国土交通省が認定したナショナルサイクルルートが全国に6つある。このうち1487kmの最長距離を誇るのが、千葉県銚子市と和歌山市を結ぶ太平洋岸自転車道。他の5ルートは1日あるいは1泊2日ほどで地元を楽しむものだが、ある意味で走りきれないほど壮大だ。今回は都心から近い湘南エリアを訪ね、鎌倉や大磯などを走ってみて気づいたことがある。
6コースの中でもつかみどころがないほど大ざっぱなコース設定
自転車が文化として根づいた国にはその国を代表するサイクリングルートが必ずある。政府が推奨しているコースを走れば、世界各国からやってきたサイクリストはその国の景観のみならず、文化や歴史などを体感できる。自転車を使った「サイクルツーリズム」をこれからの観光の目玉にしようという意図がある。
2017年に自転車活用推進法が施行された日本も、ナショナルサイクルルートを導入した。最も人気なのは瀬戸内海の島々を結ぶ橋をいつくも渡るしまなみ海道だ。首都圏では霞ヶ浦と近くの廃線跡を利用したコースが親しまれている。関西には一周するという明確な目的がある琵琶湖周回。3ルートとも自転車専用道は持たないが、交通量の少ない道をのんびりと走れるのが魅力だ。
国交省推奨とはいえ、路面はまだまだ危険がいっぱい
今回走ったのは追加認定された太平洋岸自転車道。そのうちの湘南海岸の国道134号だ。GW期間中ということもあり、さすがにここは交通量がある。加えてアスファルトと道端のコンクリートの境目には、細身のタイヤがズッポリとハマってしまうようなスリットもあり、1秒たりとも気を抜けない。ナショナルサイクルルートとはいうものの、交通安全は自分で確保しなければならない普通の道だ。富士山や太平洋などの絶景を楽しめるのは、もう少し西の静岡県あたりからになりそうだ。
湘南海岸を西に進んで大磯へ。「矢羽」と呼ばれる路面の青い進路表示が側道を走るようにと案内する。それをたどっていくと大磯漁港から自転車道へ。西湘バイパスの側道という安全な通行帯を走る設計で、自動車道越しに大海原が、そして前方に富士山が見えるという景観だ。ただし自転車道とはいえ、散歩する人やジョギング愛好家も道路を共有するので、のんびりと走るのが原則。
太平洋沿いは交通の大動脈でもあるので、景色を楽しみながらサイクリングしたいという人には不向きで、修行のような走りを余儀なくされる。冒険心のある走り屋が複数日程で挑戦するような設定か。また、東京湾と伊勢湾は船で渡る。伊豆半島や紀伊半島といった、一度はサイクリングしてみたいポイントもある。これからも管轄の地方整備局がサイクルツーリズムに優しい環境づくりを進めていくという。
ナショナルサイクルルートとは?
日本を代表し、世界に誇れるサイクリングコースとして整備し、自転車を使った観光を促進させていこうと国土交通省が企画した。2019年にしまなみ海道(広島・愛媛県)、ビワイチと呼ばれる琵琶湖一周(滋賀県)、つくば霞ヶ浦りんりんロード(茨城県)の3つを認定。2021年5月に太平洋岸自転車道など3つが追加認定された。ルート全体にブルーラインなど進路がわかる路面表示がされ、およそ20kmごとにトイレや休憩施設、60kmごとに宿泊施設があるなど認定条件が決められている。
●ナショナルサイクルルート | |
しまなみ海道サイクリングルート | 70km |
ビワイチ | 193km |
つくば霞ヶ浦りんりんロード | 176km |
太平洋岸自転車道(新) | 1487km |
富山湾岸サイクリングコース(新) | 102km |
トカプチ400(新) | 403km |
(新)は新ルート |
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