山本大喜が世界選手権ロード代表に…インスブルックの山岳で上位を目指す

キナンサイクリング所属の山本大喜が9月23~30日にオーストリアで開催される2018世界選手権ロード インスブルック・チロル大会の日本代表に選出された。

山本大喜

山本大喜は今シーズン、2月に開催されたアジア選手権ロードで、チームタイムトライアルとアンダー23(23歳未満)ロードレースで2冠を達成。6月には全日本選手権個人タイムトライアルでアンダー23部門で優勝。同年代のトップとして、国内外の数々のレースに臨んできた。

世界選手権ロードでは、24日に行われるアンダー23個人タイムトライアル(27.8km)と、28日に実施される同ロードレース(174.3km)の2種目への出場が予定されている。

世界選手権ロードは、その名の通りサイクルロードレースの世界王者を決める権威ある大会。世界のトップを走る選手たちの多くが、このアンダー23カテゴリーからトップシーンへと羽ばたいていて、この年代での活躍が世界への扉を開くこととなる。山岳がメインとなるオーストリア・インスブルックのコースだが、山本大喜は上位進出を目指して走る。

山本大喜/Masaki YAMAMOTO
やまもとまさき
1996年1月8日生まれ 171cm, 68kg
山本大喜のブログ

山本大喜のコメント
世界選手権に向けて、順調に仕上がってきています! 全力でがんばりますので、応援よろしくお願いします!

山本大喜が全日本選手権ロードレースU23で9位…2冠達成できず

ロードレースの日本一を決める全日本選手権自転車競技大会ロードレースは6月23日に大会2日目の競技を実施。キナンサイクリングは156kmで争われた男子アンダー23の2選手が出走。山本大喜がライバルからの厳しいチェックに遭いながらも上位争いを繰り広げ、最終的に9位でフィニッシュした。

全日本選手権ロードU23の3位争いのゴール勝負 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

21日に開幕し、カテゴリーごとの日本チャンピオンが続々と決定している今大会。大会2日目に入り、満を持してキナン勢がレースへと臨んだ。この日の正午スタートの男子アンダー23に山本大と塚本一樹の2選手が参戦。前週の個人タイムトライアルを制した山本大にとっては、国内選手権2冠を懸けたレースとなる。2月にはアジア選手権のこの種目を制しているが、その時に獲得したチャンピオンジャージを今回初披露。シーズン3枚目のスペシャルジャージ奪取をねらってスタートラインに並んだ。

今大会の舞台となっている島根県益田市の14.2kmのサーキットコースは、前半が長い上り、折り返す格好となってからの後半は下り基調。上りの最大勾配は8%で、その後の下りではテクニカルな区間が数カ所待ち受け、レース全体を通してはアップダウンに富んだコースレイアウトとなっている。キナン勢としては、多くの選手がエントリーした大学チームに比べ数的不利は否めないうえ、プロチームに所属する2選手へのマークが厳しくなることが予想されるが、将来を有望視される選手たちの中での戦いを確実にものにすることが求められた。

123選手が出走したレースは、2周目に山本大が自ら集団の活性化をねらって動く。周回前半の上りでアタックすると、数人が追随し先行を開始。ところが、数分遅れでスタートしたアンダー17+アンダー15のレースにトラブルが発生した関係から、コース上での混乱を避けるために一時的にニュートラルの措置がとられる。これにより山本大らはメイン集団へと戻ることを余儀なくされ、レースはふりだしへと戻った。

逃げが決まったのはこの周回の後半。8人がリードし、山本大と塚本はメイン集団に待機。集団前方が見える位置を確保しながら、次なる展開を待つ。しばしこの形勢のまま進行するが、4周目に集団から追走ねらいの選手が飛び出すと、塚本も同調。すぐに集団へと戻ることとなったが、積極的な姿勢を見せる。

しかし、その塚本にアクシデントが発生。周回のほぼ中間にあたる区間の下りでコースアウト。激しい落車となり、この時点でレース続行は不可能となってしまった。

一方で、順調にレースを進行させる山本大。5周目から集団のペースが上がりはじめ、やがて逃げグループを射程圏内にとらえる。勢いは集団が逃げグループをはるかに上回り、7周目には先行していた選手たちがすべて集団に吸収された。さらに、この直後から有力選手たちによる攻撃が本格化。数人が前をうかがうと、山本大も前後を走る選手たちの様子を見ながら先頭へ合流。8周回を終えるころには優勝争いは約20人に絞られる。

