ポガチャル、ツール・ド・フランス、クラシック、世界制覇に挑む

世界最大の自転車レース、ツール・ド・フランス2連覇中、東京五輪ロード銅メダルのタデイ・ポガチャル(23=スロベニア)がさらなる高みを目指して2022シーズンに挑む。自転車競技史上最強の選手と言われるエディ・メルクス(76=ベルギー)も初めて「自分を超える選手になるだろう」とお墨付きを与えた。

タデイ・ポガチャルが第20ステージで2019ブエルタ・ア・エスパーニャ3勝目 ©Photogómez Sport

グランツールだけでなくワンデーレースでも勝てる逸材

スロベニアはかつての社会主義国、ユーゴスラビアから1991年に独立した小国だ。しかし自転車界では一気に強豪国に。それをけん引するのがポガチャルだ。身長176cm、体重66kg。2019年に現在も所属するUAEエミレーツと契約。三大大会の1つ、ブエルタ・ア・エスパーニャに起用されて区間3勝、いきなり総合3位になった。まだ20歳だった。

近年の自転車レースは高速化と専門性が顕著になり、ワンデーレースで優勝をねらうタイプと2日以上の大会日程で総合優勝を争うタイプに分けられてきた。ツール・ド・フランスのように23日間の長丁場で頂点をねらうならワンデーレースは視野に入れず調整することが常套手段となった。ブエルタ・ア・エスパーニャ1回、ツール・ド・フランス2回の出場で、総合3位、1位、1位の成績を手中にしたポガチャルはまさに後者のタイプと思われていた。

2019ブエルタ・ア・エスパーニャで新人賞ジャージを着る ©Photogómez Sport

ところが2021年、ポガチャルはワンデーレースの伝統大会、春のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(ベルギー)、秋のイル・ロンバルディア(イタリア)で優勝。近年の傾向を完全に打ち破る成績を修めた。

ワンデーレースでも複数日レースでも暴れまくったのがかつてのメルクスだ。ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスで5勝、ワンデーレースの最高峰である世界選手権で4勝(アマチアロード含む)。春先に開催される伝統のレースも総ナメにして、その強さから「人食い鬼」とさえ呼ばれた。これまでメルクスは「自らと並び立つ現役選手は?」の問いに答えなかったが、イル・ロンバルディアの優勝後にポガチャルの名前を口にした。

そのコメントはポガチャル自身の耳にも入り、「彼がそう言うならボクは自転車競技の新たな歴史を作れるように頑張る」と意気揚々だ。

ポガチャルが2020ツール・ド・フランス第20ステージで首位に ©A.S.O. Pauline-Ballet

ツール・ド・フランスのみならずフランドルと世界選手権にも照準

チームは1月5日からスペインでキャンプイン。10日にはリモート取材に応じた。2022シーズンのポガチャル最大の目標は7月のツール・ド・フランスで3連覇を達成することだが、それ以外にも驚くべきターゲットを口にした。「ワンデーレースの女王」と言われる4月3日のツール・デ・フランドル(ベルギー)にプロ選手となってから初参戦することを表明。8月には得意とするブエルタ・ア・エスパーニャ、そして9月の世界選手権で世界王者のタイトル獲得を目指すという。

2021リエージュ〜バストーニュ〜リエージュのゴール勝負を制して初優勝。左から2人目 ©A.S.O. Aurelien Vialatte

ツール・ド・フランス最多となる5勝を記録した選手は過去に4人いるが、5勝目はいずれも30歳前後。22歳で2勝を挙げた選手は皆無だ。ポガチャルにはまだ相当の時間がある。メルクスを超える最強選手となるのか? キーとなるのは2022シーズンだ。2月20日から26日までチームのおひざ元で開催されるUAEツアーが初戦。4月はツール・デ・フランドルを皮切りに、連覇をねらう24日までのリエージュ〜バストーニュ〜リエージュまで伝統レースを毎週末こなす。

