アルカンシエルを戴冠したパンプトラックの男女覇者

数ある自転車競技の中で唯一ペダルをこいではいけない「パンプトラック」の世界選手権がスイスのベルンで開催され、米国代表の男女、トミー・ズーラとペイトン・リドノーが優勝。2年目の開催となる今回から国際自転車競技連合の公認大会となり、世界チャンピオンに与えられる5色の虹色ジャージ、アルカンシエルが与えられた。

トミー・ズーラが世界チャンピオン ©Dan Griffiths / Red Bull Content Pool

ペダルをこがない種目が世界公認に

フランス語で「虹」という意味のアルカンシエルは自転車競技界においての世界チャンピオンの称号。年に一度の世界選手権で勝った選手は1年間アルカンシエルを着用するのが伝統だ。今回初めてパンプトラックも国際公認種目となり、男女の優勝者にアルカンシエルが与えられた。

ペイトン・リドノーがパンプトラック世界選手権で優勝 ©Dan Griffiths / Red Bull Content Pool

パンプトラックは起伏のあるコースを体重移動で加速したり、半球状の180度コーナーなどを利用してペダルをこがないで前進してゴールを目指す。1対1の勝ち抜き戦だ。使用する自転車は20インチのBMXや26インチのMTBなど。ペダルは足乗せとしてあるが、こいではいけないのがルール。2018年の第1回大会は米国で開催され、スイスのデビッド・グラーフとクリスタ・フォンニーダーハウゼンが男女で優勝。そして今回はスイス開催で米国勢が頂点に立った。

各国予選を勝ち抜いた130人以上の選手が参加。22カ国・26選手が予選を通過した。本戦は厳しい雨に見舞われたが、会場に詰めかけたファンが選手を後押しした。

世界チャンピオンのトミー・ズーラ(左)とペイトン・リドノー ©Red Bull Content Pool

ルールで自転車の効率性を打ち消してしまった

もともと自転車は人力で進む移動手段としてとても効率的に作られているのが特徴だ。回転運動を前進に置き換えるペダルやチェーンの発明は画期的だった。それを使わないで前に進もうという競技なのだから、国際団体がアルカンシエルを与える種目として公認したのは異例とも言える。

ルールで「効率化」を打ち消しているのだから体力消耗は想像以上。起伏を上ったり降りたりするときに、ハンドルをポンプ(パンプ)するように勢いをつけて推進力を得る。上半身を含めた全身の筋肉をフル稼働。さらにどのタイミングで重心を移動させるかがポイントで、高度な操縦技術を持っていないと速く走れない。

UCI公認の世界選手権となったパンプトラック ©Dan Griffiths / Red Bull Content Pool

男子優勝のズーラはBMX競技選手として知られているが、このレースに勝つために26インチのMTBに乗り換えた。BMXメーカーにMTBの試作車を作ってもらい、試乗して改良しながら本番に備えた。周囲は「MTBでは勝てない」という声が多かったが、車輪径の大きい自転車の優位性を突き詰めた身体の動きを修得。それが今回の勝利の要因だった。

「8歳から自転車に乗っているけど世界チャンピオンになる日が来るなんて信じられない」と大会を制して喜ぶズーラ。「遠征ばかりで家族に迷惑をかけてきた。とりわけ自転車を教えてくれた祖父に感謝を伝えたい」

このあとはアフリカ大陸に渡り、現地のこどもたちに自転車に乗ることの魅力を伝えるプロジェクトに注力したいという。

トミー・ズーラがパンプトラックを攻める ©Dan Griffiths / Red Bull Content Pool

女子優勝のリドノーも「手にしたアルカンシエルを壁に飾りたい」と喜びを語った。5歳からBMXレースを始め、ずっと世界タイトルを夢見ていた。今回は本職とは異なる異種目での優勝となるが、リドノーにとっては夢を手中にしたという感慨がひときわ大きい。

女子の世界チャンピオンとなったペイトン・リドノー ©Dan Griffiths / Red Bull Content Pool

「これからもBMXレースを継続していくが、今回の経験がさらに飛躍をもたらすと感じている。来年は世界タイトルを守りたい。もう今から待ちきれない」

●UCI BMXレーシングのホームページ

唯一ペダルをこいではいけない自転車種目に初代世界チャンピオンジャージ

米国の男女デュオ、トミー・ズーラとペイトン・リドノーが、スイスのベルンバイクパークで行われたレッドブルUCI(国際自転車競技連合)パンプトラック世界選手権で優勝。UCIが自転車競技の世界チャンピオンに与える5色の虹色ジャージ、アルカンシエルを初戴冠した。

