ミラノ〜サンレモなど新型肺炎懸念で開催中止を協議

イタリア北部でのコロナウイルスの流行により、イタリアのミラノ〜サンレモティレーノ〜アドリアティコが中止される可能性がある。

ミラノ〜サンレモの終盤は紺碧の地中海リビエラ海岸を走る ©LaPresse/Fabio Ferrari

「3つの春の自転車レース、ストラーデビアンケ、ティレーノ〜アドリアティコ、ミラノ〜サンレモのイベントの円滑な開催を実現するために懸命に調整している」と主催するRCSスポルトが2月24日に声明を発表した。

「開催に向けてRCSスポルトは当局と絶えず連絡を取っていて、彼らと協力してスポーツイベントを実施するための最も適切なすべての措置を講じていく」とした。

ラ・プリマヴェーラ(春のクラシック)と呼ばれるミラノ〜サンレモは3月21日(土)に開催予定だ。しかし、新型肺炎によりイタリア国内で4人が死亡し、150人以上の感染が確認された後、ロンバルディア州とヴェネト州の12以上の町や村が現在検疫中だという。

ミラノ〜サンレモ開催がキャンセルされた場合、世界大戦以来の事態となる。1907年に初開催された同大会は、第一次世界大戦途中の1916年、第二次世界大戦終わりの1944年と1945年のみ中止された。

ティレーノ〜アドリアティコ第4ステージ ©LaPresse/Fabio Ferrari

大会主催者はレースを行った場合のさまざまなリスクを懸念していて、「イタリアの状況は今のところ非常に複雑だ」と開催中止の可能性を示唆し、プランBとしての延期大会も念頭に置いていないという。3月11日から17日まで開催される予定のティレーノ〜アドリアティコについても中止を検討している。

イタリア政府がミラノ空港を閉鎖することになれば主催者はイベントを中止する義務があるという。ただし、5月9日から31日まで行われる予定のジロ・デ・イタリアは、流行のさらなる悪化が懸念される現状でも、中止を決定するには時期尚早であるとした。

●ミラノ〜サンレモのホームページ

ユワンがUAEツアー第2ステージV…総合成績でも首位に

ロット・スーダルのカレブ・ユワン(オーストラリア)がハッタダムの上りにゴールが設定されたUAEツアー第2ステージで優勝。総合成績でもトップに立った。2月24日に距離168kmで行われ、平均時速は39.029kmだった。

カレブ・ユワンがUAEツアー第2ステージで優勝 ©LaPresse – Fabio Ferrari

「ハッタダムへの上りが始まるところからフィニッシュが見えることは昨年から知っていたが、今日は見えなかった。とても難しいコースで、この丘をそんなに速く上れるわけでもない。最後の50mに必要なエネルギーを維持することに努めた」とユワン。

UAEツアー第2ステージ ©LaPresse – Fabio Ferrari

「昨シーズンが終わってから、今シーズンはいいスタートを切って、その勢いを保ちたいと思っていた。今年のスタートは昨年よりいい。ミラノ〜サンレモはここ数年、シーズン序盤に目標としているレース。その気持ちは変わらず、2020年の最初の部分の私の大きな目標だ。今年は昨年よりもさらにいいチームとなり、レースが難しい場合はフィリップ・ジルベールが行くという2つ目の選択肢が取れる」

カレブ・ユワンがUAEツアー第2ステージを終えて首位に ©LaPresse – Fabio Ferrari

THE STAGES
(クリックするとステージの記事に飛びます)
Stage 1: Marjan Island Stage (158km), Zabeel Park – Marjan Island
Stage 2: Dubai Municipality Stage (203km), The Pointe – Hatta Dam
Stage 3: Sharjah Stage (198km), Sharjah – Rafisah Dam 
Stage 4: Dubai Stage (171km), Dubai Design District – Dubai City Walk
Stage 5: Al Ain Stage (162km), Al Ain – Jebel Hafeet 
Stage 6: ADNOC Stage (158km), Al Ruwais – Al Mirfa
Stage 7: Abu Dhabi Stage (127km), Al Maryah Island – Abu Dhabi Breakwater

●UAEツアーのホームページ

フルームがUAEツアーでレース復帰…アッカーマン先勝

イネオスのクリストファー・フルーム(英国)が大ケガからカムバック。2月23日に開幕した第2回UAEツアーで8カ月ぶりに集団スタートのレースに復帰した。2019年6月12日に落車骨折して以来、集団スタートのロードレースは初めて。

