勝。

ピュイドドームを目指す ©A.S.O. Aurélien Vialatte

総合優勝争いでは25秒遅れの2位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)が攻撃を仕掛け、首位ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)に8秒差をつけ、総合差を17秒とした。

マチュー・ファンデルプール。ピュイドドームの伝説であるプリドールの孫 ©A.S.O. Pauline Ballet

37歳がつかんだツール・ド・フランス勝利のラストチャンス

ウッズはゴールまでの急しゅんな上り坂で、最後の500mで先行していた選手を逆転した。

「もうすぐ37歳になるが、ツール・ド・フランスでステージ優勝することだけが目標だった。苦しかったがベストを尽くした。勝利できたのは妻や子どもたちのおかげだ」とウッズ。

山岳ジャージを着用するニールソン・ポーレス ©A.S.O. Pauline Ballet

一方の総合優勝争い。「第9ステージはポガチャルに離されてタイムを失ったが、最初の9日間はボクに向いていないコースだったのでまずまずだ。彼の調子が上がってきているのが心配」とビンゲゴー。

対するポガチャルは「第9ステージで突き放せたのは小さな勝利だ」と追う者の強みを見せる。

全23日間の大会は序盤の9日間を終え、休息日をはさんで11日から再開する。

2023ツール・ド・フランス第9ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet
第9ステージで先行する第1集団 ©A.S.O. Pauline Ballet
2023ツール・ド・フランス第9ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet
ピュイドドームを制したウッズ。普段の表彰台とは異なる仕様だ ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マイヨベール(ポイント賞)ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ニールソン・ポーレス(米国、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

ピュイドドームは電波が通じず痛恨の下山

N(国道)の自動車道をひたすら時速110kmをキープしながら東へ。そしてA高速にジョイントして南下。ガソリンが途中でなくなるのを心配して下道に降りましたが、緊張するクルマの運転が続きます。

第9ステージから休息日をはさんで第11ステージのスタートまで4日間がクレルモンフェランのツール・ド・フランス祭り

今回のマイカー、シトロエンC3エアクロスは順調です。市街地や郊外はリッター24kmほど、高速になると回転が高くなるのでリッター22kmほどに落ちます。そして交通規制されたコース上をたまに走ると、両側にいる観客を配慮してスピードを抑えるのでリッター30km。つまりはむやみにアクセルを踏まないエコ運転がいいようです。

隣のカンパニールホテルにボーラ・ハンスグローエやモトチームが宿泊

この日はボクの取材人生でも初めてのピュイドドームヘ。1964年にアンクティルとプリドールがヒジが触れ合うばかりに激闘をしたという伝説の地で、文献では読んでいますが初めての訪問となりました。

クレルモンフェランの市街地からすぐに10%を超える坂が始まり、行く手にピュイドドームが見えてきます。最後の4kmは立入禁止で、憲兵隊しかいない道を選手たちが必死の息遣いでゴールを目指してペダルを踏みしめていきます。

あの高圧洗浄機で手前にあるボクのクルマも洗車してくれないかなあ

ところがプレスセンターの通信状況が悪く、一時は選手たちがゴールして全員下山となったところで一緒に帰ろうかなとも考えましたが、地図を見ていると広告キャラバン隊の退避ルートがあることに気づきました。それを使ってクレルモンフェランのホテルに行けば。案の定、残り40km地点を選手が通過している頃にチェックインでき、エアコンの効いた部屋でテレビ観戦。

勝手知ったるプルミエクラスのプチデジュネ(朝ごはん)

このあたりはホテルやショッピングモール、レストランなどがたくさん多く、ボクの宿泊するプリミエクラスの横には同系列の格上ホテル、カンパニールがあり、すでに先乗りのメカニックが駐車場のスペースを確保して選手の到着を待っています。

この日からホテルは3連泊で、しかも翌日は休息日。体調はいいはずですが、多少疲れを感じていて、Garminのアプリコーチも「オーバーリーチ」と継承を出しているのでこの朝のランニングをパス。洗濯などをしながら少し静養します。

