クスがブエルタ・ア・エスパーニャ初優勝…ユンボ・ビスマ勢がグランツール全制覇

第78回ブエルタ・ア・エスパーニャは最終日となる2023年9月17日、サルスエラ競馬場〜マドリード間の101.5kmで第21ステージが行われ、ユンボ・ビスマのセップ・クス(米国)が初優勝した。総合2位はヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)、3位はプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)でユンボ・ビスマが表彰台を独占。

ユンボ・ビスマはグランツール全制覇をモチーフにした特製ジャージを着用した ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023

またログリッチは5月のジロ・デ・イタリア、ビンゲゴーは7月のツール・ド・フランス総合優勝者で、ユンボ・ビスマの所属選手がグランツール(三大ステージレース)で全勝。自転車競技史上初の快挙を達成した。

マドリードの最終ステージでグローブスが今大会3勝目 ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023

最終ステージの勝者はカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)で、今大会3勝目、大会通算4勝目。ポイント賞を獲得した。

左からポイント賞のグローブス、新人賞のアユソ、総合優勝のクス、山岳賞のエベネプール ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023

山岳賞はレムコ・エベネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)。新人賞はフアン・アユソ(スペイン、UAEエミレーツ)。チーム賞はユンボ・ビスマ。

アシスト役だったクスが歴史に名を刻む総合優勝を手に入れた ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023

たくさんの思い出と楽しい時間を過ごした(クス)

「今日はレース全体の中で最も苦しんだステージだったと思う。アングリルで苦しんだときよりも苦しんだ。だから今は終わってよかったと思っている。選手たちがアタックの準備をしているのを見たとき、速いステージになるだろうと感じていた」とクス。

チャンピオンバイクはサーベロ ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023

「ブエルタ・ア・エスパーニャで勝ったからといって、ボクは何も変わらないと思っていた。ボクはこれからもボクだとね。でも全然違っていた。この勝利は人生を変えるようなものだ。たくさんの楽しい思い出とともにこの経験を振り返ると思う。まだ感情に沈み込んでいるので、かなり時間がかかると思う。

セップ・クス ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023

さあ、盛大なお祝いだよ。家族、友人がここにいる。本当に素晴らしく特別なことになる。チームメートやスタッフと一緒に、ここまでの3週間の物語を語れることがうれしい。たくさんの思い出と楽しい時間を過ごしたからね」

マドリードの表彰台に登場したエベネプール ©Tommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2023
総合トップスリー、左から2位ビンゲゴー、1位クス、3位ログリッチのシャンパンファイト ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023
チーム優勝も手中にしたユンボ・ビスマはチームスタッフも登壇して歓喜 ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023

●4賞ジャージ
マイヨロホ(個人総合成績)セップ・クス(米国、ユンボ・ビスマ)
マイヨベルデ(ポイント賞)カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨルナレス(山岳賞)レムコ・エベネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
□マイヨブランコ(新人賞)フアン・アユソ(スペイン、UAEエミレーツ)

ツール・ド・フランスのビンゲゴー、ブエルタ・ア・エスパーニャのクス、ジロ・デ・イタリアのログリッチ ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023

第20ステージにもどる

ログリッチV、ビンゲゴーがクスに8秒差に迫る【ブエルタ・ア・エスパーニャ】

第78回ブエルタ・ア・エスパーニャは2023年9月13日、リバデセジャ〜アングリル峠間の124.5kmで第17ステージが行われ、ユンボ・ビスマのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)とヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)がワンツーフィニッシュ。ログリッチは今大会2勝目、大会通算12勝目。

アングリルを制したログリッチ、同タイムでフィニッシュしたビンゲゴー ©Tommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2023

チームメートで総合1位のセップ・クス(米国)は19秒遅れの区間3位でゴール。首位を守ったクスと総合2位ビンゲゴーとの差はそれぞれが獲得したボーナスタイムを加味して29秒から8秒になった。

29歳の誕生日をスタート前に祝福されるクス ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023

複雑だけどクスには勝利を信じて戦えと伝えた(ログリッチ)

