東京マラソンはその倍率から統計的に計算すると10年に一度しか出場できないビッグイベントだ。もし幸運にも出場権をゲッできたのなら、過去に記録した自己ベスト、あるいは夢のサブスリーを更新したい。初マラソンの人だって自分の体力に応じて目標タイムを設定し、それをクリアしたい。
そんなときに最強の見方になってくれるのが、各社GPSデバイスに搭載されたペースメーク機能。Garmin(ガーミン社)ならどんなGPS搭載機種にも装備される「バーチャルパートナー」機能である。
GPSデバイスは価格差こそあれ、さまざまなスポーツを楽しむための多彩な機能を搭載している。もはやすべて活用するのはほぼ不可能なほどの、あまりある最先端マシンなのだが、多様な仕様に惑わされる必要はなく、それぞれのスポーツ、各自のレベルに応じて役に立つ機能だけを起動させればいい。
そんな多彩な機能のひとつが「バーチャルパートナー」だ。ホームページで閲覧できるGarminのマニュアルでは、このあたりはかなりサラリと記述されていて、あまり脚光を浴びていないのだが、東京マラソンで記録に挑戦したいのなら、この「バーチャルパートナー」を自分のレベルに合わせてセッティングするのが絶対に賢い。
ところでバーチャルパートナーってなに?
バーチャルパートナー機能とは簡単に言うと、目標タイムに対して現時点でどれだけ先行しているか、あるいは遅れているかが瞬時に分かる機能だ。目標タイムに対してのその時点での時間差も表示される。走行中に手首に装着したデバイスの画面をときおりチェックし、先行タイムをキープしていけば確実に目標をクリアしてゴールできるという機材なのである。
まずは42.195kmの目標タイムを掲げよう。次に、そのタイムでゴールするためには1kmあたりをどれだけのラップタイムで刻めばいいかを計算する。この「キロ単位のラップ」をバーチャルパートナーに設定すれば、ゴールまでのペースを導いてくれるのだ。
それでは具体的な目標タイムを想定して、「キロ単位のラップ」を算出してみよう。「バーチャルパートナー」の入力は5秒刻みが最小単位なので、それをふまえて算出してみることになる。
サブスリーが目標の人
2時間59分20秒でゴールするためには、キロ4分15秒。「バーチャルパートナー」に入力する数値は4分15秒となる。
3時間30分切りが目標の人
3時間27分28秒でゴールするためには、キロ4分55秒。
4時間切りが目標の人
3時間59分06秒でゴールするためには、キロ5分40秒。
5時間切りが目標の人
4時間55分22秒でゴールするためには、キロ7分。
トイレに要する時間も考慮すると、ちょっと速めのタイムを設定しておくなども検討の余地あり。途中で確認できる先行タイムがあれば、それがアドバンテージとなるのでトイレタイムに使うこともできる。
実際に入力してみよう
それではGPS搭載デバイスの代表的モデル、Garmin Fenix 5 Sapphireに「キロ単位のラップ」を入力設定してみよう。
MENUボタンを長押ししてメニューページを表示する。
「設定」→「アクティビティ&アプリ」と進む。
「アクティビティ&アプリ」の中から「ラン」を選択する。
「ラン設定」→「トレーニングページ」の順に選択する。
UPボタンとDOWNボタンを使って「+追加」→「バーチャルパートナー」を選択。
「バーチャルパートナー」画面で1kmあたりの所要時間(スピード)を設定。4時間切りが目標なら5分40秒と入力する。
終了したらBACKボタンで前の画面に戻り、アクティビティを開始する。
ランの設定から「トレーニングページ」→「+追加」と進むと「バーチャルパートナー」の項目が現れる。ここに「5分40秒」を入力。実際にはこのタイムをキープしてゴールすると3時間59分06秒なので、「54秒」のアドバンテージがある。
これで準備は完了だ。本番のときにランモードにしてスタートボタンを押せば、スクロールされる数項目の画面の中に「バーチャルパートナーページ」も表示される。遅延あるいは先行時間、実際の平均ペースとともに、赤いランナーとグレーのランナーが走るイラストが出現する。赤いランナーは自分で、グレーは目標設定したペースだ。赤が先行していれば記録を上回るペース、グレーが先行していればそれに追いつかないと記録は達成できない。
ハーフマラソンで実験し、見事にベストタイム!
実際にハーフマラソンで使用してみたレポートをご紹介。これは毎年4月に宮城県で開催される「気仙沼つばきマラソン」でのレースレポートだ。この大会は6年連続の参加だが、過去のベスト記録は1時間57分10秒。それを更新するために愛用しているfenix 5のバーチャルパートナー設定タイムをキロ5分35秒にしてスタートした。
スタート時、あらかじめランモードにしておけばGPSが位置情報を補足し始めて数十秒後には現在位置を特定する。最後尾から走り始めてスタートラインをまたいだところで右上のボタンを押して計測開始。途中のラップタイムは右下ボタン。ゴールしたら右上ボタンを押せば、コースマップ、高低差、ペース、心拍数、ピッチ(歩数)、気温が記録される。さらには走行中の1km、5km、10kmの距離において最も速く走ったタイムも自動的にピックアップされる。これらは「自己ベスト」としてGarmin Connectに記録されるのである。
気仙沼つばきマラソンの舞台となる気仙沼大島のコースはアップダウンの連続で、上り坂になるとペースダウンし、下り坂で挽回するというパターンが波状的に続く。過去5回の大会では雪、暴風雨もあって泣かされたが、この日は気温20度を超える猛暑となった。そんな過酷な状況でもfenix 5に表示される数値を頼った。できるだけ冷静になって1kmごとのラップを地道に重ねていく。
当時のボクの最大心拍数は166なので、それを入力しておくと心拍数の領域が自動計算される。リラックス(Z1)83〜100、イージー(Z2)100〜116、モデレート(Z3)116〜133、ハード(Z4)133〜149、エキスパート(Z5)149〜166なのだが、スタート直後からオレンジに色づけされたハードゾーンに突入していたので、前半の折り返しまではレッドのエキスパートゾーンに入らないように、はやる気持ちを落ち着かせた。
最も重要なのは実走ペースだ。「バーチャルパートナーページ」では上り坂になるとグレーのランナーが先行していき、遅れが最大35秒まで広がってしまった。しかしあせらずに下り坂で徐々に挽回していくうちに、赤いランナーがグレーを追い抜いていき、20秒ほどのアドバンテージを得る。アップダウンごとにその繰り返しだ。過去の大会はコースが長く感じたが、左手首にしたデバイスを何度もチェックしていたので、とても短く感じた。手首を折り返して数値を確認したあとは、両腕をだらりと下げてリラックスするようにした。
そしてゴール。記録はなんと1時間53分02秒。自己ベストの大幅な更新である。なにがよかったかといえば、ペース設定が走行中常に確認できたこと。心拍数をときおりチェックして最後まで無理をしなかったこと。猛暑でオーバーヒートしてラストにペースダウンする参加者も多かった。そしてなによりも、トレーニング実績を記録するなどで楽しく継続的に練習できたことが記録更新につながったはずだ。
コメントを投稿するにはログインしてください。