スペイン語や本の執筆も。まだ手をつけていませんが…椿大志

KINAN Cycling Teamがシーズン再開の日を待ちながら過ごしているチームの様子をお届けする「Stay Homeインタビュー」。今回は椿大志選手。現在の生活、シーズン再開への思い、そして今後の目標…いまの選手の姿をお見せします。

©Syunsuke FUKUMITSU

-元気に過ごせていますか?
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ意味で、人との接触は最低限にとどめて、トレーニングも1人で行うようにしています。トレーニング中にサイクリストとすれ違うことがあっても、一言あいさつ程度に済ませるといった点も心がけて過ごしています。いまのところは体調に問題ありません。

-現在トレーニングはどのように行っていますか?
本来であればシーズン真っ盛りの時期なので、ハードかつ長時間のトレーニングをしているところですが、レース日程が確定していないので、ひとまずは夏にシーズン再開することを前提に、コンディションを整えるようなメニューや、体を作り直すようなトレーニングを行っています。

-あらゆる面で自粛が求められている中、1日をどのように過ごしていますか?
基本は、朝起きて、トレーニングを行って、あとは食事して寝る…くらいですね。リカバリーの日は軽くトレーニングをしてから、たまっていた掃除をしたり、買い出しに行ったりしています。

-こうした状況下で、モチベーションはいかにして保っていますか?
もともと自転車に乗ることが好きなので…、まぁ確かにレースがなくてつまらなさを感じることもありますが、淡々と、サイクルコンピュータとにらめっこしながらトレーニングすることが好きなので、この状況をそれほど気にはしていなくて、「まぁ仕方ないか」くらいの感覚でいます。

©Syunsuke FUKUMITSU

-自転車に限らず、日々何か楽しみを見つけていますか?
空いた時間に何をするかが最近一番困っていることですね。アウトドア系の趣味が多いので、どこにも行けないこの状況はなかなか厳しいものがあります。最近は読書をしたり、映画を観たり、ゲームをしたり…というのが多いですかね。最近観た映画ですか…好きな映画を何回も観るタイプなのですが、すでに10回くらい観ている「ディパーテッド(THE DEPARTED)」という香港映画をリメイクした作品を、この期間中に改めて2,3回観ました。

こういう時だからこそ何か新しいことをやってみようとも思っていて、本当にちょっとだけですけどスペイン語を…手元に辞書だけしかないですが、勉強してみようかなと。あと、チームのオリジナルグッズとして、本を書いてみようかなと思っていて。まだなにも手はつけていないのですけど、とりあえずタイトルは「幻のツール・ド・モルッカ(※1)」に決めていて、それを書こうかなと。さすがに(山本)元喜の本(※2)のようにはいかないですけど、冊子レベルでなにか書いてみようかなと思っていたり…。とにかくなにかいろいろやってみたいですね。まだなにひとつ手をつけられていませんが(笑)。
※1 2017年のツール・ド・モルッカ第4、第5ステージで2連勝し、ポイント賞を獲得
※2 山本元喜著「僕のジロ・デ・イタリア」

-「Stay Home」が叫ばれる中で、なにか健康を維持する効果的な方法があれば教えてください
自転車に限らず、ウォーキングでも何でもよいので、軽い運動に取り組んだ方がよいと思います。感染を防ぐ意味では家から一歩も出ないのがベストですが、そればかりにとらわれると、かえって筋力や免疫力が下がってしまいかねないので、30分程度でも歩いたり自転車に乗ったりしてみてほしいですね。きっとストレス発散にもつながるので、無理のない範囲でぜひ行ってほしいです。

-食生活で気を付けていることはなにかありますか?
いつも通りですね。最低限、体重が増えないようにだけは注意して、おやつを欲している時でも食べ過ぎないようにだけはしています。

-レースに目を向けて、ニュージーランドとオーストラリアで走ったシーズン序盤戦を振り返って、どんな走りができましたか?
日本だとまだオフシーズンの時期(1~2月)にニュージーランド、オーストラリアで走ることができたのはプラスに働くと思います。次の目標に向かっていくタイミングでのシーズン中断になりましたが、体調の維持ができていますし、この先段階を追って徐々に体力レベルを上げていければシーズン再開後にも順応できると感じています。