そんなレースが大きな局面を迎えたのは、9周目の前半。2選手のアタックが決まると、これを見送ったメンバーが追走グループへと転じる。山本大も追う側となり、前を走る2人になんとか引き離されまいと粘り強く走る。しかし、ライバルのチェックが一層厳しくなったこともあり、山本大が追走グループの牽引を任される時間帯が多くなる。そうしている間にも先頭の2人とのタイム差は広がっていき、最終周回の鐘を聞くころには2分近い差になった。

最終的に、9周目にアタックを決めた2選手がそのままワンツー。山本大らのグループは最終局面までに徐々に人数を減らしながら、3位ねらいに切り替えて表彰台の一角を争う格好に。残り500mのコーナーを抜けて、グループの先頭でやってきたのは山本大。前方からスプリントを開始したが、続く選手たちの勢いが勝り、山本大は9位でのフィニッシュだった。

優勝候補に挙げられ、山本大としても自信をもって臨んだレースだったが、最後の最後までチェックをかいくぐることはできず、終戦となった。悔しさをにじませた一方で、戦う姿勢をフィニッシュの瞬間まで崩さなかったことや、勝つためにレースをどのように展開すべきかなど、厳しい勝負だからこそ得られた課題と収穫に充実した表情も見せた。この年代における日本を代表する選手として、残るシーズンも大舞台を目指していくことになる。

レース途中に落車した塚本は大事には至らず、病院で診察後、擦過傷の手当てを受けてチームへと戻っている。

大会最終日、全体最後の競技として行われる男子エリートには、キナンから山本元喜、中西健児、雨乞竜己、中島康晴、新城雄大の5選手が出場。15周回・213kmのレースに臨む。レース距離もさることながら、獲得標高が約4000mにものぼるタフさは、サバイバルな戦いとなること必至。アンダー23の戦いを終えた2選手からのバトンを引き継ぎ、真の実力が問われる勝負に、キナン勢が日本王座をかけて挑むことになる。レースは24日午前9時にスタートする。

全日本選手権自転車競技大会–ロードレース・アンダー23(156km)結果
1 石上優大(AVC AIX EN PROVENCE) 4時間10分6秒
2 松田祥位(EQADS) +56秒
3 大前翔(慶應義塾大学) +3分27秒
4 草場啓吾(日本大学)
5 大町健斗(Team Eurasia – IRC TIRE)
6 孫崎大樹(早稲田大学)
9 山本大喜(KINAN Cycling Team)
DNF 塚本一樹(KINAN Cycling Team)

山本大喜

山本大喜のコメント
有力メンバーに絞られたレースにあって、アタックの打ち合いになれば勝負できる自信はあった。ただ、みんなにマークされている感覚がかなりあって、勝負どころでの力も今日は足りていなかった。早い段階で実力のあるメンバーに絞ろうと思って自分からアタックを仕掛けたが、直後にニュートラルがかかってしまったりと、うまく展開ができなかった。上位に入った選手たちはみんな強い選手ばかり。今日の結果は素直に受け入れたい。悔しいけれど、シーズン後半に向けて切り替えて、チームで臨む大きなレースや、代表入りを目指すことになるロード世界選手権などに向けて、もう一段階レベルアップしたい。

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山本大喜がU23タイムトライアル制覇…チーム発足4年目で初の日本チャンピオン

2018年の個人タイムトライアル日本チャンピオンを決める全日本選手権自転車競技ロードタイムトライアルが6月17日、石川県志賀町で行われた。2選手が出場したキナンサイクリングは、男子アンダー23に出場した山本大喜がトップタイムをマークして優勝。チームに初めての日本チャンピオンジャージをもたらした。

山本大喜が全日本選手権個人タイムトライアルU23制覇 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

数分おきに選手が個別に出走し、フィニッシュタイムを競う個人タイムトライアル。各々の走力がダイレクトに反映され、それぞれの持つパワー、そしてペース配分が勝敗を分ける種目である。2018年は能登半島のほぼ中央部に位置する志賀町に設けられた1周13.1kmのサーキットコースが舞台となった。

