マルコス・ガルシアが逃げで積極的に展開…ジャパンカップ

アジア屈指のワンデーレースであるジャパンカップサイクルロードレースが10月21日、宇都宮市森林公園周回コースで行われた。キナンサイクリングは、スタート直後の古賀市林道の上りでアタックを決めたマルコス・ガルシアが逃げグループで展開。頂上に設けられた山岳ポイントを1位通過し、山岳賞を獲得した。また、チーム最上位はトマ・ルバの18位。優勝争いへはあと一歩届かず、ビッグタイトル獲得は来シーズン以降へと持ち越された。

山岳賞の表彰を受けるキナンのマルコス・ガルシア ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

19日のチームプレゼンテーションに始まり、20日には38.25kmで争われたクリテリウムに臨んだキナン。上位進出こそならなかったが、スプリント勝負までの選手間連携に手ごたえを得て、レースを終えている。

そして迎えたのが、アジア圏で開催されるワンデーレースとしては最上位のHCクラスに位置付けられる大会のメインレース。10.3kmのコースを14周回する144.2kmに、国内外の21チームが挑んだ。キナンは山本元喜、マルコス・ガルシア、山本大喜、サルバドール・グラルディオラ、トマ・ルバ、新城雄大の6選手が出走した。

レースのポイントとなるのは、標高差185mを一気に駆け上がる古賀志林道の登坂。特に終盤は、有力選手の攻撃が活発となる区間だ。また、登坂後のダウンヒルや平坦区間も見もので、上りで仕かけた選手たちと、それを追う後続選手たちとの激しい攻防が見られることが予想される。なお、3・6・9・12周回目の古賀志林道頂上には山岳ポイントが設定される。2017年は冷雨で周回数・レース距離が短縮された中で、ルバが山岳賞獲得1回を含む5位入賞。今回はそれを上回る好成績を目指した。

午前10時にスタートが切られると、すぐにやってくる古賀市林道で早速レースが動いた。オスカル・プジョル(スペイン、チームUKYO)のアタックにガルシアが反応。一気の動きに、あっという間に逃げグループが形作られる。さらに1人を加え、3人がレースをリードすることとなった。メイン集団は地元・宇都宮ブリッツェンがコントロール。先頭の3選手とのタイム差を約1分30秒として進行していく。

3周回目に入り、この日最初の山岳ポイントへ。頂上を1位通過した選手に山岳賞が贈られるが、これをガルシアが狙って動く。先に仕掛けたプジョルを追い、頂上目前でパス。トップでの頂上通過を果たし、山岳賞獲得が決定した。

その後も先頭交代のローテーションを繰り返し、快調に進んでいくガルシアら3選手。6周回目に設けられた2回目の山岳賞は、ともに逃げていたクーン・ボーマン(オランダ、ロットNLユンボ)が獲得。以降も態勢に変化はなく、着々と周回数を減らしていった。

レースの流れが変化したのは、9周回目。3回目の山岳賞を目指し飛び出したボーマンがそのまま独走を開始。ガルシアはプジョルを引き離し、ボーマンを1人で追走するが、11周回目でロットNLユンボ勢がメイン集団のペースを急激に上げると、ガルシアら先行していた選手たちは吸収され、さらには集団の人数が絞り込まれた。

こうした動きの中、前方でレースを進めたのがルバ。16人となった先頭グループにチームでただ一人残り、勝負どころを意識しながら走る。数十秒の差で追う第2グループにグラルディオラらキナン勢も含まれ、懸命に前を目指した。

12周回目の後半で、先頭グループにさらなる変化が発生。2選手の飛び出しをきっかけに、さらに4選手が追って、そのまま新たなトップグループへ。ルバがこの動きに乗り遅れ、やがてグラルディオラが入った追走グループがジョイン。そのまま6選手が後続との差を広げていき、ルバとグラルディオラは約15人の第2グループで終盤を迎えた。

第2グループは前との差を縮めることができず、上位フィニッシュ狙いの態勢に。優勝争いから2分26秒後、フィニッシュへとやってきた。ルバ、グラルディオラともにスプリントで上の順位を目指したが、それぞれ18位、19位で終えた。

その後、残るキナン勢4選手もフィニッシュラインを通過。山本大と山本元は、ともに第3グループでレースを終え、それぞれ36位と39位。HCクラスの上位40選手に付与されるUCIポイント圏内を確保した。

2017年以上の好成績を視野にレースに挑んだキナンだったが、優勝争いには届かず、選手たちを悔しさをにじませた。一方で、スタート直後から積極性を見せたガルシアが山岳賞を獲得。登壇を決め、多くの観客の前で山岳ジャージに袖を通した。次への期待と、巻き返しを誓って今大会を終えることとなった。

シーズンのうちでも大きなウエイトを占めていたレースプログラムを終え、チームは新たな目標を設定して走る続けることになる。今後はホストレースの「KINAN AACA CUP」やイベント出演に励んだのち、11月11日のツール・ド・おきなわ(UCIアジアツアー1.2)で2018年の公式戦を終える予定となっている。

ジャパンカップサイクルロードレース(UCIアジアツアー1.HC、144.2km)結果
1 ロブ・パワー(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 3時間44分0秒
2 アントワン・トールク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +0秒
3 マッティ・ブレシェル(デンマーク、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +40秒
4 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシングチーム)
5 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +42秒
6 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ) +2分2秒
18 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +2分26秒
19 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team)
36 山本大喜(KINAN Cycling Team) +5分9秒
39 山本元喜(KINAN Cycling Team)
60 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +8分42秒
61 新城雄大(KINAN Cycling Team)

山岳賞
1回目(第3周回)マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team)

マルコス・ガルシア

マルコス・ガルシアのコメント
逃げグループでレースを展開することが理想だと考えていた。3人の逃げグループとなったこともイメージ通りだった。山岳賞は私にとってボーナスのようなもの。それ以上に、長い時間先頭で走ることを重視していて、そのまま勝負できる状況にできれば最高だと思っていた。それだけに、逃げ切りができなかったことだけは残念だった。
好調でこの大会に臨むことができ、全力を尽くすことができた。走りそのものは満足している。今後のレースでは、より落ち着いて、冷静なレース運びを心がけていきたい。

サルバドール・グアルディオラ

サルバドール・グアルディオラのコメント
序盤はマルコスの逃げをフォローでき、その後はメイン集団でレースを進めた。ジャパンカップはいつでもハイレベルの戦い。全力のパフォーマンスを見せないといけないし、19位というリザルトも受け入れるつもりだ。
今シーズンでも特に重要なレースを戦い終えることができてうれしい。新しいチームでのシーズンはとても素晴らしく、みんなが家族のような存在に思える。私自身、ベストパフォーマンスを続けられたのは、誰もが優しく接してくれたことに尽きると感じている。

トマ・ルバ

トマ・ルバのコメント
終盤の判断ミスがリザルトに響いてしまった。6選手が先行したときに対応できていれば、違った結果になっていたと思う。今年から126選手と出走人数が増えたが、レースの流れはこれまでと変わらない印象だ。それだけに自らの結果に対する言い訳にはできない。