中西健児が100km逃げで存在をアピール…ツール・ド・コリア第4ステージ

キナンサイクリングが出場しているツール・ド・コリアは6月2日、第4ステージが旌善から忠州までの137.0kmで争われ、中西健児が100kmにわたって逃げ続け存在感をアピール。ジャイ・クロフォードはメイン集団でフィニッシュして総合順位を20位とした。キナンは翌日にソウルで開かれる最終第5ステージで、ステージ・総合でのUCIポイント獲得を目指す。

ツール・ド・コリア第4ステージ ©︎KINAN Cycling Team / Naoi HIRASAWA

韓国の東部に位置する高原地帯、旌善から南西に進路を取り、内陸部の都市・忠州へ向かうステージ。周回コースを使用する最終ステージ(65.0km)を除けば、今大会で最も短いラインレースとなった。山間部を進むコースだが、長短のアップダウンが絶え間なく続いた第2、3ステージに比べると平坦区間の多いプロフィールだ。

レース開始直後はなかなか逃げが決まらない展開だったが、28.6km地点のスプリントポイントを通過した直後にアタックがあり、中西がこれに反応。前日のチームミーティングで、チャンスがあれば逃げにトライしたいと話していた中西が、ねらい通りの動きを見せた。

このアタックで抜け出した6人が徐々にリードを広げ、さらにブリッジをかけた選手が合流。総合リーダーのセルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア)を擁するユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチームがメイン集団のコントロールを始め、7人の逃げ集団が容認された。中西は終盤に向けて脚を貯め、クロフォードと雨乞竜己はメイン集団内でレースを展開。前日はグルぺットで上りを越えた雨乞も、この日はメイン集団内の前方をキープし上りをこなしていった。

順調に逃げ続けた中西らの集団は、残り37km地点から始まるこのステージ唯一のカテゴリー山岳に、約3分半のリードをもって突入。上りに入ると同時に遅れる選手もいたが、中西は登坂力を活かし先頭集団内で頂上を目指した。先頭をキープしたい中西だったが、KOMを前に引き離され4位で頂上を通過。下りで前後の選手と合流し、追走を試みた。単独先頭に立ったのはジョセフ・コッパー(ニュージーランド、ベネロング スイスウェルネス サイクリングチーム)。4人で追走する中西らを寄せ付けず、メイン集団との差を3分以上キープしながら独走を続けた。

コッパーは追走集団もメイン集団も寄せ付けず、逃げ切りをほぼ確定的に。逆に追走にはメイン集団が迫っていた。表彰台をねらっていた中西だったが、残り約1.5kmで集団に吸収され逃げ切りならず。コッパーは独走勝利、メイン集団は2位争いとなった。

クロフォードはトップから2分30秒差、2位争いのメイン集団内でフィニッシュ。総合順位を順位を1つ上げて20位とした。中西は集団に捕まってからはゆっくりとフィニッシュ地点に戻り、4分38秒遅れの82位に。沿道の観客にボトルをプレゼントするファンサービスで歓声を浴びながら、逃げ切り目前に迫った価値あるレースを終えた。雨乞は残り15kmほどの最後の上りで遅れてしまったが、8分55秒遅れの83位でフィニッシュ。上りに耐え、スプリンター向けの最終ステージへ駒を進めた。

翌日はオリンピックパークをスタート・フィニッシュ地点にソウル市内を駆ける最終ステージ。ほぼ平坦のレイアウトで、最後はオリンピックパーク外周約5kmの周回コースを4周してフィニッシュする。キナンはUCIポイント圏内のジャイの総合成績、スプリンターの雨乞の上位進出を目指してコリアでの最終日に挑む。(Text:平澤尚威)

