ツール・ド・フランスを計測するティソの腕時計に注目

ツール・ド・フランスの公式タイムキーパーを務めるTISSOT(ティソ)が、 アモリー・スポルト・オルガニザシオン(A.S.O.)とのパートナーシップ契約更新を発表。ブエルタ・ア・エスパーニャを含めて今後も計測を担当していく。

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世界で最も権威ある自転車レースの公式タイムキーパーであり、 25年来UCI(国際自転車競技連合)のパートナーを務めるティソは、 ツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャをはじめとするA.S.O.が主催するビッグレースとのパートナーシップ契約を更新した。

創業以来168年の長い歴史の中でINNOVATORS BY TRADITION(伝統に根ざし、 伝統を打ち破るイノベーター)として世界中で愛されるウォッチメーカーとしての地位を確立してきたティソは、レースの主催者、アスリート、サイクルロードレースファンのリクエストに応え、極めて高精度の時間計測、スコアリング、ランキング、統計に必要とされるソリューションを提供している。

ツール・ド・フランスでは、ゴール地点での前輪のコンマ1秒、あるいはコンマ1cmの差で勝負が決まることがある。勝利と敗北の時間差を計算するには、技術的なツールが必要であり、 ティソは1938年に初めてスポーツ計時に携わって以来、開発、技術革新、改良を重ねてきた。 

レースではスプリントフィニッシュが肉眼では分析できない場合、高度な技術を駆使して重要な審判の役割を果たす。最も権威あるこのサイクルロードレースの主催者や出場選手、レースの観戦者やテレビ視聴者に信頼のおける結果を提供するために、ティソは1秒間に1万枚の画像を撮影できる高速度カメラを各ステージのフィニッシュラインに設置。

「フォトフィニッシュ」が可能な複数のデバイスを用い、計時だけでなく、スコアリング、ランキング、統計に関するすべての情報を数秒で提供している。 

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コンマ1秒を争う計測には卓越した組織力と献身的な努力が求められる。世界最高峰の自転車レースであるツール・ド・フランスでは、最低でも8人のティソのタイムキーパーが、またタイムトライアルの際には約10人の技術者とともに、全21ステージで活躍している。ティソは平均して4200件以上のフォトフィニッシュ判定を行っていて、280時間の準備を含めるとその作業時間は実に約2600時間におよぶ。

こうした努力の積み重ねなくしては、レース結果も順位も判定することができないという。こうしたタイムキーピングに携わる専門スタッフはいわば影の存在だが、彼らのおかげでツール・ド・フランスを開催することができるのだ。ティソが長年サイクルロードレースに携わっているのは、ひとえに自転車競技にかける情熱ゆえに他ならないという。

品番:T125.617.17.051.00 5万2800円

ログリッチがティソのアンバサダー

1988年から5年間ツール・ド・フランスの公式タイムキーパーを務め、再び2016年からその任に復帰したティソは、ツール・ド・フランスの公式ウォッチも製作している。25年来のUCIの主要パートナーであり、ツール・ド・ロマンディとツール・ド・スイスのスポンサーを務め、2016年からはブエルタ・ア・エスパーニャ、2020年からはジロ・デ・イタリアの公式タイムキーパーも務めている。そんなティソはまぎれもなくサイクルロードレースにおける最強のウォッチメーカーと言える。さらにティソはスロベニアのサイクルロードレースチャンピオン、 プリモシュ・ログリッチをスポーツアンバサダーに迎えている。 

ブラック×イエローのキャンバスストラップ

ティソとA.S.O.とのパートナーシップ契約の更新は、スイスのル・ロックルを拠点とするティソの、自転車界と永続的な関係を築いていきたいという強い意志を表している。ティソのCEOを務めるシルバン・ドラは「ツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャをはじめ、 パリ~ルーベ、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、フレッシュ・ワロンヌといった伝説的なクラシックレースの公式タイムキーパーとして、ティソがA.S.O.とのパートナーシップ契約を更新できることをうれしく思う。 私たちはA.S.O.と長年にわたってチームを組み、極めて高精度な計時ソリューションを提供してきた」と語っている。 

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ツール・ド・フランス大会ディレクターのクリスティアン・プリュドムは 「ル・ロックルにおいて長い歴史をもつウォッチメーカー、ティソとパートナーシップ契約を延長できることを大変光栄に思う。自転車競技は数秒、時には1000分の1秒の差で勝敗が決まることもある。ティソとA.S.O.は偉大なチャンピオンたちの努力を称えるツール・ド・フランスと自転車競技について同じビジョンを共有している」と述べた。