「年を重ねると少しずつよくなっているといつも感じている。前回の2020年はこのアングリルでマイヨロホを失ったけど、それよりもずっといい結果だった」とログリッチ。

ビンゲゴーやログリッチがメイン集団の前方でチャンスを狙う ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023

「あまり戦術的ではなかった。最後の登りではバーレーンビクトリアスのペースに任せた。彼らは十分に速く進んでいた。ペースが少し落ちたと感じた瞬間にアタックした。私が行ったポイントは、とてもきつくて、とても急なところだった。それから頂上までは自分のペースで走った」

「セップ・クスとは話した。複雑な気分なのはわかっているが、これほど急な登りでは誰もができるだけ早く登って苦しみを終わりにしたい。私は彼にこう言った。戦い続け、勝利を信じ続けよう。君ならできるよ」。

2つの峠でトップ通過し山岳ポイントを獲得したエベネプールが後方から追ってきた有力選手らを確認 ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023

ゴールしたときはジャージをなくしたのかと思った(クス)

「ゴールしたときはジャージをなくしたのかと思った。でも上りで全力を尽くしたので、悲しくはなかった。ジャージがまだあると聞いたときは少し驚いた」とクス。

「今日は奇妙な気分だったけど、悪い意味ではない、2人の強力なチームメイトがいて、その友人たちとまた1日を過ごすことができた。アングリルで要したのと同じくらいいい時間を過ごせたと思う」

19秒遅れの3位クス、4位はミケル・ランダ ©Tommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2023

「でもクレイジーな日だ。上りの途中で、ビンゲゴーが私に言った。キミは勝つつもりだ。ボクも同じだ。だったら行こう! プリモシュは上りでとても調子がよくて、素晴らしい走りををしていた。できるだけ長く彼についていって、遅れをを最小限に抑えようとした。

チームは1-2-3。ランダはおそらくボクよりも表彰台の座に値するだろうが、マイヨロホ争いで3着のボーナスタイムを狙う必要があった。一番楽しいことをして過ごしたので、とても幸せな誕生日だった」

クスはミケル・ランダ(左)とともに19秒遅れでゴール ©Tommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2023
ログリッチがテレマーク姿勢を決めた ©Tommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2023

●4賞ジャージ
マイヨロホ(個人総合成績)セップ・クス(米国、ユンボ・ビスマ)
マイヨベルデ(ポイント賞)カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨルナレス(山岳賞)レムコ・エベネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
□マイヨブランコ(新人賞)フアン・アユソ(スペイン、UAEエミレーツ)

ジョエル・ニコラウがアングリル峠でファンサービス ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023

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ビンゲゴー、クス、ログリッチが上位独占【ブエルタ・ア・エスパーニャ】

第78回ブエルタ・ア・エスパーニャは2023年9月8日、スペインのフォルミガル・ウエスカラマジアからフランスのツールマレー峠までの135kmで第13ステージが行われ、ユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)が独走勝利。

ビンゲゴーがツールマレー峠で独走勝利 ©Tommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2023

ユンボ・ビスマ勢は首位のセップ・クス(米国)が30秒遅れの区間2位、総合4位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)が33秒遅れの区間3位と独占。3連覇を狙ったスーダル・クイックステップのレムコ・エベネプール(ベルギー)は27分05秒も遅れ、総合優勝争いから陥落した。

ダミアノ・カルーゾのペースに食らいつくクス(左) ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023

最難関のこの日のステージを終えて、首位はチームのアシスト役だったクス、1分37秒遅れの総合2位にログリッチ、同44秒遅れの3位にビンゲゴー。

ツール・ド・フランス2勝のビンゲゴーがアタック ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023

娘の誕生日に勝つことができてとてもうれしい(ビンゲゴー)

「この日じゃなければダメだったので、本当にうれしい。今日は娘フリーダの誕生日で、彼女のために勝ちたかった」とビンゲゴー。

「チームの計画は、総合優勝を争うライバルからタイムを奪えるかどうかを確認することだった。それが実現できたので誇りに思う。ステージと総合成績で1-2-3は思ってた以上の結果となった」

