トマ・ルバがツール・ド・インドネシア総合優勝&山岳王

インドネシアのステージレース「ツール・ド・インドネシア」は8月23日に最終日を迎え、前日に総合首位に浮上したキナンのトマ・ルバがリードを守り切り、個人総合優勝を達成。2019年大会の王者に輝き、レースリーダーの証であるグリーンジャージを獲得した。この日行われた第5ステージの途中では一時逃げグループに大差を許す展開となったが、最後はチーム力を持って局面を打開した。

2つのリーダージャージを獲得したキナンチーム ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

今大会最難関のクイーンステージと目された前日の第4ステージでKINAN Cycling Teamは、トマがステージ2位。優勝こそ譲ったものの、アジアの名峰イジェン山の上りで実力を発揮。個人総合争いのライバルたちを引き離すことに成功し、グリーンジャージを獲得した。第2ステージ以降守っている山岳賞も盤石の態勢で、2冠をかけて最後のステージに挑むことになった。また、マルコス・ガルシアがステージ4位、サルバドール・グアルディオラも9位と続いたほか、献身的なアシストを見せた山本元喜も粘って20位でフィニッシュ。個人総合で10位と好位置につける。

そして、8月19日から展開されてきた戦いは、いよいよこの日のステージで最後となった。第5ステージは、前日までのジャワ島を離れ、バリ島へ移動。同島の西側に位置する港、グリマヌクからバトゥール・グローバル・ジオパークまでの136.8km。コースは、スタートからしばらくは海沿いの平坦路をゆくが、後半にかけて上り基調へと変化。山岳ポイントを通過後にいったん下って、フィニッシュのバトゥール・グローバル・ジオパークに向かって再びの登坂。山岳区間は全体的に舗装が荒く、残り25kmからは未舗装区間も現れる。大会の最後にやってきた難コースを前に、KINAN Cycling Teamはトマの個人総合首位のキープを最優先することを確認。ライバルたちの動きを注視しながら、最終目的地を目指していく。

最終日とあって、やはり残りわずかなチャンスに賭ける選手たちがアクチュアルスタート直後から次々とアタック。激しい出入りの中、レース序盤が進行していく。この状況がしばらく続いたが、30km地点を迎えたところで7人が先行を開始。個人総合での最上位はトップのトマから約6分差の選手とあり、この段階でKINAN勢が集団を落ち着かせてコントロールを本格化。50km地点を過ぎたところでのタイム差は5分30秒。メイン集団は新城雄大や山本がペーシングを担う。

レース状況が一変したのは、70kmを過ぎたあたり。タイム差を知らせる情報が錯綜したことや、通過する都市の交通規制が混乱したことが関係し、あっという間にその差が大きく広がってしまったのだ。90km地点でのタイム差は、この日最大の10分25秒となった。

だが、ここからがKINAN勢の見せ場となった。大差になっていることを確認すると、新城や山本がペースを上げ、レース後半の山岳区間に入るとサルバドールとマルコスが登坂力を武器に前を行く選手たちとの差を縮めていく。同時にメイン集団は崩壊し、徐々に人数が絞られていく。この日2つ目のカテゴリー山岳が設置された126km地点では4分45秒差として、リーダージャージのキープに向けて状況を整えていく。

この間、先頭は2人となりステージ優勝争いへとシフト。結果、最終盤に独走へと持ち込んだベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、チームサプラサイクリング)がこのステージの勝者となった。

ダイボールのフィニッシュから約5分。トマを含むクライマーたちの集団がやってきた。サルバドール、マルコスが役割を終えてからは、トマが自らこのグループを率いてペースアップ。ステージ3位争いのスプリントからは後れを取ったが、総合においては安全圏でフィニッシュラインを通過。この瞬間、トマの個人総合優勝が決定した。