-UCI通達により7月に入ってからのレースシーズン再開に向けた動きが出てきました。これからはどこを目標にすえて取り組んでいきますか?
すべてが順調に運んでシーズン再開に至れば、8月から10月にかけて重要レースが多く入ってくるのではないかと思っています。これからは、そこに向けて調子を上げていきたいと考えています。

聞き手:KINAN Cycling Teamメディアオフィサー 福光俊介
インタビュー実施日:2020年4月18日

●キナンサイクリングのホームページ

キナンサイクリングが2020シーズンのチームウエア公開

KINAN Cycling Teamが2020年シーズンに選手たちが着用するチームキットを公開した。ジャージサプライヤーのチャンピオンシステム社製は変わらず、白地にメインスポンサー「キナン」のコーポレートロゴが胸部・両袖・背部にプリント。タイヤサプライヤーのIRCタイヤのコーポレートロゴが両肩にあしらわれている。

キナンの2020ジャージを着る椿大志

2020年シーズンに向けた大きなトピックとしては、腹部にキナンのコーポレートロゴにインスパイアされた幾何学模様がデザインされている点。選手たちの走りとあわせて、デザインによるインパクトが応援する人の目と心を惹きつけるはず。

ビブショーツは従来のホワイト・ネイビーの2色から、ネイビーのみにカラーリングを統一。力強さを表現するとともに、大腿部にキナンのコーポレートロゴをモチーフとしたレッドのワンポイントパターンがインパクトを与える。

2020年1月1日より新デザインのジャージをまとって選手たちがチーム活動する。

●キナンのホームページ

椿大志がおおいたアーバンクラシックで日本勢最高の5位

大分市で8月11日まで開催された「J:COM presents OITAサイクルフェス!!!2019」。この日はメインレースとなる「おおいた アーバンクラシック」が行われ、5選手で挑んだKINAN Cycling Teamは椿大志が日本人選手最上位となる5位でフィニッシュ。前日の「おおいた いこいの道クリテリウム」に続く上位フィニッシュを決めた。また、終盤に追い込んだ山本元喜も7位と続き、2選手がUCIポイントを獲得した。

椿大志がおおいたアーバンクラシックで5位 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日は大分駅前で「おおいた いこいの道クリテリウム」が実施され、積極策を実らせた椿大志が2位入賞。ハイスピードかつテクニカルなコースでの戦いで、優勝こそ逃したがよい形で終えることができている。

連戦となるこの日は、前日とは打って変わってアップダウンの連続する変化に富んだレイアウトが特徴的。1周11.6kmのコースは住宅街を抜け、周回終盤に控えるハードな上りは勝負どころになる可能性も高い。これを13周回・150.8kmのレース距離に加えて、気温30度を超える暑さも相まって、サバイバル化することが予想された。

このレースへは、クリテリウム同様に国内外の18チームがエントリー。KINAN Cycling Teamからは、山本元、椿のほか、大久保陣、山本大喜、中島康晴の5選手がスタートラインへ。なお、UCIアジアツアー1.2クラスにカテゴライズされ、トップ10フィニッシュでUCIポイントが付与される重要レースでもある。

戦前の予想通りとなったレースは、3周目に20人の先頭グループが形成される。スタート直後から集団前方に位置し、あらゆる動きに対応できる態勢を整えたKINAN勢は、山本元と椿が20人のグループに加わる。有力チームのほとんどが最低でも1人は選手を先頭へと送り込んだこともあって、後続に対してリードを得ながら進行していく。

実質の追走グループとなった第2集団では、先頭へメンバーを送り込むことができなかったチームや、全戦への厚みを加えたいチームがアシスト陣を使って前を目指す。この中には山本大と中島が待機する形に。先頭グループと第2集団とのタイム差は1分台で推移した。