ブエルタ・ア・エスパーニャ3勝のログリッチがマイヨロホを着るクスをアシストする ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023

チームの3人とも、お互いのために走っている(クス)

「ヨナスが勝利のボトルをプレゼントしてくれるのはとてもうれしいことだけど、正直に言うと、ヨナスもプリモシュも、レースを通して多くのアドバイスと自信を与えてくれた。彼らもボクを信じてくれているのがうれしい」とクス。

「時々だけど、ボクたちはみな、お互いのためにそこにいる。それが最も重要だと思う。ログリッチがやったように、秒数を稼ぐために努力するのは決して悪いことではない。いいポジションにいれば、それを狙うのは簡単だ。明日はさらに差が大きくなるはずだけど、それもいいことだよ。明日は守備か攻撃か、今言うのは難しい。まだチームには3人が上位にいる。自分の気持ちを見極める必要がある」

ツールマレー峠。アシスト役のロベルト・ヘーシンクがフィニッシュ ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023
ツールマレー峠を上るヒュー・カーシー ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023
セップ・クスがスパート。エンリク・マスが追走 ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023
ツールマレー峠で区間2位に入ったセップ・クス ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023
エイネルアウグスト・ルビオ ©Tommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2023

●4賞ジャージ
マイヨロホ(個人総合成績)セップ・クス(米国、ユンボ・ビスマ)
マイヨベルデ(ポイント賞)カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨルナレス(山岳賞)ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)
□マイヨブランコ(新人賞)フアン・アユソ(スペイン、UAEエミレーツ)

ツールマレー峠 ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023

第12ステージにもどる⏪    ⏩第14ステージにすすむ

ログリッチ区間V、首位はアシスト役のクスに【ブエルタ・ア・エスパーニャ】

第78回ブエルタ・ア・エスパーニャは2023年9月2日、デニア〜ショレトデカティ間の165kmで第8ステージが行われ、ユンボ・ビスマのプリモシュ・ログリッチがスーダル・クイックステップのレムコ・エベネプール(ベルギー)ら精鋭を抑えて優勝。大会通算11勝目を飾った。

精鋭たちのゴール勝負を制したログリッチ ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023

総合成績では、8秒遅れの2位につけていたセップ・クス(米国、ユンボ・ビスマ)が首位に。グルパマFDJのレニー・マルティネス(フランス)からマイヨロホを奪った。

2023ブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージ ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023
マイヨロホのマルティネス ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023
2023ブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージ ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023
エベネプール、ログリッチ、ビンゲゴー ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023
ログリッチ、エベネプールに続いて3位に入ったフアン・アユソ ©Rafa Gomez/SprintCyclingAgency©2023
これまでアシストを務めてきたセップ・クスが初めてのマイヨロホ ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023

●4賞ジャージ
マイヨロホ(個人総合成績)セップ・クス(米国、ユンボ・ビスマ)
マイヨベルデ(ポイント賞)カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨルナレス(山岳賞)エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ロット・デスティニー)
□マイヨブランコ(新人賞)レニー・マルティネス(フランス、グルパマFDJ)

スペインチャンピオンのオイエル・ラスカノ ©Luis Angel Gomez/SprintCyclingAgency©2023

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ログリッチがジロ・デ・イタリア初優勝…最終日前日に逆転

第106回ジロ・デ・イタリアが5月6日から28日まで開催され、ユンボ・ビスマのプリモシュ・ログリッチが最終日前日の個人タイムトライアルで逆転。スロベニア選手として初優勝した。緊急出場の新城幸也(バーレーン・ビクトリアス)はチーム優勝に貢献した。

マリアローザのログリッチ ©Fabio Ferrari/LaPresse

ローマを発着とする距離126kmの第21ステージはゴールスプリント勝負となり、アスタナ・カザクスタンチームのマーク・カヴェンディッシュ(英国)が優勝した。2位はトレック・セガフレードのアレックス・キルシュ(ルクセンブルク)、3位はグリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネのフィリッポ・フィオレッリ(イタリア)。