スタート直後からライバルとなりうる選手たちの動きはしっかりとチェックし、逃げを狙う選手たちのアタックを選別しながらレースコントロールに持ち込んだKINAN勢。途中、思わぬ形で先頭グループに大差を許すことになったが、そこはUCIアジアツアーを戦う中で培った走り方やメンタルで苦境を乗り切った。

インドネシアでの全5ステージを終えて、トマは個人総合のグリーンジャージと山岳賞のブルージャージを獲得し、2冠を達成。チーム総合でも3位とし、その力を示すこととなった。今大会に臨むうえでのテーマの1つであったUCIポイントの獲得は139点。大会を制したトマにとどまらず、第3ステージで3位となった新城ら日本人メンバーの走りも高い貢献度となった。

シーズン後半戦最初のヤマ場として挑んだツール・ド・インドネシアを成功裏に終えたKINAN Cycling Team。ここで得た勢いを、その後のレースにもぶつけていくことになる。なお、チームの次の公式戦は、9月1日のシマノ鈴鹿ロードレースクラシックを予定。その2日前には三重県・松阪競輪場で開かれるバンクリーグ第2戦に臨むことにもなっている。

トマ・ルバ

トマ・ルバのコメント
「ハードなレースになることは想定していた。コース上がオープンになってしまっている状況があり、先頭グループとのタイム差が思っていた以上に広がってしまったが、新城雄大と山本元喜が素晴らしいコントロールをしてくれて、山岳に入ってからはサルバの牽引が本当に強かった。そのおかげでグリーンジャージをキープすることができた。もちろんこの結果はみんなで力を結集させたことによるもので、とても美しい優勝になった。
(ステージ3位に入った)第2ステージ後にも感じたことだが、シーズン後半戦に入ってみんながよい働きを見せていて、厳しいシーズンインだったチーム状況を切り替えられている。まずは今日の勝利の喜びに浸るとして、明日からは次の大きな目標へ向かっていく。チーム全員がよいコンディションにあり、力を合わせて戦うことがとても楽しみだ」

●キナンサイクリングのホームページ

トマ・ルバがツール・ド・インドネシア第4ステージで首位に

ツール・ド・インドネシアは8月22日、アジア屈指の山岳であるイジェン山の頂上フィニッシュとなる第4ステージが行われ、KINAN Cycling Teamのトマ・ルバが持ち前の登坂力を発揮。ステージ優勝こそ譲ったものの、区間2位。ここまでの個人総合上位陣を引き離してフィニッシュしたことにより、トマはこのステージを終えて首位に浮上。山岳賞でもトップを守り、翌日の最終第5ステージはダブルタイトルをかけて戦うことになった。

ツール・ド・インドネシア第4ステージで首位に立ったキナンのルバ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

第3ステージまでを終えて、個人総合成績ではトマが総合タイム差3分49秒差の7位、山本元喜が同5分51秒差で9位と、トップ10圏内に位置。総合にとどまらず、第2ステージではトマが、第3ステージでは新城雄大がそれぞれステージ3位の好走を見せた。さらには、トマは第2ステージ以降山岳賞争いでトップに立ち、ブルーのリーダージャージを着用してレースに臨んでいる。

迎える第4ステージは、今大会で最も重要な1日。ジャワ島最東部まで進んだプロトンは、アジアの秀峰イジェン山の頂上を目指すことになる。上り始めから急坂が始まり、中腹以降は10%を超える急勾配。道路舗装が荒い区間や、部分的に勾配20%前後の激坂も待ち受け、この上りで各選手の登坂力の差が明白になる。このステージの結果がそのまま総合成績へと反映される可能性も。レース距離は147.3km。

KINAN Cycling Teamは、他の大会も含めてこの上りを何度も経験している点に強みを持つ。これまでの実績から熟知する攻略法を生かして、クイーンステージでの上位ジャンプアップを目指していくことを確認した。

迎えたレースは6人の逃げで幕開け。いずれも総合成績に関係しない選手であることから、メイン集団は6人の先行を容認。リーダーチームのオリバーズリアルフードレーシングが集団コントロールを担って、レースを淡々と進行させる。KINAN勢は先に控える山岳に向けて、まずは集団に待機する。

