作者はアーティスト、それがたまたま障害者というアート展開幕

障害者の作品を集めた展覧会で5回目となる「日本財団ダイバーシティ・ イン・ジ・アーツ公募展」が2023年3月15日から、東京・渋谷のBunkamura Galleryで始まった。観覧無料。

作品を解説する審査員の中津川浩章アートディレクター

公募展は26日まで東京の同施設で開催され、その後は横浜の障害者スポーツ文化センター 横浜ラポールで3月29日から4月2日まで、大阪の阪急うめだ本店9階 阪急うめだホールで4月12日から17日まで行われる。

障害のある人にアート活動の機会を提供し、才能を発掘する

プロジェクトは2018年にスタートし、アートを通じて障害のある人、ない人、全ての人々の交流を促し、感動やよろこびを共有しながら、障害のある人自身が自己の可能性を見いだせるよう、アート活動の機会を提供するとともに、才能あるアーティストの発掘や、障害のあるアーティストの活動の支援を行い、多様性の意義と価値をより広く社会へ伝え、より多くの人へ届けることを目指している。

今回は、国内外12カ国から2246作品の応募があり、各界で活躍する6人の審査員の審査を経て、128作品(審査員賞6作家8作品、海外作品賞1作家1作品、入賞43作家53作品、佳作50作家66作品)が選出された。

いい作品にめぐり会えて、なにかを感じ取ってくれたら

「いい作品にめぐり会えて、たくさんの人に見ていただける機会を作れた。ここに来てなにかを感じ取ってくれたら」と、内覧会の冒頭で日本財団公益事業部国内事業開発チームの齊藤裕美さんがコメントしてくれた。

「公募展は今回の5回で終了となるが、この流れをくんで多様性が浸透する時代になってくれれば」と一般財団法人 日本財団ダイバーシティ・ イン・ジ・アーツの横尾紀彦理事長。

また、「この5年で1.5倍の作品が集まるまでになった。障害者が社会に発信したいという気持ちの現われです。そんなメッセージの発進の場になれた」と国際障害者交流センター ビッグ・アイの鈴木京子プロデューサー/副館長も。

「作者はまず第一にアーティスト、その次に障害者なんです」と審査員を務めたエドワードM.ゴメス氏

また、公募展の審査委員長で、東京藝術大の秋元雄史名誉教授は、「作品の背後にある息遣い、言葉にならない感情が、使用される色などを通していろんなものを感じられる。奥行きのあるものばかり。アートの再発見ができた」と総評した。

●日本財団ダイバーシティ・ イン・ジ・アーツのホームページ

障害者のアート展に目からうろこの着目点…次回作品も募集へ

第4回となる「日本財団ダイバーシティ・ イン・ジ・アーツ公募展」が2022年4月13日から、東京・渋谷のBunkamura Galleryで始まった。障害者の作品を集めた展覧会だ。DIVERSITY(多様性)などと言われてもピンと来ない層がどうやって観覧したらいいのか不安だったが、ポイントを教えてもらうとその芸術性の価値観がわかるような気がして、極めて興味深い作品展であることを理解した。

第4回日本財団ダイバーシティ・ イン・ジ・アーツ公募展

日本財団が進める「日本財団DIVERSITY IN THE ARTSプロジェクト」は、「障害者と芸術文化」の領域への支援を通して、だれもが参加できるインクルーシブな社会の実現を目指すプロジェクト。そうは言われても「インクルーシブ=包括的な」ってなに?とそれだけで他人ごとであるような気がして身構えてしまう。「仲間はずれにしない」とか「みんないっしょに」という平易な言葉に置き換えてようやくイメージがつかめる程度だ。

ましてや、さまざまな障害がある人が手がけた作品をどうとらえ、どう評価するか。一般的な芸術鑑賞よりも高いレベルの見識が求められるような気がして、それだけで逃げ出したくなる心境だ。多くの人にとっても、その心境は共通するのではないかと推測している。

オープンに先立って報道関係者内覧会が行われた

だれかとつながりたいと思っている人の表現が集まっている

「例えばインクルーシブな世界であるとか、多様性をお互いが認め合うなどと言葉では言いますが、人と人とが分かり合うのはとても難しいんです」と、内覧会の冒頭で日本財団公益事業部国内事業開発チームの榎村麻子シニアオフィサーがコメントしてくれた。

「文化を通して(そういった閉塞感を)少しでも解きほぐしたい。現在の難しい世の中において(このアート作品展が)日常の光となってくれればうれしいです」

また、「だれかとつながりたいと思っている人の表現が集まっている」と国際障害者交流センター ビッグ・アイの鈴木京子プロデューサー/副館長も。

なるほど。そういった気構えをもって、改めてギャラリーに並んだ作品群を見てみよう。

第4回日本財団ダイバーシティ・ イン・ジ・アーツ公募展アートディレクターの中津川浩章さん

障害は長所にもなる。感覚の素晴らしさが生かされるから

4回目となる作品展には、国内外より2122点の応募があった。各界で活躍する6人の審査員により選出された作品が渋谷のBunkamura Galleryに展示されている。この日、一般来場に先立って行われた報道内覧会では、審査員の1人である美術家/アートディレクター中津川浩章さんが解説してくれたのだが、芸術をこう見ればいいというアドバイスをもらうと、それだけで作品の秀でたところが浮き彫りになってきて、芸術というものに接したことのない人でもその価値が十分に理解できるようになるから不思議だ。

「ピカソのような線が描かれた」木炭画。

「美術学校で習得するような点画を、だれに習ってもいないのにそれができる」という作品は画用紙に色鉛筆で描かれたもの。

「過集中は日常生活下では生きづらいけど、アートとしてはいいものが生まれる」。

「セラピー的な効果があるかもしれません。芸術を作る意図はなくて、ただ楽しいからやっている。でもそこに芸術的価値が認められていく」。

「障害は長所にもなります。感覚の素晴らしさが生かされますから」。

「生涯は芸術的には長所にもなる」と中津川浩章さん

会期中に中津川さんのようにギャラリーツアーしてくれる人はいないと思うが、公募展の作品図録(2500円)を閲覧しながら見て回ることで、作品1つひとつにおける背景の奥深さを感じながら楽しめる。

第5回の作品応募は2022年6月15日から30日まで

公募展は、障害のある人自身が自己の可能性を見いだせるように、アート活動の機会を提供することがねらい。才能あるアーティストの発掘や、障害のあるアーティストの活動を支援していく目的もある。

家族や知り合いにもし障害のある人がいるならば、ぜひこのプロジェクトを活用することをおすすめしたい。制作する際の、素材やテーマは自由。絵画、イラスト、グラフィックデザイン、書、写真、造形などさまざまな作品が対象となる。
●第5回日本財団ダイバーシティ・ イン・ジ・アーツ公募展の詳細ページ

第4回日本財団ダイバーシティ・ イン・ジ・アーツ公募展は、2022年4月13日(水)~24日(日)まで。10:00~19:00。会場はBunkamura Gallery/Wall Gallery。入場無料。
●Bunkamura Galleryのホームページ