2020東京五輪の最初の決勝種目は自転車競技の男子ロード。これまで府中市のパレード区間、南多摩尾根幹線、富士山南麓を紹介してきたが、いよいよ勝負どころの3峠へ。神奈川・山梨・静岡の3県にまたがる山岳コースを2020年9月9日に実走した。そこはまさしくメダルを争う舞台にふさわしい過酷なコースだった。
雄大な富士のふもとで激坂バトル
ツール・ド・フランスに出場するトップ選手を日本にいながら目撃できるのが2021年に開催予定の東京五輪男子ロード。世界の一流選手がどんなにスゴいか、同じモノサシで測れるチャンスなので、その舞台を走ってみよう。五輪コースはきわめて複雑なので、今回は日本人プロとしてツール・ド・フランスに初出場した今中大介さんが監修してくれた距離60kmのコースを実走した。道志みちにある「道の駅どうし」を発着点として、五輪の勝負どころとなる山伏・籠坂・三国峠を走るものだ。
スタートして山伏峠までは快適に飛ばせる上り坂が8km続く。五輪では、ここまでの道志みちがアップダウンの連続でハード。五輪は多くの国に出場枠を割り当てる大前提があり、それほど強くない国の代表も参加するので、間違いなく山伏峠までに脱落するはずだ。
山伏峠をクリアすると一直線に下って山中湖へ。湖畔を走って籠坂峠の上りに突入するが、距離は2.2km。今回は1回だけ上ったが、五輪では2度ここを上る。しかも2回目は最後の上り坂となるので、観戦ポイントとしていい。
そしてこの日最後の三国峠へ。
「三国峠を走ると、世界レベルを実感できますね」と今中さんがコメントしていたが、そのとおりだ。距離6.5kmで平均勾配値10%とのデータだが、上りはじめからの3kmが想像をはるかに超えた急斜面。正確に言うと三国峠の手前1.9km地点に明神峠があってそこまでがとにかくキツい。明神峠を越えると三国峠までは平地に感じるほどだ。
これまで国内で経験した峠はたいてい、わずかに緩斜面になるところがあって、ここで息を整えることができる。筋肉を使ってペダルにトルクをかければ心肺機能は休めるし、呼吸を重点に運動すれば脚の筋肉は回復できる。上り坂はそれを巧みに使い分けて上るのがテクニックだ。
ところがこの峠は延々と激坂が続くので、筋肉も心肺も全力だ。これ以上軽いギアはなく、苦しい運動が続く。速度計を見ると「時速4km」と歩くのと同じくらい。恥も外聞もなく自転車を降りるしかない。その後は1kmごとに足を着いた。こんな経験は今までないことだ。
「五輪選手はここをどんなスピードで上るのかな」などと考えているゆとりもなかったが、峠の終盤は一転して楽に。季節がら秋風も心地よく、三国峠に到着。真新しく舗装された広大な敷地があって、おそらく関係者や観戦者の駐車スペースになるのだろう。こういったところにクルマを置いて、徒歩で観戦ポイントまで移動して五輪を見るというのもいい。
三国峠を越えると山中湖までダウンヒル。晴れていれば湖面の向こうに富士山が見える。今回の五輪コース実走は結局4日間を要したが、世界中からやってくる代表選手は6時間でゴールする。どんなスピードで三国峠を上るのか? 想像すらできない。
東京五輪男子ロード
男子ロードは開会式翌日の7月24日。スタート地点は東京都府中市の都立武蔵の森公園。多摩川にかかる是政橋からレース開始。東京都・神奈川県・山梨県・静岡県を通り、富士スピードウェイにゴールする。総距離はパレード走行区間10kmを含む244km。途中通過とゴールが観戦できる富士スピードウェイはチケットが必要だが、コース途中は原則的に無料観戦できる。ただし交通規制などでアクセスできないエリア・時間帯があるので、事前下見は必須。
東京オリンピック自転車競技ロードレース(男子)コース詳細
●アプリでナビも
今中大介さんが監修した今回の実走ルートは無料アプリでダウンロードでき、ルートナビしてもらえる。パソコンでも閲覧可。
●東京五輪3峠の詳細サイト
その他の東京五輪コース実走
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