スタートから20kmを過ぎる頃には逃げグループと集団とのタイム差は3分以上の開きとなり、その後も拡大する一方。両グループに大きな変動がないまま進行し、100kmを迎える段階でこの日最大の約5分まで広がったことをきっかけに、集団が少しずつ活性化していくこととなった。

120km地点を過ぎるあたりから徐々に上り基調となっていくが、それを前にメイン集団は先頭の6人とのタイムギャップを縮めていく。上りが始まるとその差はあっという間に縮まり、130km地点を目前に逃げメンバーを全員吸収。KINAN勢は5選手全員が問題なく集団でレースを進行。134km地点に設定される、この日2つ目のカテゴリー山岳である1級の頂上に向かって、いよいよKINAN勢がギアを上げていく。まずは新城が集団のペースを上げる。続いて山本も牽引に加わって、プロトンを完全に崩壊させることに成功。頂上の山岳ポイントへはトマが2位で通過し、山岳賞争いで得点を伸ばした。

いよいよやってきたイジェン山の上り。登坂を開始して早々にトマを含む6人が先行を開始。厳しい勾配でメンバーをシャッフルさせながら進んでいく。やがて先頭は3人となり、その後ろではマルコス・ガルシアが続く。残り10kmを切ったタイミングで、先頭はトマとメトケル・エヨブ(エリトリア、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム)の2人に絞られた。

個人総合争いのライバルとの差を引き離すべく、トマは先頭固定で先を急ぐ。総合で大きく遅れているエヨブ選手を引き連れる形となったが、後続とのタイム差拡大を最優先。こうなると3番手以下を引き離す一方。残すは、ステージ順位とフィニッシュでのタイム差が焦点となった。

最後はエヨブにステージ優勝を譲ったトマだったが、2位を確保し、この時点で6秒のボーナスタイムを獲得。結果的に、第4ステージスタート時点で個人総合上位に位置した選手たちが遅れたこともあり、トマは順位を一気にジャンプアップさせ、首位へと浮上した。

今大会へは順調なトレーニングを積んで臨んでいるトマだが、“本番”ともいえるイジェン山登坂でしっかりと結果を残してみせた。他大会でもこの山岳を経験していて、コースの特徴を把握していた点もプラスに作用した。

第4ステージまでを終えて、トマは個人総合で2位と1分30秒差とした。さらには、山岳賞でも盤石の首位固め。ダブルタイトルに王手をかけて、残る1日に挑むことになる。

この日は、トマにとどまらずKINAN勢が躍動。先頭2人の後ろで粘り強く走ったマルコスはステージ4位としたほか、サルバドールも9位に続いた。また、献身的な走りを見せた山本も20位で終え、混戦となった個人総合で10位に踏みとどまっている。

KINAN Cycling Teamにとって最高のシチュエーションで、大会最終日を迎える。最後を飾る第5ステージは、ジャワ島から東のバリ島へと移動して136.8kmで争われる。スタートからしばらくは平坦が続くが、後半にかけて上り基調に。山岳ポイントを通過後に一度下るが、フィニッシュのバトゥール・グローバル・ジオパークに向かって最後の登坂。上りフィニッシュを終えると、今大会のフィナーレとなる。チームとしては、レース前半の海沿いでの強風に注意しつつ、終盤の山岳でしっかりと力を発揮して、ベストな形で全行程を終えることにフォーカスする。

トマ・ルバ

トマ・ルバのコメント

「イジェンの上りは過去にも経験しているが、この場所でリーダージャージを獲得できたことは本当にうれしい。イジェン山は(ツアー・オブ・ジャパンで上る)富士山と似ていて、戦術的に走るよりはいかにテンポで上り続けられるかが重要になる。強い選手が勝つし、そうではない選手は遅れていくだけだ。だから今日もアタックらしいアタックはしなかったし、テンポで上り続けた結果だといえる。
明日も上りが待っているが、今日は3人がトップ10フィニッシュでき、自信をもって臨める。リーダージャージを守り切ることに集中するし、ミスやトラブルには注意したい。明日の夜、みんなで喜び合えると信じている」