ツール・ド・コリア第4ステージ結果(137.0km)
1 ジョセフ・クーパー(ニュージーランド、ベネロング スイスウェルネス サイクリングチーム) 3時間12分36秒
2 ルカ・パチオーニ(イタリア、ウィリエール トリエスティーナ・セッレイタリア) +2分30秒
3 パク・ソンベク(韓国、KSPO ビアンキ アジアプロサイクリング) +2分30秒
4 ルーカス・セバスティアン・アエド(アルゼンチン、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム) +2分30秒
5 レイモンド・クレダー(オランダ、チームUKYO) +2分30秒
6 キム・ジョソク(韓国、ガーピョン サイクリングチーム) +2分30秒
31 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) +2分30秒
82 中西健児(KINAN Cycling Team) +4分38秒
83 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +8分55秒

個人総合時間
1 セルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム) 17時間38分32秒
2 ステパン・アスタフィエフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナ モータース) +28秒
3 マッテオ・ブザート(イタリア、ウィリエール トリエスティーナ・セッレイタリア) +37秒
4 アルテム・オヴェチキン(ロシア、トレンガヌ サイクリングチーム) +43秒
5 ベン・ペリー(カナダ、イスラエル サイクリングアカデミー) +1分42秒
6 ミヒケル・レイム(エストニア、イスラエル サイクリングアカデミー) +1分50秒
20 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) +2分0秒
47 中西健児(KINAN Cycling Team) +19分54秒
88 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +1時間2分52秒

ポイント賞
1 ルーカス・セバスティアン・アエド(アルゼンチン、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム) 46pts
28 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) 3pts

山岳賞
1 クォン・スンヨン(韓国、KSPO ビアンキ アジアプロサイクリング) 20pts
20 中西健児(KINAN Cycling Team) 1pts

チーム総合
1 ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム 52時間59分50秒
14 KINAN Cycling Team +1時間20分32秒

中西健児

中西健児のコメント
逃げが決まった時は、スプリントポイントを越えたあたりでペースが緩んで、何人か逃げているのが見えたのでブリッジをかけた。タイム差が開いてからは、終盤に勝負がかかるところで遅れないように脚を貯めることを考えていた。終盤、勝った選手とは1分差開いたけれど、4人でゴールまで行って上位3人に入れればと粘りながら走っていた。ラスト1.5kmくらいで集団につかまってしまった。UCI1クラスで逃げに入れたことはこれまでなかったので、それはよかったのかなと思う。けっこう大きなチャンスだったと思うが、どうやったら逃げられるかが今日わかったので、次のチャンスを掴めるようにやっていきたい。

雨乞竜己

雨乞竜己のコメント
最終ステージに3人残ったし狙うしかない。また中西選手の逃げが見られると思います(笑)。昨年の最終ステージを走った印象は“クレイジー”。みんなが狙っていると思うが、去年走った経験やそこからの1年で培ったものをぶつけたい。

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和歌山県と三重県にまたがる熊野地域で開催されているステージレース、ツール・ド・熊野は6月2日に第2ステージが行われた。この日は三重県熊野市と御浜町を舞台に、熊野の山岳コースをめぐる大会最難関のステージ。3つの山越えで争われたレースは序盤からサバイバル化。キナンサイクリングはサルバドール・グアルディオラの5位がチーム最上位。ステージ優勝と個人総合上位浮上を懸けて攻撃を仕掛けたキナン勢だったが、あと一歩のところで勝利に届かず。残る1日で上位進出にトライすることとなった。

ツール・ド・熊野第2ステージ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日、和歌山県新宮市で行われた第1ステージでは、レース途中の落車による影響でトンネル区間に立てられたフェンスが倒壊。復旧が不可能との判断から、レースは途中でキャンセルに。その後2周半のパレード走行を行って、地元の人たちや大会主催者に敬意を表した。総合成績についてはおおむね2日前のプロローグから引き継がれ、キナンでは中島康晴がトップから4秒差の個人総合25位につける。それ以外の選手も数秒差で続いており、チームが目指す個人総合優勝に向け、好ポジションにつけているといえる。なお、このトラブルにトマ・ルバが巻き込まれたが大きな影響はなく、残るステージも予定通り戦う。