子供服のプチバトーはクレルモンフェランの美観地区にあった

つくづくツール・ド・フランスの休息日は絶妙のところに設定されていると感じました。

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【ツール・ド・フランス現場雑感】フランスの小さな田舎町で過ごす

カベンディッシュが落車骨折…最多勝利記録更新はできず

第110回ツール・ド・フランスは7月8日、リブルヌ〜リモージュ間の201kmで第8ステージが行われ、リドル・トレックのマッズ・ピーダスン(デンマーク)が大集団のゴール勝負を制し、2022年の1勝に続いて2度目の勝利を挙げた。

ポガチャル(左)とビンゲゴー ©A.S.O. Charly Lopez

総合成績ではユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)が首位を守った。

2023ツール・ド・フランス第8ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

大会最多勝利タイの34勝をマークしているアスタナ・カザクスタンのマーク・カベンディッシュ(英国)は途中で落車リタイア。今季限りで引退するため新記録は達成できなかった。

2023ツール・ド・フランス第8ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

ステージ優勝は英国の世界選手権を制したピーダスン

ピーダスンはカベンディッシュの母国英国で開催された2019世界選手権の覇者。

「だれもが尊敬する選手がこんな形で終幕を迎えるとは。引退レースを一緒に走ることになったらジャージを交換したい」とねぎらいの言葉を送った。

ステージ優勝のピーダスン ©A.S.O. Charly Lopez
2023ツール・ド・フランス第8ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マイヨベール(ポイント賞)ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ニールソン・ポーレス(米国、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

2023ツール・ド・フランス第8ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

小さな町の快適ホテル…静かな家々のたたずまいと自然の香り

フランスに本格的な夏がやってきました。ツール・ド・フランスがフランスで迎える最初の週末とあって、高速道路のサービスエリアはたくさんの人が集まっています。だれもがツール・ド・フランスに興味があるわけでなく、家族との時間を思い思いに楽しんでいるという感じです。それが意外とオトナっぽくていいですね。

ホテルは別棟の新しい施設で気持ちよく過ごすことができた

この日はリモージュから北に35kmほど移動した小さな町へ。最後は幹線道路から外れ、その町だけを通る交通量の少ない道路へ。その道沿いにレストランがあって、テーブルの準備をしていた女の子に尋ねたら、ここがこの日の宿でした。

ホテルそのものは歴史があるものですが、裏に別館があり、チェーン系の最新ホテルとなっていました。レストランはおいしさで定評があるようで、テラス席は大にぎわい。店頭に掲げられたメニュー表をのぞくと、30ユーロと45ユーロのコースが目に付き、ホテルの主人に夕食はお断りして、朝食だけお願いしました。

最新のチェーン系は水回りなどもきれいで、とりわけ天井から蓮の花を逆さにしたようしてお湯が出てくるシャワーがとても気持ちいいのです。

午後10時ほどの町の中心部

夜になって町を散歩すると、石畳が美しく敷き詰められた広場は閑散としたもの。1つの窓から家族の喧騒が聞かれましたが、それ以外はとても落ち着いていました。

翌日の朝食はテラス席をすすめられたので、そこで食べていると雷雨に。汚くなったクルマがこれで洗われたかなと期待しましたが、あまり効果ありませんでした。

朝食はテラス席に限る

ツール・ド・フランスはこの日、伝説のピュイドドームへ。ホテルの主人に聞くと、ラスト4kmからは人立ち入りが禁止されているとのこと。優勝はバルデかなと言っていましたが、フランス選手は結果的にあまりよくなかったですね。

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【ツール・ド・フランス現場雑感】ボルドーなのにビール、レオンなのにパエリア

フィリプセン、最強スプリンター。ステージ3勝目を挙げる

第110回ツール・ド・フランスは7月7日、モンドマルサン〜ボルドー間の170kmで第7ステージが行われ、アルペシン・ドゥクーニンクのヤスパー・フィリプセン(ベルギー)が大集団のゴール勝負を制し、今大会3勝目、通算5勝目を挙げた。総合成績ではユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)が首位を守った。

