自転車王国オランダのスゴさを知るために、現地でレンタル自転車を借りてサイクリングしてみた。市民の足として定着させるために、国を挙げて自転車にやさしい環境作りを推進する。日本では考えられないほどの設備は、自転車への愛着心がなせるわざだった。
地理の教科書にもあるように、オランダは国土の4分の1が海抜ゼロメートル以下。地球温暖化がこれ以上加速すると、氷河が溶け出して今よりも海面が高くなってしまう。北海沿岸に防備した堤防を超えて海水が流れ込むと国土が浸水する。そのため二酸化炭素排出削減策としてガソリンに高額の税金をかけて、クルマではなく自転車を利用しようという国策を実施している。
だから自転車道路がこれほどまでに整備されているのだ。運がいいことに自転車の難敵となる上り坂はほとんどない。郊外を走る主要道はクルマと自転車が走る道が完全に分離されている。市街地では歩道の一部を自転車レーンとしているところも多く、スマホをいじながら走るなど通行ルールを守らないオランダ人も見かける。しかし昨今の日本のように自転車の安全通行が大きな問題になるようなアクシデントは少ない。きっとそこには、他の人との共存を心がける博愛の精神があるのだと感じた。
光るサイクリングロード
家電メーカーのフィリップス創業地として知られるアイントホーフェンには、夜になると路面が鮮やかに光り輝くというサイクリングロードがある。この町の近郊には画家のフィンセント・ファンゴッホが家族とともに暮らし、幾多の名画を描いたヌエネンという村がある。光るサイクリングロードはゴッホの代表作「星月夜」をモチーフにしたものだという。
これは蓄光素材を路面に埋め込んでデザインしたもの。日中の太陽光をエネルギーとして蓄え、あたりが暗くなると光を発する。そのため日没直後が見応えあるのだが、夏のオランダは午後11時を過ぎないと暗くならないので我慢くらべ。
2輪車ロータリー
アイントホーフェンの環状交差点には2輪車専用の円形通路が天空に設置されていた。幹線道路脇の土手の上にサイクリングルートがあるので、サイクリストはスロープを上らなくてもそのままスピードを落とすことなく通行できる。円形通路は直径70mで、高さ72mの塔から24本のワイヤで支えている。2輪専用なのでオートバイも利用できるのだが、クルマと自転車が交差点で接触することは全くない。
駅前の大規模駐輪場群
オランダ最大の都市アムステルダムでは駅周辺に広大な駐輪場がいくつも完備されていた。写真は運河の上に建設されたもので、駅構内の下にも駐輪場があった。自宅から自転車で通勤に出た人はサイクリングルートを通って駅まで行き、駐輪場に駐めて電車に乗る。駅のホーム下をくぐる歩行者・自転車道路も新設された。さらには運河をわたる船に通行料無料で自転車のまま乗り込める。
自転車専用橋
運河の多いアムステルダムには「マヘレのはね橋」などが観光名所。中央駅からクルマで10分ほど行ったところには「ピトン橋」という大蛇のようにうねった歩行者専用橋がある。そのすぐ近くにあるのがこの自転車専用橋。全長100mで、サイクリストにとってかけがえのない生活ルート。
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