青山学院大の強さを支える寮母・原美穂さんの共食効果

箱根駅伝の常勝チームである青山学院大の陸上競技部長距離ブロックの原晋監督と寮母を務める原美穂さんらが、青学の強さの秘密となる食事について語った。

夫の監督就任により経験も知識もなかった寮母に

2004年、夫である原晋さんの監督就任が決まってから、美穂さんとしては未経験の寮母という新生活が始まった。もちろんゼロからのスタートで、なにもわからない。「寮での生活スタイルがアスリートにとってはなによりも重要」とその重大さを認識し、独力で知識を習得していく。

「(私自身がその)環境に慣れることが大変。がんばりました」と陰の苦労は決して明かさない。

2020年の第96回箱根駅伝では9区で区間賞の走りを見せ、2年ぶり5度目の総合優勝をけん引した神林勇太主将(4年)は、「部員たちの食事は町田寮でいつも食べています。ワイワイと、学年は関係なくご飯を楽しんで、練習に向けての活力を蓄えています」と証言している。

2014年から栄養学を含めて青学陸上競技部のトレーナーを務めている中野ジェームズ修一フィジカルトレーナーは、「一般の人もアスリートも筋トレをすれば強くなると思いますが、食生活をしっかりしないと本来の意味で強くなれない」と食べることの大切さを力説している。

8月5日に開催された大腸活コンソーシアム主催のオンラインランチ会では美穂さんが手がけた昼食が披露された。

「いろんな品目を入れたほうがいいし、野菜もあったほうがいい。色もきれいにしたいので、この日はできれば赤を入れたかったんですが、神林くんがトマト嫌いなので」と優しさも見せる。

「寮では食事を残してはいけないというルールがあるんです。朝は必ずトマトを添えますが、鼻をつまみながら泣きながら食べている神林くんに、お昼にも出したらかわいそうかなと(笑)」

原監督は、「長距離選手は甘いものを食べないと思われるけれど、わが男子チームはそこまで管理せず、デザートも楽しんでいます。量が多いものを争ってジャンケン大会で取り合うほどです」とあとを続けた。

「1日だけ50kmとか100キロ走っても強くならないですよ。日々コツコツ走るのが重要です。栄養もそうです。日々の積み重ねで身体を作り上げていく。時には嫌いな練習もするし、嫌いな食べ物もきちんと摂る。いいスポーツカーに乗ってもガソリンが入ってないと走りませんから」(原監督)

青山学院大の原晋監督

中野トレーナーによれば1日14品目を摂ることを目標に食事メニューを考えてほしいという。その内訳は穀類、豆・豆製品、魚介類、肉類、牛乳・乳製品、卵、果物、海藻類、きのこ類、芋類、緑黄色野菜、淡色野菜」、油脂、嗜好品だ。

「かつては30品目と言われていましたが、厚生労働省も近年は摂りすぎであると指摘しています。健康維持・増進するためには14品目で十分なのです」

青学寮の食事は学年に関係なくワイワイと楽しく食べる

新型コロナウイルス感染拡大の防止策として、密にならない食事方法もあちこちで取りざたされているが、家族や仲間と一緒に会話をしながら楽しく食事することの意義も原監督は力説している。

「幸せホルモンと呼ばれるセロトニンを分泌させるために、ワイワイ楽しく食事をとるように、会話をするよう心がけています」

また就寝の3時間前には食事を終えることも重要だという。睡眠の時に副交感神経を優位にするのがいいが、食べたものが消化中ではなかなかその状態にならないからだ。良質の睡眠を取れば身体の回復も十分にできるのだ。

そして夏は脱水症状対策も怠らない。朝起きたら水をコップ1杯飲む。朝ごはんでもお味噌汁1杯をつけて体内の水分量を高めておく配慮を怠っていない。

青山学院大陸上競技部の町田寮で寮母を務める原美穂さん

美穂さんも「この時期の脱水には気をつけています」という。

「今年は梅雨が明けるのが遅く寒かったり暑かったり。そして昼と夜の温度差があると体調を落としやすいので、部員たちが着ている服もチェックしています」

一方、選手たちは水分とともに炭水化物を摂ることの大切さにも気づいている。

「夏は合宿で走る距離が長くなるので、エネルギーとなるご飯の量を増やしながら距離を伸ばしていきます。炭水化物が重要です」と神林主将。

さらに、脱水症状の対策として水だけを口にしてもダメだと中野トレーナーは証言している。

「食事としてしっかり糖質を摂っていないと、水を吸収できないんです。身体の中に保水させるためには炭水化物の摂取が重要。さらには発汗により鉄分が失われることも要注意。夏場はしのげても、秋くらいから貧血になることも多いんです」

