自転車の世界選手権が4年に一度、五輪に匹敵するメガ大会に

五輪よりも永い歴史を誇る自転車競技の世界選手権が、2024年はスーパーになる。スーパー世界選手権が英国のグラスゴーで開催されることが決まった。近年は別々に行われていた13種目を集中開催するもので、120カ国、2600選手が参加。自転車競技史上空前のメガイベントは今後、夏季五輪の前年、4年ごとに開催される計画だ。

世界選手権エリート男子ロード © Innsbruck-Tirol 2018 / BettiniPhoto

4年に一度の世界選手権は自転車競技史上空前のメガイベント

メガ大会となるUCI(国際自転車競技連合)世界選手権が2023年8月3日から13日まで、英国北部スコットランドのグラスゴーとその周辺で開催されることが決まった。11日間の日程で13種目が行われる。

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BMX世界選手権男子エリートの吉村樹希敢(右)

その誕生により、毎年9月開催が慣例のロードレース世界選手権などのシーズンカレンダーに影響が生じる。初回スーパー大会は、7月のツール・ド・フランスと8月中旬開幕のブエルタ・ア・エスパーニャの間に設定された。さらに2度目のスーパー大会となる2027年は、種目数が15となり、アマチュア参加部門を増強。2600人の代表選手以外に、一般の7500人も大会を走る計画だという。

自転車世界選手権は五輪よりも永い歴史を持っている

アテネで開催された第1回近代五輪に先立つこと3年前の1893年、自転車競技の世界チャンピオンを決める世界選手権が始まった。第1回大会は米国のシカゴが会場。その後は自転車競技の盛んな欧州各国を舞台として、二度の世界大戦による中断はあったものの、1年に一度行われる。1990年にはアジアで初めてとなる第87回大会が日本で行われた。トラックは前橋市、ロードは宇都宮市が会場だった。

黎明期の世界選手権はトラック種目だけだったが、1921年の第24回大会からロードレースが追加された。1958年の第55回大会からは女子種目が加わった。また、1995年までは、現在の年齢別カテゴリーではなく、プロとアマチュアというカテゴリーで各種目が行われた。1996年からはそれまで1つの大会として行われていたトラックとロードを分離して別都市・別日程に。現在はトラックを春先に、ロードを秋に開催されることが通例となる。

アーティスティックサイクリング(旧名称はサイクルフィギュア)もサイクルボール(同サイクルサッカー)とともに室内種目として採用される

また比較的新しい種目のMTBやBMXなどはコース設定などがs異なることからはじめから分離開催されていた。2023年はこういった異種目を1都市に集約して五輪やサッカーW杯に肩を並べるようなイベントにしたいというねらいがある。

日本勢の自転車世界選手権初参加は1936年のトラック種目。そのトラックでは、中野浩一が1977年から1986年までプロスプリント10連覇を達成する。1987年のプロスプリントで俵信之がそのタイトルを継承。2020年には女子オムニアムで梶原悠未が23年ぶりの世界チャンピオンに輝いた。パラサイクリングでは石井雅史と藤田征樹が世界タイトルを獲得している。

梶原悠未が世界チャンピオンの称号である5色の虹色ジャージ、アルカンシエルを着用する ©JCF
世界チャンピオンのアルカンシエルを着用した藤田征樹
UCI XCOワールドカップ・レジェ(フランス)を走るピドコック。2021年7月4日 ©Bartek Wolinski / RedBull Content Pool

用意されるアルカンシエルはなんと200枚

各種目・カテゴリーの優勝者には世界チャンピオンの称号として、5色のストライプが胸に入った白地の世界チャンピオンジャージーが与えられる。フランス語で虹という意味のアルカンシエルと呼ばれるもの。世界選手権の優勝者はそのジャージーを1年間着用する義務がある。初開催となるスーパー世界選手権では200枚のアルカンシエルが用意される。

翌年の大会で優勝できず、タイトルを返上したのちもジャージーのエリやソデに5色のストライプを入れ、かつてのチャンピオンであることを示すことが許される。世界チャンピオンの称号は生涯にわたって誇れるものだからだ。

アルカンシエルを着用したアンナ・ファンデルブレッゲン © Innsbruck-Tirol 2018 / BettiniPhoto