新城幸也を擁するバーレーン・ヴィクトリアスがチーム優勝 ©Massimo Paolone/LaPresse

全23日間の長丁場でスロベニア選手として初の総合優勝を達成

ヨーロッパ大陸出身の選手が総合優勝したのは2017年のトム・デュムラン(オランダ)以来となる。スロベニアはイタリアと接する国ながら、ステージ初優勝は10年前のルカ・メスゲツ。ここ10年でロードレースの強豪国の仲間入りを果たしたが、同国の自転車ロード界を牽引してきたのはもちろんログリッチだ。

ログリッチはツール・ド・フランスこそ勝っていないが、ブエルタ・ア・エスパーニャ3連覇(2019、2020、2021)に続くグランツール制覇を達成した。

「ローマの街を走るのは本当に楽しかったけど、ジロ・デ・イタリアで総合優勝することの意味をまだ理解できていなかった」とゴール直後にログリッチは語っている。

「昨日起こったことの後、私は自分の感情を封じ込めようとした。ローマは壮観な街だ。すべての勝利は特別であり、この勝利を獲得できたことに感謝している。それは私の人生の残りの間もずっと心にとどまるはずだ」

「昨日のタイムトライアルで優勝した後、とても多くの感情があふれてきた。最終日のローマは初めてだった。景色は素晴らしい。総合1位というこのポジションで歴史の一部になれたことをうれしく思いし、関係者全員に心から感謝したい。すべてのグランツールはチャレンジだ。ジロ・デ・イタリアでの勝利をツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャと比較することはできない。今年はジロ・デ・イタリアを狙っていた。もっと簡単に勝てたらいいのにと思うが、私のよき友人であるゲラント・トーマスと戦うことができて光栄だった。ここで彼を倒したからといって、私たちの関係に影響を与えることはないよ」(ログリッチ)

トーマスと健闘をたたえあうログリッチ ©Massimo Paolone/LaPresse

最終ステージの舞台はイタリアの首都ローマだ。ジロ・デ・イタリアはツール・ド・フランスとは異なり、最終到着地が固定されていない。そのためローマが最終ステージとなるのは今回で5回目。ローマがステージのゴールとなるのは49回目。

コースはローマ郊外を出発した後、一路海へ。そこからUターンしてローマ市街地の13.6km特設サーキットを6周回してフィナーレとなる。レースは平坦ステージ特有のゴールスプリント勝負となり、アスタナ・カザクスタンチームのマーク・カヴェンディッシュ(英国)が優勝した。2位はトレック・セガフレードのアレックス・キルシュ(ルクセンブルク)、3位はグリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネのフィリッポ・フィオレッリ(イタリア)。

最終ステージのローマはカヴェンディッシュが優勝 ©LaPresse

カヴェンディッシュにとっては2023シーズン初優勝。そしてこの大会の休息日に今季限りでの引退を表明していて、ジロ・デ・イタリアでステージ優勝するラストチャンスでもあった。

大会通算17勝目であり、38歳と7日でのステージ優勝は、2015年にパオロ・ティラロンゴが樹立した37歳10カ月9日を上回る最年長記録となった。カヴェンディッシュが初勝利したのは2008年で、この日の最後の勝利との月日はなんと15年と15日。ジーノ・バルタリが1935年から1950年に記録した15年と9日という快記録も更新した。

「とても幸せだし、信じられないような1日だった。私のチームメイトは素晴らしい仕事をした。私の最初の勝利は2008年で、再び勝者の位置に立ったことは信じられないほど。ゲラント・トーマスをはじめ、フィニッシュ後に多くの同僚や友人が私のために喜んでいるのを見るのはとてもうれしかった」とカヴェンディッシュ。

「どんな勝利も自信が後押しする。今回もそうだ。私はゲラント・トーマスと冗談を言った。25年間、彼は私の親友で特別の存在だ。今日のように幸せな気分になれる日はないと思う。イタリアでのレースキャリアは私の中で大きな部分を占めてき。それだけにジロ・デ・イタリアの最終ステージで優勝できたのは素晴らしいことだ。この記憶は永遠にとどまると思う」

