このままでは2年後の東京五輪は厳しい…世界選手権エリート女子ロード

UCIロード世界選手権インスブルック・チロル大会は7日目となる9月29日(土)、近年人気が高まる女子エリートのロードレースで、クーフシュタインからインスブルックの周回コースを3周回する155.6km、合計獲得標高2413mのコースで開催された。48カ国から149選手が出走し、日本からは全日本チャンピオンの与那嶺恵理(ウィグル・ハイ5)、金子広美(イナーメ信濃山形)、唐見実世子(弱虫ペダルサイクリング)の3名が参戦し、与那嶺をエースとする作戦でスタートを切った。

エリート女子ロードを走る与那嶺恵理 © 2018 JCF

60km地点のグナーデンバルトの登りの前にコロンビアとポーランド、2名の逃げが形成され、登坂区間のふもとでは個人タイムトライアル覇者のアンヌミエク・ファンフレウテン(オランダ)が巻き込まれる落車が発生。登坂区間に向けてのペースアップと合わせて集団から遅れる選手が増え始め、落車の影響を受けた唐見もここで遅れてしまう。

金子は与那嶺とともにメイン集団前方でグナーデンバルトを登っていったが、頂上を前に失速。メイン集団も頂上ではいくつもの小集団に分断され、与那嶺は2つめの集団、約40番手で下り区間へと入った。その後の下り区間で小集団はまとまっていき、フィニッシュラインを過ぎて周回コースに入るときには、メイン集団は与那嶺を含む70名ほどとなり、新たに4名の逃げが形成された。

周回コースの登坂区間に差しかかると集団は活性化し、登坂区間もハイペースで進んだため、次々に選手が振るい落とされていった。ベストなコンディションではなかった与那嶺は、1周回目の登りから少しづつ遅れていった。

レースが大きく動いたのは2周回目の登坂区間。優勝候補であり、リオ五輪の金メダリストであるアンナ・ファンデルブレッゲン(オランダ)がメイン集団から追走を開始し、先行していた選手を追い抜いて単独で先頭に立った。フィニッシュまで約40kmを残してのアタックだったが、ファンデルブレッゲンに追いつける選手はなく、差を広げながら、最後は後続に3分42秒差の大差で悲願の世界チャンピオンに輝いた。

集団から遅れながらも、あきらめずに走り続けた与那嶺は、20分47秒遅れの79位でフィニッシュ。唐見は1周回完了時、金子は2周回目の山頂でリタイアとなり、完走者81名の厳しいレースだった。

エリート女子ロードの金子広美、与那嶺恵理、唐見実世子 © 2018 JCF

柿木孝之コーチのコメント
唐見と金子には、周回コース1周回目の山頂までなんとか集団に付いていくこと、1周目の頂上をゴールだと思って走り、それまで全力で与那嶺のサポートをしてもらう作戦だった。しかし、最初に唐見が落車の影響で遅れてしまった。落車したオランダ勢は力でメイン集団に追い付いたが、落車に巻き込まれたそれ以外の選手は全員そこで遅れてしまった。金子は周回コースに入る前の最初の坂でオールアウトし、失速。与那嶺をサポートしようとする気持ちから焦りが強く、また経験も足りていなかったために、無理する加減がわからなかった。金子の一つ前の集団まではメイン集団に追いついていたので、力を加減できていればと残念に思う。
与那嶺にとっては、本来なら得意なコースだったと思うが、1周回目で遅れるのは想定外のことで、コンディションの悪さがそのまま成績に出てしまった。周りにいる選手の顔ぶれをみても、いつもどおりのコンディションではなかったことがうかがえる。全体をみて、このままでは2年後の東京五輪は厳しく、現実を突きつけられた大会となった。女子はアンダー23カテゴリーがないこともあり、女子選手のジュニア、アンダー23カテゴリーからの一貫した育成環境も今後の課題になる。

美しいチロル地方を走るエリート女子ロード © Innsbruck-Tirol 2018 / BettiniPhoto

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