サイクリングなどのアウトドアで愛用するスポーツ用のアイウエアも最近は度付きレンズが作れる。強度の近視でも果たして適応範囲なのか、お気に入りのブランドやモデルで作れるか、いったいいくらかかるのかなど不安もあったが、一念発起してオーダーしてみた。
これまで自転車に乗るときは、コンタクトレンズを装用したうえでお気に入りのアイウエアをかけて出かけていた。どうしてメガネではいけないのかというと、強い紫外線を長時間浴び続けると健康を害するおそれがあること、疲労を感じやすいこと、ホコリなどが目に入りやすいことが挙げられる。
でもコンタクトレンズ代金もそれなりにかかるし、装着にも時間がかかる。走っている途中で外れたときもあって、そんなトラブルが発生した場合はとにかく安全が確保できない視力なので歩いて帰る必要もあった。ツール・ド・フランス取材時も長時間屋外にいるときは、「度付きのアイウエアがあったら気軽でいいなあ」と夢描いていた。
ということでアイウエアのトップブランド、オークリーを訪ねた。対応してくれた技術スタッフに「どんな使い方をするのですか」と質問されたので、「自転車に乗るとき」などと利用方法を伝える。実はこれが重要だ。前傾姿勢で上目遣いになりがちなサイクリングシーンでは、焦点の位置がわずかに上方になる。さらにフレーム形状によってもその位置が変わってくる。このあたりは技術者の腕の見せどころで、利用者の使い方に最適なデータを作り上げていく。
こうして強度の近視でも-6.00という最大強度数で作れることがわかった。これまでは対応できなかった強度数のようだが、最新技術を応用したことでカバーできる範囲になったとのこと。価格は4万円からオーダーできる。さらに驚いたのは遠近両用の累進多焦点レンズも簡単に作れること。サイクリングなら走行時に安全を確保できるような広い遠用部を持ちつつ、サイクルコンピュータの表示も無理なく見える設計に。ゴルフならスコアカードが見えるように、釣りならルアーの付け替えもできるようにと、スポーツに応じた最適設計が取り入れられる。
フレーム選びを含めて1時間ほどでオーダー完了。通常の眼鏡店では在庫したレンズを加工して即日のうちに仕上げてくれるが、レンズの曲がり具合がモデルによって千差万別のスポーツアイウエアはラボと呼ばれる工場で1枚1枚オーダーメードされる。その工程がまたスゴい。
これまで何度もメガネ販売店でメガネを作ってもらったが、カーブが大きく、しかも多様なモデルがラインナップされるスポーツ用アイウエアにどうやれば度付きレンズが装備できるのか疑問だった。そこで都内にあるオークリーのRXラボを見せてもらった。
一般的なメガネ販売店では、まずフレームを選び、検眼し、在庫しているレンズを加工してフレームに入れてできあがる。一方でオークリーの度付きアイウエアは、注文を受けてからRXラボでレンズ1枚ずつオーダーメードされる。選んだフレームによってカーブの具合が違うし、前回コラムで紹介したようにスポーツによって視野の中心点が変わる。レンズカラーもスポーツごとの適性を考えれば千差万別で、その組み合わせは天文学的数値になるはずだ。
スポーツに特化して開発されたアイウエアはフレーム同様にレンズのカーブも最大の特徴。それがカッコいいのだが、度付きレンズという観点で見ると実にやっかいなシロモノだ。カーブの大きさに加えてレンズの配置に角度がつけられている。そのため検眼して算出された個人の度数をフレームごとに適正な数値に変換する必要があるのだ。プログラムされたコンピュータを駆使して0.01刻みの精度で新しい数値を計算していく。
つまり注文した人の度数は、オークリーのコンピュータによって選んだモデルに最適化される数値に変換され、コンピュータ制御のマシンによって製造されていく。視力が弱いボクのレンズはレンズ厚が増してしまうので、さらに独自のレンズ加工技術を投入して厚みを抑えるとともに、レーザー加工も駆使。こういった技術が開発されたおかげで強い度数でも作れるようになったのだという。
一般的にレンズの末端になるほどゆがみが発生してしまうものだが、広角的な視野で情報を補足したいスポーツにとっては、これが戦う以前の難敵となってしまう。これも最新技術を応用してゆがみを解消し、幅広いクリアな視界を実現させたという。
オークリーの度付きアイウエアを使っているスポーツ選手は多い。陸上長距離、世路野球選手、プロゴルファー、そしてツール・ド・フランスに出場するロードレーサーなど。こういったトップレベルの領域になると、高速で突っ込むコーナーの路面が鮮明に見えるなど、高い次元の優位性が発揮されるようだ。もちろん一般サイクリストはそのレベルではないが、一般道を走る際には視覚でさまざまな情報をキャッチし、安全性を確保することが必要。つまり自動車運転免許の取得に必要な視力は確保すべきで、そのアイテムとして度付きアイウエアは問題点の解決になると今回痛感した。
度付きアイウエア。あまり期待していなかったが想像よりもかなりよくて、新鮮な体感だった。度付きアイウエアはアウトドア派が手に入れた究極の冒険道具だと思う。ツール・ド・フランス取材時も、ホテルを出て太陽光がまぶしければメガネを度付きアイウエアに替えればいい。今シーズンは気楽にやれる気がする。
コメントを投稿するにはログインしてください。