形勢に変化が生まれたのは7周目。1分台だった両グループの差は一気に3分台にまで開くと、第2グループではこの状況を嫌った選手たちによるアタックが散発。出入りが激しくなる中、9周目に中島を含む4人が追撃を本格化。徐々に先頭グループとのタイム差を戻していき、11周目を終える頃には約30秒差にまで縮小させた。

タイミングを同じくして、先頭グループでも動きが出始める。11周目に入って1人がアタック。これをきっかけに、勝負どころを見据えた動きが少しずつ見られるようになる。それでも決定打はないまま進んでいき、山本元と椿は重要局面に備えて落ち着いて走り続けた。

そして残り2周、序盤から続いた先頭グループの態勢についに変化が訪れた。アタックをきっかけに椿らが反応すると、5人がそのまま抜け出すことに成功。残された選手たちは牽制状態となり、椿ら5人がそのままリードを広げていく。その後、後ろから3選手がブリッジを成功させて先頭グループは8人と膨らむが、後続に対してリードを広げて逃げ切る構え。この周回の終盤に1人が飛び出すと、さらに活性化し、優勝争いは完全に椿らのグループに絞られることとなった。

迎えた最終周回。先行していた選手をキャッチし、この時点で先頭グループは6人まで絞られる。各選手が勝負どころを探る中、残り3kmで椿がアタック。下りを利用して加速を狙うが、ここは優勝争いのライバルたちの厳しいチェックにあってしまう。これに代わって残り2kmから1人が加速し、椿は追う側へ。残り500mを切ってコーナーを過ぎると、あとはフィニッシュまでの上り基調。

最後の上りへ5番手で入った椿だったが、先に最終コーナーを過ぎた4人の勢いには勝てず。残り300mから始まった上りスプリントにはわずかに加わることができなかった。それでも番手を下げることなく、5位を確保。前日のクリテリウムに続く上位進出を決めた。

この結果により、椿は今大会の日本人選手最上位に。先着4選手がいずれもUCIアジアツアーでのライバルでもあり、あと一歩のところで敗れたことを悔やんだが、連日で一定の成果を残したあたりは大きな収穫に。これにより、UCIポイントで15点を獲得した。

優勝争いの後方では、山本元が抜け出すことに成功し、最終的に7位でフィニッシュ。こちらもUCIポイント圏内で、5点を獲得している。また、中盤から猛追した中島は18位。先頭グループ合流目前で動きがあったことから、最後まで前を追うことを余儀なくされたが、粘り強く走り切っている。

これで、大分での2連戦は終了。椿の連続上位進出をメインに、UCIポイント合計20点を獲得するなど、日本人選手だけでのメンバー編成でも戦えることを示した機会となった。ビッグレースが控える今後に向けても、各選手の状態のよさも含めて戦力・戦術の幅が広がっていくことが期待できる。

KINAN Cycling Teamの次戦は、8月19日から23日までのツール・ド・インドネシア(UCIアジアツアー2.1)。チーム力や総合力が試されるタフな戦いに挑むことになる。出場選手については近日中に発表を予定している。

J:COM presents OITAサイクルフェス!!!2019 おおいたアーバンクラシック(150.8km)結果
1 ドリュー・モレ(オーストラリア、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム) 3時間36分31秒
2 マラルエルデネ・バトムンフ(モンゴル、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム)+0秒
3 イーヴァン・バートニク(カナダ、エックススピードユナイテッドコンチネンタル)+3秒
4 ニコラス・ディニズ(カナダ、エックススピードユナイテッドコンチネンタル) +6秒
5 椿大志(KINAN Cycling Team) +10秒
6 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング) +28秒
7 山本元喜(KINAN Cycling Team) +1分21秒
18 中島康晴(KINAN Cycling Team) +3分0秒
DNF 山本大喜(KINAN Cycling Team) 
DNF 大久保陣(KINAN Cycling Team)