●キナンサイクリングのホームページ

トマ・ルバが熊野ステージ優勝…総合はアウラールが維持

第21回ツール・ド・熊野は6月1日、三重県熊野市の山岳コース109.3kmで第2ステージが開催され、キナンサイクリングチームのトマ・ルバ(フランス)がステージ優勝。総合成績ではオールイス・アウラール(マトリックスパワータグ)が首位を守った。

キナンのトマ・ルバが第21回ツール・ド・熊野第2ステージで優勝 ©︎Tour de Kumano 2019

ツール・ド・熊野3日目の第2ステージは、三重県熊野市で109.3kmのロードレース。「熊野山岳コース」と名付けられている通り、厳しい登りが連続する。日本最大級の棚田である「丸山千枚田」の中を縫うように登る2級山岳、曲がりくねった細い山道が続く1級山岳の札立峠、さらに丸山千枚田をもう1回登り、計3回の山越えをする。ツール・ド・熊野の最難関ステージにして、大会を象徴するステージでもある。

天候は晴れ。レースの進行と共に日差しが強くなったが、木立の中の札立峠は薄暗い道が続く。

リアルスタートが切られるとアタックが繰り返されるが、なかなか逃げが容認されない時間が続く。10名ほどの集団が先行する場面もあったが、差が30秒以上開く前にメイン集団が吸収していく。約30kmを走って1回目の丸山千枚田の登りに入ると、マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)が中腹から単独で先行し、山岳賞ポイントを先頭通過する。この登りでバラバラになった集団は、丸山千枚田からの下りとその後の平地区間でまとまり、40人前後の集団となる。

抜け出す動きが無いまま1級山岳に指定される札立峠の登りへ入ると、リーダージャージのアウラール擁するマトリックスパワータグと、キナンサイクリングチーム、チーム右京の攻防が始まる。

登り口からベンジャミ・プラデス(チーム右京)と山本大喜(キナンサイクリングチーム)の2人が先行。それをフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)を先頭に集団が追走し、ほどなく吸収する。その後マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)とサム・クローム(チーム右京)の2人が新たに先行。さらにクロームと入れ替わってプラデスとアウラールがガルシアと合流し、3人の先頭集団で登っていく。  

丸山千枚田を行く第21回ツール・ド・熊野第2ステージ ©︎Tour de Kumano 2019

山岳賞の頂上まで数km残したところでガルシアが加速。そのまま単独で登り続け、頂上を先頭通過する。これでガルシアは2級山岳と1級山岳を先頭通過し、山岳賞争いトップに立つ。

札立峠からの下りに入り、先行していたガルシア、プラデス、アウラールらを集団が吸収。そこからトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)がアタックして単独先行。ドリュー・モレ(トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム)も飛び出し、ルバを追う。

20人ほどまで絞られた集団は再びマトリックスパワータグがコントロール。先行するルバとの差が2分まで開いたところで2回目の丸山千枚田への登りに入る。頂上の山岳賞はルバが先頭通過、40秒ほど遅れてモレの順に通過して下りへ。残り10km付近、モレがルバに追いつき、先頭は2人となる。後方集団との差は1分30秒。勝負はルバとモレの2人に絞られた。

フィニッシュまで残り200mの登り、先頭で姿を現したのはルバ。追いすがるモレを確認することなく勝利を確信し、ガッツポーズを何度も繰り返した。

個人総合順位争いの後方集団は、アウラールを先頭にフィニッシュ。4秒のボーナスタイムを自ら勝ち取り、2位岡篤志(宇都宮ブリッツェン)との差をわずかに広げた。

オールイス・アウラールを擁するマトリックスパワータグがペースメーク ©︎Tour de Kumano 2019
第2ステージ優勝:トマ・ルバ コメント
札立峠の登りでチームメイトの山本大喜が遅れたので、彼を待って集団に復帰させた。その後集団内のチームメイトの力を温存させるためにアタックした。1人が追走してきたので力を使いすぎないようにセーブして最後の勝負に備えた。勝てて本当に嬉しい。チームとして個人総合優勝を狙うのはとても難しくなったけれど、トップ10ないし表彰台を確保出来れば最高だと思う。明日も今日のようにステージ優勝を狙っていきたい。

