山本元喜が150km近い逃げで全日本3位…5年ぶりの日本王座ならず

2023年シーズンの日本王者を決める全日本選手権ロードレースは大会最終日となる6月25日、全体最後のプログラムとして行われた男子エリートのロードレースが行われ、山本大喜(JCL TEAM UKYO)が優勝。KINAN Racing Teamからは7選手が出場し、序盤から先頭グループでレースを進めた山本元喜が優勝争いに加わり、最終的に3位。2018年以来5年ぶりとなる全日本制覇はならなかったものの、150km近く先頭を走り続け強さを印象付けた。

山本元喜が全日本選手権ロードの先頭集団を引っ張る ©KINAN Racing Team / Syunsuke FUKUMITSU

23日から競技が進められていた大会では、KINAN Racing Teamの津田悠義がアンダー23カテゴリーで個人タイムトライアル、ロードレースともに2位。チームに勢いをもたらし、エリートカテゴリーに臨む7選手へとバトンをつないだ。ロードレース競技における最上位クラスとなるこのレースは、静岡県伊豆市・日本サイクルスポーツセンター内の8kmコースを20周回する160kmで争われる。繰り返しやってくる急坂とテクニカルな下りが特徴で、平坦区間はほとんど存在しない。このところの暑さも加わって、消耗戦となることが早くから予想されていた。

そんなタフな戦いへ、KINAN Racing Teamからは山本のほか、孫崎大樹、花田聖誠、白川幸希、宮崎泰史、新城雄大、畑中勇介がエントリー。絶好調の山本を中心に戦術を組み立て、他の選手たちが要所でサポートすることを前夜のミーティングで確認した。

迎えた本番は、早くから大きな局面が訪れる。1周目こそ一団で進んだが、2周目で各チームのエースクラスが仕掛けると、KINAN勢では孫崎と花田が反応。前をうかがうメンバーがシャッフルする間に山本が数選手とまとまって先頭合流を果たし、そのまま3周目へ。この時点で山本を含む8選手がレースを先行することになった。

一気にスピードの上がった先頭グループに対し、メイン集団はときおりアタックを試みる選手が出たもののおおむね落ち着いたペースに。双方のタイム差は最大で5分近くまで広がり、先頭を走る選手たちが優勢となっていく。

中盤に入ってメイン集団では追走を試みるチームが出てくるものの、その差は縮まっても2分40秒まで。再び3分ほどまでタイムギャップが拡大し、構図が変わらないまま終盤戦へと入っていく。メイン集団には畑中、孫崎が残る。

全日本選手権ロードで形成された第1集団 ©KINAN Racing Team / Syunsuke FUKUMITSU

先頭グループは残り5周を切ったところで山本ら4人まで絞られる。そのうち、JCL TEAM UKYOが2選手を送り込んでおり、山本としては数的に不利な情勢。先頭交代のローテーションを繰り返しながら、勝負どころを探っていく。一方、メイン集団も人数が周回ごとに減少。18周回を終えようかというタイミングでタイム差は2分を割るが、組織的に追走できるチームがなく、流れを変化させるまでは至らない。この頃には、集団待機のKINANメンバーはすべて後方に下がっており、勝負を山本に託す形となっていった。

勝負が動いたのは残り2周。アタックの打ち合いから山本大喜(JCL TEAM UKYO)が飛び出し、それを山本元が追う。実の兄弟で、昨年までKINANメンバーとしてチームを引っ張ってきた2人の優勝争いへと移っていく。そして、この周回の後半で山本大選手が兄である山本元を引き離し、その差は一気に拡大。

そのまま最終周回に入ると、勢いは歴然。1周14分前後で続いていたラップタイムを13分台前半までただひとり引き上げると、チームメートの岡篤志が山本元に再合流。追撃は許されず、ライバルチームの後塵を拝する格好に。

独走を決めた山本大、さらにフィニッシュまで仕掛けた岡の後に、山本元が3位でのフィニッシュ。2018年以来の優勝とはならなかったものの、表彰台の一角は確保。150km近くレースをリードし続けた走りで、改めて日本のトップレベルにあることを証明した。

山本大喜(JCL TEAM UKYO)、2023全日本ロードチャンピオン ©JCF

KINAN Racing Teamは、この大会で出場した3競技すべてで選手を表彰台に送り込むことに成功。その最上段にはわずかに届かず、勝者だけが着用できる日本チャンピオンジャージは来季以降におあずけとなったが、メンバーが大幅に入れ替わった今シーズンを象徴するようにチーム力を最大限生かした成果としている。

ツアー・オブ・ジャパン、ツール・ド・熊野、そして今大会と、シーズンの中でも最も重要な時期を終え、ここからは後半戦に向けた移行期間に。コンディションの再構築や先々の目標レースを見越した取り組みなどを行って、チームのビルディングを進めていく。

