クルマの交通量が少ないのが離島の魅力だが、都心部からのアクセスもいい伊豆大島に自転車を持ち込んでサイクリングするのがいま一番のオススメ。ノンビリ派は大型客船。高速ジェット船なら1時間ほどで上陸できる。ただし特殊な事情があって難題もある。それらを賢くこなして温暖な島でサイクリングを楽しみたい。
海底火山の噴火によって形成された伊豆大島は周囲52kmのラグビーボールのような島だ。標高758mの三原山が中央にあり、グルッと一周する大島一周道路がある。ロードバイクならこの一周道路が走りごたえあり。MTBなら裏砂漠と呼ばれる三原山の東麓が楽しいはずだ。
都内から日帰りで伊豆大島サイクリングをやるなら、東京都港区の竹芝桟橋から出航する高速ジェットを活用するのが一番。午前8時に出航し、10時20分には大島に着く。大島を発つのは15時30分なので、健脚派のサイクリストなら大島一周道路を周回できるはず。2月から3月は椿まつりのシーズンで、高速ジェットは神奈川の久里浜港や千葉の館山港からも出発する。伊豆半島の熱海・伊東・稲取からも定期的に出航する。
ただし高速ジェットは滞在時間が5時間ほど。もっとのんびり走りたいなら、前日の夜遅くに竹芝桟橋を出航する大型客船に乗り、朝早くからサイクリングを始めればいい。大島到着は午前6時で、大島出航は14時10分なので、8時間の滞在時間がある。さらに時間を延ばしたいなら往路は大型客船、復路は高速ジェットという手段も。あるいは1泊2日でのんびり楽しむのもいい。
気をつけなければいけないのが、大島の特殊事情だ。風向きなどの天候状況で到着・出発する港が元町港か岡田港かに変更されるのだ。つまり手荷物をコインロッカーなどに預けておくことができない。というか基本的にコインロッカーは元町フェリーターミナルにごくわずかあるだけだ。ベテランサイクリストは岡田港の乗客待合室にある棚に自己責任で輪行袋などを置いておくというが、そもそも帰路の出航が岡田港になるとは限らず、持ち込んだ手荷物は身につけて大島をサイクリングするしか手段はない。
大型客船を例に取ると、帰路の船の出航が14時過ぎなので、13時には帰着していたい。そのため朝6時に伊豆大島に到着したら、準備を整えてスタート。休憩時間を除いて5時間あれば、平均時速は10kmで十分に観光できるお気楽サイクリングだ。島で最も栄えている元町に着いたら食事を取ったり、日帰り温泉で汗を流したりする時間もある。もしお風呂に入る余裕がなくても、海路ののんびりとした旅は大型船の中でシャワーを浴びる時間もたっぷりとある。
初めて伊豆大島を一周するなら、上りが比較的容易な右回りで走るのがいい。元町の集落から海岸沿いのサンセットパームラインを北上する。天気がそれほどよくなくても対岸に伊豆半島が見え、富士山も一望できるはずだ。5kmほどで最北端の野田浜に到達したら、ここから小径を通って岡田港へ。大島一周道路が出現するので、いよいよロードバイクの高速走行へと移行する。
あれ? ところが意外とアップダウンが多いのだ。泉津の集落あたりは体力もあって快調に飛ばせるが、椿園がある都立大島公園で大休止したくなる。じつはここからいきなりの激坂が待ち構えている。大島一周道路というくらいだから海岸に沿うように平らな道が続くのかと想像していたが、東海岸のルートは三原山の山麓まで上る。「なんで上らなきゃいけないの!」というくらいに上る。加えて自販機もコンビニもない。このルートを行くときは十分な水分と食糧を携行していかないと大失敗する。しかもすれ違う車両は数台しかないので、とにかくゴールまで自力でたどり着かないといけない。
ようやく上り坂を終えると、筆島までの一気のダウンヒル。真っ青な海に飛び込んでいくかのようなダイナミックさがある。それを過ぎると波浮(はぶ)の港。演歌な気分にひたりたいのだが、船の出航時間が気になって先を急ぐことになるはず。波浮と元町の間はそれなりに交通量が増えるが、それでも快適だ。このルートはアップダウンもそれほどでなく、ほどなく元町にゴール。
港近くの料理屋で地魚をつつきながら、サイクリング後の疲労感を味わうのがおすすめ。キツかったことはすぐに忘れてしまい、自転車仲間を誘ってもう一度来てみたいなと思うはずだ。
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