垣田真穂・池田瑞紀…パリ五輪そしてその先のロス五輪を照準に

日本自転車界の歴史が変わるかもしれない。愛媛・松山学院高の垣田真穂と福岡・祐誠高の池田瑞紀。ともに高校3年の18歳で、福岡県のタレント発掘事業で自転車競技の魅力にハマった。ジュニア日本記録を垣田が塗り替え、池田が更新。最大のライバルにして大の仲良し。ペアを組んだジュニア世界選手権では世界2位。パリ五輪はトラック出場を、そしてロサンゼルス五輪でロード金メダル獲得を目指す。

池田瑞紀(左)と垣田真穂。11月6日にさいたま新都心で開催されたツール・ド・フランスさいたまに、五輪強化指定選手である2人はジュニア女子日本代表として参戦した

小さいころからの親友は世界レベルで最大のライバル

幼いころからの親友だという。福岡県北九州市出身の垣田はサッカー、同大野城市の池田はバスケットボールに熱中していた。転機は、各種スポーツにおける適性を見出してその才能を育成・強化する福岡県のスポーツ選手発掘事業だ。

「競輪場でブレーキのない自転車に初めて乗りましたが、そのスピードにビックリ。レスリングと自転車で迷ったけど、先輩からの助言で他競技より続けられる自転車を最終的に選びました」と池田は言う。

垣田も同時期に参加。トラック用自転車は怖かったというが、自分に向いていることを感じた。地元に自転車部を持つ高校がなく、ロード練習を主に取り入れている松山学院に進学した。「自転車で強くなりたいという気持ちがあったので、一人で行くことは問題なかったです」という。

そこから垣田の快進撃が始まる。1年生の全国高校選抜ではロードレースなど出場3種目で優勝。さらにインターハイ3冠を含む女子8冠。中でも2000m個人パシュートでジュニア日本新記録を叩き出し、それを自身で更新していった。

スピードに加え上りの強さにも定評があり、9月にオーストラリアで開催された世界選手権のジュニ ア女子ロードで5位になった垣田真穂

ところが2022年3月の全国高校選抜。同種目決勝は池田との1対1の勝負となった。垣田は連戦連勝をここで止められた。勢いに乗った池田は6月のアジア選手権で垣田の日本記録を上回る2分23秒685で優勝。それが現在のジュニア日本記録だ。池田は8月のインターハイでも優勝した。

「悔しかったけど、一度負けたことで勝ち続けていたプレッシャーから解放され、頑張ろうと思えた。今は自転車に乗ることを楽しめています」と垣田。

ライバルとして互いを尊敬している。ペアを組んで出場したジュニア世界選手権のマディソンでは2位という快挙。さらに垣田は9月の世界選手権ロードにジュニア代表として派遣され、5位に入って日本の関係者を驚かせる。

しかも、「2位との差がわずかだったので悔しい。届きそうという実感」とコメント。一方でレベルの違いも感じ、とりわけレース中の密集度に驚き、海外でトップと競り合うことの大切さも悟ったという。

コロナ禍で海外遠征が少なかっ た世代にとって、さいたまでは 「大観衆が詰めかける中を走ることができてとてもいい経験になった」という池田瑞紀

最終目標は2028ロス五輪の女子ロードレース優勝

高校時代はトラックでの練習ばかりだった池田は「いろんな種目をやりたい」とこの先を見つめる。

「今後はロードにも目を向けたいと思いつつも、トラックにも強い魅力を感じている」。最終目標は2028ロス五輪。その前の2024パリ五輪では4人編成のチームパシュートに垣田とともに強化選手指定され、東京五輪で銀メダルを獲得した梶原悠未、内野艶和のエリート選手ともに五輪枠獲得を目指していく。

一方の垣田。「ロードレースが好きなので、ロードを頑張りたい。ただ五輪で金メダルを目標としたとき、その目標にはトラックの方が近いとは思う」

梶原がジュニア時代に記録したタイムはすでに超えている。明確なターゲットはロスの金。その目標が大きいだけに将来どの道を歩んでいくべきなのかはまだイメージできていない。「普段は仲いいけど、お互い高め合える存在です」と同じことを口にする。

2人は来春、都心部に本拠を置く名門大学にそろって進学する予定だ。

マディソン
*1チーム2人編成で交代しながら、あらかじめ設定された周回時の通過順位で得点を獲得していき、最終的な合計得点で順位を争う。五輪種目のひとつ。