茨城の古民家を訪れるなら絶対はずせない茅葺きイタリアン

茨城県には古民家が約3万2000戸ほど存在し、近年はサイクルツーリズムの拠点となりそうなゲストハウスなども続々とオープンしている。そんな古民家を訪ねる時、おすすめしたいのがつくば市金田(こんだ)にあるベーカリーカフェとイタリアンだ。

玉砂利を敷いたアプローチを進んでいくと築190年という茅葺きの民家がある

江戸時代に建てられた築180年の米蔵を改装した和のベーカリーカフェが「蔵日和]。建物は国の有形文化財にも指定されている。この敷地内には築190年の茅葺古民家を 活用したイタリアンの「藤右ェ門(とうえもん)栄」も併設されている。

一目惚れした古民家を3年かけて交渉して開業

藤右ェ門・栄はイタリア料理店の雇われチーフだった広田栄治さんが、毎日100人以上の客に料理を提供する仕事をしている時に、「本当に100人のお客様は料理に満足してくれているのだろうか? 私は妥協することなく100人のお客様一人ひとりに満足のいく料理を提供しているのだろうか?」という気持ちを持ったことがきっかけと。

門から望むこの景観に広田栄治オーナーがほれ込み、所有者と交渉をして3年かけて開業の夢を実現させたという

「100分の1ではなく1分の1の料理を作りたい。一人ひとりの顔を見ながらその人のためのおもてなしがしたい。心から楽しんでいる笑顔が見たい」という思いから藤右ェ門をオープンさせたという。

そんな想いで独立をした時に出会ったのがこの古民家だった。

中庭にはご神木のような樹齢100年の椎の木があり、モミジも植えつけた。奥に見える離れは特別室

四季を織り成す日本庭園。築190年の古民家に、見事な茅葺き屋根。中庭には御神木のような樹齢400年の椎の木…。一目ぼれをして、なんとかここで店を開けないかと交渉し、念願叶ったのはそれから3年後。さらに「毎日足を運んだ」という1年の改装期間を経てオープンした。

かつての所有者が生活していたという離れはバーカウンターを備えたプライベートルームに改装された

「あえて予約制にし、一人ひとりに建物、四季折々の日本庭園、料理を大切な人と、大人の時間を楽しんでいただきたい」という広田さん。

●藤右ェ門・栄のホームページ

茅葺きの古民家の小部屋はワインセラーとなり、空調管理されている

サイクリストはバイクラックがあるベーカリーがおすすめ

広大な古民家の表門をくぐってすぐのところにあるのが、蔵を改装したベーカリーだ。1階と2階にテーブルとイスがあり、茅葺き屋根と美しく手入れされた庭園を見ながらリラックスした時間を過ごせる。遊び心あふれるパンは、選んでいるだけでも幸せな気分になれるので、ゆっくり店内を回ってみるのがいい。

週末限定バーガーなど、イベントも常に開催中。

筑波山りんりんロードを走ったあとに立ち寄るのがいい。要予約のイタリアンは記念日などに訪れたい。なごやかな結婚式もよく行われているので、その機会がある人はぜひホームページをチェック。

●蔵日和のホームページ

「和の空間でイタリアンを楽しんでもらいたい」という広田栄治オーナー

古民家ゲストハウス江口屋をベースにサイクリングしてみた

茨城県では古民家を活用したゲストハウスやレストラン、カフェ、コワーキングスペースなども続々とオープン。

りんりんロードとなった筑波鉄道事業者の旧邸で仕事する

宿泊型複合コワーキング、シェアスペース

りんりんロードとなった筑波鉄道事業者の旧邸で仕事する

関東平野が見渡せる筑波山にある築120年以上前の古民家が宿泊型ワーケーション施設「旧小林邸ひととき」として2020年10月にオープンした。アフターコロナの時代に求められているテレワーク、ワーケーションを軸にした宿泊型複合コワーキング、シェアスペースだ。

母屋の土間を上がるとフリーワーキングスペースがある

現在はりんりんロードとなった鉄道を作った筑波きっての実業家

「旧小林邸ひととき」の旧小林家は江戸時代から続く米問屋にして、明治時代に筑波山のケーブルカーや、筑波鉄道を作ることに尽力し、筑波山地域の資本家・実業家として活発な経済活動を行い、信仰の山だった筑波山から現在まで続く物見遊山型観光を切り開いてきた小林氏の自宅。筑波鉄道はその後廃線となったが、現在はりんりんロードとして多くのサイクリストに親しまれている。

その小林家を2019年末に受け継ぎ、着地型観光とこのエリアの過疎化解消対策を軸に、「集う」「泊まる」「働く」「学ぶ」をキーワードとしたテレワーク、ワーケーション施設へとリノベーションされた。インバウンドにも対応可能な趣がある商家造りの建築はその時代を残すために、いわゆるフルリノベをあえてせず、その当時の空気も残したという。写真、映像撮影にも利用できる。