●ティソのホームページ

ボトル投棄の即時失格をUCIが返上も環境保全の姿勢は不変

国際自転車競技連合(UCI)と男女それぞれの自転車競技選手団体が4月14日に会合を持ち、4月1日に発効されたボトル投げ捨てによる即時失格などの厳しい処分を緩和することで合意した。地球環境保全と選手や沿道の観客の安全確保は今後も継続していくという。

©A.S.O. / Pauline Ballet

ボトル投げはファンサービスと選手側が主張

問題の発端は厳格ルール発効直後の4月4日に開催されたツール・デ・フランドルだった。AG2Rシトロエンのミハエル・シャール(スイス)が飲み終わったボトルを沿道で応援するファンのグループの足もとに投げ捨てたことで、レース途中での失格が宣告された。プロ選手が沿道のファンにボトルを投げることは伝統的なファンサービスのひとつで、それを心待ちにするファンも少なくない。シャールと所属チームはその点を主張する声明を発表した。

一方で、自転車レースが行われるコース脇に堆積するゴミ問題は近年、改善すべき課題となっていた。選手らが沿道に捨てるボトルや補給物包装紙などのプラスチック製品は分解されることなく、それが景観を損なう。地球環境の保全に反する行為だと指摘されていた。

また、投げたボトルがはね返って集団走行している選手らの前に転がることで落車が発生した事象も多い。さらにボトルを拾おうと道路に飛び出してくる子供たちが選手や関係車両に接触するという事故例もある。今回のUCIの罰則厳格化はその問題を是正することが出発点だった。

複数回の投棄は失格対象に

これまでの対策としては、ボトルや補給食の包装紙などを捨てていいエリアをコース上に確保し、それ以外で投棄した場合は180〜900ユーロの罰金を科した。しかしそれは抑止力にはならなかった。UCIは毅然とした姿勢を見せるため、2021シーズンの4月1日からワンデーレースに関しては違反選手を即時失格に、ステージレースでは所定のペナルティタイムと最終的な失格を命じた。

今回のUCIと選手団体による話し合いの結果、UCIは1度の違反による即時失格を返上。ワンデーレースでは2度目、ステージレースでは3度目の違反で失格にするなどの緩和策を近く発表する。それでも環境保全と沿道の安全を確保するために毅然とした態度は曲げないという。

●国際自転車競技連合のホームページ

2種類の乗車姿勢が禁止…コロナ禍でシーズンはどう変わる?

コロナ禍中で始まった2021ロードシーズン。主要大会は例年通りの開催を目指し、ツール・ド・フランス直後に東京五輪が行われる予定。依然として感染者数が高止まりする欧州各国で、大会主催者は対策を強化してスタートにこぎ着けたい考えだ。UCI(国際自転車競技連合)がライディングポジション禁止を明確化したことも含め、どんなシーズンになるのか?

ハンドル上部に前腕を乗せて走るDHスタイルは禁止される

UCIが走行時の安全性を確保するために2種類の乗車姿勢を4月1日から禁止する。下り坂でお尻をサドルから前にずらし、フレームに腰を下ろすように身体をかがめる姿勢。ハンドル上部に前腕を乗せて前かがみになる姿勢(写真)だ。どちらも空気抵抗を低減させるためにプロ選手が考案したものだが、不安定になるため禁止された。

コロナ禍でどうなるかはだれにもわからない

2020年はコロナ禍で大混乱した自転車ロードレース。観客席のあるスポーツとは異なり、沿道に立てばだれでも無料で観戦できるだけに、感染防止対策は試行錯誤の連続だった。ツール・ド・フランスの主催社が作った「バブル」というやり方は、非感染が証明された選手と大会関係者を風船のような密閉空間に置き、外部との接触を遮断するという新対策。これが他スポーツにも適用されていった。

3月6日にイタリアで開催されたストラーデビアンケのゴール。一般の人の姿は見あたらない ©Gian Mattia D’Alberto – LaPresse

その効果があったのか、ツール・ド・フランスは奇跡ともいうべき「感染選手なし」で、最終日のパリまで全ステージが行われた。ただし沿道の密まで制御できたとは言えず、フランスはその後第二波に襲われ、1日平均2万人の新規感染者と医療体制のひっ迫状況が今日まで続いている。

今季もすでに中止を発表した大会はいくつかある。UCIもそれを見越して、グランツールと呼ばれる三大大会(ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャ)の参加チームを1増の23とした。欧州の伝統であり、多くの庶民が楽しみにしている主要大会だけは華々しくやりたいという意思の表れだ。

