標高1390mの二度上(にどあげ)峠は群馬県高崎市と、北軽井沢と呼ばれる同県長野原町との境界にある。浅間隠山の南肩となる尾根がピークで、そこにたどり着けば活火山・浅間山の雄姿が一望できる。ふもとの高崎市倉渕町から21kmほど。南隣にある碓氷峠と同様に勾配は厳しくなく、それでいて交通量はほとんどない。首都圏にこんな自転車パラダイスなルートがあったのか!
碓氷峠の北隣に位置、交通量はほどんどなく初級者向き
かつて長野県の新軽井沢駅と群馬県の草津温泉駅をつないだ草軽電気鉄道(1962年に廃線)にスイッチバックで高度を稼ぐ区間があり、二度上という地名がついた。近くにあった浅間駅は、開業してわずか1年で二度上駅と改称された。ユニークな峠の名前もそれに由来するという。
今回は都心部からアクセスがよく、しかも初級者でも楽しめるルートとして二度上峠を実走してみた。高崎市から国道406号を北西に進むと道の駅「くらぶち小栗の里」があり、ここから車載していたロードバイクで走り出す。すぐに権田というY字路があり、ここを左折して県道に入ると交通量は激減する。あとは峠まで1本道。途中に商店や自販機はほぼない。
浅間隠山の鞍部を上る。その名のとおり浅間山を隠しているわけだから、二度上峠に到達するまで浅間山は全く見えない。それがかえってワクワクしてならない。倉渕村ではうだるような暑さだったが、すぐにひんやりとした空気が感じられた。
勾配そのものは比較的緩やかで、ツール・ド・フランスの映像でよく見るプロ選手よろしく飛ぶようなスピードで駆け上がっていく。もちろん記者にとってはそんなイメージなのだが、実際には実力相応のスピード。でもプロの走りを自分とダブらせるだけで、もううれしすぎる。
この峠道のいいところはコーナーごとに数字と残り距離が表示されていることだ。「あと何km上るんだ?」という不安が解消されるからだ。数字は68からのカウントダウンで、ペダルを踏めば踏むほど残り距離が少なくなっていくのがいい。フランスのアルプスやピレネーの峠には1kmごとにサイクリストのための表示が必ずあるが、日本では珍しいのだ。
残り距離を確認しながら体力消耗をコントロールし、いよいよ峠へ。路面が平坦になると視界がひらけた。北軽井沢の青々とした高原が眼前に広がり、その上に浅間山。実のところこの日は天候が悪く、浅間山の全貌は見えなかったので、このルートを紹介してくれたサイクリストから写真を拝借。ただし上りきった達成感と安堵があって、山が見えなくても残念ではなかった。
今回は8月末に実走。秋になれば色づいてきてまた違った景観が味わえるはずだ。名前をもじるわけではないが、天気のいい日に二度目の上りに挑戦したくなる。走り屋は北側にある草津温泉まで足を伸ばして距離80kmほどの周回コースも設定できる。標高が高いので9月いっぱいがおすすめ。路面がわずかに荒れているので下りは慎重に。
GPSでデータ取得すると後半のルートも勾配地6.3%
道の駅「くらぶち小栗の里」から二度上峠までは片道21.2kmで標高差920m。平均勾配地は4.3%となる。上りがきつくなる後半8.48mの勾配地は6.3%。碓氷峠旧道が6%なので二度上峠のほうがわずかに厳しいが、一般的に上りにきつさを感じるのは8%前後から。万全の準備を整えればだれでも無難に上れる峠だ。
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