世界チャンピオンのトミー・ズーラ(左)とペイトン・リドノー ©Red Bull Content Pool

アルカンシエルは自転車競技界においての世界チャンピオンの称号。世界選手権で各種目の優勝者に1年間、アルカンシエルを着用させるのが伝統だが、今回初めてパンプトラックもUCI公認種目として開催され、男女の優勝者にアルカンシエルが与えられた。

パンプトラックは起伏のあるコースを体重移動やバンクなどを利用して、ペダルをこがないで前進してゴールを目指す種目。今回のレースにはBMXのオリンピック選手やMTB界の有力選手らが参戦した。

女子の世界チャンピオンとなったペイトン・リドノー ©Dan Griffiths / Red Bull Content Pool
トミー・ズーラがパンプトラックを攻める ©Dan Griffiths / Red Bull Content Pool

2018年、米国アーカンソー州で第1回パンプトラック世界選手権が開催された。このときはスイスのデュオ、デビッド・グラーフとクリスタ・フォンニーダーハウゼンが優勝し、地元スイスでタイトルを守るために戻ってきた。

130人以上の選手がスイスのベルンにあるスイスバイクパークに集まり、最先端のパンプトラックに挑み、22カ国・26選手が予選を通過した。

ファイナルは厳しい雨に見舞われたが、会場に詰めかけたファンが選手を後押し。世界チャンピオンとしては2代目となるが、パンプトラック種目として初めてのアルカンシエルが優勝者に授与された。

UCI公認の世界選手権となったパンプトラック ©Dan Griffiths / Red Bull Content Pool

●UCI BMXレーシングのホームページ

榊原爽、中井⾶⾺、丹野夏波参戦…レッドブル・パンプトラック日本大会

レッドブルは、ペダルをこがない⾃転⾞レースの世界選⼿権Red Bull Pump Track World Championship(レッドブル・パンプトラック・ワールドチャンピオンシップ)を2018年に初開催する。同レースは、ウェーブ状に起伏が連なるパンプトラックで、MTBまたはBMXのペダルをこがずに重⼼の調整だけで推進⼒を得て加速を繰り返し、順位を競うレース。

©Sven Martin/Red Bull Content Pool

その日本での予選大会が8月5日(日)に北海道余市郡赤井川村で行われる。ゲストライダーとしてMTBダウンヒルレーサーの永⽥隼也、井⼿川直樹、栗瀬裕太、BMXレースの榊原爽、中井⾶⾺が登場。BMXレースの⼥⼦ジュニア世界ランク3位、丹野夏波、BMXフリースタイル⽇本ナショナルチームの⼤霜優⾺が参戦する。

予選は日本を含む世界17カ国で開催され、日本大会の男⼥各上位4人は予選通過者として10月13日(土)に米国アーカンソー州スプリングデールで初開催するRed Bull Pump Track World Championshipへの出場権が得られる。男女優勝者は渡航費・現地滞在費が全額支給される。

BMXの日本代表として年齢別クラスで複数の世界チャンピオンとなった榊原爽 © Andy Green/Red Bull Content Pool

●レッドブル・パンプトラック⽇本予選のホームページ

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ペダルをこがないパンプトラックが世界選手権開催…日本でも8月に予選会

レッドブル・パンプトラック世界選手権が2018年に初開催される。9月7日にスイスのレンツァーハイデで行われることになり、3月10日から世界各国で代表選手選考レースが開催される。日本でも8月5日に北海道の赤井川で行われると発表された。

©Markus Slavik / Red Bull Content Pool

パンプトラックとはペダルをこがないで、身体の重心移動やコースの傾斜を利用して加速力をつけてゴールを目指す新種の種目。機材としてはMTBやBMXが使われる。コースには幾多のコブやコーナーがあり、選手はそれを利用してスピードを維持する。レースは一斉スタート形式とタイムトライアルがある。

©Sven Martin/Red Bull Content Pool

予選会は3月から8月末まで21レース。オランダ、インドネシア、フィリピン、ニュージーランド、インド、南アフリカ、チリ、レソト、オーストリア、米国、エストニア、タイ、フランス、英国、カナダ、リヒテンシュタイン、イタリアなど世界中で回されるという。

各選考会の男女トップ4に世界選手権出場枠が与えられ、優勝者の渡航費は招待扱い。

©Sven Martin/Red Bull Content Pool

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