60歳になっても記録は伸びる…東京マラソンに挑戦した2年半

コロナ禍により2年半にわたってラントレーニングを積むことができた東京マラソン。2023年3月5日、ついにスタートを切ることができ、初出場の2011年、そして前回の2019年のタイムを大幅に更新することができた。60歳になっても記録は伸びる。シニア世代の健康維持・増進のヒントになればと、やったこと・心がけたことをご紹介。

ツール・ド・フランス取材を無事に完走できる体力がほしい

ボクが体力増強を目的として走り始めたのは、1990年代の終わり頃。年齢としては30代後半のときでした。23日間の自転車レース、ツール・ド・フランスを1997年から全日程を単独で追いかける仕事を始めたのですがが、外国での慣れない長距離運転やホテルを転々とする暮らしなどで体力を消耗。終盤になると疲労困憊となり、もっと体力をつけなくちゃと痛感したからです。

こうして始めたのがランニングでした。おかげさまで、人生のライフスタイルともなったツール・ド・フランス取材は体力強化もさることながら、経験値や人脈なども追い風となり、年を追うごとに消耗することなく23日間を乗り切れるようになり、最終目的地のパリに凱旋することができています。

同時にマラソン練習の効果や魅力に気がつき、当初の目標とは別にアクティブな日々をこなすチャレンジとしてその後も深みにハマるが如き、もっと速く走るための試行錯誤を繰り返していきます。

東京マラソン初参戦は震災直前となる2011年2月27日。初応募によくあるビギナーズラックで当選し、ネットタイム5時間22分55秒でゴールしました。20代前半に日刊スポーツ河口湖マラソンに出場した経験があって、そこで記録した3時間48分を持ちタイムとして申告したので、Cブロックからのスタートでした。

そのときのネットタイムとグロスタイムの差はわずか2分59秒。このときは同じスタート地点に居並ぶエリートランナーに気後れして、Cブロックの最後方から走り出したのですが、号砲が鳴ってから3分弱でスタートラインを切ったことに。

持ちタイムは四半世紀前に記録したもので、しかも長くランニングは練習していませんでしたが、そのあと2大会のHブロック出走と比較すると走りやすく、ペースメークも全く違ったものなることを後述します。

初めて走った新宿や銀座の大通り。そこで感じた高揚感と途切れることのない沿道の声援。東京マラソンという特別のコースレイアウトに他のマラソン大会にはないものを感じました。その後も毎年応募していましたが、外れまくってようやく2019年大会で当選。

ところが2019年大会はまさかの冷雨に。優勝候補の大迫傑選手は途中で震えながらのリタイア。当時はまだ無名だった一山麻緒選手が我慢の走りで好記録ゴール。大迫選手と一山選手には、この悲惨な2019年をともに走ったということで一方的に親近感を持つことになります。

まだまだ続く東京マラソンとの関係

2020年は新型コロナウイルス感染拡大で、一般ランナーの参加ができなくなり、エリート選手だけのレースとなりました。このレースはスポーツ記者としてレースを取材する立場で現地入りし、一方的親近感のある大迫選手が2時間05分29秒の日本新記録でゴールする瞬間を見届けました。

自分自身のマラソンとしては2021年に3度目の当選を果たし、即日のうちに参加料振り込み。しかしながらコロナ禍により開催延期を余儀なくされ、参加料全額返金・出場権利移行。さらに2022年には、自身の罹患で出場不可となり全額返金・出場権利移行。1大会の参加料で2年半もトレーニングを積めたことは幸運でしかありませんでした。

継続的練習により、体脂肪率が6%台となり、いくつかの試行錯誤によってタイムも向上していきます。すべては「モチベーション」に裏付けされた成果だと確信しています。

その道中ではマラソンの実力がなかなか向上せずに悩んだこともありましたが、誰でも参加できる市民10km大会に参加することにしてスピード練習を積んだおかげで、設定タイムを軽く走れるように。陸上競技経験のないボクにとってはこんな練習方法もあるんだなと目からウロコ。