総ナメにするようなことがあればメルクスの再来を疑う余地はない。

2021ツール・ド・フランス、2年連続で黄色のマイヨジョーヌを着用してパリにがい旋 ©A.S.O. Aurelien Vialatte

挑戦しがいのあるいいプールに入った…リーチ・マイケル

ラグビーワールドカップ2023フランス大会(RWC2023)のプール組み分け抽選が12月14日、フランスのパリで行われ、これを受けて公益財団法人日本ラグビーフットボール協会の森重隆会長、日本代表ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフ、ラグビーワールドカップ 2019で日本代表キャプテンを務めたリーチ・マイケルがコメントを発表した。

組み合わせ抽選会に出席したフランスのマクロン大統領。右は司会のルイーズ・エクラン ©Aurelien Meunier – World Rugby/World Rugby via Getty Images

プール組み分け抽選の結果、ラグビー日本代表はプールDに入り、イングランド、アルゼンチン、オセアニア1、アメリカ2と同組となった。

■日本ラグビーフットボール協会の森重隆会長コメント
「日本代表はプールD、イングランド、アルゼンチン、オセアニア1、アメリカ2と同組になりました。いずれのチームとの対戦もそれぞれ非常に楽しみで、今から23年が待ち遠しくてなりません。RWC2019 で初のベスト8を果たした日本代表には、常に世界の頂点を目指し、鍛錬を積んでほしいと思います。

今年は新型コロナウイルス感染症の影響で日本代表戦を開催できず、選手はじめファン・関係者の皆様に残念な思いをおかけいたしましたが、年明け1月にはいよいよトップリーグが開幕し、6月にはブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズとの対戦が予定されています。23年のフランス大会に向けて、ジャパンラグビーをけん引する選手たちの活躍にぜひご注目いただきたくお願い申し上げます」

日本代表 ジェイミー・ジョセフヘッドコーチのコメント
「日本代表のヘッドコーチとして、素晴らしい強豪チームとプールDにて対戦できますことを大変光栄に思うと同時に、興奮しております。ラグビーワールドカップ2023が素晴らしい大会になることは間違いありません。これからの3年間、23年に向け準備に集中できることが楽しみで、とてもワクワクしています。

RWC2019では日本がラグビーとブレイブブロッサムズの両方に対して情熱を持っている国であることを世界に示しました。私たちはまだまだ成長の過程にあり、日本代表チームの成長と実力を世界に示すために、ワールドカップほどふさしい舞台はありません。応援いただいているファンの皆様のご期待に応えるよう努めてまいります」

RWC2019日本代表キャプテン リーチ・マイケルのコメント
「どのチームとの対戦もチャレンジングであり、今からRWC2023が非常に楽しみです。いいプールに入ったと思います。チームの一員としては、今後それぞれが自分の目標をもって準備に臨み、そして自分たちのラグビーを確立していくことが大切に思います。3年後の対戦相手が決まって、今まで以上にハードワークの日々がスタートすることになります。23年、フランスで桜のジャージを着て、最高のパフォーマンスで結果を残せるよう努力していきます」

●2023ラグビーワールドカップの特設サイト
●ラグビーワールドカップ2023フランス大会のホームページ

ツール・ド・フランス厳戒開催へ…選手・関係者をバブル内隔離

新型コロナウイルス感染拡大により当初予定から2カ月遅れとなる8月29日〜9月20日の開催となった第107回ツール・ド・フランス。異例ずくめの大会運営体制の一部が明らかになったが、過去に例がないほどの特殊なレースになりそうだ。

2019ツール・ド・フランス第17ステージ ©ASO Thomas MAHEUX

7月23日、大会主催者のASOから報道関係者に取材受け付けの案内がメール送信されてきた。

通常なら開幕の3カ月前に送信されるものだが、2020年は開幕まで1カ月余でようやく送られてきた。それだけ主催者が健康面での安全対策に苦心し、試行錯誤していたことが推測できる。

案内文は、現在の健康危機において必要とされる取材方法を説明している。これらの規定は7月に定められたとしていて、今後の数週間におけるフランスでの感染状況によっては、大きく修正される可能性があると警告している。

従来の「ファミリー」から「バブル」という枠組みに変更

ツール・ド・フランスはこれまで、主役である選手を中心に、チーム関係者、主催スタッフ、取材陣、スポンサーを「ファミリー」という言葉でひとくくりにし、円滑な運営を続けてきた。例えば交通規制に関してなら、一般の人たちが制限されるところにも「ファミリー」は入ることを許され、大会特別規定の道路通行ルールが適用された。