宇都宮ロードはトマ・ルバがキナンチーム最上位の4位

2019年の国内リーグ「Jプロツアー」第5戦、宇都宮ロードレースが5月11日に宇都宮森林公園を主会場に行われた。7選手で挑んだKINAN Cycling Teamは、トマ・ルバがチーム最上位となる4位でのフィニッシュ。レース序盤から集団コントロールに努めながら、残り2周で優勝争いに大きな変化を生み出すアタック。最後はライバルの先着を許したものの、強さをアピールする走りを見せた。

宇都宮ロードで4位になったトマ・ルバ(中央後方) ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

Jプロツアーは、この日から宇都宮ラウンドがスタート。初日はロードレース、翌12日はクリテリウムで構成される。まず、ロードレースは6.7kmのコースを14周回する93.8kmで争われた。毎年10月に開催されるジャパンカップサイクルロードレースと部分的に同じ箇所を走るルートは、「鶴カントリー」と「萩の道」の2つの登坂区間が勝負のポイントとなる。また、部分的にテクニカルなダウンヒルや、平地区間での巡航力も試されるコースセッティングとなっており、例年オールラウンダーによる優勝争いが展開されている。

このレースに向け、KINAN Cycling Teamは万全を期して臨んだ。招集された7選手は山本元喜、椿大志、大久保陣、山本大喜、雨乞竜己、トマ・ルバ、新城雄大。昨年のこの大会では山本元が9位、新城が10位となったが、今回はそれを上回り優勝することを目標に据える。

レーススタートから積極的に展開した選手たち。1周目から椿が動きを見せ、3周目にはトマが上りでアタック。山本元も前方に姿を現すなど、攻撃的な序盤戦となる。5周目から6周目にかけて2人が抜け出したことでメイン集団が落ち着いたが、KINAN勢は次なる展開に備え前方に位置取り。

しばらく続いた2人逃げは、9周目に入ったところで集団が吸収。その直後に山本大が飛び出しを図る。これをきっかけに、有力チームがそれぞれ選手を送り込んで新たな逃げグループを形成。すぐに集団に引き戻されることとなったが、ここからプロトンがより活性化していく。中間スプリントポイントが設定された10周目終盤には数人のアタックをトマがチェックに動き、その勢いのままトップでコントロールラインを通過。ポイント賞獲得を決めた。

それに前後して発生した数人単位の飛び出しには、椿が集団のペースをコントロールすることで対応。11周目には力のある3選手がアタックを決め、30秒ほどの開きとなったが、次の周回でトマの強力な牽引で吸収。激しい出入りの末に絞り込まれたメイン集団には、トマと山本大が残り、レース終盤を迎えることとなった。

12周目から13周目にかけて1人逃げの状況が生まれたが、メイン集団は労せずキャッチ。中盤以降連続したアタックの応酬だったが、この局面に変化をもたらしたのはトマのアタックだった。

集団のペースが緩んだ一瞬のタイミングを利用してトマがアタックを決めると、これに続いたのは4選手。各チームのエースクラスがそろい、後続とのタイム差を着実に広げていく。5人になった先頭グループはそのまま最終周回へ。優勝をかけた戦いは、周回後半の短い上りでのトマのアタックでさらに活発になる。

勝負が決したのは、フィニッシュまで約1kmのポイント。今村駿介(ブリヂストンサイクリング)のアタックが決まり、そのままフィニッシュラインへ。トマは追撃実らず4位でのフィニッシュとなったが、レース全体を通し終始見せ場を作っての上位確保。約1カ月半ぶりのレースだったが、しっかりとリザルトを残してみせた。