UAEツアーで完全レース復帰を果たしたフルーム。左はタデイ・ポガチャル ©LaPresse – Massimo Paolone

第1ステージはゴール勝負となり、ボーラ・ハンスグローエのパスカル・アッカーマンが優勝。総合成績でも首位に立った。

フルームはタイム差なしのメイン集団の後方、115位でゴールしている。

UAEのドバイで開幕したUAEツアー ©LaPresse – Massimo Paolone

「このレースに出場することができてうれしい。前年よりもホップしたいけれど、どれだけできるのかは分からない。以前と同じレベルで走ることができればいうことはない。昨年6月に落車をして以来、この日が来ることを望んで厳しいリハビリを積んできたからね。もちろん総合優勝を争えるとは思っていないが、2度目の再スタートを切れることがとてもハッピーだ」とフルーム。

フルームとバルベルデ ©LaPresse – Massimo Paolone
左からカベンディッシュ、ユワン、ポガチャル、バルベルデ、ケデルマン、ベネット、アッカーマン ©LaPresse – Fabio Ferrari
UAEツアー第1ステージ
パスカル・アッカーマンがUAEツアー第1ステージ優勝 ©LaPresse – Fabio Ferrari
パスカル・アッカーマン ©LaPresse – Massimo Paolone
パスカル・アッカーマン ©LaPresse – Massimo Paolone

大会は全7ステージで、29日まで開催される。日本からは新城幸也がバーレーン・マクラーレンのメンバーとして参加している。

THE STAGES 
Stage 1: Marjan Island Stage (158km), Zabeel Park – Marjan Island
Stage 2: Dubai Municipality Stage (203km), The Pointe – Hatta Dam
Stage 3: Sharjah Stage (198km), Sharjah – Rafisah Dam 
Stage 4: Dubai Stage (171km), Dubai Design District – Dubai City Walk
Stage 5: Al Ain Stage (162km), Al Ain – Jebel Hafeet 
Stage 6: ADNOC Stage (158km), Al Ruwais – Al Mirfa
Stage 7: Abu Dhabi Stage (127km), Al Maryah Island – Abu Dhabi Breakwater

●UAEツアーのホームページ

ナイロ・キンタナがデザルプマリティームで総合優勝

フランスのアルケア・サムシックに移籍したナイロ・キンタナ(コロンビア)が2月21日から23日までフランスで開催されたツール・デザルプマリティーム・エ・デュバールで総合優勝した。キンタナはニース郊外のエズ峠にゴールする第2ステージで優勝し、首位に立つとそのまま逃げ切った。

ツール・デザルプマリティーム・エ・デュバール総合優勝のナイロ・キンタナを中央に、左が2位ロマン・バルデ、右が3位リッチー・ポート ©Photo Bettini

「総合優勝できたことはアルケア・サムシックチームと私たちをサポートするパートナーにとって大きな成功。大きな勝利だ。毎日応援してくれるファンにとっても重要だ」とキンタナ。

「アルキア・サムシックチームは、最終日日もレースの初めから終わりまで私が有利になるように働いていたが、すべてのチームメイトの労力で勝利を獲得することができた。今回はこの瞬間を楽しめたが、このスポーツは常にこんな結果をもたらすことができるわけではないので、もっと努力する必要がある」

ツール・デザルプマリティーム・エ・デュバール第2ステージで優勝したナイロ・キンタナ ©Photo Bettini

総合2位になったAG2Rラモンディアールのロマン・バルデ(フランス)は、「昨シーズンの不調を考えれば、総合2位も悪くないスタートだ。レースを楽しむことができたし、いい感じで走れた。上りでキンタナに食らいついたことで、手応えを感じた。まだまだレベルアップをしていく必要があるが、現在の自分のポテンシャルをつかむにはちょうどいい3日間だった」とコメント。

ツール・デザルプマリティーム・エ・デュバール総合優勝のナイロ・キンタナ。後方が2位ロマン・バルデ ©Photo Bettini

●ツール・デザルプマリティーム・エ・デュバールのホームページ

ヤコブ・フルサンがブエルタ・ア・アンダルシア2連覇

アスタナヤコブ・フルサン(デンマーク)が第66回ブエルタ・ア・アンダルシアで総合優勝した。かつてルータ・デル・ソルと呼ばれていたスペインのステージレースは2月19日から23日まで開催され、フルサンが最終日の個人タイムトライアルで逃げ切った。