そのコースは、おおよそ南北を往復するルート設計。周回中盤に連続するアップダウンが待ち受け、部分的に急勾配となる区間も存在する。またテクニカルな下りもあり、コース取りやバイクコントロールの技術も必要となる。この日の天候は晴れで、コースコンディションは上々。ひと踏ん張りが必要となる復路で向かい風が吹く。そんな中で行われた、ナショナルチャンピオンを決める年1回の大一番、男女計7カテゴリーで争われ、それぞれの勝者には日の丸があしらわれたナショナルチャンピオンジャージを1年間着用する権利が与えられる。

この大会にはキナンから男子エリートに山本元喜、男子アンダー23に山本大喜が出場。ともにシーズン当初から目標に設定していて、チャンピオンジャージ獲得に向けて準備を進めてきた。男子エリートは3周回・39.3km、男子アンダー23は2周回・26.2kmで争われた。

午前9時40分に競技が開始となった男子アンダー23。2周回・26.2kmに18人が出走した。そのうち山本大は14番目でレーススタート。有力選手がひしめく第2ウェーブに振り分けられ、各選手が2分おきでコースへと繰り出した。落ち着いた入りとなった序盤。1周目の中間計測こそ3番手のタイムだったが、そこからペースに乗せていき、繰り返し訪れるアップダウンも難なくクリア。1周目を終えた時点では、トップと約5秒差の2番手につける。

真価を発揮したのは最終の2周目だった。ライバルが軒並みペースの維持に苦しむ中、山本大はさらに攻めの姿勢を見せる。1周目同様にアップダウンを危なげなく抜けると、フィニッシュへ向けてラストスパート。記録は34分14秒23。1周目のラップタイム17分9秒に対し、2周目は17分4秒と、このカテゴリーの出場選手では唯一ラップタイムを上げてみせた。

この結果、2位に13秒差をつけての優勝。男子アンダー23カテゴリーの頂点に立った。そしてキナンにとっても悲願だった日本チャンピオンジャージの獲得。将来を嘱望される大学生との勝負となった山本大だったが、プロ選手としての責任をしっかりと果たす快勝となった。

●男子エリートの山本元喜は11位

大会の最終種目、男子エリートには山本元喜が出場。3周回・39.3kmで争われた日本頂上決戦に挑んだ。競技は午後0時40分に第1走者がスタート。出走29人中22番目、第2ウェーブの最後に登場した山本元は、前走者から1分後にスタート。中間計測では、通過時点で5番手前後のタイムで走行。2周回目はペースを落ち着かせて、終盤勝負に備える。

そして上位進出をかけた最終の3周目。順位のジャンプアップを目指した山本元だったが、暫定5位でのフィニッシュ。タイムは53分10秒63。スピードの落ち込みをとどめ、ほぼイーブンペースで走り切った。その後に出走した第3ウェーブの選手たちが次々と山本元のタイムを上回ったこともあり、最終順位は11位。優勝をねらって準備を進めてきたが、悔しい結果となった。

順位だけ見れば明暗分かれる格好となった両選手だが、それぞれに可能性と課題を認識するレースでもあった。次戦となる、翌週の同大会ロードレースに向けて調整と修正を図っていくこととなる。山本大にとってはロードタイムトライアルの2冠、山本元にとってはタイムトライアルの雪辱を期してロードに挑む。全日本選手権自転車競技大会ロードレースは22日から24日までの日程で、島根県益田市で開催される。キナンのロースター(出場選手)については近日中に発表を予定している。

全日本選手権自転車競技大会ロードタイムトライアル結果
●男子アンダー23(26.2km)
1 山本大喜(KINAN Cycling Team) 34分14秒23
2 石原悠希(順天堂大学) +13秒12
3 中川拳(早稲田大学) +39秒09
4 松田祥位(EQADS) +52秒14
5 大町健斗(Team Eurasia – IRC TIRE) +55秒50
6 小山貴大(シマノレーシング) +1分20秒03

●男子エリート(39.3km)
1 窪木一茂(TEAM BRIDGESTONE Cycling) 50分23秒92
2 近谷涼(TEAM BRIDGESTONE Cycling) +1分2秒68
3 小石祐馬(チームUKYO) +1分30秒09
4 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +1分36秒43
5 渡邊翔太郎(愛三工業レーシングチーム) +1分39秒11
6 佐野淳哉(マトリックスパワータグ) +1分42秒81
11 山本元喜(KINAN Cycling Team) +2分46秒71