江戸時代から続く米問屋で、明治時代に筑波山のケーブルカーや筑波鉄道を作った小林氏の住宅だ

時代に合わせた筑波山の観光を見つめて

施設の運営はGoUp。6年前にUターンで東京から地元つくばに戻り、筑波山の中腹で「Cafe日升庵」を開業した代表が、「日帰りしない筑波山」をキーワードに着地型観光の拠点を作れないかと模索していた時に、茨城県の関係人口形成事業「if design project」をきっかけにプロジェクトは始まった。

二階に上がる階段。宿泊施設としてはこのタイプは認可されないが、ゲストハウスなのでクリアしたという

筑波山は古くから信仰の山としてその名を知られていた。明治の廃仏毀釈を背景に、信仰の山から物見雄山の山として、多くの観光客を受け入れ、筑波山中腹に住む集落は生計を立てていた。当時は筑波鉄道の開業もあり多くの人でにぎわっていたという。しかし、車の時代になり、筑波鉄道が廃線になると核家族化の時代と相まって跡継ぎの世代が街に降りていき、現在は30%以上の空き家が目立つようになった。人口超過の目立つつくば市の中で唯一人口が減少している地域になる。しかし、昨今のアウトドア・登山ブームを背景に、現在はアクティビティ層が目立つ人気の観光地となっている。

施設は、大型のツアー観光ではなく、体験型の着地型観光を主眼に、個人旅行や小規模の合宿、ワーケーションを目的に訪れた人に、地元の人との交流や体験、ツアー、イベントを企画し、新しい筑波山観光を創出すると同時に、空き家問題を解決する糸口を模索する。

筑波山から絶景のコワーキングスペース

ハナレのコワーキングエリア

ハナレのコワーキングスペースは時間単位で貸し切りも可能。オフサイトミーティングや経営会議に使用する。宿泊の個室もデイ利用で使用可能。厨房は業務用のコンロや食洗器、製氷機を備え、利用者が自由に利用できる。料理系のワークショップにも利用できる。

ハナレのワーキングスペースで運営するGoUpの野堀真哉代表取締役が概要を説明してくれた

築126年の母屋と1600坪の敷地

1600坪の敷地には、明治25年築の母屋、ハナレ、3つの蔵があり、栗林、竹林や柿木、ビワなどの季節ごとに楽しめ、筑波山からの関東平野が一望できる非日常の空間だ。オープンスペースとして、仕事の合間の散策やイベントの開催にも、BBQコンロも完備しているので、コミュニケーションの場として利用可能。今後、3期の計画で改修し各スペースを開放していく。筑波山神社まで徒歩10分、筑波山登山やナショナルルートに選ばれたサイクリングコースも気軽に楽しめる。アクティビティの後のシャワーも使用できる。

2階部分は3部屋の宿泊専用スペース

ツインルーム。江戸時代から続く米問屋だったこともあり、商家造りの2階部分は来客者の宿泊に利用されていた

小林家は江戸時代から続く米問屋だったこともあり、商家造りの2階部分はもともと遠方から来た顧客の宿泊に利用されていた。決して大きくはないが、晴れた日にはスカイツリーも見える絶景が楽しめる。個室としてデイ利用も可能。部屋はツイン、ダブル、和室ドミトリーの3タイプになる。

和室ドミトリー。晴れた日にはスカイツリーも見える絶景

宿泊付きコワーキング 一泊10,000円~(月会員の宿泊は6000円~)
※宿泊代は季節変動します
1棟貸し 1泊 100,000円
個室デイ利用 11時~15時 3,000円
フリースペースコワーキング利用 1日 2,200円 月会員 7,000円
イベント、撮影利用は応談
駐車場 無料

アメニティ
・お風呂 ドライヤー 歯ブラシ 石鹸
・キッチン 業務用ガスコンロ/オーブン/製氷機 包丁/まな板/炊飯器/鍋/各種調理器具
・部屋 ハンガー/枕/シーツ
・その他 アイロン WI-FI 電源/USBケーブル
・スペシャリティコーヒーサービス
今後、敷地内で育てた野菜を宿泊者が自由に収穫利用できるサービスも開始予定
◆その他、定期的に主催のイベントを実地

アメニティグッズ置き場も古民家風

旧小林邸ひととき(人時)
・テーマ:宿泊型シェアスペース
・所在地:茨城県つくば市筑波937
・敷 地:総面積 約5,000㎡ 宿泊3室
・アクセス:
【常磐道 谷田部IC】車:約35分
つくばエクスプレス 秋葉原駅~つくば駅 約50分 
筑波山シャトル つくば駅~筑波山神社前:約30分 バス停より徒歩:約7分 
【茨城空港より】車:約1時間

●旧小林邸ひとときのホームページ

古民家ゲストハウス江口屋をベースにサイクリングしてみた

茨城県では古民家を活用したゲストハウスやレストラン、カフェ、コワーキングスペースなども続々とオープン。