パリ〜ニース第2ステージ ©A.S.O. Fabien Boukla

トップチームに所属する日本勢3人のメジャー大会出場にも期待

グランツールに出場できる可能性がある日本勢は3選手だ。バーレーンビクトリアスの新城幸也は東京五輪代表。「日本にいて五輪のために調整するのがいいと思うが、チームの打診があれば直前のツール・ド・フランスも走る」と決意を語る。米国のEFエデュケーションNIPPOは日本企業がサブスポンサーとなり、別府史之と中根英登を獲得した。名古屋市出身の中根は東京五輪選考に僅差でもれ、今季はメジャーレース参戦を目指して厳しいトレーニングを重ねている。

2021シーズンは五輪開催がキーとなる

2020年はコロナ禍により中止と延期が相次いだ主要大会だが、2021年は例年通りの開催計画に戻った。23日間の日程で行われるツール・ド・フランスは7月の第1土曜に開幕するのが慣例だが、2021年は東京五輪が7月23日(金)に開幕。24日(土)には男子ロードが最初の決勝競技として行われる。そのためツール・ド・フランスが東京に譲歩し、開催期間を1週間前倒し。6月26日から7月18日までの日程とした。また、当初はデンマークのコペンハーゲン市で開幕する予定だったが、1年延期になったサッカー欧州選手権と日程重複することになり、同市が断念。開幕地はフランス国内に変更された。

マチュー・ファンデルプールがストラーデビアンケ優勝 ©Gian Mattia D’Alberto – LaPresse

●2021年の主要レース
3月7〜14日 パリ〜ニース(フランス)
3月20日 ミラノ〜サンレモ(イタリア)
4月4日 ツール・デ・フランドル(ベルギー)
4月11日 パリ〜ルーベ(フランス)
5月8〜30日 ジロ・デ・イタリア
6月26日〜7月18日 ツール・ド・フランス
7月24日 東京五輪男子ロード(日本)
8月14日〜9月5日 ブエルタ・ア・エスパーニャ(スペイン)
9月26日 世界選手権エリート男子ロード(ベルギー)

東京五輪予選を含め自転車全競技が4月3日まで中止に

国際自転車競技連合(UCI)は2020年3月15日に声明を発表し、新型コロナウイルスによる危機的状況のために、4月3日まですべてのUCIカレンダー掲載レースを中止するよう主催者に要請した。日本では3月20日から22日に開催予定のツール・ド・とちぎが対象となる。

沿道に観客がいないコースを走るパリ〜ニース第5ステージ ©A.S.O. Fabien Boukla

各国自転車競技連盟と主催者の一部はすでにレースを延期・中止する決定を下しているが、UCIはプレスリリースを通じて、4月3日まで競技の凍結を要求した。新型コロナウイルスが蔓延する地域でこれ以上の健康被害拡大をしないことが目的。開催・非開催によって影響が生じる国際ランキングや五輪出場枠争いにおける公平性を確保する意味もある。

UCIは前週と週末に複数の危機会議を行って、大会の中止、国際ランキングの停止、東京五輪・パラリンピックの予選会停止という決定を発表した。以下はその概要。

世界保健機関(WHO)によって危険にさらされていると特定された地域の自転車競技主催者は、UCI国際カレンダー上のレースをキャンセルする必要がある。

UCI国際カレンダーのすべてのイベントが中止になることを受けて、すべての国際ランキングを停止。3月15日から再開通知の日まで、少なくとも2020年4月3日まで期間中のUCIポイントは停止される。

2019ジロ・デ・イタリア第19ステージ ©Fabio Ferrari / LaPresse

延期のジロ・デ・イタリアも再設定は保証できず

2020東京五輪・パラリンピックの国別出場枠の配分にも影響が生じる。すでにロード、トラック、パラサイクリング・トラックは出場枠争いが終了しているが、マウンテンバイク、BMXレース、BMXフリースタイル、パラサイクリング・ロードは2020年3月3日からと期日をさかのぼって停止。UCIは、国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)と調整する。

現在のところは4月3日までのレースを見送るとしているが、収束に向けての道筋が見られない場合はさらに措置を延長する可能性もある。第二次世界大戦でも中止されなかったツール・デ・フランドルは4月5日開催予定。パリ〜ルーベは12日だ。

ジロ・デ・イタリアをはじめとした主要大会は「開催延期」と発表し、統括団体のUCIに新たな開催日程の割り当てを求めているが、カレンダー上の保証はないとした。プロレースは毎週末にレース開催されているだけに23日間にも及ぶグランツールがどこに移動できるかは不明だ。

●国際自転車競技連合のリリース