ブエルタ・ア・アンダルシア総合優勝のヤコブ・フルサンを中央に左が2位ジャック・ヘイグ、右が3位ミケル・ランダ ©David Ramos/Getty Images

ブエルタ・ア・アンダルシアは最終日の23日、ミハスで短いタイムトライアルが行われた。フルサンは、ステージ優勝者となるバーレーン・マクラーレンのディラン・トゥーンス(ベルギー)と同タイム。記録としては切り捨てられるコンマ以下の差で2位となったが、初日から総合トップを一度も譲らず5日間のレースを終えた。アスタナチームに今シーズン初の総合優勝をもたらした。

フルサンはこの日、15時20分にの最後のライダーとしてスタート。力強いパフォーマンスを見せた。中間チェックポイントで2番目にいいタイムを記録し、17分57秒のタイムでフィニッシュ。トゥーンスにわずか0.8秒遅れた。この大会で2度のステージ優勝を果たしたフルサンは、2年連続で優勝した。

「いいタイムトライアルだった。2年連続で総合優勝できたことを本当にうれしく思う。このレースに再び勝ってシーズンを始めるのは驚くべきこと。昨年はこれまでのキャリアで最高のシーズンを過ごしたし、再びそんなシーズンを繰り返すことを願っている」とフルサン。

「非常に難しいレースだったし、初日からジャージを守るために多くのハードな場面があったが、チームは素晴らしかった。勝者は私だが、チームもそうだ。私にとってはジャージを維持することが重要だったが、短くて強烈なタイムトライアルで逆転負けしたくなかったのでので、今は本当に幸せだ。いいシーズンになると思うし、いい結果でこういうスタートを切れたことで、自信を持って次の目標に向けて取り組むことができる」

●ブエルタ・ア・アンダルシアのホームページ

ウワサの映画『栄光のマイヨジョーヌ』をレビューしてみた

映画鑑賞というものが得意ではなく、試写会もなんとなく敬遠していましたが、「これは見ておいたほうがいい!」という周囲の推薦があってウワサの映画『栄光のマイヨジョーヌ』視聴してみたら、少なくとも2シーンほど目頭が熱くなってしまいました。それほど現場のリアルさが伝わるものだったのです。

マイヨジョーヌを着るサイモン・ゲランス。『栄光のマイヨジョーヌ』より ©2017 Madman Production Company Pty Ltd

繰り返しますが、取材記者の私自身が30年にわたって現地取材しているツール・ド・フランスの、本当のストーリーが克明に映し出されているからです。もちろんそれはボクが駆け出しだった30年前には存在しない手法を多様に駆使してのものでした。

あの当時、日本でツール・ド・フランスの総合優勝者を知る方法は、銀座の洋書店にフランスの自転車雑誌が入荷し、それを手に取ることが唯一という時代でした。そんな情報入手のあり方も日進月歩し、すぐにインターネットが普及し、リアルタイムに画像やテキストが報じられる時代が到来。

『栄光のマイヨジョーヌ』より ©2017 Madman Production Company Pty Ltd

さらにこの映画が伝える2010年代になるとプロ選手がSNSで、プロチームがオリジナル動画を編集して配信するなどでインサイドなシーンを拡散し始めたのです。この映画もそういったツールを集めてドラマ化したものだと認識しています。

『栄光のマイヨジョーヌ』より ©2017 Madman Production Company Pty Ltd

映画の舞台はサイモン・ゲランスがミラノ〜サンレモに勝利した2012年、同じくゲランスが第100回ツール・ド・フランスでマイヨジョーヌを着用した2013年、エステバン・チャベスがブエルタ・ア・エスパーニャで一時リーダージャージを着用した2015年、そしてマシュー・ヘイマンが北の地獄パリ〜ルーベを制した2016年のもの。

欧州を中心に行われる自転車ロードレースのリアル情報はその後もさらに研ぎすまされていますが、基本的にはこの映画の時代の手法がベース。そのため数年前のシーンを集めてはいるものの、古くささは感じられません。登場したベテラン選手はすでに引退していますが、なんらかの関わりを持ってこの世界で手腕を発揮し続けているので、そんな彼らの人生を知るにはうってつけです。