「2時間08分30秒の初マラソン歴代2位、学生マラソン歴代2位の記録を作った吉田祐也(青学大→GMOアスリーツ)は毎食300gのご飯を計量して食べるように心がけていました。中野トレーナーからの指導をいまも守っています」(原監督)

青学陸上競技部の中野ジェームズ修一トレーナー

青学の強さ。自主性を学生たちがどう考えるか

スポーツ選手に自主性が求められると言われるが、「指導者がどのような考え方で、部員の自主性を価値のあるものにしていくかこそ重要であると原監督は力説している。

「高校時代の選手たちは、その日の練習をその日に知る。それがあたりまえでした。でも本来の指導者なら、もっと前から長期メニューや目標設定を渡して、それをふまえてそれぞれが自分たちの距離や強さを決めていく。これが自主性です」

青学に入ったら、自ら生きる力を学んでいってほしいという。

「だから”学生”なんです。高校時代は与えられたものをこなすだけ。大学ではすべてのことに対して自分で考える。そのことが当たり前になっていくべきです」

それに呼応するように、美穂さんは寮での食事をみんなで一緒に食べるように改革した。

「それでいきなり強くなるようなものではないけれど、今ではいい結果になっていると感じています。最初は好きな時間に好きな量を食べさせていましたが、食後に片付けをしていると残していることに気づきました。だったらみんなで一緒におしゃべりしながら食べましょう」

友達や家族と一緒に食べるのと同じだ。しゃべりながらだと噛む回数も増える。そうすると分泌する唾液の量も増える。

「素人の浅知恵なんですけれど」と美穂さんは謙そんする。

「小学校の給食は、土日に家で食べる時よりおいしかったり楽しかったりする経験がありました。科学的にはわからないけれど、栄養吸収が高まるんじゃないかなあと感じています」

「1人だとどうしても早く食べ終わりたいという気持ちになりますが、これでは唾液がうまく分泌できません」と中野トレーナー。

楽しく食事をすれば栄養吸収も成績も高まる

青山学院大陸上競技部長距離ブロックの神林勇太主将

「ゆっくりとみんなで一緒に食事をすれば、消化吸収もよくなります。ランナーは消費カロリーがとても高いスポーツで、加えて練習量が多い。どうすれば体重を落とさないようにするか。食べるということが命令になってしまうとそれは義務になり、ツライ練習と同じようにイヤになってしまいがち。でも、楽しくおいしく食べれば、少ない量でも栄養になる」(中野トレーナー)

そして神林主将。

「寮での食事時間は食べることより話すことが多いですね。そしてボクは最後まで食べていて、1時間くらいかかることもあります。もしかしてそれが体作りにいいのかなと思います。大学に入ってから1度も体調を崩したことがないのは食事のおかげです」

「青学の町田寮はほんとにうるさいです。賑やかです。テレビもついているけど、それが聞こえないほど。面白いのは脚が速い子のほうが、ご飯が遅いことです」と最後に美穂さん。

新型コロナウイルス感染拡大の防止策で、家庭での食事もそれぞれの部屋に分かれて1人で食べることを提唱する専門家もいる。原監督は、青学町田寮でのしっかりとした感染防止対策を取った上での発言として、「物事は1方向だけで考えないことが大切です」と、実証している共食の効果を訴える。2021年の箱根駅伝における作戦名は、「12月10日に行われる記者会見までにネタを仕込み中ですので、もうちょっとお待ち下さい」と。

●オンラインランチ会を企画した大腸活コンソーシアムのホームページ

青学大で箱根駅伝優勝の吉田祐也がGMOで現役続行

GMOインターネットは、世界で戦うNo.1アスリートの育成を行う「GMOアスリーツ」の選手として、男子陸上長距離の吉田祐也(青山学院大4年)の所属が内定しましたことを発表した。2020年4月1日入社予定。