椿大志のコメント

椿大志

「本当に悔しい。レース展開や脚の具合からして、どうやっても勝てる手ごたえがあった。最後はみんな疲れている様子が見てとれたので、思い切ってアタックしたがチェックされてしまい、よくない状況から抜け出せなくなってしまった。結果的に余力の差が出てしまった。チームとしてはプラン通り走ることができ、みんなそれぞれに重要な動きには対応できていた中で勝負を託してもらったが、自分がやるべき仕事の部分で力負けしてしまった。
“完全復活”というには、まだまだあと二段階くらいは上げていく必要があると思っている。この先のレースプログラムが多数控えているので、シーズン後半の形をしっかりと作りたい。
個人的には久々にレースができている感覚がある。UCIポイント獲得については、今回は最低限。もちろんゼロで終わってしまうよりマシなので、チーム全体としてよい結果だったとポジティブにとらえたい」

●キナンのホームページ

椿大志がおおいたいこいの道クリテリウムで2位

大分県大分市を舞台とする自転車の祭典「OITAサイクルフェス!!!2019」が8月10日に幕開け。この日のメインイベント「おおいた いこいの道クリテリウム」が大分市街地にて行われ、5選手が臨んだKINAN Cycling Teamは椿大志が2位入賞。優勝こそ逃したが、レース序盤、後半と効果的な動きを成功させ、積極策を実らせた。

椿大志が「おおいたいこいの道クリテリウム」で2位  ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

レースイベントとして国内はもとより、海外からの注目度も高まっている今大会。2019年もクリテリウムに始まり、翌日にはUCI公認のロードレース「おおいたアーバンクラシック」が実施される。今回は国内外から18チームがエントリー。これまでの秋開催から真夏へと移行し、より熱く、より華やかにレースや関連イベントが展開されていくことになる。

大分での2連戦にあたり、KINAN Cycling Teamは山本元喜、椿大志、大久保陣、山本大喜、中島康晴の5選手を招集。オール日本人編成で勝利を狙っていくことになる。

「おおいた いこいの道クリテリウム」は、大分駅前の目抜き通りを使って1周1kmのサーキットコースを設定。これを30周する総距離30km。オールフラットで、レースの重要ポイントとなるのは180度ターンと4カ所の鋭角コーナー。勝敗を分けるのは、コーナーワークとポジショニングとなる。周回最後のコーナーからスタート・フィニッシュが置かれるコントロールラインまでは約350m。スプリント勝負が予想される中で、このコーナーをどの番手でクリアするか、そして緩やかなカーブになっているフィニッシュ前でいかに最短ラインを確保できるかも上位進出へのカギとなる。

レースはまず、序盤の探り合いから5人がリードを開始。この中に椿が乗り、プロトンの活性化につなげる。メイン集団に残った4選手もスタートから前方を固め、レース展開を見ながら動きを定めていく構え。椿が加わった逃げグループは、1回目の中間スプリントが設定された10周目を前に集団へと引き戻されたが、チームとして上々の形でレース前半の流れを作った。

1回目の中間スプリントを狙った動きから、2選手が新たにリードを開始。10秒から15秒ほどのタイム差でメイン集団は続く。やがて1人、また1人と先を行く2人を追う動きが見られ始め、力のある選手たちが逃げグループへと合流していく。

選手たちが着々と残り周回を減らしていく中、このレースの重要な局面が残り8周で訪れた。新たに形成された4人の追走グループに椿がジョイン。再び前をめがけてスピードを上げた。この動きを成功させると、先頭グループは一気に8人に膨らんだ。複数メンバーを送り込んだチームを中心に逃げ切りに向けた機運を高めると、メイン集団とのタイム差は20秒ほどに拡大。集団ではスプリントを狙うチームを中心にペーシングを本格化させるが、勢いづく先頭グループとの差は簡単には縮まらない。椿は先頭交代のローテーションに加わりながらも、余裕をもってハイペースに対応。レース終盤に向け、態勢を整えていく。

メイン集団に残ったKINANメンバーでは、残り3周で山本元がアタックを試み先頭への合流を狙うが、厳しいチェックにあい集団へと戻る形に。残り2周では山本大が集団からリードを奪ったが、スプリンターチームにその差を埋められ、集団へと引き戻されてしまう。