山本大喜

山本大喜のコメント
今回は自分との戦いだと思い、一定ペースで走ることを心掛けた。レーススケジュールの関係もあり、タイムトライアルに特化したトレーニングは少なめだったが、その中でもできる限りの準備をして本番を迎えられた。調整もうまくいったので、レースではペース配分に注意して、実力を発揮できれば勝てると自信をもって走った。タイムトライアルで勝つことができたが、それ以上に重要視しているのがロード。次のターゲットはアンダー23カテゴリーでのロード日本チャンピオン。しっかりと集中して臨みたい。

山本元喜

山本元喜のコメント
パワーを見ながら走ってはいたものの、中盤から後半にかけて失速してしまったことと、イメージしていた出力に達していなかったことが敗因。思っていたレースとはいかなかった。コースに対応することはできていたと思うが、なによりパワーが足りていなかった。ペース配分も含めて、走り方を見直さないといけない。翌週のロードに向けては、コースを念入りにチェックしながらコンディションと集中力を高めていくことになる。調子は悪くないので、あとはいかに本番にピークを持っていけるかにかかっている。

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全日本選手権個人タイムトライアルへ向け準備万端…タイトル獲得に山本兄弟が挑戦

2018年の個人タイムトライアル日本チャンピオンを決める、全日本選手権自転車競技大会ロード・タイムトライアルが6月17日、石川県志賀町にて開催される。キナンサイクリングからは山本元喜と大喜の兄弟が参戦。エリートとアンダー23とカテゴリーを分けての出走となるが、それぞれこの種目の日本チャンピオンジャージ獲得を目指して走る。

選手・スタッフは大会2日前の15日に開催地入り。到着早々に選手2人は試走を兼ねたトレーニングへと出発し、コースの雰囲気を確かめた。そのなかで選手たちが念入りにチェックを繰り返したのが「周回中盤のアップダウン区間」。あらかじめ発表されていた高低図だけでは実感できない急坂やテクニカルな下りがあり、2人はともにアップダウンで攻められるよう、いかにレース全体でペースを配分できるかをポイントに掲げる。

そのコースは1周13.1km。おおよそ南北に往復するルートで、レース当日の天候や風向きも結果に反映される可能性が高い。いずれにしても、各選手の走力やテクニックがモノをいうコースといえそうだ。

そして、レース前日の16日もコースに出ての最終調整。各選手ともに約1時間、無理のないペースで走り、バイク上でのポジションの確認や脚の調子を確かめている。

今回は3周回・39.3kmで争われる男子エリートに元喜が、2周回・26.2kmの男子アンダー23に大喜が出場。当日は男子アンダー23が先に行われ、大喜が第2ウェーブからの出走。午前10時31分、最後から5人目としてスタートする。男子エリートの元喜は、第2ウェーブの最終走者として午後1時49分にスタート。カテゴリー全体では最後から9人目での出発となる。

出場両選手とも、シーズン当初から目標にすえてきた今大会。高いモチベーションでレース当日を迎える。そしてキナンとしても2015年のチーム発足以来初となる日本チャンピオンの輩出に向けて、選手・スタッフ総力を挙げて戦う。

全日本選手権自転車競技大会ロード・タイムトライアル
キナンサイクリング所属選手の出走時刻

●男子アンダー23(26.2km、9:40競技開始)
10:31:00 山本大喜

●男子エリート(39.3km、12:40競技開始)
13:49:00 山本元喜

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全日本選手権個人タイムトライアルに山本兄弟が出場…日本チャンピオン獲得を目指す

日本チャンピオンを決める戦いが6月17日から始まる。全日本選手権個人タイムトライアルが石川県・能登半島の中央部の志賀町で開催され、キナンサイクリングから山本元喜と大喜の兄弟が出場する。

1周13.1kmのサーキットを舞台に、カテゴリーごとに周回数・距離を変動させて国内タイトルを争う。サーキットコースはおおよそ南北に往復するルート。周回中盤にかけてアップダウンがあり、この区間でいかにペースを保てるかが勝負を左右すると考えられる。

元喜は男子エリートに、大喜は男子アンダー23にそれぞれエントリー。エリートはサーキットを3周回する39.3km、アンダー23は2周回する26.2kmで競う。ともにシーズンイン前からこの大会へ照準を定め、準備を進めてきた。チームとしていまだ実現していない日本チャンピオンジャージの獲得に今回はこの2選手がチャレンジする。