ステージ優勝とマイヨベールのフィリプセン ©A.S.O. Pauline Ballet

カベンディッシュの勝利を願う人も多いが、ボクも負けられない

平坦ステージはスプリンターが優勝するチャンスで、大会最多勝利タイの34勝をマークしているアスタナ・カザクスタンのマーク・カベンディッシュ(英国)の単独最多記録が期待された。

カベンディッシュはステージ2位で大会最多記録34勝の更新はできなかった ©A.S.O. Pauline Ballet

しかし若いフィリプセンにゴール手前で逆転を喫して2位。今季限りでの引退を表明している38歳にとってはあとがない。フィリプセンも「カベンディッシュの勝利を願う人も多いが、ボクも負けられない」と苦肉のコメント。

2023ツール・ド・フランス第7ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet
チームメートに渡すボトルを背中に入れる ©A.S.O. Pauline Ballet
チームカーから補給を受けるビンゲゴーとクリストフ・ラポルト ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マイヨベール(ポイント賞)ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ニールソン・ポーレス(米国、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

ビンゲゴーが第7ステージでもマイヨジョーヌを守った ©A.S.O. Pauline Ballet

ボルドーまで北上するとようやく日の長さを感じる

広大なフランスでは南下するほど日が短くなり、西に行くほど日の出が遅くて、日の入りが遅くなります。2023ツール・ド・フランスの序盤戦はスペインとフランス南西部だったので、朝7時になっても暗いのに違和感がありました。ようやくボルドーまで北上してきて、日が長くなりました。

ボルドーに真夏がやってきた

前日のピレネー2日目はコトレにゴール。プレスセンターはゴールの麓4km地点にあって、最終走者がそこを通過してしばらくして下山のためにクルマを走らせ始めたら、なんとすんなり宿のあるルルドまでほとんど渋滞なく、たどり着くことができました。

プレスセンターに着席する前にボルドーの赤ワインがプレゼントされた

巡礼地として知られるルルドのホテルはたいていフロントに人がいて、どんなに遅くなってもチェックインできますが、余裕で下山でき、そして夕食を一緒にしたいという取材仲間と中心部のベトナム料理屋に行くこともできたんです。

無料で自転車を預けられるコーナーがある

翌日は300kmほど北上して一路ボルドーへ。ボルドーそのものは市街地でも古い平屋や2階建ての民家が軒を連ねているんですが、郊外のシャトーは立派な石造りの門構えと建物。盆栽のように手入れされたブドウの木が丘の上まで広がっています。

ボルドーの伝統的な建造物がプレスセンター。ところが電波の状況が悪く仕事にならず

チョコレート色のガロンヌ川のほとりにあるプレスセンターでの仕事を早めに切り上げて、衛星都市にあるホテルへ。この日は2日に1回のお約束で飲まない日なんですが、ボクの部屋のドアを開けたらムール貝のレオン・ド・ブリュッセルが!

自分の部屋のドアを開けるとムール貝のチェーン店レオンが見えた

こんなチャンスはめったいないと夕食は歩いて2分ほどのレオンに。ボルドーなのにビール。レオンなのにスペインフェアやってるのでパエリア。

ボルドーなのにビール、レオンなのにパエリア

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【ツール・ド・フランス現場雑感】10人用の山小屋に6745円で泊まる

ポガチャルがアタックしてステージ10勝目…遅れたビンゲゴーはマイヨジョーヌ

第110回ツール・ド・フランスは7月6日、タルブ〜コトレ・カンバスク間の145kmで第6ステージが行われ、UAEエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)がユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)に24秒差をつけて今大会初優勝。大会通算10勝目。総合成績ではビンゲゴーが首位に立ち、これを25秒差で総合2位ポガチャルが追う展開となった。