一方で形勢を優位にしたのは、椿らの先頭グループ。1人が脱落し、7選手で最終周回へと突入。後続とのタイム差を維持し、逃げ切りを濃厚なものとさせた。

そして運命の最終局面。ここで持ち前のスピードを発揮したのは、2選手を先頭に送り込んだチームブリヂストンサイクリング。窪木一茂選手からのホットラインで今村駿介選手が抜け出し、そのままフィニッシュへ。椿はこの2選手をマークし、最後の直線で今村選手を追ったがわずかに届かず。それでも他選手の追撃は許さず、2番手を確保。2位を確定させ、表彰台の一角を押さえてみせた。

椿にとって、今シーズン初となる上位進出。昨シーズンからけがや不調で不本意な時期を過ごしてきたが、いよいよ本来あるべき姿に戻ってきた。順調にトレーニングを積み、それをレースで発揮したところは本人はもちろん、チームにとっても大収穫のレースとなった。かたや、「詰めが甘かった」と椿が反省するように、あと一歩勝利に届かなかった点もチーム全体が真摯に受け止めている。

椿以下、メイン集団でスプリントに備えた残りの4人では、中島が12位。山本元、大久保、山本大もフィニッシュラインを通過し、出走全選手がしっかりと完走を果たしている。

翌11日は、大分スポーツ公園へ主会場を移して「おおいた アーバンクラシック」へ。周辺の住宅街を縫って進んでいくコースセッティングで、アップダウンが連続する変化に富んだレイアウトも特徴。1周11.6kmのコースを13周回する、総距離150.8kmで争われる。こちらはUCIアジアツアー1.2クラスの国際公認レースで、上位10選手にUCIポイントが付与される。クリテリウムを終えたKINAN Cycling Teamは、このよいムードを本戦ともいえるロードレースにつなげていくことになる。タフな戦いを得意とするチームの真価を発揮すべき一戦だ。

おおいたいこいの道クリテリウム(30km)結果
1 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング) 41分30秒
2 椿大志(KINAN Cycling Team) +0秒
3 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) 
4 イーヴァン・バートニク(カナダ、エックススピードユナイテッドコンチネンタル) 
5 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) 
6 内間康平(チームUKYO) 
12 中島康晴(KINAN Cycling Team) +21秒
38 山本大喜(KINAN Cycling Team) +37秒
49 大久保陣(KINAN Cycling Team) +51秒
55 山本元喜(KINAN Cycling Team) +1分12秒

椿大志のコメント
「序盤と中盤は逃がすと危険だと感じる動きだけチェックするようにしていて、チームとしては残り10周から確実に動いていこうという考えだった。結果的に逃げ切りとなった動きは、力のある選手たちが飛び出したので、対応できるポジションにいた自分がチェックにいった感じ。先頭が8人になった時点で、そのまま逃げ切りを決めようとしている選手が多くいたのと同時に、メイン集団の動きも見えていたので、自分の感覚でも“これは決まったかな”と思いつつ走っていた。あとは脚を残しながら、最後に備えていた。

今まで、調子が良いのに上手くいかないことが続いていて、ここにきてようやくかみ合ってきたかなと思えている。レース中に余裕が生まれているあたりは個人的にも大きな部分。この結果は自信につながる。チームとしても暑さの中でのタフなレースは得意なので、サバイバル化する中でも連携をとりながら戦っていきたい。個人的にも最後までしっかり残って結果につなげたい」

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冷雨に苦しみながらも4選手がメイン集団…ロワールエシェールのキナン

フランスで開催されているツール・デュ・ロワールエシェールは4月12日に第2ステージが行われた。今大会唯一の200km超えのステージは冷雨による過酷な条件下でのレースとなった。そんな中、キナンサイクリングは4選手がメイン集団でフィニッシュ。最上位は雨乞竜己の27位だった。椿大志はレース前半にリタイア。第3ステージ以降は4選手で臨むことになった。