今回、「ファミリー」に替わって明記された言葉が「レースバブル」。英語ではRace bubble、フランス語ではBulle Course。

2019ツール・ド・フランス第8ステージ ©ASO Pauline BALLET

レースに関わる主要な人々の周りに「バブル」を実装する。その範囲となるのは選手、チームスタッフ、オフィシャル、レース運営者。取材陣とスポンサーは外されている。大会期間中はバブル内にいる人に対して厳格な健康管理と衛生対策が行われれ、バルブ内にウイルスを持ち込まない態勢づくりを構築した。さらにバブル外の人たちとの接触を可能な限り制限する。

ツール・ド・フランスに帯同する取材者、メディア、各地域の大会協力者はバブルの外となるが、大会に数日間関わる場合は、レース前の健康テストから期間中の健康観察、レースバブルとの接触制限、会場でのソーシャルディスタンス順守が厳命される。

無観客レースにはならない…大事なことは遠回しに表記

ファンの動きにも言及されている。常にソーシャルディスタンスを確保すること、レースコース沿道ではスマホアプリをインストールして、感染者が出たときに接触があったかを確認できるようにすること。これらの感染予防策を取り入れれば主催者は「一般の人たちも招待する」という表現をしているので、無観客レースとはならないようだ。

まとめると…
ツール・ド・フランス関係者の健康を守るためにバブルが設定される
レースバブル=選手・チーム関係者・大会運営スタッフ
第2バブル=それ以外のツール・ド・フランスファミリー
第3バブル=一般の人たち

2019ツール・ド・フランス第11ステージ ©ASO Pauline BALLET

ツール・ド・フランスに帯同するすべての人は現地到着の5日前以降にPCR検査を受けて陰性となった各国保険機関の証明書が必要。Stop Covid”アプリケーションをダウンロードする必要がある。マスク着用。

主催者側はさらに連日にわたって消毒を徹底的に行い、12〜19人ほどの専任医療関係者と看護士を帯同させる。また開幕時とパリのゴールでは選手の家族が訪問するのが恒例だが、2020年はこれも禁止された。

🇫🇷ツール・ド・フランス2020特集サイト
🇫🇷ツール・ド・フランス公式サイト

ツール・ド・フランス選手は東京五輪を走れない…日程変更できない事情

新型コロナウイルスの影響で2021年夏に延期された東京五輪の新たな競技日程が7月17日に同組織委員会から発表され、ツール・ド・フランスと自転車競技男子ロードの日程が重なることが改めて確認された。2020年の当初予定ではツール・ド・フランスが東京五輪を尊重して、大会日程を1週間前倒しして重複を避けたが、2021年は簡単にはそれができない理由がある。

コペンハーゲンで開幕する2021ツール・ド・フランスのコースプレゼンテーションをするクリスティアン・プリュドム ©ASO_G.Demouveaux

新型コロナウイルス感染拡大を受けて2020年の国際スポーツイベントがこれまでにないほどの影響を受けている。この年の三大スポーツイベントのうち、五輪とサッカー欧州選手権(ユーロ)は1年延期。ツール・ド・フランスは毎年開催されることもあって、2カ月遅れの日程になった。

混乱は2021年にも続く。すでにツール・ド・フランスは7月2日に大会史上初めてデンマークのコペンハーゲンで開幕すると2019年2月に早々と発表している。伝統的にツール・ド・フランスは7月最初の土曜日に開幕するので、このこと自体は例年通り。ただし遠隔地開幕となるので、移動日を加えて1日増の24日間での開催とした。そのため7月2日は異例の金曜日。パリにゴールするのは7月25日だ。

話が戻るが、2020年のツール・ド・フランスは東京五輪に配慮して開催日程を通常より1週間早めていて、最終日を7月19日(日)とした。当初の2020東京五輪での男子ロードは開会式翌日の25日(土)に計画されていたので、ツール・ド・フランスで完走を果たした選手も中5日の余裕があった。

2021年に開催される東京五輪の日程が発表された

自転車男子ロードは五輪で常に最初の決勝種目

五輪では開会式翌日の競技初日に最初の決勝種目として自転車競技男子ロードが開催される。その理由は、町々をつないで走るロードレースは開催都市の全容を世界中に知らせるのにうってつけの種目であるからだ。とりわけ男子ロードは選手数が多く、空撮や併走による映像でその都市の魅力をあますことなく配信するというねらいがある。