山本元喜のコメント
「集団前方でレースをすることを心掛けていて、周りを冷静に見ることもできていた。逃げが決まったのは2周目で、集団が割れたのをきっかけに前にいる選手たちに合流した。状況的に逃げのメンバーが有利になる可能性があると感じていて、思っていたより早くに人数が絞られてしまったけど、後ろのペースも上がっていない中で良い流れでレースを進められた。それからはマークするべき選手を見極めながら、終盤勝負をイメージしていった。できることなら最終周回でアタックして4人のパックを崩したかったが、1周早く他選手に仕掛けられて、なおかつ弟である大喜にやられてしまった。  

優勝の山本大喜を中央に左が2位岡篤志、右が3位山本元喜 ©JCF

弟に負けたというよりは、“やっとここまで来たな”と感じている。本来持っている強さをようやく結果につなげたなと。判断が難しいレース展開だったが、自分自身としてはできるだけのことはやった3位だと思っている」

山本大喜が全日本チャンピオン…5年前の元喜に続き兄弟王座は史上初

第91回全日本自転車競技選手権ロードレースのエリート男子が6月25日に静岡県の日本サイクルスポーツセンターで8kmサーキットを20周回する距離160kmで行われ、山本大喜(JCL TEAM UKYO)が独走で初優勝した。

山本大喜(JCL TEAM UKYO)、2023全日本ロードチャンピオン ©JCF

レース序盤に形成された8人の第1集団に乗った山本大喜。チームメイトの岡篤志(JCL TEAM UKYO)や兄の山本元喜(KINAN Racing Team)らとともに終盤で先行し、さらにそのなかから単独になってゴールした。

山本大喜は初の全日本チャンピオン。3位に入った4歳年上の兄元喜は2018年の優勝者で、兄弟で全日本チャンピオンになったのは初めて。2位は岡でJCL TEAM UKYOがワンツーフィニ ッシュ。新城幸也(バーレーンビクトリアス)は厳しいマークにあい、思うように動けず8位でレースを終えた。

優勝の山本大喜を中央に左が2位岡篤志、右が3位山本元喜 ©JCF

女子エリート88km(8kmx11周回)は5 周目に単独先頭に立った与那嶺恵理(Human Powered Health)がそのまま独走。後続に7分以上の大差をつけて全日本チャンピオンに返り咲いた。

与那嶺恵理が2023全日本ロード優勝 ©JCF

植竹海貴が全日本タイトル奪還とおきなわ初優勝を目指す

ワイ・インターナショナルの実業団チーム「Y’s Road」に所属する植竹海貴(うえたけみき)が、今季初戦となる第57回JBCF東日本ロードクラシックに参戦。2023年は6月の全日本選手権と11月のツール・ド・おきなわで優勝を目指したいと語った。

2022年は全日本選手権で敗北するなど悔いの残るシーズン

2021年10月の全日本選手権で優勝し、2022年は全日本チャンピオンとしてレースに臨んだ。JBCFのレー スでは12戦8勝、出場したすべてのレースで表彰台に乗り、2年連続で年間総合優勝をすることができた。

しかし、シーズン中盤で調子を崩してしまい、目標としていた全日本自転車競技選手権ロードレースとツール・ド・おきなわ2022は調子を合わせることができず、2レースとも優勝争いに加わることなく、表彰台を逃す結果となってしまい、悔いの残るシーズンだった。

2021年の全日本選手権、植竹海貴(右)が金子広美を制して優勝 ©JCF

まずは6月の全日本自転車競技選手権ロード

「ワイズロードをはじめ、コルナゴなど各スポンサーのおかげにより、昨シーズンに続き強力なサポート体制でレース活動ができることがうれしい」と植竹。

今季は昨年よりコンディションを整えるためJBCFの遠征を減らし、6月に開催予定の全日本自転車競技選手権ロードレースと、11月開催予定のツー ル・ド・おきなわに挑む。目指すは全日本選手権優勝&ツール・ド・おきなわ優勝だ。

「出場するレースは全て優勝する気合と、レースを楽しむ気持ちを忘れずに走りたいと思いま す」

「今シーズンも見ていて楽しいレースになるように、強気の走りをしたいと思います。私たちのレースを見て、女子のレースにも興味を持っていただけたらうれしいです。全日本チャンピオンの座を奪還できるように頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします」

全日本最速店長選手権を連覇した植竹海貴

植竹海貴(うえたけみき)
生年月日:1996年1月29日
出身地:東京都板橋区
所属チーム:ワイズロード
勤務先:ワイズロード新宿本館

専門学校卒業後の2016年から2020年3月までは保育士として勤務。2020年4月に自転車に専念できる環境として、スポーツ自転車の専門店ワイズロードを運営する株式会社ワイ・インターナショナルに入社。同社の旗艦店であるワイズロード新宿本館で勤務しながらトレーニングを積み、実業団レースの JBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)に参戦。

トレーニングには従来の実走練習に加え、SARIS社のスマートトレーナーとバーチャルサイクリングアプリZwiftを組み合わせたインドアトレーニングも取り入れ、課題の克服と競技力の強化に取り組んだ結果、年間12戦中8勝を挙げ、2年連続で年間総合優勝の座を射止めた。現在はワイズロード新宿本館で週3日間勤務。