©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

スプリントによる勝負となった前日の第1ステージ。キナンも雨乞で勝負に出たが、最終盤で集団のいたるところで発生した落車により足止めを余儀なくされ、上位進出はかなわなかった。第2ステージは、そのリベンジに賭ける1日となる。コースはスタートからしばらくは平坦基調が続き、140km過ぎと150km過ぎにそれぞれ山岳ポイントが設定。最後はラ・フェルテアンボーの周回を約3周走ってフィニッシュする。第1ステージ同様にスプリント勝負となることが予想されていたが、天候やレース展開次第では定石通りとはならないことも大いに考えられる。キナン勢は引き続き逃げにトライしつつ、スプリント態勢となれば再度雨乞で勝負することを前夜のミーティングで確認した。

この日は早朝から雨が降り、スタート直後からは強さが増していった。また、気温が10度を下回る過酷なレースコンディション。その中でキナン勢は予定通り逃げにトライを繰り返した。しかしスタートから1時間は平均時速49kmとハイペース。集団全体が簡単に逃げを容認するムードではなかったこともあり、50km地点を目前にしてようやく9人の先行が許される。キナン勢はここに加わることができず、メイン集団内で次なる展開に備えることとなった。

スプリントを狙うチームを中心にコントロールされる集団は、逃げる選手たちを常に射程圏内にとらえながら走行。レースそのものは淡々と進行した。だが、キナン勢にとって痛手となる事態が発生。早いペースに対応できなかった椿がリタイアを決断。フランスのレースでの戦い方を知る選手を失うこととなった。4人になったキナン勢は、その後もメイン集団で走行。逃げグループは人数を減らしながら終盤の周回コースへ。ほどなくして集団も続いた。

キナン勢はここから雨乞のスプリントを狙い、ポジションを上げていきたいところだが、集団全体のペースアップと寒さとがたたり、集団中ほどに位置。集団は逃げを最終周回までに捕まえてスプリント態勢へと移る。雨乞もそれに合わせる形でポジションを前へと動かしていった。

雨乞は狙っていたスプリントに加わることはできなかったものの、集団前方を確保してフィニッシュラインを通過。チーム最上位となる27位。新城雄大が84位、中西健児が99位、塚本一樹が106位。いずれもメイン集団内でのステージを終えた。2日間を終えての総合では、84位の新城と108位の中西が主要選手と同タイム。翌日からの攻勢をうかがう。

翌13日に行われる第3ステージは、ドゥルエ(Droué)からバンドーム(Vendôme)までの178kmで争われる。前半と後半にそれぞれ1カ所ずつ山岳ポイントが設定され、終盤はバンドームの周回を約2周走ってフィニッシュ。周回コースは途中、短いながらも勾配8%の上りがあるほか、未舗装区間も登場。集団全体が活性化することは必至で、個人総合成績を視野に入れたレースが展開されるはずだ。今後4人でのレースとなるキナンとしては、逃げに加わるほか、集団内で好ポジションを確保し、レース全体の動きを見ながら勝負どころに備えることになる。

ツール・デュ・ロワールエシェール第2ステージ結果(200km)
1 アロイス・カンコフスキー(チェコ、エルコフ・アーサー サイクリングチーム) 4時間26分9秒
2 マシュー・ギブソン(イギリス、JLT・コンドール) +0秒
3 ヨヒム・アリエセン(オランダ、メテック・TKH コンチネンタルサイクリングチーム)
4 アルフダン・デデッケル(ベルギー、ロット・スーダルU23)
5 キャスパー・フォンフォルサク(デンマーク、チーム コロクイック)
6 パトリック・クラウセン(デンマーク、リワルセラミックスピードサイクリングチーム)
27 雨乞竜己(KINAN Cycling Team)
84 新城雄大(KINAN Cycling Team)
99 中西健児(KINAN Cycling Team)
106 塚本一樹(KINAN Cycling Team)
DNF 椿大志(KINAN Cycling Team)