左からGMOインターネット取締役副社長 兼 GMOアスリーツ部長の安田昌史、吉田祐也、GMOアスリーツの花田勝彦監督

吉田は、全日本大学駅伝2018年大会で5区区間賞、2019年大会で5区区間3位、2020年の箱根駅伝では第4区区間賞と区間新記録を樹立し、青山学院大の総合優勝に貢献した。さらに、2020年2月に開催された別府大分毎日マラソンでは、マラソン初出場ながら2時間8分30秒の好記録で総合3位(日本人トップ)という結果を残し、今後のさらなる活躍が期待されている。

「GMOアスリーツ」は、世界の大舞台での活躍を目指す吉田がこの先も競技活動に専念できるよう、GMOインターネットグループの総力を挙げて支援していきたいという。

責任感を持って愚直に取り組みたいと吉田

●吉田祐也のコメント
2020年度からGMOインターネットグループ(GMOアスリーツ)に所属し競技を続けることにいたしました。日々支え、応援してくださるみなさん、尊敬できる先輩方や監督とともに、2024年パリオリンピック、2028年ロサンゼルスオリンピックのマラソン日本代表を目指します。社会人として「走ることを楽しむ」気持ちに加え、「責任感」を持って、長い時間をかけ地道に愚直に取り組んでいきます。これまで同様、個人、チームともに応援のほどよろしくお願いします。

吉田祐也プロフィール
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■名前     :吉田祐也(よしだ ゆうや)
■出身地    :埼玉県
■生年月日   :1997年4月23日
■主な成績・記録:5000m公認:14分02秒18
         10000m公認:28分42秒58
         フルマラソン公認:2時間08分30秒
         2018年全日本大学駅伝:第5区走者・1位
         2019年全日本大学駅伝:第5区走者・3位
         2020年箱根駅伝:第4区走者・1位(区間新)
         2020年別府大分毎日マラソン:3位(日本人1位/学生歴代2位)

GMOアスリーツとは

GMOインターネットグループは多くの人の笑顔・感動を創造するべく、さまざまな文化・スポーツの活動支援・協賛を行っている。その一環として2016年4月1日に、「世界に通用するNo.1アスリートの育成」を目的に「GMOアスリーツ」を創設。現在は男子陸上競技(長距離)のアスリートを支援している。
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ナイキの厚底シューズは一般ランナーもはきこなせるか?

2020年新春の箱根駅伝で陸上長距離界に衝撃が走った。アディダスと契約する青山学院大やアシックスの早稲田大を含めてほとんどの出場選手がナイキ社製の厚底シューズで激走。10区間のうち7区間で新記録が誕生する高速レースとなったからである。

マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)でも場選手たちの多くがピンク色のナイキ社製シューズを履いていた

アディダスは今回の箱根駅伝で青学大の出場選手に履いてもらうため、ナイキのズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%に対抗するモデルを開発。超軽量化をモットーとした従来路線を覆し、かかと部分を厚底化。こうして誕生したtakumi sen 6を青学大のスクールカラーであるエバーグリーンに装飾して2019年末にリリースした。

ところが、驚異的な大会新記録で2年ぶり5度目の総合優勝を遂げた青学大の10選手が使ったのはナイキ社製の厚底シューズだったのだ。

MGCでも上位3選手がナイキの厚底シューズ

2019年9月15日に開催された、2020東京五輪マラソン日本代表を選考するマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)でも場選手たちの多くがピンク色のナイキ社製シューズを履いていたことにも注目が集まった。当時新製品だったズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%である。

「新製品はこれまで以上にクッション性が高まり、脚を守ってくれる。後半に向けて(体力を)ためやすくなった。アッパーも水を吸っても重くならなくなった」と大迫傑選手は証言している。(2019年9月17日取材)

大迫選手も初めて厚底モデルを履いたときは、「もちろん違和感がありました」という。「それは自然と順応できていった。慣れたらはきやすいシューズだなと思います」

MGCで五輪代表に内定した富士通の中村匠吾選手とトヨタ自動車の服部勇馬選手、Hondaの設楽悠太選手らもその性能に言及している。(2019年9月30日取材)