これは1年延びて開催される2021年実施の東京五輪にも適用された。つまり五輪がスライドしたことによって五輪男子ロードが開催される日にツール・ド・フランス出場選手は最終日前日を走っているのだ。

●新型コロナウイルス感染拡大以前の大会日程
2020年6月12日〜7月12日 サッカー欧州選手権
2020年6月27日〜7月19日 第107回ツール・ド・フランス
2020年7月25日 東京五輪男子ロード

2021年7月2日〜25日 第108回ツール・ド・フランス

●新型コロナウイルス感染拡大後の大会日程
2020年8月29日〜9月20日 第107回ツール・ド・フランス

2021年6月11日〜7月11日 サッカー欧州選手権
2021年7月2日〜25日 第108回ツール・ド・フランス
2021年7月24日 東京五輪男子ロード

東京五輪の新たな競技日程は、基本的に延期前の日程の曜日を合わせてそのまま引き継いだものだ。自転車競技にはロードレース以外にも、トラック・MTB・BMXとあるが、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長は「今回発表した各種目日程の変更することは不可能だ」と断言している。

大会プログラムを変更できるかと尋ねられたバッハ会長は「ノー」と述べた。「それはあまりにも複雑な意味を持つことになる。我々はすでにすべての利害関係者、つまりツール・ド・フランス主催者とデンマークの開幕ホストシティに伝えている」

2021ツール・ド・フランスは1週間前倒しできない

2021ツール・ド・フランスのグランデパール(開幕地)は、世界のサイクリングシティと言われるコペンハーゲン。デンマークの首都だ。7月2日(金)の開幕を目指して数年前から計画を立てている。新型コロナウイルス感染拡大という特殊事情を理由に、2020年のように1週間前倒しにできないか。これもノーだ。

こともあろうに、1年延期されたサッカー欧州選手権の試合がコペンハーゲンであるのである。

2019ツール・ド・フランス第4ステージはランス大聖堂をスタート ©ASO Pauline-BALLET

サッカー欧州選手権はいわゆる欧州におけるワールドカップで、4年に一度の開催。2021年に延期された第21回大会は欧州13カ国での分散開催となる。これは当初予定通り。じつはコペンハーゲンでは6月18日にグループBのデンマーク対ベルギー、22日にグループBのデンマーク対ロシア、そして29日には決勝リーグ「ラウンドオブ16」のグルーブD・2位対グルーブE・2位の試合が開催される。

東京五輪を避けてツール・ド・フランスを1週間前倒ししたら、今度はサッカーとぶつかってしまう。コペンハーゲンの警察当局は、2つのスポーツビッグイベントに多くの観客が殺到することを懸念。ツール・ド・フランスを1週間前倒しする案を受け入れることができないという。

「ツール・ド・フランスの経営陣から、2021年にデンマーク開幕予定日について討議する要請を受けたことは認める」と、グランデパール組織委員会のトップでもあるコペンハーゲンのフランク・ジェンセン市長が6月末に国営放送のDRでコメントしている。

以上、これは2021年の話。ツール・ド・フランス主催者はまず2020年大会をどうやって運営しようかに懸命。新型コロナウイルス余波はあまりにも大きい。

🇫🇷ツール・ド・フランス2020特集サイト
🇫🇷ツール・ド・フランス公式サイト

2020ツール・ド・フランスが通常開催できない3つの理由

新型コロナウイルス感染拡大により、2020年の第107回ツール・ド・フランスは大会日程を当初の「6月27日〜7月19日」から、「8月29日〜9月20日」に延期。この異例の措置によって、真夏のバカンス時期に開催されるお祭りという希有な価値が保てるのか? 6月29日時点での状況を分析してみた。

7月14日はフランス革命記念日 ©ASO

フランスは国内および欧州での衛生状況が改善していることから、欧州委員会の提言に従って6月15日より欧州域内の国境制限(陸路、空路、海路)をすべて解除した(スペインとの国境制限は6月22日より解除)。

