伊豆大島は1万円でまる1日走れる、最も身近な自転車パラダイス

都心部から一番近い自転車パラダイス、伊豆大島に1万円の予算でサイクリングしに行こう。東海汽船の夜行大型フェリーが半額以下となる「サイクルキップ」を利用。自転車を輪行袋に入れれば手荷物料金なし。携行品を最小限にして帰着時の港に自走する。賢くこなせば一周50kmのダイナミックなコースがまる一日楽しめる。

千波地区で大島一周道を逸脱して交通量が皆無のルートを走る

夜行の大型客船でアクセス

運行時間は季節によって多少異なるが、夏場なら東京の竹芝客船ターミナルを23時に出航し、大島に翌日午前5時に到着する大型客船は、サイクリスト向けの格安乗船券が設定されている。2等リクライニングシート限定だが、たいていガラガラで、毛布が無料で借りられる特典も付いているのでグッスリ就寝することができる。

期日限定で売り出されるもので、おとな往復2等料金は通常8780円(2019年5月)だが、期間中は3890円・こども1980円(税込み)と安い。

大型フェリーはそれほど揺れないし、欠航もめったにない。かなり時間どおりに運行するので安心

帰路の便は午後1時30分に大島を出航し、午後5時(土日は横浜大桟橋に寄港するので同45分)に竹芝に到着する。伊豆大島の滞在時間は8時間半なので、グルッと一周走ってちょうどいいのである。

夜行便となるのだからサイクリストだってお酒を飲んでもいいわけで、デッキでサイクリング仲間らと宴会をしながらレインボーブリッジや横浜の夜景を楽しんでいる人たちもいる。

大型客船にはさまざまな船室がある。2等椅子席は一番下のカテゴリーだ
波浮港の家並みを行く

特殊な事情があるので携行品は最小限に

気をつけなければいけないのが伊豆大島の特殊事情だ。風向きなどの天候状況で到着・出発する港が元町港か岡田港かに変更される。つまり手荷物を港に預けておくことができ、身につけて大島をサイクリングするしか手段はない。そのため輪行袋はコンパクトなものが必要で、携行して走る。生地がとても薄いので持ち運びの際は袋に収納した愛車をキズつけないようにしないといけない。

早朝の到着となるが、コンビニは全くないので朝ごはんや走行中の補給食は都内で買っておく必要がある。島の一周道路というと海岸線を走る平坦な道を想像してしまいがちだが、大島の東側は三原山の中腹まで登るので非常に過酷なルートだ。裏砂漠という荒涼たる斜面が広がる景観で、コンビニどころか自販機すらない。

岡田港にあった旧待合所は閉鎖。隣に立派な施設が建ったが、船が出入港するときしか開館しないようだ
元町客船ターミナルにある唯一のコインロッカー

それでもクルマの往来がほとんどないので、とても快適。トイレは要所にあるので女性を誘っても安心。伊豆大島は時計回りで一周するほうが比較的楽なので、初級者におすすめ。

予算としてはサイクルキップ、必要に応じて港の駐車料、補給食などを含めて1万円。たったこれだけでバラダイスサイクリングが楽しめるのだからうれしい。

元町客船ターミナルから坂道をちょっと上るとレンタルサイクルがある
元町にあるおみやげ店「みよし」には自転車用チューブやタイヤも扱っている。ケージ付き空気入れも無料で貸してくれる

輪行すれば往復3000円浮く

自転車をそのまま持ち込むこともできるが片道1500円の受託手荷物料が必要。輪行袋に入れて船に乗り込めば無料になる。ただし輪行袋を携行してサイクリングすることになるので、軽量&コンパクトタイプがおすすめ。

駐車料も1100円安くなる

タイムズニューピア竹芝はサウスタワーとノースタワーがあり、どちらもフェリー利用者は割り引きされる
竹芝客船ターミナルにある認証機で割り引きの認証を受ける

竹芝客船ターミナル最寄りのコイン式駐車場「タイムズニューピア竹芝」は24時間で料金3600円だが、待合室の割引認証機で自分で認証を受けておくと2500円になる。
●上記駐車場割り引きは2019年5月をもってサービス終了とのことです(2019年6月加筆)