着々と進行している大会は、いよいよ正念場を迎える。第2ステージは、109.3kmの本格山岳ステージ。大会の目玉でもある2級山岳「丸山千枚田」を通過後、一度下って、次に目指すは最大の難所である1級山岳・札立峠。その後の長い下りを経て、再び丸山千枚田へ。毎年2回目の丸山千枚田の上りで総合争いが最重要局面を迎えており、2018年も王座をねらう選手たちが激しく動くものと予想された。キナンとしても、クイーンステージに臨むにあたり、上位進出を果たすべくチーム力をフルに生かし戦うことを前夜のミーティングで確認した。

熊野市の中心部をパレード後に正式スタートが切られたレースは、早くからアタックの応酬。キナン勢は山本元喜がファーストアタックに反応するが、リードを奪うことはできない。その後も数人が前方をうかがっては集団が追いつく流れが繰り返されたが、5km地点を過ぎたあたりで9人の逃げグループが形成される。キナンからは中島が加わったほか、有力チームが確実に選手を送り込み、早くも各チームの思惑が見え隠れする。

この逃げグループに前回覇者のホセヴィセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ)が入ったこともあり、メイン集団は逃げグループをしばし射程圏内にとどめる。丸山千枚田の登坂1回目を目前に、キナン勢が集団前方を固め、ペーシングを開始した。

丸山千枚田1回目の登坂が始まると、キナン勢がコントロールする集団と逃げグループとのタイム差が縮まっていく。その勢いのまま、集団は総合優勝候補が含まれる追走グループへと変化。しかし、一気に人数が絞られたことや、このグループに選手を送り込んだチームの意図がそれぞれに異なることもあり、協調体制とはならない。後方から加わった選手も含め、追走グループは11人。この中にキナンからはルバ、マルコス・ガルシア、グアルディオラが入る。やがて迎えた札立峠の上りではトマがこのグループを牽引し、頂上を前に先頭に合流する。一方で、上りを進むにつれて登坂力の差が明白となり、新たな先頭グループが形成されることとなる。

こうした展開から数的優位な状況を作り出したいキナン勢だったが、ルバにチェーントラブルが発生。スピードを上げようとした際にチェーンロックさせてしまい、足止めを余儀なくされる。レースに復帰し前方を目指したが、追いつくことはかなわなかった。

札立峠の上りで1人が飛び出したが、頂上通過後の下りでとらえ、代わって中島がペースアップ。これをきっかけに、中島が他チームの選手たちの消耗をねらったアタックを繰り返す。キナン勢はルバの脱落こそあったものの、グアルディオラとガルシアを主要な選手たちがそろうグループに待機させ、次なる展開へと備える。

波状攻撃を展開した中島は、単独先頭で2回目の丸山千枚田へ。上りに入ると後続の動きも活性化。1人が飛び出すと、そのまま中島をパス。役割を果たした中島に代わり、グアルディオラとガルシアが勝負に出たいところだが、他選手の厳しいマークもあり、思うように追走態勢に入ることができない。頂上通過後、下りでもタイム差を縮めることができず、約20秒差のままフィニッシュまで約10kmとなった。

グアルディオラとガルシアを含む追走グループから、2名が立て続けにアタックしたが、キナン勢2人は続くことができない。主にガルシアがグループを牽引し、最終局面はグアルディオラの勝負強さに賭ける姿勢を見せたが、結果的に先行した3選手までは届かず。そのままステージ上位争いとなり、上り基調の最終局面を前方でこなしたグアルディオラは、このグループで2番手でフィニッシュ。ステージトップからは33秒差の5位。ガルシアは少し遅れてフィニッシュラインを通過し、ステージ8位で終えた。