総合2位は14秒遅れでゲラント・トーマス(英国、イネオス・グレナディアーズ)。

「私の仕事はすでに終わっていたので、フィナーレを締めくくるマーク・カヴェンディッシュを見ていた。彼は古い仲間で、私は彼が勝つだろうと予測していた」

「今回のジロ・デ・イタリアに勝てなかったのは痛い。プリモシュがピンク色に彩られているのを見て、それは私だったかもしれないと思った。フィリッポ・ガンナ、テイオ・ゲイガンハート、パヴェル・シヴァコフを失ったにもかかわらず、チームとしてのレースをしたことは今でも非常に誇りに思っていて、私たちは力を合わせてうまく走り続けた。ライダーだけでなく、誰もが私を100%サポートしてくれた。それは信じられないほどのチームの努力だった」(トーマス)

総合3位はジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)。アルメイダはヤング・ライダー賞も受賞した。

新人賞1位、総合3位のアルメイダ ©Fabio Ferrari/LaPresse

「グランツールで初めてのトップ3入りだが、2人のグランツール優勝者と一緒にステージに立つのはとても特別なことだ。彼らは非常に多くの経験を持っており、とてもいい走りをした。素直に喜びたい。年齢的にヤング・ライダー賞を獲得する最後のチャンスだった。それを獲得できたのはうれしいけど、もっと上を目指したい。私の目標は常に総合成績だ。改善の余地はあると確信している。いつかジロ・デ・イタリアには戻ってくるけど、来年かそれ以降になるかは分からない」(アルメイダ)

ポイント賞は新城幸也が所属するバーレーン・ヴィクトリアスのジョナサン・ミラン(イタリア)。第2ステージのスプリント勝負で優勝し、ここでポイント賞ジャージを獲得すると、20ステージにわたって一度も手放すことなくローマに凱旋した。22歳による受賞は1979年のジュゼッペ・サロンニに次ぐ若さとなった。

ポイント賞のミラン ©Fabio Ferrari/LaPresse

「僕にとってもチームにとっても、素晴らしいジロ・デ・イタリアだった。私はマリア・チクラミーノに本当に満足している。今日はいい気分を味わいたいと思っていたけど、スプリントのために最善を尽くした。このジロ・デ・イタリアの間に多くの間違いを犯したので、その状況を改善したい。将来的にもっとうまくやることを望んでいる」(ミラン)

山岳賞はグルパマ・エフデジのティボー・ピノ(フランス)。区間2位2回とステージ勝利こそ手中にできなかったが、序盤戦から山岳賞ジャージ争いに積極参戦。ドロミテ山塊が舞台となった第18ステージで三たび山岳賞ジャージ獲得をすると、そのまま山岳王となった。

山岳賞のピノ ©Fabio Ferrari/LaPresse

「僕の当初の目標はステージ優勝だったけど、レースの展開は違った。総合成績のために動き、そして山岳賞ジャージを獲得するという最高の結果でフィナーレを迎えた。複数の目標を追いかけるのは決して簡単ではない。私は今回のジロ・デ・イタリアでやったことを誇りに思っている」(ピノ)

バーレーン・ヴィクトリアスの新城は、大会直前に参戦予定だった選手がコロナ罹患し、急きょ代替出場した。ポイント賞ジャージを着用するミランをアシストし、チーム賞1位を下支えする走りを全ステージにわたって見せた。

新城の総合成績は5時間08分37秒遅れの122位。ジロ・デ・イタリアは5度の出場で5回目の完走。ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャを加えた三大大会は16回出場で全完走という偉業を達成した。

ローマでカヴェンディッシュが優勝 ©LaPresse

ステージ優勝者は合計19人にもなり、20人だった2000年と2010年に続く記録。13選手が大会初優勝を記録し、ベテラン勢の老練なマリア・ローザ争いとは別の将来性のある走りが随所に見られた。

2023ジロ・デ・イタリア総合優勝のログリッチ ©LaPresse

●4賞ジャージ
マリアローザ(個人総合成績)プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
マリアチクラミーノ(ポイント賞)ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
マリアアッズーラ(山岳賞)ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
□マリアビアンカ(新人賞)ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)