全日本選手権自転車競技大会 ロードタイムトライアル

男子エリート個人タイムトライアル 13.1km×3周回 39.3km
男子アンダー23個人タイムトライアル 13.1km×2周回 26.2km

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山本大喜が50km逃げ続けて周回賞を獲得…JBCF宇都宮クリテリウム

Jプロツアーの2018年シーズン第7戦となるJBCF宇都宮クリテリウムが5月12日に行われた。キナンサイクリングは、スタート直後から果敢に攻めた山本大喜が約50km逃げ続け、レース途中に設けられる周回賞を獲得。得意のアタックと逃げで見せ場を作った。チーム最上位はスプリントに挑んだ中島康晴が4位。次戦に国内戦勝利をかけることとなった。

©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

2017年からクリテリウムとロードレースの連戦となっている宇都宮シリーズ。2018年は開催時期が5月へと2カ月後ろへと下がり、シーズンが盛り上がる最中でのレースとして行われる。クリテリウムは例年同様に同市・清原工業団地内に設けられる3kmのサーキットコースが舞台。20周回・60km、オールフラットなレイアウトのもと争われる。ポイントは、1周回あたり7カ所のコーナー。特に周回中盤にはヘアピンカーブも待ち受け、勝負がかかる終盤の駆け引きではポジショニングの巧みさがものをいうコースだ。

2018年から予選が廃止され、一発決勝となったことにともない、チームごとに出場枠が変動。3月18日に開催されたJBCF修善寺ロードレース終了時、ランキングでトップ10に入ったチームには最大6人の出場枠が与えられる。一方、11位以下のチームは最大5人。キナンは対象レース時にJプロツアーに出場していなかったこともあって下位扱いに。今回は5人で臨むことになった。

メンバーは山本大と中島のほか、山本元喜、雨乞竜己、新城雄大。数的に見ればランキング上位チームに対し不利ではあるものの、2017年のこのレースで雨乞が2位に入り、トップシーンに躍り出るなど相性はよい。今回も抜群のスプリントを持つ雨乞を軸に戦術を組み立てることとなった。また、ネオプロの山本大はJプロツアー初参戦。2月にはロードアジア選手権でチームタイムトライアル、アンダー23(23歳未満)ロードレースの2冠を達成。春はフランスやベルギーを拠点に走り、調子を上げてチームへと合流している。

午後0時50分に号砲が鳴ったレースは、その山本大がスタート直後から逃げ狙いのアタックに反応。逃げメンバーの入れ替わりがありながらも、山本大は先行を続け、やがて3人の逃げグループに落ち着く。その間、5周回ごとに設けられる周回賞の1回目を迎え、トップ通過をねらった山本大は惜しくも2位。それでも勢いはそのままに、メイン集団とのタイム差を広げていった。

山本大を逃げに送り込んだキナン勢は、残る4人が集団の前方をキープ。この先の展開に備える。また、集団全体のペースを抑え、逃げグループとのタイム差拡大もねらう。ライバルチームの負担を大きくするための戦術的な動きを繰り返した。

逃げる3人が完全に協調態勢に入ったこともあり、周回賞も3選手が均等に分け合う形となる。山本大は10周目をトップ通過し、周回賞を確定させる。メイン集団とのタイム差は12周目でこの日最大となる52秒差。ただ、これを機にメイン集団も有力選手を抱えるチームを中心にペースアップ。周回を追うごとに5秒から10秒ずつその差が縮まっていった。

15周目に設けられた周回賞を終えると、逃げグループでは山本大がアタック。一緒に逃げてきた2人をあっという間に引き離し、独走態勢に持ち込む。一方のメイン集団ではスプリントに備えて残る4人が集団内でのポジションアップを図る。やがてスプリントトレインを形成。山本、新城、中島、雨乞の並びで集団前方を確保した。

先を急ぐ山本大は、独走になってからさらにラップタイムをアップさせる粘りの走り。大歓声の中、最終周回に入るまでトップを快走し続けた。それでも、終盤の勢いは集団が上回った。最後の1周回に入ってすぐに山本大は吸収され、勝負はスプリントにゆだねられた。キナンは雨乞のスピードに懸け、集団最前列からの発射をねらう。しかし、どのチームも思惑が同じこともあり、主導権争いは混沌。スピードが上がる中でキナン勢は中島が雨乞の引き上げを試みるも、隊列が崩れたまま最終コーナーへと入っていく。残るは約150m。