林道を使って裏ルートを行けばかなり走りごたえがある

伊豆大島一周に満足しない中級者以上のサイクリストのために、走りごたえのあるルートを、この島のことをよく知っている吉野保さんに案内してもらった。「島内一周道路はあまりにも定番過ぎるので、随所に張りめぐらされた林道を走る。レベルに応じてコース設定できます」という。

一周道路もアップダウンのある道が続くが、平均時速10kmでも5時間で走破できるので、意外とこれは初級者レベル。でもさすがに2周は飽きてしまう。そこでこの島に月2回は自転車を持って訪れるという吉野さんに島の醍醐味を十分に味わえるルートを案内してもらうこと

竹芝客船ターミナルでは輪行するサイクリストが何人もいる
伊豆大島東岸にある長いトンネル。歩行者がいる際は降車するなど配慮したい

船は早朝に島の北側に位置する岡田港に到着。一緒の大型客船で来た50人ほどのサイクリストはそそくさと出発していく。ボクたちは輪行袋に入れて運んだ自転車をゆっくりと組み立て、一番最後に出発した。

岡田港から走り出してすぐに裏道を行く。とりわけトンネルは背後からクルマが接近すると音が反響して怖いので、旧道として残っているルートを取って大回りする。そのほうが自転車にとっては快適だからだ。泉津の集落で吉野さんはいきなり民家の脇道に入った。

ここから太平洋が一望できる絶景ポイントまで標高差にして340mを駆け上がる。上り坂の路面は舗装が傷んでいるが、下りは最近舗装し直したようで安心できる。上りと下りがこの逆だと非常に危険だ。伊豆大島を一周するなら時計回りのほうが楽だというが、吉野さんは路面の荒れも心得ているのだ。

波浮港。天気がよければ三宅島や御蔵島が見える
波浮港。ちょっと演歌な気分に

島の一周道路というと海岸線を走る平坦な道を想像してしまいがちだが、大島の東側は三原山の中腹まで登るので非常に過酷なルートだ。裏砂漠という荒涼たる斜面が広がる景観で、コンビニどころか自販機すらない。ところが吉野さんにかかると、そんなものは序の口で、一周道路から逸脱してずかずかと踏みいる。三原山の中腹まで上ったら一気にダウンヒルして一周道路に戻る。ところが一周道路に進路を取るわけではなくて、それを突っ切って太平洋岸まで降りる。なんかもう、弱い者イジメのようなコース設定だ。

東側の海沿いに出ると遊歩道が整備され、明るく立派なトンネルもあった。歩行者の姿はまったくないが、マナーとしては自転車を押し歩いてここを通過したい。トンネルを出たらジグザグの急勾配を上って、いったん一周道路へ。しかしまた一周道路を走るのではなく、林道に入り込んで三原山の中腹を目指す。いやあ、キツい!

島の南にある地層大切断面。通称「バウムクーヘン」

結局、走行距離は53km。獲得標高は1500mを超えた。クルマの往来はほとんどなかったので、とても快適。要所にトイレはあったが、食料や飲料を調達できるところは限られているので、あらかじめ用意しておくことが重要だと再認識。この日の出港は岡田港だったので、そこがゴール。温泉は元町しかないので、島寿司と明日葉の天ぷらをいただいただけで、温泉には入れなかった。ロードバイクを輪行袋に収納して東京に向かう大型客船に乗り込むのだが、心地よい疲労感を感じつつ、海の旅を満喫した。疲れた身体でクルマを運転したくなかったので、それがありがたかった。

旅館も土産物屋も多くなく、一般観光客の少ない島だなと感る。それにしては格安チケットの存在もあって、島を訪れるサイクリストは多い。だから自転車パラダイス。一度その魅力をお試しあれ。

波浮港のコロッケがイチ押し

波浮港の鵜飼商店で65円の揚げたてコロッケを入手
鵜飼商店ではコロッケなどを注文してから揚げてくれる

お昼時は最南端に近い波浮(はぶ)となるが、飲食店はほとんどないので、港にある鵜飼商店に立ち寄り、注文してから揚げてくれるコロッケで補給。1個65円。

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