第20ステージにもどる≪≪

マリアローザのログリッチとユンボ・ヴィスマのチームメート ©LaPresse

ログリッチが最終日前日に逆転してマリアローザ…ジロ・デ・イタリア

第106回ジロ・デ・イタリアは5月27日、タルビジオ〜モンテルッサーリ間の18.6kmで第20ステージとして個人タイムトライアルが行われ、26秒遅れの総合2位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がトップタイムで優勝。大会通算4勝目。

スロベニア国旗がログリッチを後押しする ©Marco Alpozzi/LaPresse

首位ゲラント・トーマス(英国、イネオス・グレナディアーズ)は40秒遅れの2位。3位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)は42秒遅れの3位。その結果、ログリッチが総合成績でトーマスを逆転。14秒差をつけてマリアローザを初めて獲得した。

前半の平坦路から上りに入る際に自転車を交換するログリッチ ©/LaPresse

ジャンプ選手時代にジュニア世界一になった思い出深い街で

タルヴィーズィオはイタリアの最も北東部に位置していて、ログリッチの生まれ育ったスロベニアの国境まで数kmほど。16年前の2007年、スキージャンプ競技の世界選手権がこの地で開催され、当時ジャンプのスロベニア代表だったログリッチがジュニア部門で優勝した場所でもある。コース沿道にはログリッチを声援するファンが押し寄せたのは言うまでもない。

第20ステージは今大会3度目の個人タイムトライアル。距離18.6kmで、標高752mから1766mまで上り詰める独特のヒルクライムだ。11km地点までは平坦だが、そこから一気に上りが始まる。そのため選手たちはスタート台から乗っていたタイムトライアル専用バイクから、ドロップハンドル形状のノーマルバイクに乗り換える作戦を取った。

グランツール最終日前日に設定されたヒルクライムタイムトライアル。ログリッチには忘れられない戦いがある。2020ツール・ド・フランス、ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユで行われた第20ステージだ。

エガン・ベルナルと激しい首位争いを展開していたログリッチは、同胞タデイ・ポガチャルがツール・ド・フランス初勝利した第9ステージで念願の首位に。第19ステージまでマイヨ・ジョーヌを着用し、初制覇を懸けて得意とする個人タイムトライアルに挑んだ。総合2位ポガチャルとの差は57秒あった。

ところがポガチャルの信じられない激走にあって、まさかの首位陥落。この日終わって59秒遅れの総合2位となり、ツール・ド・フランスの初タイトルを取り逃してしまった。そのときと今回は立場が異なった。追われるのはトーマス。ログリッチは追う立場だった。

最後から2番目に登場したログリッチは、この種目の東京五輪金メダリストでもある。3分前にスタートしたのは前走者がヤング・ライダー賞1位のジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)。アルメイダは最終日ローマでの表彰台はもちろん、マリア・ローザ獲得のチャンスもあり、中間計測ではトップタイム。

しかしこの日はログリッチがそれを上回る走りを見せた。上りに入って軽量バイクに乗り換えて軽快なテンポでログリッチが走った。トーマスとの前日までのタイム差26秒を上回ることがターゲットだった。

最終走者、マリアローザのトーマスが苦戦 ©Fabio Ferrari/LaPresse

ドラマがあった。上り坂の最も急な部分でログリッチのチェーンが脱落した。

「チェーンが落ちたが、自分で元に戻した。すべてを失うこともあったかもしれないが、それはレースの一部だった」

バイクで追走していたメカニックと沿道に居合わせた観客が、あまりの急坂でペダルを漕ぎ出せないでいたログリッチのお尻を押して再スタートをサポート。それは一瞬の出来事だった。

「チェーンが落ちたので、それを元に戻す必要があったけど、少しだけフリーな休息を与えてくれた。リズムを取り戻して走ることに集中しなくちゃいけなかったが、その余力は残っていた。でもリスタートする場所がとても急だったので、誰かが私を押すためにそこにいたのは幸運だった」

ログリッチはそれまでトップタイムのアルメイダを42秒も上回るタイムでゴール。そして最終走者トーマスがログリッチから40秒遅れた。その結果、ログリッチが総合成績でトーマスに14秒差をつけてこの大会で初めて首位に立つことになった。