ポガチャルがアタック。ビンゲゴーがこれを追えない ©A.S.O. Charly Lopez

荷物をまとめて帰ろうとしたが脚が回った(ポガチャル)

最後の上りで一騎打ちとなったビンゲゴーとポガチャル。残り2.8kmでポガチャルが勝負に出た。上りとは思えないスピードで一気に差をつけ、さらにじわじわと引き離す。2年ぶり3度目の総合優勝を目指す王者の走りだった。

2023ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

「上り坂でユンボ・ビスマ勢の速い走りに圧倒されたので、昨日のように調子が悪かったら荷物をまとめて帰ろうと思った。でも脚が回った。25秒遅れは絶好のタイム差だ。最終ステージまでし烈な戦いになるだろう」とポガチャル。

2023ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マイヨベール(ポイント賞)ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ニールソン・ポーレス(米国、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

ファンアールトがビンゲゴーを牽引。ポガチャルもついていく ©A.S.O. Charly Lopez
2023ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O. Charly Lopez
ポガチャル対ビンゲゴーの一騎打ち ©A.S.O. Charly Lopez

これまでの経験値が多少なりとも生かされている

ピレネーの山岳ステージ初日はゴールのラランスから関係車両は憲兵隊の誘導で宿泊地のポーまで35kmを隊列で北上していきます。観客も帰路を急ぐため混乱は必至で、そのためボクは北のポーへは向かわず、さらに奥深くのオービスク峠に向かうキャンプ場を予約しました。

ダイニングルームの階段を登っていくとベッドルームが2部屋。さらに別のベッドルームやシャワー4つ、トイレ3つがある

そのため渋滞にもあうことなく、ものの30分ほどで管理棟に到着。午後7時を過ぎても鍵のありかにたどり着けるように暗証番号をメールでもらっていましたが、やっぱり対人のほうが安心ですよね。そして案内されたのが、谷の一番奥にある大きなシャレ(山小屋)。そこまでは未舗装路の徒歩。キャスター付きのバッグが全く役に立たず、とりわけ翌朝の上りは途中で2回休んだほどです。

テーブル席にコンセントがなく、結局パソコン仕事はここでした

管理棟の前にはプールがありましたが、見ているだけで寒くなるほど周囲はしっとりとして心地よい程度の寒さに。ディナーも朝食も別料金でオーダーできましたが、いいお値段で、しかもキッチンもあるというので手持ちの食材で部屋飲みに。

レセプションから歩いて一番谷底にある山小屋をあてがわれ、荷物を運ぶのに息が切れた

二棟構造がひとつになった大きな山小屋です。ベッドルーム3部屋はすべて2階にあって、合計10人が宿泊できるようです。トイレは3カ所ほど、シャワーも3連繋がりのものとちょっと立派な別のものが1つ。フェイク暖炉もありました。

キッチンもあるのでレストランにはいかず、手持ちの食材でくつろぎながら部屋飲み

ホテルドットコムで決済した宿泊費は6745円。真冬の格好でテラスに出て、カウベルの音が風に流れて聞こえる中で歯ブラシ。フランスが地上の楽園と感じる瞬間です。ずっと滞在していたいですが、あと1時間で出ないと。

翌日のゴール後はオービスク峠を越えればすぐ。ヒツジにブロックされなければ大丈夫。できるだけ岩盤側を走って谷底を意識しないで運転することを心がけ、いちはやく到着。

プールはあるけど寒くて入れない
オービスク峠の東麓側は断崖絶壁
1kmごとに頂上までの距離・勾配値が表示されている
ツール・ド・フランスが初採用した4つの峠の一つ、オービスク

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【ツール・ド・フランス現場雑感】英国人夫婦がフランスで営む民宿

ヒンドレーがピレネー初日に独走…総合でも首位に

第110回ツール・ド・フランスは7月5日、ポー〜ラランス間の163kmで第5ステージが行われ、ボーラ・ハンスグローエのジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)が残り20kmから独走して初優勝。総合成績でも首位に立った。