KINAN勢はそのほか、終盤まで前方に位置した山本大が17位、新城が33位でレースを終えている。

翌日の宇都宮クリテリウムは、3kmのコースを20周する60kmで争う。前節の東日本ロードクラシック終了時点でのチームランキングによって出場選手枠が決定し、KINAN Cycling Teamは最大人数より1人少ない5選手での出走となる。今回の招集メンバーから山本元、大久保、山本大、トマ、新城をセレクトし、ハイスピードバトルに挑む。

山本大喜のコメント

「序盤からハイペースで、中盤以降もアタックが繰り返しかかっていたので、早い段階で勝負が決まることを想定して動きすぎてしまったあたりは反省点。展開をもう少し見極められたら勝負に絡めたのではないかと思うと、今日のレースは悔しい。自分も含めて終盤までに脚を使ってしまう形になり、結果的にトマさんに頼ってしまった。序盤からアシストしてもらっていただけに、自分たちで勝負できる状況を作り出せず申し訳ない。
昨年まではこの時期にナショナルチームでヨーロッパ遠征をしていたので、おのずとレース強度の高いものを経験できていたが、今年からチームでの活動により集中できるようになり、個人でのトレーニングの組み立てなど課題が見えてきている。前節の群馬で気づけた部分もあって、改善した成果が今日はある程度出せたと思う。
(クリテリウムに向けて)基本はスプリントで勝負していくことになるが、逃げる機会がめぐってきたら積極的にレースを進めていきたい」

トマ・ルバのコメント

「結果やレース内容については問題ないと思っている。レースプランに基づいて走って、必ずしも良いものではなかったが、ベストを尽くすことはできた。
(4月上旬の)ツアー・オブ・タイランドが終わってから2週間休養し、トレーニングもストップしていた。タイランドでの落車はしばらくダメージを残したものだったので、いまは少しずつ状態を上げている段階。
クリテリウムはスプリンターが主役。どんな戦術を組むかはみんなで話し合って決めたい」

ニュージーランド サイクルクラシックはルバ総合5位、最終Sは大久保陣8位

KINAN Cycling Teamの2019年初戦、ニュージーランド サイクルクラシック(UCIオセアニアツアー2.2)は、1月27日の第5ステージをもって閉幕。個人総合ではトマ・ルバが5位として、UCIポイント15点を獲得。また、このステージはスプリントでの争いとなり、大久保陣が8位でフィニッシュしている。

ニュージーランド サイクルクラシック第5ステージ ©KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

23日に開幕した大会は、大久保や中島康晴がスプリントでステージ上位をうかがったほか、前日の第4ステージではトマが5位でフィニッシュ。総合争いが動くと見られたクイーンステージでまずまずの走りを見せ、チーム力を示してきた。

そしていよいよ最終日。第5ステージは、大会の拠点都市であるケンブリッジを発着点とする143.3km。スタート後、1周8kmの第1周回を8回まわり、進路をケンブリッジ方面へと戻しつつ同じく8kmの第2周回へ。ここも8周回して、ケンブリッジのフィニッシュ地点を目指す。平坦基調のステージに臨むにあたって、チームはトマの総合成績を確定させることを大前提としつつ、大会を通じて調子を上げてきた大久保を軸としたスプリントにもトライしていくことを確認した。

こうして始まったレースは、アタックが散発しつつも決定的な動きがないまま進行。KINAN勢は集団内に位置して序盤を過ごす。第1周回に入り、一時的に大人数が先行した際には中島が前方のチェックに動いたが、集団が容認することはなく再び一団に。スタートから50kmを迎えようかというタイミングで、ようやく4人の逃げが決まった。

以降も総合上位陣が絡む追走グループが形成されたが、リーダーチームのエヴォプロサイクリングを中心にメイン集団がレースをコントロール。先頭とのタイム差を2分15秒前後でキープし、第2周回でも着々と距離を消化していった。