このステージで総合成績が大幅にシャッフル。キナン勢もトップ10に2人送り込み、グアルディオラが総合タイム差45秒で5位につける。ガルシアは同じく57秒差の8位。そのほか、中島、新城、山本、ルバもフィニッシュして、6人全員で最終ステージへと駒を進めている。また、チーム総合では37秒差の2位としている。

第20回の記念大会として行われているツール・ド・熊野も、残すはあと1ステージ。クジラで有名な太地半島での最後の戦いが待ち受ける。2018年から周回後半に、道の駅「たいじ」前の国道42号線を数百メートル通過する新ルートを採用。1周10.5kmを9周回、パレード区間をのぞいて104.3kmで争われる。昨年のこのステージでは逃げ切りが決まったが、スプリント勝負になることも多く、スピードマンが主役となるチャンスのステージでもある。

キナンは個人・チームともに総合成績アップをかけた最後の1日となる。どちらも上位陣が僅差とあり、各チームが総攻撃を繰り出すことは間違いない。そうしたなかで、ホームチームとして“地の利”を生かすことができるか。この大会のために尽力してくれた多くの関係者の、日頃から応援してくれる人の思いも乗せて、チームは戦いへと挑む。

ツール・ド・熊野 第2ステージ結果(104.3km)
1 入部正太朗(シマノレーシング) 2時間45分52秒
2 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) +1秒
3 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +15秒
4 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +33秒
5 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team)
6 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +35秒
8 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +44秒
17 中島康晴(KINAN Cycling Team) +3分51秒
23 新城雄大(KINAN Cycling Team) +5分29秒
27 山本元喜(KINAN Cycling Team) +7分23秒
49 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +15分28秒

個人総合時間賞
1 入部正太朗(シマノレーシング) 2時間46分35秒
2 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) +7秒
3 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +25秒
4 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +44秒
5 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +45秒
6 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)
8 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +57秒
16 中島康晴(KINAN Cycling Team) +4分2秒
23 新城雄大(KINAN Cycling Team) +5分59秒
26 山本元喜(KINAN Cycling Team) +7分35秒
63 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +15分41秒

ポイント賞
1 入部正太朗(シマノレーシング) 25pts
5 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 12pts
10 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 8pts

山岳賞
1 マーク・デマール(オランダ、チームUKYO) 24pts
2 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 12pts
6 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 3pts

チーム総合
1 セントジョージコンチネンタル 8時間24分51秒
2 KINAN Cycling Team +37秒

サルバドール・グアルディオラ

サルバドール・グアルディオラのコメント
勝つことだけに集中して全力を尽くした。ツアー・オブ・ジャパンを経て、われわれはより強くなっているから、レースレベルが高いこの大会でも勝つチャンスは十分にあると感じていた。ただ、レースは勝つこともあれば負けてしまうことだってある。いまはとにかく、次の勝利に向かって気持ちを切り替えるしかない。明日は全員の力をそろえて勝ちにいく。私たちならできるし、成功すると信じている。

トマ・ルバ

トマ・ルバのコメント
マルコスやサルバドールとともに逃げていた9人を追う状況となり、札立峠の途中でスピードを上げようというタイミングでチェーンロックさせてしまった。約30秒足止めとなってしまい、そのまま前に追いつくことができなかった。もちろん残念ではあったが、チームに貢献できるよう気持ちを切り替えて、明日のステージを意識しながらフィニッシュを目指した。今日は戦術的なミスがあったことを認めなくてはならない。明日に向けて切り替えて、再び全員でトライしていく。サルバドールやマルコスの総合成績アップのチャンスにかけて走りたい。

中島康晴

中島康晴のコメント
(トップで登坂を開始した丸山千枚田2回目の上りについて)強い向かい風の影響もあって、もう少し逃げてチームメートにつなぎたかったが、それができなかったことが悔しい。それでも、地元のレースで多くの応援を背に受けて走ることができたのはうれしかった。今日は悔しい結果に終わったが、明日はまたチャンスがやってくると思う。最後までチーム一丸となって戦いたい。

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