個人総合時間
1 ヨヒム・アリエセン(オランダ、メテック・TKH コンチネンタルサイクリングチーム) 8時間49分1秒
2 アロイス・カンコフスキー(チェコ、エルコフ・アーサー サイクリングチーム) +0秒
3 レオナルド・ボニファツィオ(イタリア、AVC エクサンプロヴァンス)
4 マシュー・ギブソン(イギリス、JLT・コンドール) +4秒
5 レト・ミューラー(スイス、シャンベリーシクリズムフォルマシオン) +7秒
6 シーン・レイク(オーストラリア、ベネロン・スイスウェルネス サイクリングチーム)
84 新城雄大(KINAN Cycling Team)
108 中西健児(KINAN Cycling Team)
124 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +2分57秒
127 塚本一樹(KINAN Cycling Team) +3分47秒

ポイント賞
1 ヨヒム・アリエセン(オランダ、メテック・TKH コンチネンタルサイクリングチーム) 21pts

山岳賞
1 ニコラ・プロドーム(フランス、シャンベリーシクリズムフォルマシオン) 8pts

ヤングライダー賞
1 マシュー・ギブソン(イギリス、JLT・コンドール) 8時間49分5秒
51 塚本一樹(KINAN Cycling Team) +3分43秒

チーム総合
1 ロット・スーダルU23 26時間27分33秒
25 KINAN Cycling Team +2分47秒

椿大志

椿大志のコメント
(3月の)ツール・ド・ランカウイ以降調子が下がる一方で、立て直せないままこの大会を迎えてしまった。とてもではないがレースに参加できるコンディションではなかったということ。前日第1ステージを走った時に、位置取りやスピードといったヨーロッパのレース特有の雰囲気を体が覚えていて、レースの空気を感じ取るといった部分を今後に向けた収穫にしたい。レースを通して若い選手によし悪しを都度伝えられなくなってしまったことは悔しいし、もどかしい。それでも、知りたいことや困っていることがあれば相談に乗りたいし、自分からも積極的に発言することでこの遠征の意義を見出していきたい。

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キナンサイクリングがツール・デュ・ロワールエシェールに参戦へ

キナンサイクリングチームが発足以来4年連続となる春のフランス遠征に挑む。遠征メンバーは椿大志、塚本一樹、中西健児、雨乞竜己、新城雄大。平均年齢23歳の5人で構成される。4月6日に日本を出国してフランス入り。北中部の都市ブロアを拠点にトレーニングを行なっていく。遠征の終盤では4月11〜15日に4年連続の出場となるツール・デュ・ロワールエシェールに臨む。

ツール・デュ・ロワールエシェールに出場するキナンチームメンバー ©︎KINAN Cycling Team

2017年以降、この遠征におけるメンバー選出は若手から中堅年代の日本人選手に限定し、サイクルロードレースの本場である欧州フランスでのトレーニング、さらにはその成果を試す場としてUCIヨーロッパツアーへの出場によって強化を図ることを目的としている。

同大会は過去に活躍した選手がトッププロチーム入りするなど、将来を有望視される選手たちの登竜門的な位置付けとも言われている。2017年の第2ステージを制したアレックス・フレーム(ニュージーランド)は2018シーズンからUCIワールドチームのトレック・セガフレードへ。同じく個人総合優勝を果たしたアレクサンダー・カンプ(デンマーク)は2017年の世界選手権アンダー23ロードレースで銅メダルと大きな飛躍を果たしている。

2018年は、開幕からの2ステージが平坦基調。大会中盤の第3、第4ステージがアップダウンに富み、総合成績を狙っての激しいレースとなることが予想される。最終の第5ステージはこの大会恒例ともいえるロワールエシェール県の県庁所在地であるブロアの市街地に設けられた周回コースでのクライマックスとなる。

平坦ステージではエーススプリンターの雨乞を軸に、大会中盤からは逃げや勝負どころのアタックでレースを動かすべく果敢にトライしていきたいという。今回のメンバーでは椿、雨乞、新城はヨーロッパでの競技活動経験があり、これまでに培ってきた走りを発揮する絶好の機会ともなる。2018年は完走者2名だったが、今回はこれまで以上に戦力を整えてレースへと臨む。

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