●植竹海貴のZwiftトレーニング日記

延期されていた全日本ロード女子は樫木祥子が与那嶺恵理を制して優勝

延期されていた第90回全日本自転車競技選手権ロード女子が、6月に実施予定だった広島県中央森林公園サイクリングロードで10月23日に開催され、エリート女子ロードは樫木祥子(チームイルミネート)が優勝。個人タイムトライアルとの2冠を達成した。

全日本選手権エリート女子ロード優勝の樫木祥子を中央に、左が2位与那嶺恵理、右が3位金子広美

2位は同タイムで与那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス)、3位金子広美(イナーメ信濃山形)。

同時出走のU23女子は小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)が優勝した。

全日本選手権エリート女子ロードは樫木祥子が与那嶺恵理を制して初優勝

国内自転車選手のチャンピオンを決める全日本選手権だったが、6月25日に広島県中央森林公園で開催予定だったエリート・U23女子レースの実施を見送った。他のカテゴリーは予定通り行われた。

女子ロードにエントリーしていた選手から、チームカー随行の要望が提出され、公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(JSAA)がこの訴えを支持。しかし主催する連盟が、狭くて曲がりくねったコースでのチームカーの随行に伴う危険性を考慮して、実施見送りを決めた。

その延期となったエリート・U23女子レースが、ようやく10月23日に同じコースで開催されたことになる。ただし騒動の発端となったチームカーの随行は見送られ、主催者が用意した後続車に予備ホイールとスタッフが乗車する形式となった。

全日本選手権U23女子で優勝した小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)

延期の全日本選手権女子ロードが10月23日開催へ…チームカー随行はなし

第90回全日本自転車競技選手権大会ロードレースのなかで、スポーツ仲裁に持ち込まれた一連の騒動により延期となったエリート女子・U23女子のレースが2022年10月23日に広島県中央森林公園サイクリングロードで開催されることになった。

6月25日に広島県中央森林公園で開催予定だったエリート・U23女子レースの実施は急きょ見送られていた。他のカテゴリーは予定通りに開催された。女子レースにエントリーしていた選手から、チームカー随行の要望が提出され、公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(JSAA)がこの訴えを支持。しかし主催する連盟が、狭くて曲がりくねったコースでのチームカーの随行に伴う危険性を考慮して、実施見送りを決めたからだ。

その延期となったエリート・U23女子レースが、ようやく10月23日に同じコースで開催されることになった。ただし騒動の発端となったチームカーの随行は見送られた。

チームカーは競技に随行できず、主催者が用意する共通機材車による器材サポートを行う。希望する選手は、共通器材車に自らの車輪の搭載を依頼することができるという。また共通器材車にチームスタッフが乗ることはできない。

新城幸也が新城雄大を制して9年ぶり3度目の全日本チャンピオン

ロードレース競技の日本チャンピオンを決める全日本選手権は大会3日目となる6月26日、エリート男子が広島県三原市・広島県中央森林公園のサイクリングコースで行われ、新城幸也(バーレーンビクトリアス)が同郷沖縄の新城雄大(キナン)をゴール勝負で制して、2007年と2013年に続く3度目の優勝を飾った。

エリート男子は沖縄出身の新城同士のゴール勝負となり、幸也(左)が雄大を制して優勝した

レース序盤、目立った動きもなく大集団のまま7周回を終了。8周回目、ようやく小森亮平(マトリックスパワータグ)、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、河野翔輝(ブリヂストンサイクリング)の3選手がアタックを決める。

エリート男子ロードレース(15周184.5km)は出走116選手、完走は29選手だった
バーレーンビクトリアス所属選手として単独でエントリーした新城
左から小森亮平(マトリックスパワータグ)、河野翔輝(ブリヂストンサイクリング)、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)がアタック
全日本選手権エリート男子ロードレース

10周回目にもう1選手が合流して4選手の逃げ集団を形成して11周回目突入。タイム差を最大1分20秒まで広げる。12周回目、逃げ集団はメイン集団に吸収。そこから小石祐馬(チームUKYO)が単独でアタック。

小石祐馬(チームUKYO)が単独でアタック
レース終盤に先頭を積極的に追いかける新城幸也(右)

15選手の追走集団は14周回目に小石を吸収。その集団から今度は山本大喜(キナン)がアタック。後続にタイム差16秒を付けて最終周回へ。追走は新城幸也と新城雄大の2選手。優勝の行方は山本大喜を吸収したこの2選手に絞られ、そのまま最後のゴールスプリント勝負に持ち込まれた。

山本大喜(キナン)が後続にタイム差16秒を付けて最終周回へ

スプリントを制して優勝したのは新城幸也。自身3度目の戴冠となった。

3度目の日本チャンピオンとなった新城幸也
全日本選手権エリート男子優勝の新城幸也を中央に左が2位新城雄大、右が3位山本大喜