この間、淡々とレースを進めたKINAN勢は、5人がまとまって展開。少しずつポジションを前へと上げていきながら、スプリント態勢を整えていった。

メイン集団は残り30kmを切ったあたりからスピードアップを図り、逃げる選手たちとのタイム差を縮めていく。完全に射程圏内へと捕らえ、やがて労せず吸収。勝負はスプリントにゆだねられた。

大久保での上位進出を狙うKINAN勢は、トマのポジションキープに始まり、山本大喜、新城雄大もリードアウトに加わる。そして中島の引き上げから大久保を加速させる構え。残り1kmは急斜面を下りながら最終の左コーナーへ。そして残り600mから一気に駆け上がり、フィニッシュへ飛び込む変則的なレイアウト。

このコース設定により集団前方が大混戦となる中、大久保は前方を押さえてスプリントを開始。最後はコンディションの差もありオーストラリア勢らの後塵を拝すも、8位とまとめてみせた。このほか、トマ、中島、新城と続き、しばらくして山本もフィニッシュラインを通過した。

これらの結果から、最終的にトマが前日からの個人総合5位を確定させた。UCIポイント15点をチームにもたらすとともに、シーズン初戦としてはまずまずの成果を収めた。シーズン初戦を終えた選手たちは一様に、長いシーズンを見越して調子を上げていくとともに、連携強化を図っていく必要性を実感。ニュージーランドでの5日間は収穫と課題を十二分に得た、刺激的なツアーとなった。

戦いを終えたチームは近日中に帰国し、トレーニングやイベント出演などをこなしていく予定。なお、次戦についても早い段階で公表できる見通しとなっている。

大久保陣

大久保陣のコメント
「スプリントまで持ち込むところは予定通りだったが、(変則レイアウトの)残り1kmは脚にきてしまっていた。目標としていた表彰台には届かなかったが、(8位に入った)第3ステージとは違った収穫が得られたので、さらに高めていきたい。
今大会はコンディション面で苦しんでしまい、スプリントにトライできたとはいえ表彰台に届かなかったあたりは反省点。まずは結果を出したい。チームの雰囲気がよく、どの選手も実力・経験ともに申し分ないので、その中でエーススプリンターを任せてもらえるよう取り組んでいきたい」

トマ・ルバのコメント
「個人総合5位という結果は悪くない。前日の上りにしても、チームで取り組んだスプリントにしても、日々状態は高まってきている。とはいえ、今日のステージも完ぺきとは言えないし、シーズン初めでもあるので今後のトレーニングで強化していきたい。個人的には春のレースでしっかり結果を残したいと考えている。次のレースを楽しみにしている」

最難関のニュージーランド第4ステージでトマ・ルバが5位

ニュージーランド サイクルクラシック(UCIオセアニアツアー2.2)は、1月26日に第4ステージを実施。今大会最難関ステージとなったこの日はトマ・ルバが5位でフィニッシュ。個人総合でも5位につけ、順位アップに成功している。

ニュージーランド サイクルクラシック第4ステージでトマ・ルバが5位 ©KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

この大会の開幕以降、スプリントや要所でのアタックで存在感を示してきたKINAN Cycling Team。プロトン(集団)内での位置取りも含め、他チームからも一目置かれる立場となっていることをチーム全体が実感している。

そして迎える第4ステージは、難所のマウンガカワ・ヒルの頂上に設けられたフィニッシュを目指す143.8km。おおむね平坦基調の前半を経て、中盤からは起伏の激しい区間へ。74.5km地点にこの日最初の山岳ポイントが設けられて、その後は次々とアップダウンがやってくる。107.3km地点で1回目のマウンガカワ・ヒルを上り終えると、約36kmの周回へ。そして、最後に2回目のマウンガカワ・ヒル登坂が待ち受ける。登坂距離は約3km。平均勾配が6%で、頂上に近づくにつれて急勾配になっていく。