欧州域内の国からの渡航者は、新型コロナウイルス対策に関連して設けられた国境での移動制限を一切課されず、フランス本土へ入境できる。ただし英国からの渡航者だけは相互主義(レシプロシティ)により、フランス到着後に14日間の隔離措置が続けられる。

●欧州外からフランスへ入境する場合に求められる2週間の自主隔離措置

現時点で日本人は、配偶者がフランス人であることや新型コロナウイルスにかかる医療関係者などの特例をのぞいて、フランスへの渡航ができない状況。日本外務省のホームページに2国間の渡航についての制限(出国・入国)について毎日情報のアップデートがある

7月1日から日本人はフランス入りができるという情報も

フランスは慎重ながらも前進する意志を見せている。7月1日以降、シェンゲン協定域外の第三国との国境を、各国との衛生状況を鑑みながら、段階的に個別に再開していく予定だ。シェンゲン協定の加盟国内にいったん入ると、域内は原則パスポートの検査なしで行き来できる。

2国間の相互主義(レシプロシティ)というのは「互恵性、返報性」の意味。言い方は悪いが、一方が入国禁止措置を執るなら他方も同じやりかたをぶつけるというもの。日本がフランス人の受け入れを拒んでいたら、フランスも同様のやりかたをする。14日間の隔離措置を求めるなら、これも同様だ。

ただし世界有数の観光大国であるフランスは、自国経済の立て直しのためにできることなら外国人旅行者を呼び戻したい。そのために新型コロナウイルス感染を抑え込んでいる国は例外的に入国緩和と隔離措置廃止を検討している。例外となる国のリストとその内容は7月1日に発表されるようで、日本もリスト入りしていると一部で報じられている。

2019ツール・ド・フランス第14ステージ ©ASO Alex BROADWAY

これに先立つ6月22日、フランス政府は新型コロナウイルス感染がいまだ予断を許さない海外領土のマイヨットとギアナを除いて、フランス全土に施行される「夏季に向けた新たな制限解除の内容」について発表した。

理由その1 観光大国が普段の姿を取り戻すには時間がかかる

フランス全土で映画館、カジノ、ゲームセンターの営業再開が可能になること。再開には衛生上の配慮をとることが求められること。また、コロニードバカンス(長期休暇期間に児童が過ごす林間・海浜学校)では児童の受け入れが可能になることなどが発表された。フランス本土では確実にいつもの夏休みに戻りつつあるのだ。

7月11日以降(フランス本土における衛生上の緊急事態宣言の終了後)には、河川クルーズの運行が再び認められる。欧州の複数国の港に寄港する海洋クルーズは、省令で定められた定員以内の船舶であれば、関係国との調整において今後の運行再開が決められるという。

スポーツに関してはどうか。スタジアムおよび競馬場は5000人以内の規模であれば観客を入れられるようになる。劇場など1500人を超える集まりは届け出の対象となり、必要な配慮がとられることを保証しなければならない。

大規模イベント、スタジアム、劇場における集客の人数制限を5000人とすることは原則として9月1日まで続けられる。8月29日に開幕するツール・ド・フランスは当然のようにこの「大規模イベント」となるので、5000人の人数制限が適用される。それがフランスの象徴的スポーツイベントであるとしても、だ。

理由その2 5000人超のイベントは現時点では開催不可

順調に推移しても、いまの状況ではツール・ド・フランスは5000人以下での開催。つまり想定されるのは無観客レースだ。これではどうしても盛り上がりに欠けてしまう。わずかな望みは、フランス国内での新たな疫学調査が7月中旬に実施され、8月下旬に制限緩和が可能となるかが決定されるということ。

9月1日以降、新たに出される疫学状況の評価次第で、たとえば秋の新年度スタート時に以下のような緩和が行われる。

フェア、展示会、見本市会場の再開
5000人を超える規模のイベントの認可
疫学状況の評価次第で、ディスコ、国際海洋クルーズの再開

日本選手やファンはツール・ド・フランスに行けるのかという問題

6月29日時点でのフランスの累計患者数は16万2936人、死者は2万9778人。入院患者数は8886人で、前日より255人減少。新規感染者は87人で前日比マイナス37人。4月7日に流行のピークを迎えてからは減少傾向が続き、第2波到来の予兆は今のところない。

