903日ぶりに開催されたパリ〜ルーベはやはり地獄だった

第118回パリ〜ルーベが2021年10月3日に北フランスで開催され、欧州チャンピオンのソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーンビクトリアス)がロットスーダルのフロリアン・フェルメールス(ベルギー)とアルペシン・フェニックスのマチュー・ファンデルプール(オランダ)をゴール勝負で制して優勝した。

積極的に前を走る欧州チャンピオンのコルブレッリ ©A.S.O.-Pauline-Ballet

初開催となった女子レースはトレック・セガフレードのリジー・デイグニャン(英国)が独走で優勝した。

北の地獄と呼ばれる石畳の悪路 ©A.S.O.-Pauline-Ballet
アランベルクの石畳セクション ©A.S.O.-Pauline-Ballet

コロナ禍で2020年は中止、今回も延期開催で久々のレース

コロナ禍以前は4月中旬にフランスで開催されるパリ〜ルーベは「北の地獄」と呼ばれるパベ(石畳)の悪路を断続的に走る。ナポレオン統治以前に敷設された石畳で、第一次世界大戦で爆撃されて荒れ果てたものを修復。そんな歴史的建造物は、ふだんは農作業の車両しか利用していないという。

アランベルクを走る有力選手たち ©A.S.O.-Pauline-Ballet
悪路に悪天候が追い打ちをかけた ©A.S.O.-Pauline-Ballet

そんなルートで自転車レースが行われるのだから、それはもう地獄絵巻としか言いようがない。路面からの衝撃を緩和するために厚手のバーテープを巻き、太いタイヤを装備した自転車を駆使するが、随所で落車やパンクが相次ぐ。それでも選手は時速40kmで突っ込んでいく。選手によれば、「路面の悪さは沿道の観客の数で判断できる」という。選手のアクシデントを目撃したいという人間の残酷さを見る思いだ。

これぞパリ〜ルーベ ©A.S.O.-Pauline-Ballet

石畳の道はクルマ1台分の幅しかなく、レース中に進入できる関係車両は著しく制限され、チームのサポートカーもこの区間は迂回を余儀なくされる。各チームは石畳区間の出口にスタッフが交換車輪を持って待機することだけが許される。だからパンクしたり機材故障した選手はどんな状態であってもスタッフのいる出口まで走らなければならないのだ。

ソンニ・コルブレッリがルーベ競技場のゴール勝負を制す ©A.S.O. Fabien Boukla

昭和期の流血プロレスで興奮するのと同様。いや、歴史的に見れば西洋史のほうが残忍で、21世紀になったからといって気持ちが変わったとは考えにくい。欧州ロードレースに事故はつきもので、それがあってのスポーツだという発想だ。日本のレース主催者なら事故は表面化させたくないだろうが、ツール・ド・フランス主催者が制作するレースダイジェスト動画には、集団クラッシュや崖から陥落するシーンまで収録されているのである。

ゴール後の選手はドロだらけだ ©A.S.O.-Pauline-Ballet

パリ〜ルーベを運営するのはツール・ド・フランス主催者のASOで、7月のツール・ド・フランスでも数年に一度は石畳区間を通過するように設定。ツール・ド・フランスは興行であることを如実に物語る。

初開催された女子パリ〜ルーベ ©A.S.O. Fabien Boukla
女子パリ〜ルーベ ©A.S.O. Fabien Boukla
初開催された女子パリ〜ルーベ ©A.S.O. Fabien Boukla
世界チャンピオンのエリーザ・バルサもメカトラブル ©A.S.O. Fabien Boukla
独走でゴールを目指すリジー・デイグニャン ©A.S.O. Fabien Boukla
リジー・デイグニャンが初代女王に ©A.S.O. Fabien Boukla

●パリ〜ルーベのホームページ

コルブレッリがエベネプールを制して欧州チャンピオンに

大陸別のロードチャンピオンを決める各大陸選手権の1つ、欧州選手権は大会最終日となる9月12日、イタリアのトレントでエリート男子のロードレースが行われ、イタリアのソンニ・コルブレッリがベルギーのレムコ・エベネプールとのゴール勝負を制して優勝。初めて欧州チャンピオンになった。

距離179.2kmのレースを制したコルブレッリ ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2021

イタリア勢の優勝は2018年のマッテオ・トレンティン、2019年のエリア・ビビアーニ、2020年のジャコモ・ニッツォーロに続き4年連続。

2021欧州選手権エリート男子ロード ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2021
2021欧州選手権エリート男子ロード ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2021
オルリアン・パレパントルとフランク・ボナムールらフランス勢が積極的に動く ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2021
2021欧州選手権エリート男子ロード ©Ilario Biondi/BettiniPhoto©2021
ベルギーのビクトル・カンペナールツ ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2021
ベルギーのレムコ・エベネプール ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2021
イタリアのソンニ・コルブレッリが2021欧州チャンピオンに ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2021

2022年の欧州選手権ロードは、エリートクラスが8月14日から21日までドイツのミュンヘンで、ジュニアとU23クラスは7月7日から10日までポルトガルのアナディアで開催される予定。

イタリアのソンニ・コルブレッリを中央に、左が2位レムコ・エベネプール、右が3位ブノワ・コズネフロワ ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2021

大会の模様はEBU(欧州放送連合)の協力によって、YouTubeチャンネルで視聴できる。
●欧州自転車競技連合のYouTubeチャンネル

●欧州選手権ロードのホームページ

「生まれてくる子はビクトリアに決めた」ソンニ・コルブレッリがグランピエモンテで優勝

バーレーン・メリダのソンニ・コルブレッリ(イタリア)が10月11日にイタリア北部で開催された第102回グランピエモンテでゴールスプリントを制して優勝した。距離は191km。8カ月前に開幕戦となるドバイツアーで勝利を挙げた同選手は、それ以来となる勝利で今シーズンを締めくくった。

ソンニ・コルブレッリがグランピエモンテを制した © LaPresse – Ferrari / Alpozzi

「ドバイで1勝し、このレースを勝利で締めくくることは期待できなかった。でも雨のレースは得意だ。最後のゴールスプリントは集団の中で道が開けたので思いっきり行った。スリップスないことが重要だった」とコルブレッリ。
「今シーズンは2位ばかりだったけど、最高の形でシーズンを締めくくることができてホッとしている。あと10日ほどで女のコが生まれる予定だけど、ビクトリア(勝利)と名づけることにするよ」

グランピエモンテを制したソンニ・コルブレッリ © LaPresse – Ferrari / Alpozzi

グランピエモンテ © LaPresse – Ferrari / Alpozzi