「素晴らしい気分だ。信じられない。観客は私にプラスアルファのワットを与えてくれ、レースの雰囲気とエネルギーを楽しんだ。あと1日だね。最終日のコースは少しテクニカルなので、フィニッシュするまでレースは終わっていないと考えるのがよさそうだ」

ゲラント・トーマス、マリアローザを失った ©Marco Alpozzi/LaPresse

ログリッチのジロ・デ・イタリア区間優勝はこれで4回目だが、すべて個人タイムトライアルだ。2016年の第9ステージで初勝利。第1ステージではジャイアント・アルペシンのトム・デュムラン(オランダ)にコンマ1秒の僅差で2位になっていた。

当時のチーム名はロットNLユンボで、現在もチームメートであるステフェン・クライスヴァイクのアシスト役だった。クライスヴァイクはその大会の第14ステージでマリアローザを獲得。しかし第19ステージのフランス国境アニェッロ峠からの下り坂で落車。4分54秒も遅れ、首位を陥落した。傷だらけでゴールすると骨折の疑いがあるためブリアンソンの病院に直行した。

2016年のログリッチはアシストとして参加し、最終的に総合58位だった。

2019年ジロ・デ・イタリアは初日の個人タイムトライアルでログリッチが優勝し、マリアローザを着用した。第6ステージで首位を明け渡したが、第9ステージの個人タイムトライアルでも優勝。一時は総合優勝するリチャル・カラパスまで7秒差の総合2位に詰め寄っている。

最終的にログリッチは総合3位となり、その年の秋に開催されたブエルタ・ア・エスパーニャで初めての総合優勝を達成している。

「今回のジロ・デ・イタリアでの2回目のクラッシュからまだ5日しか経過していない。まだ少し影響はあったが、戦い続けた。痛みはあるけど、今日は勝つための脚があり、うまくいった。沿道の観客のおかげでできた。すべての人々のサポートを決して忘れないだろう。みんなが応援してくれているのを見て、鳥肌が立ち、涙が浮かんだ。私は結果をあまり気にしないようにした。ここまできた選手として信じられないほど誇りを感じている」

首位と総合2位の差はわずかに14秒だが、ジロ・デ・イタリアにはさらに僅差の記録が多い。1948年のフィオレンツォ・マーニとエツィオ・チェッキの差は11秒、1974年のエディ・メルクスとジャンバティスタ・バロンケッリとの差は12秒、そして1955年のマーニとファウスト・コッピとの差は13秒だ。

最終日前日にマリアローザを獲得したログリッチ ©Fabio Ferrari/LaPresse

バーレーン・ヴィクトリアスの新城幸也は、全体の4番目でスタート。上りのタイムトライアルは得意としないので、10分54秒遅れながらフィニッシュ。第106回ジロ・デ・イタリアの完走をほぼ確実にした。総合成績は5時間19分06秒遅れの122位。

バーレーン・ヴィクトリアスはチーム賞部門で2位イネオス・グレナディアーズに16分22秒の大差をつけていて、翌日の最終日で総合チーム賞を獲得するのは間違いなくなった。

チームメートのジョナサン・ミラン(イタリア)は大会2日目に区間勝利して獲得したポイント賞ジャージを20区間守り抜いている。

山岳賞1位はティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)で、最終日のローマにゴールさえすれば山岳王が確定する。

逆転優勝に王手をかけた地は、スキージャンプのジュニア代表時代にログリッチが勝ったところだ ©Marco Alpozzi/LaPresse

●4賞ジャージ
マリアローザ(個人総合成績)プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
マリアチクラミーノ(ポイント賞)ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
マリアアッズーラ(山岳賞)ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
□マリアビアンカ(新人賞)ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)

大会2日目からポイント賞ジャージを着るミランがそれを守った ©LaPresse
山岳賞のティボー・ピノ。最終日のローマにゴールさえすれば山岳王になる ©LaPresse
新人賞1位、総合3位のアルメイダ ©Fabio Ferrari/LaPresse

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