2020ツール・ド・フランスに出場できる可能性がある日本選手は、バーレーン・マクラーレンの新城幸也とNTTプロの入部正太朗。入部は落車による鎖骨骨折で現在復帰に向けてのリハビリ中。新城は感染拡大直前に合宿地のタイに入国し、いよいよ欧州復帰を準備中。一般の渡航条件とは別にプロ選手としてのビザ取得という課題があるが、フランスに自宅があるためフランス入りそのものは問題ない。

©A.S.O. / Thomas-MAHEUX

理由その3 出場選手がフランス入りできるか、さだかではない

問題なのは感染拡大が続く南米・北米からのフランス入りが許可されるか。コロンビアには2019年の総合優勝者エガン・ベルナル(イネオス)がいる。欧州の中では感染者の多い英国もさだかではなく、ツール・ド・フランス最多タイの5勝目を目指すクリストファー・フルーム(イネオス)がいる。

日本のファンが2カ月延期されたツール・ド・フランスの現地に行けるかは、まずは7月1日にフランス政府が発表される決定事項による。ただ、日本でも東京都などの新規感染者は高止まりし、ウイルスそのものは常に存在しているので、あらゆるリスクを考慮して慎重に判断したい。

2020ツール・ド・フランス開幕まであと2カ月。取材申請は「2019年」のままで、各国メディアも戸惑うばかりだろう。主催者ASOは1年近くにわたる準備態勢を1から再構築することに相当の労力を支払っている渦中であることが想像でき、実行力のある彼らのことだから結果的には2020ツール・ド・フランス開催を実現することを切に期待したい。ただしそのレースは異例の雰囲気となりそうだ。


フランス観光開発機構カロリーヌ・ルブーシェ総裁のメッセージ

「6月15日以降、フランスは再び欧州からの旅行者を受け入れます。これはすべての旅行業従事者にとってこのうえない喜びです。さらに7月1日以降は欧州以遠のいくつかの国からも、フランス国内のホテル、キャンピング場、レストラン、美術館や博物館、観光地でお客様をお迎えできるようになります(国境再開はその国の衛生状況によって決まるのですが)。必要な対策が講じられたことでフランスの衛生状況は好ましい形で改善しており、旅行業関係者は政府が認可した衛生マニュアルを遵守しながらお客様の安全に必要なあらゆる措置をとっております。とはいえバカンスの雰囲気とフランス流ライフスタイルを忘れぬこともしっかり心がけておりますのでご安心ください」

🇫🇷ツール・ド・フランス2020特集サイト
🇫🇷ツール・ド・フランス公式サイト

イネオスはツール・ド・フランス欠場も…感染リスクと経済的価値観の再考

英国のイネオスを率いるデイブ・ブレイルズフォード監督は、衛生状態が保証されない場合、8月29日から9月20日までの日程で延期開催されるツール・ド・フランスに出場しない可能性があると語った。英国の日刊紙ザ・ガーディアンのインタビューに答えた。

マイヨジョーヌのベルナルをイネオス勢がガードする ©ASO Pauline BALLET

チームのゼネラルマネージャーであるブレイルズフォードは、新型コロナウイルス感染を阻止するあらゆる健康対策が主催者によって提供されなければ、チームはツール・ド・フランスに出場しないとした。

「ツール・ド・フランスに参加することはうれしいが、不参加が望ましいと判断した場合、我々はレースを欠場する権利を行使する」という。新型コロナウイルス流行当初に開催されたパリ〜ニースでは出場を見送っていて、「状況を注意深く監視したい」としている。

「世界は今スポーツを必要とせず、医師や看護師こそが必要。サイクリング不足で死んだ人はいない」

タイムズのインタビューでブレイルズフォード監督は、「このパンデミックは必然的にプロの自転車チームが運営する現在の経済モデルに影響を与え、その考え方を変えなければならない」と説明している。

「プロスポーツが進化したことは幸運だったが、この不確実な時代に謙虚さを持つことは悪いことではない」とブレイルズフォード監督。

「世界は今スポーツを必要としない、それは医師や看護師を必要とします。サイクリング不足で死んだ人はいない」

●ザ・ガーディアンの記事
🇫🇷ツール・ド・フランス2020の特集サイト