『栄光のマイヨジョーヌ』より ©2017 Madman Production Company Pty Ltd

ボクは記者なので、映画中に何度か登場するオーストラリア人記者を見るにつけ、笑顔になってしまいました。彼は複数のオーストラリア選手が活躍を始めたころにツール・ド・フランスに参入してきましたが、お互いに欧州スポーツ報道の現場に苦労しただけに、共感するものは多々あります。

マイヨジョーヌを獲得した自国選手の話を聞けるなど、うらやましいと思ったこともありました。ましてや自国のチームがツール・ド・フランスの常連となるのだから、誇らしげな横顔に嫉妬したこともあった(かも)。

笑ってはいけないんですが、2013年の第100回ツール・ド・フランスのバス事件も克明に紹介されています。とにかくこの年は主催者として特別なコース設定がなされ、最初の3日間が史上初となる地中海のコルシカ島を走ることになっていました。すべてが初体験のレースでした。

『栄光のマイヨジョーヌ』より ©2017 Madman Production Company Pty Ltd

コルシカ島はツール・ド・フランスのような大規模なスポーツイベントを開催するような環境ではなかったんです。プレスセンターのように大勢の関係者を収容する施設もなかったので、大型客船が3日間のゴールとなる港を巡って関係者のシゴト場としたほどです。チームバスなどの大型車両が通行する迂回路も設定できなかったので、オリカ・グリーンエッジのバスがゴール地点のゲートに引っかかるのも当然でしたよね。

映画にあるようにチーム関係者は顔面蒼白となっていましたが、この件は本当に大変だったようで、ツール・ド・フランスが再びコルシカに渡るという計画は全くないようです。

2013年の第100回ツール・ド・フランスは異例。コルシカ島のプレスセンターは3日間とも大型客船だった

ちなみにこの年のツール・ド・フランスは移動日なしで大会4日目にフランス本土のニースに渡り、ここで行われたチームタイムトライアルでオリカ・グリーンエッジが最速タイム。映画のとおり、ゲランスがマイヨジョーヌを獲得するわけです。2020年のツール・ド・フランスはこの大躍進の舞台となったニースが開幕地であり、彼らが激走したプロムナード・デザングレ通りが出発地。6月末になる前に映画で学習しておいたほうがいいです。

チャベスの笑顔の裏側も映し出していた

映画の主役となるのがコロンビアのエステバン・チャベス。取材記者が選ぶ「ベストフレンドリーライダー」で、屈託のない笑顔ばかりが印象的ですが、この映画で苦悩が続いた時代があったことを知らされました。

ブエルタ・ア・エスパーニャのエステバン・チャベス。『栄光のマイヨジョーヌ』より ©2017 Madman Production Company Pty Ltd

映画に断片的に登場する選手やチームスタッフの「回りくどいジョーク」の連続も見どころ。こういった冗談はきまじめなクリストファー・フルームには通用しないと思ったが、まさにその通りでした。

映画『栄光のマイヨジョーヌ』

オーストラリアのプロ・サイクリング・ロードレースチーム「グリーンエッジ」に密着したドキュメンタリー。2010年、オーストラリア人ビジネスマンで起業家のゲリー・ライアンが自分のロードレースチームを作ろうと思い立ったことから、オーストラリア初のワールド世界ツアー出場レベルのロードレースチーム「グリーンエッジ」が誕生した。結果だけでなく、それぞれの個性やチームに溶け込めるかに重点を置いて編成されたチームは、メンバーそれぞれが深い人間愛から競技にアプローチしていった。これまでの常識からはちぐはぐに思えたチーム編成でありながら、まさかのチャンピオンが誕生する。国際レースに臨んだチームの5年間のツアーに密着し、勢いに乗る選手、困難にぶつかる選手、さまざまな選手たちの姿を通して「グリーンエッジ」というチームの信念を描いていく。

『栄光のマイヨジョーヌ』
2020年2月28日(金)より 新宿ピカデリー/なんばパークス(大阪)ほか全国順次公開(c) 2017 Madman Production Company Pty Ltd
●公式サイト
Facebook:@green.edge.movie
Twitter:@greenedge-movie
Instagram:@greenedge_movie
2017年/オーストラリア/英語、スペイン語/99分
原題:ALL FOR ONE
監督・撮影:ダン・ジョーンズ