この大会のクイーンステージに臨むにあたってKINAN Cycling Teamは、好調のトマで勝負することを確認。残る4人のメンバーがアシストに従事し、重要局面でトマを前方へと送り込む役割を務める。

レースは、リアルスタートから20kmを過ぎたタイミングで数人が上りを利用して飛び出し、やがて8人による逃げグループを形成する。KINAN勢はこの動きに乗じず、メイン集団に待機。5選手がまとまって集団前方に位置し、重要な局面に向けて態勢を整えていく。この間、逃げグループとメイン集団は、最大で3分ほどのタイム差で推移した。

この日最初の山岳ポイントを迎えるあたりから、逃げと集団との差は縮小傾向に。逃げメンバーの協調体制が保たれず、追撃姿勢を見せ始めた集団とのタイム差は縮まっていく一方。これに合わせるかのように、KINAN勢も集団内でのポジションを固めて、次なる展開へと備えていく。

そんなメイン集団の情勢に変化が生まれたのは、100km地点を目前としたタイミング。繰り返しやってくる急坂区間に、人数が絞り込まれていく。KINAN勢もトマを前方へと送り出してアシストの役割をまっとう。序盤から逃げていた選手たちは吸収され、個人総合で首位に立つアーロン・ゲート(ニュージーランド、エヴォプロサイクリング)を含む2人が新たに先頭へ。トマは単騎となって第2グループで1回目のマウンガカワ・ヒルを上った。

フィニッシュを目指して進む約36kmの周回では、逃げる2人に対して14人ほどのメイン集団が追う構図。人数をそろえるチームが主に集団を牽引し、KINAN勢で1人残ったトマは虎視眈々とチャンスをうかがう。先を急ぐ先頭2人に対し、集団はわずかながらタイム差を縮めていく。そして、マウンガカワ・ヒルの上りに入って集団から数選手のアタックが生まれる。

この変化に懸命に食らいつき、前を目指すトマ。勢いに勝るライバルの先行こそ許したが、粘って上位戦線にとどまる。先頭では、集団から飛び出した選手が逃げていた2選手をパス。そのままフィニッシュへと向かっていった。

トップまではわずかに届かなかったトマだが、最終盤の絞り込みでしっかりと上位進出を固め、最後は5位でフィニッシュ。ステージ1位との差は12秒だった。

このステージでの結果が総合成績に大きく反映され、トマは個人総合でも5位に浮上。首位を守ったゲート選手との総合タイム差は1分31秒だが、同2位以降トップ10圏内は数秒単位の僅差となっており、最終結果が出るまでは予断を許さない状況が続いている。

なお、トマの上位進出を支えた大久保陣、山本大喜、中島康晴、新城雄大の4人もフィニッシュラインを通過。問題なく次のステージへと進出する。

ニュージーランド伝統のツアーは、残すところ1ステージ。大会の拠点都市であるケンブリッジを発着とする143.3km。スタート後、1周8kmの第1周回を8回まわり、進路をケンブリッジ方面へと戻しつつ同じく8kmの第2周回へ。ここも8周回して、ケンブリッジのフィニッシュ地点を目指す。平坦基調の1日は、スプリント勝負になる可能性が高い。KINAN Cycling Teamは、トマの総合成績を確定させることを大前提としつつ、大会を通じて調子を上げてきた大久保を軸としたスプリントにもトライしていく姿勢だ。

トマ・ルバのコメント
「ステージ優勝を狙って臨んだ。終盤は14人がリーダージャージを含む2人の逃げを追う展開となり、消耗を避けながら勝負どころを見極めていった。大事な局面でライバルのアタックを許してしまったのは自分のミス。

シーズン初戦の結果としては悪くない。ベストコンディションではないし、チームとしての動きについてもまだまだ話し合う必要がある。今後も連携を深めていきたい。明日もハードで、平坦ステージとあって自分向きではないが、できるだけのことはやって大会を終えたい」