ヒンドレーが初優勝して総合でもトップに。2023ツール・ド・フランス第5ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

優勝候補ポガチャルがまさかの1分遅れ

ヒンドレーは2022年のジロ・デ・イタリアを制した実力者で、総合成績でも首位に立ち、一躍優勝争いの一角に。「初参戦でここまでできるとは考えていなかった。アタックは計画していなくて即興だった」とヒンドレー。

連覇を目指すユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴーは孤軍奮闘で追ったが、総合成績で47秒差をつけられた。UAEエミレーツのタデイ・ポガチャルはこの日1分38秒も遅れ、総合6位に後退。「イタリアの女子レースで自転車選手の彼女が転倒して、1分ロスしたことよりもショックだ」とポガチャル。

大会5日目にしてピレネーの本格的な山岳ステージが始まった ©A.S.O. Pauline Ballet
2023ツール・ド・フランス第5ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet
ヒンドレーがマイヨジョーヌ ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マイヨベール(ポイント賞)ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

フランス渡航30年にしてこれぞオススメしたい民宿

前日にノガロサーキットでの仕事を切り上げて、30分ほどでたどり着いたのがこの日のお宿。日本で言ったら民宿で、アットホームな雰囲気が楽しめる人には最適です。ただし経営者との距離が近いのがよくある民宿の難点で、もっと放任してほしいという人には向いていないと思います。ところが…。

ヨーグルト、ジャム、パンは自家製

この日はそんな民宿とはちょっと違ったところでした。部屋代は一般的なホテルと比べたら安価ですが、「ディナーが食べたいときは24時間前までに連絡ください。プレートが3品で15ユーロ」という案内があったので、メールでディナーをオーダー。すぐに「もちろん」というレスが返ってきました。

この手の民宿はオーナーが見つけたとっておきの場所にあることが多く、たいてい路頭に迷います。ところが時代の進化で、宿泊予約サイトの地図をたたくと、Google マップが起動して、そこまで案内してくれます。なんていい時代になったんでしょう。

向こうに見えるのがピレネーだ

たどり着いたのはポツンと一軒宿。2部屋しか客室がなく、この日の宿泊はボクだけ。シャワーを浴びてからダイニングに行くと、それはもうおいしい匂いが充満。テーブルにはワインも用意されていて、これで前日のホテルの朝食と同じ値段とは。

この宿でよかったものは、経営者があまりしゃしゃり出てこず、ディナーをゆったり食べることができたこと。もちろん、就寝前に「世間話や伝達事と翌朝の朝食時間など」のお話はありましたが、お客さんのスタンスを尊重した接し方にとても好感を持ちました。

2023ツール・ド・フランス第5ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

そしてディナーが終わったあとは、ポツンと一軒宿は管理人の英国人夫婦がクルマで下山してしまったので、ボクだけのものになりました。

それでも会話したことをまとめると、夫婦で英国からフランスに移住してペンションを持ったとのことです。庭には食材になる植物を育てていて、朝食のヨーグルト、パン、ジャムは自家製です。英国のカベンディッシュがあと1勝してほしいとご主人。

この日はぐっすりと眠ることができ、朝のランニング練習はアップダウンの連続に手こずりましたが、シャワーを浴びておいしい朝食。10時までに手洗いの洗濯をして、ちょっとくつろいでから一路勝負どころのピレネーへ。まだ大会は始まったばかりなのに、山岳ステージ早くないですか?

トレックチームのメインスポンサーとなったリドル

この民宿はタルブの北にあるので、タルブ、ルルドともう30年も走り通したピレネー北麓の町々を通過していきます。ルルドのよく知った郊外型商業施設群でディスカウントスーパーのリドルへ。

リドルってフランスのドンキというイメージでしたが、30年の現地取材にして初めて入ったら大船グランシップのライフみたいな感じです。商品スキャンは机の上を転がすだけの超高速。こっちの人は大量買いしますが、列が長くならないのがうれしい。

ルルドとタルブを結ぶ街道にあるアデという町はいつも気になる

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