いろんなことがわかりました。手首計測機器によるVO2MAXで数値を上げるには短い距離をハイペースで走れば簡単。メニューとしてそういう時期も必要ですが、鍛錬期には長距離をレースペースでこなさないと実力にはなりません。

取得データをぼんやり見ていると、レース日に向けたピーキングのやり方が分かってきたように感じました。たった10万円足らずのGPS機材で、無料アプリの支援を受けると一般レベルでもやり方とやる気が身につくはず。そして、ケガなく健康でスタートラインに立てるということだけで幸せです。

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60代は調整期の3週間で完全に疲れを取ることが大事

ラントレーニングと並行して行っている坐禅も効果を感じ、東京マラソンのトレーニングの一環としてとても有効だと実感しています。駅伝などで選手が大ブレーキを起こしてフラフラな状態になったとき、脱水症状が原因だと断言されがちですが、極度のストレスからパニック障害として脳に不当命令が伝達された可能性もありますよね。

それを回避する対策の一つとしてはやはり規則正しい呼吸を意識してそれに集中することで、坐禅で習得したものがそのままランニングに応用できると自覚しています。弓道もそんな気がしますが、こちらは核心に至っていません。

そんなことを考えながら坐禅をしていたので、まだまだ修行が足りません。そうそう。この日学習しました。ただし体脂肪率が低いカラダは警策で打たれるとものすごく痛いです。

東京マラソンを直前に控えて、なんの因果なのか最後の取材がゴールとなる丸の内の行幸、さらには最後の打ち合わせがスタート地点となる東京都議会棟でした。下見としてはバッチリでよかったのですが、マラソンまで1週間を切って膝裏の腱に疲れがたまって取れません。

「筋肉の疲労が取れてからも腱はダメージが残るんだよね」と、旧知の白戸太朗氏(プロトライアスリート&東京都議会議員)。レース2日前にお風呂に入りながらよくマッサージして、そして前日はしないことというアドバイスをいただき、それを実践したら当日は疲れが多少残るものの、痛みは完全に消えていました。

大会から3週間を切ってからは練習量を減らしたつもりですが、60歳という年齢は言われている以上に休まないといけません。これは最大の反省点でした。

3月3日は都庁を出て、東京マラソンの取材パスと出場選手としてのナンバーカードをもらうために東京ビッグサイトとその周辺へ。この瞬間がいつもワクワクします。

2019年はアウトドアのエキスポ会場で、かなりの雨で傘をさしながら歩くはめになり、「大会当日が晴れなら我慢」と自分に言い聞かせていましたが、大会当日はさらに冷たい雨になったという…。

自分の不運をこれほど呪ったことはありませんでした。ということで、2023年の目標は乾いた路面を短パン姿で走ることです。自己ベストを更新するとかぜいたくはこの時点で言わないことにしました。

さすがにゴールの撮影は間に合わないので大会提供写真を使いますが、日本人男女1位の共同記者会見に出席できるように早めにゴールすることを目標にしました。

40年前のベストは更新できなかったが、過去2回よりも大幅アップ

東京マラソンまでの2年半。モチベーションを切らさずに継続的な練習が積めました。自分史上最速。しかし、それをタイムに反映させるのが難しいのがマラソン。

スタートからスピードに乗れず我慢のレースとなってしまいました。いくつかある折り返し地点で大迫、一山、松田瑞生選手らを目撃したかったのですが、最後尾に近いスタートではすでにトップは相互通行のコースから消えていました。

前方のランナーをできるだけパスするために労力を使い、なかなかマイペースができず。そしてトイレに3回も立ち寄ってタイムロスも。前回の冷雨のときは5回ほど立ち寄りましたが、まさか今回も。膀胱は日頃から我慢すれば鍛えられると聞くので、このあたりのトレーニングも必要であると感じました。よる年波にはかなわず、思春期選手にはない悩みも多いんです。

フルマラソンはやっぱり厳しい。失意のうちに取材記者に転身。メディアIDと完走メダルのストラップが同じで、メディアセンターにメダルを下げていってしまい注意されました。ボクの記者席も指定されていましたが、あのAFPの前でした。ツール・ド・フランスなら考えられないですよね。