「最新モデルのズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%は強度の高い練習をしても、翌日の疲労度が抑えられます。実際にMGCでも最後のスパートをするタイミングまでしっかり脚を残せて、その特徴が生かせた」とMGC優勝の中村選手は証言。

「もちろん練習もしっかりと積んできたことはありますけど、シューズの性能がプラスに働いたと感じています。これからも使い続けたいなと思います」(中村選手)

一般ランナーの間では、「アフリカ大陸出身選手に見られるフォアフット(前足部)から着地する走法に適したシューズではウワサされることも多いが、中村選手によれば、「個人的な意見ですが、着地はあんまり関係ないかなと思います」とコメントした。

「ボクはフォアフット走法ではありませんが、着地のしかたが変わるというものではなく、フォームを改善したようなこともないです」(中村選手)

MGCで2位になり、東京五輪代表に内定した服部選手も、「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%はフィット感があることと、撥水性があるのがいい。夏マラソンでは給水やスポンジなどの水分でシューズがグチャグチャになってしまうけれど、それがないのがいい点だと思いました」と語っている。

初代のヴェイパーから愛用していて、トラックからマラソンまでズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%を幅広く活用しているという設楽選手は、「レースを走ったときのダメージは、これまでのシューズと比べたら全然ないです。もともとシューズにはあまりこだわらないので、提供されたものをはくだけで十分です。どうだった?と聞かれてもあんまり分かんないです」とコメント。

それでも2018年の東京マラソンで16年ぶりに日本新記録を打ち立てた実績はナイキシューズとともにあったことは見逃せない。

市民ランナーにもおすすめできるモデルなのか聞いてみた

2019年の箱根駅伝ではナイキ社製の厚底シューズの性能は目を見張るものがあった。当時の最新モデル、ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニットが着用率トップ。大会5連覇を狙った青学大は契約のアディダスを使用し、連覇を断たれる2位となった。その年の7月には最新版ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%が発売。そして2020年新春の駅伝シーズンではニューカラーとして薄いグリーンとオレンジのグラデーションモデルが登場。ニューイヤー駅伝を含めてテレビ画面で際立った存在となった。

「シューズの性能がプラスに働いたと感じる。これからも使い続けたい」とMGC優勝の中村匠吾

「はきこなせる、はきこなせないといわれるけど、だれでもはきこなせると思います。今回のMGCでも中村選手や服部選手など上位選手はすべてはいています。この商品が優れているから履いて、口コミで広がっている。設楽選手やボクがはいているからというのではなく、ホントにいいものはいいという世界です」(大迫選手)

その一方で、速く走るためにカーボン製のプレートが入っているので、脚へのダメージは意外とあって疲れやすいという特徴も。大迫選手もジョグは下位グレードのジームペガサスを愛用する。さらにトラック練習の時はスパイクシューズで質の高い走りを目指すという。

「一般ランナーにひとつアドバイスすることがあるなら、トップモデルはある程度マイル(耐用距離)が決まっていて、練習時から無駄遣いできないので、ペガサスターボやズームフライなど下のモデルをはいて、傾斜に慣れていくのがいいと思います」(大迫選手)

一般ランナーが厚底シューズを購入する際のアドバイス

「トップモデルは耐用距離があるので、練習用のシューズと併用するなどうまく使いこなすことがオススメです。ボクはスピード練習のとき、週に1回ほど使用して、それでも2カ月ほど使えます。一般の人は毎日使うとかではなく、本番前の足慣らしにはいて、そして気持ちよく本番に投入してほしい」(中村選手)

服部選手は最新モデルの性能を最大限に引き出すためには「しっかり練習すること」とポイントを挙げる。

「この靴を履いたら速くなれるというものはありません。自分自身もそうですが、まずはしっかりとトレーニング、しっかり練習。走るのは自分ですからね」

MGC2位の服部勇馬、後方が3位の大迫傑

練習ではナイキ・フリー、ポイント練習ではズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%しか使っていないという設楽選手は、「だれがはいているとかではなく、自分で試着して自分で決めるといいです」とアドバイス。