集団のいたるところで中切れが発生したこともあり、最後の直線にトップでやってきたのは中島を含む4人。中島がそのまま勝負に出ることとなったが、最終コーナーを抜けた順番に大きな変化は生まれず、4番手のままフィニッシュラインを通過。後方からの加速を余儀なくされた雨乞が7位で続いた。

チームとしては山本大を逃げに送り込み、他チームに集団コントロールを任せながら、スプリントに備える理想的な形でレースが進んだが、あと一歩のところで表彰台、そして優勝を逃すこととなった。トップ10に2選手が入ったとはいえ、勝利をターゲットに臨んだだけに、悔しい結果に終わった。

一方で、最終局面までのレース運びが順調であったことや、各選手の調子のよさは、それぞれに与えられた役割が果たされた点からも明確となり、収穫も多い一戦だったといえる。なによりキナンのジャージでは公式戦デビューだった山本大がセンセーショナルな走りでレースを沸かせたあたりも、今後の戦いにおけるチーム力の上積みを計算できる材料となるだろう。

今回の悔しさを糧に、チームは13日のJBCF宇都宮ロードレースに照準を定める。このレースにはクリテリウムに臨んだ5人に加え、椿大志、塚本一樹、中西健児が出場。チーム出走人数の上限である8人で出走する。レースは鶴カントリー倶楽部周辺に設けられる6.7kmのサーキットを14周回する93.8kmで争われる。毎年10月のジャパンカップサイクルロードレースでも使用されるコースと一部同じ区間を走る、終始アップダウンが連続する難コース。周回終盤には長い急坂も登場し、勝負を左右するポイントとなる可能性が高い。

キナンはクリテリウムの雪辱戦とすべく、得意のサバイバルな展開から勝機を見出していくこととなる。

JBCF宇都宮クリテリウム結果(60km)
1 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) 1時間21分50秒
2 アイラン・フェルナンデス(スペイン、マトリックスパワータグ) +0秒
3 鈴木龍(宇都宮ブリッツェン)
4 中島康晴(KINAN Cycling Team)
5 黒枝咲哉(シマノレーシング) +1秒
6 横山航太(シマノレーシング)
7 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +2秒
40 新城雄大(KINAN Cycling Team) +34秒
63 山本元喜(KINAN Cycling Team) +58秒
79 山本大喜(KINAN Cycling Team) +1分51秒

周回賞
2回目(第10周回) 山本大喜(KINAN Cycling Team)


山本大喜のコメント
一度決まりかかった逃げで捕まってしまったので、もう1回決まりそうな逃げを待って、2人が先行したところに自分も加わった。1回目の周回賞は獲れなかったが、自分たちの逃げが完全に決まったこともあって、きれいにローテーションするために2回目以降の賞は分け合うことで(逃げメンバー間で)話し合った。後半に入って集団とのタイム差が縮まっていたので、3回目の周回賞通過を待って独走することにした。
翌日の宇都宮ロードレースも含め、今後のレースを視野に入れて上りを重視したトレーニングを続けてきた。平坦のクリテリウムでも走りの感覚はとてもよかったので、ここまで順調にきていると思う。今年はまだチームとして国内レースでのタイトルが獲れていないので、宇都宮ロードレースは勝つことにこだわって走りたい。

中島康晴

中島康晴のコメント
スタートから(山本)元喜、大喜、(新城)雄大と、3人がうまく動いてくれて、その流れから大喜が逃げに入ることができた。大喜が長い時間逃げてくれたおかげで自分たちは集団内でもよい位置取りができたし、脚を貯めながら重要な局面への準備をすることができた。展開としては完ぺきだった。最終局面に向けて、他チームがペースを上げたときもしっかり対応できていた。
スプリントに向けた動きの中で隊列が乱れてしまい、自分と雨乞も離れてしまった。なんとか他チームの動きに合わせながら立て直しを図ったが、最終コーナーを抜けた時点で雨乞との差が開いてしまっていたので、自分がスプリントする形に切り替えた。正直、自分がなだれ込んだだけで、優勝はおろか、表彰台にも上がれずとても悔しい。
翌日のロードレースは8人で出走するが、中にはジャパンカップなどで走り慣れている選手もいるので、上りに強いメンバーを中心にレースを組み立てたい。クリテリウムを走った選手はみな調子がよいので、ロードレース一本に備える選手たちと融合して勝ちにいこうと思う」

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