同じ持久系有酸素スポーツの自転車ロードレースでも同様の衝撃的機材が脚光を浴びた歴史がある。1989年のツール・ド・フランスで米国のグレッグ・レモンが投入したDHバーだ。それまではトライアスロンの米国選手が自転車パートで使用する機材だったが、それを欧州が主戦場となるロードレースにレモンが投入。ツール・ド・フランス最終日の個人タイムトライアルで逆転優勝することになり、以来DHバーは世界標準となったのである。

圧倒的に有利になる厚底シューズについては国際団体から規制がかかる可能性もあるという。かつての競泳のレーザーレーサーのように使用禁止となるかは、今後の議論次第である。

●大迫傑インタビュー

青山学院大山岳部はホワイトウェーブ撤退…ヒマラヤ未踏峰挑戦

ヒマラヤにある未踏峰「ホワイトウェーブ」に挑戦していた青山学院大体育会山岳部は、10月15日登頂を目標に登攀活動を進めていたが、危険なクレバスにはばまれ、遠征残日数と隊員の安全を考慮して同10日に退却の決断をした。目指していたのは人類未踏峰で、ネパール東部カンチェンジュンガ山群にあって、標高は6960m。2018年9月から現地入りし、約50日間の登山活動をしていた。

5人の登攀部隊は頂上アタックに向けてルート工作を進めてきたが、C1、C2から東稜基部に向けて氷壁、ヒドゥンクレバスが連続している状態で、最終的に山岳部監督でもある村上正幸隊長と2人の高所ポーターで挑んだが、突破するには極めて困難で危険と判断し、撤退をを決めた。

現在、登攀部隊はベースキャンプに無事帰還している。

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カトマンズでの準備フェーズに突入…青山学院山岳部の未踏峰チャレンジ

青山学院大体育会山岳部がヒマラヤにある未踏峰「ホワイトウェーブ」に挑戦するため、先発準備隊の田口純也登攀隊長(4年)と松原峻彦隊員(2年)が9月8日に、後発隊の池田昂史隊員(4年)、杉本俊太隊員(3年)、山岳部監督でもある村上正幸隊長(43)が同11日に日本を出国。ネパールのカトマンズで5人が合流した。現地発信のレポートが届いた。

カトマンズ入りして食材などの装備品をチェック

[出国]
我々は遠征計画およびトレーニングを着実に進め、そしてついに日本の地を離れる時が来た。ここからは自分たちの常識外のことが当たり前に起こる世界、気持ちと財布は締める気概で9月8日に先発隊の田口・松原は出発した。初海外の松原は淡い期待と興奮を胸に旅立ったのだが、いきなり機内の効きすぎた冷房に震えて耐えるというビバークもどきを味わう。

支給してもらった5色のアウターシェルを羽田空港出国ロビーで着用

思えばこれが全ての元凶だったのかもしれない…。香港でのトランジットを経て香港→カトマンズ間の2回目の飛行機に乗るが、ここでも冷房がキツい…。しかも羽田→香港より長いが、ひたすら機内で「スタンド・バイ・ミー」を見て気をまぎらわせる。温かい機内食とドリンクサービスだけが救いであった。

見送っていただいたみなさま、ありがとうございます!

今回の遠征では多くの方々にご支援をいただいているが、先発・後発隊双方の見送りに多くのOBや支援者の方々がいらっしゃり、我々の旅立ちを応援してくださったことは、我々の不安や心配をぬぐい去ってもらえて大変うれしかった。この場をお借りして御礼申し上げます。

カトマンズで5人が合流

[カトマンズでの準備]
カトマンズに着いても、うかうかしていられない。日本から送った荷物の全数確認・必要な物資の買い出し・観光局への申請・ガイドとのブリーフィングなどやることは盛りだくさんだ。

難関だった観光局への登山申請もパス

[隊員のカトマンズ生活]
松原は初海外ということもあって耐性がないため、案の定体調不良をおこす。40度の熱・腹痛・下痢・嘔吐・関節痛・・・おおよそ風邪の症状を一身に受けた松原は「俺がなにしたんだ! なんでこんな苦痛を負ってるんだ!」とうめきながら見えないなにかと戦っていた。

2年生の松原がいきなり床に伏しました…

杉本は出国前に切った髪型が気に入らなかったらしく、ホテル近くのバリカン理髪店で髪を刈ってもらったが、シャンプー込みでお値段600ルピーと格安でカットしてもらえた。ま、それでも現地の人は100ルピーくらいらしいので我々はぼったっくられているのだが・・・。

髪の毛がちょっと気に入らないので…

どうですか? (ぼったくられています)

[今後の予定]
9/15 カトマンズータプレジェン 車での移動
9/17 キャラバン開始(タブレジェン~BC) BCは標高5800m地点の氷河末端を想定
9/27 ABC設置
10/1 高度順応及びルート工作 東稜へのアイスフォール通過
10/10 東稜アタック ABCーCampE1,2ー頂上
10/15 北壁ダイレクトアタック 下降は東稜を想定
10/19 バックキャラバン開始(BCータプレジェン)
10/26 タプレジェンーカトマンズ 車での移動後、帰国準備
10/28 夜 カトマンズー成田

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ヒマラヤ未踏峰ホワイトウェーブに向け出国…箱根よりもスゴい青学大山岳部

青山学院大体育会山岳部がヒマラヤにある未踏峰「ホワイトウェーブ」に挑戦するため、先発準備隊として田口純也登攀隊長(4年)と松原峻彦隊員(2年)が9月8日に羽田空港から出国。香港を経由してネパールのカトマンズに入る。

未踏峰に挑むメンバー。左から松原峻彦(2年)、杉本俊太(3年)、登攀隊長の田口純也(4年)、池田昂史(4年)、村上正幸隊長(山岳部監督)

メンバーは5人で、11日には後発隊として池田昂史隊員(4年)、杉本俊太隊員(3年)、山岳部監督でもある村上正幸隊長(43)が現地を目指す。「ホワイトウェーブ」東稜、そして北壁ダイレクトという2ルートからの登頂を目指す。登頂予定日は2018年10月12〜18日。

羽田空港出発フロアで行われたミーティングでは、村上隊長が先発隊に「トラブルのない日はないと思うが、それを楽しむくらい余裕をもって行動しよう。それと絶対にあきらめてはいけない」とメッセージ。観光局への登山申請などをこなして、ヒマラヤ直下へと移動する。

松原峻彦と田口純也が先発隊としていよいよ日本を出国

2隊員の荷物。これ以外の大量の機材・用具はすでにカトマンズに輸送されている

同大山岳部のこれまでの実績は輝かしいものがある。2013年には同じヒマラヤの未踏峰アウトライアー(標高7034m)初登頂に成功。2015年には、このアウトライアー登山隊に参加して6000mの高度を経験した真下孝典が、6大学からの6人による日本山岳会学生部隊の隊長としてジャネII峰(6318m)に初登頂した。近年は箱根駅伝で4連覇中の陸上長距離部などとともに学内で最優秀選手、優秀団体表彰を受けるなどその活動は高く評価されている。

約2カ月の遠征期間中は、パソコン、衛星モデム、太陽光発電機器持ち込んで衛星通信によるブログの更新やGPSによる隊の現在地共有などITを駆使。できるかぎりのリアルタイム共有をしていく。

羽田空港で日本に残る支援部員やOBと

遠征隊概要
隊の名称:2018青山学院大学山岳部 東ネパールWhiteWave登山隊
英語名称:WhiteWave Expedition of Aoyamagakuin Univ. Alpine Club 2018
時期:2018年9月下旬から10月末
エリア:ネパール東部カンチェンジュンガ山群
山名:WhiteWave(現地名:Anidesh Chuli)未踏
標高:6960m(ネパール政府発表値)
主催:青山学院大学体育会山岳部 / 緑ヶ丘山岳会

日程
9月8日 日本発ーカトマンズ:先発準備隊2名出国
9月11日 日本発ーカトマンズ:後発隊3名出国。観光局への申請や遠征準備
9月15日 カトマンズータプレジェン:車での移動
9月17日 キャラバン開始(タブレジェン〜BC): BCは標高5800m地点の氷河末端を想定
9月27日 ABC設置
10月1日 高度順応及びルート工作:東稜へのアイスフォール通過
10月10日 東稜アタック:ABCーCampE1,2ー頂上
10月15日 北壁ダイレクトアタック:下降は東稜を想定
10月19日 バックキャラバン開始(BCータプレジェン)
10月26日 タプレジェンーカトマンズ:車での移動後、帰国準備
10月28日 夜 カトマンズー日本

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