サイクリストなら一度は走ってみたい「瀬戸内しまなみ海道」。そして今注目の「ゆめしま海道」と「安芸灘とびしま海道」。瀬戸内旅最終回は船を使わないと訪問できない「ゆめしま海道」の実走レポート。しまなみ海道は片道80kmのワンウェイだが、ゆめしま海道は同じ程度の距離で、広島県尾道市を発着として周回コースが取れるのが利点。
船を使わないと信号機が1つもないこの4島には渡れない
ゆめしま海道は愛媛県上島町の岩城島、生名島、佐島、弓削島の4つの島を橋でつなげたルート。2022年3月20日に生名島と岩城島を結ぶ岩城橋が開通したことで、にわかに注目されることになった。その特徴は、船を使わないとこの4島には渡れないこと。交通量が少ないので信号機は一つもなく、離島をのんびり走ることができるのだ。尾道を発着地として、しまなみ海道と合わせれば70kmの一周コースが取れる。つまり荷物を尾道市のホテルかコインロッカーに置いておけば、必要装備だけを携行して走りに行けるのだ。
コースは向島、因島、生口島まではしまなみ海道と同じ。生口島に渡ったら、しまなみ海道の推奨コースである左回りの海岸線を通らず、右回りで南下。すぐに洲江港に到着するので、ここから岩城島までの小さなフェリーに乗る。船は都心部の路線バスのように頻繁に出港するので、待ち時間で足止めを食うことはほどんどない。
岩城島に到着したら、ここからゆめしま海道へ。真新しい岩城橋は、テレビCMでおなじみの「ベタ踏み坂」のような急斜度で出現する。歩道はないが、行き交うクルマも少ないので眼下の大海原を望みながらゆっくりとペダルを漕ぐ。島の人たちの営みが目撃できるくらいのスピードで走るのがいい。「最後の弓削島にはおしゃれな食事スポットも営業を始めたので、昼食はそこで取るのがいい」と地元の人にすすめられた。
復路の渡船を使って因島に戻り、しまなみ海道推奨ルートとは反対側の東海岸、村上海賊が拠点とした因島水軍スカイラインを走る。ほぼ平坦なしまなみ海道とはまったく異なり、このルートはアップダウンがあって走りごたえは十分。全体としてゆめしま海道は、少なくとも4回の渡船利用、一部山岳ルート、交通量ほぼなし、そして出発地点に戻ってこられるというオリジナリティがある。
もちろん自転車で瀬戸内の島々と縦走するという旅情はしまなみ海道と変わらない。アップダウンの厳しさはレンタルサイクルに電動付きを選択すればカバーできる。走り屋に適しているが、サイクリング未体験の人にもおすすめしたい。
自転車船賃は無料…路線バスのように頻繁に運行
ゆめしま海道を形成する4島にはさまざまな航路が運行されているが、現在は「上島町観光客専用自転車船賃無料化事業」によって乗船料のみで利用できる。今回の往路は生口島・洲江港から岩城島・小漕港まで乗船。運賃150円のみで、自転車150円は無料に。1時間約3本の運行で、所要時間5分。復路は弓削島・上弓削港から因島・家老渡港まで。運賃100円のみで自転車80円が無料に。1時間2〜3本の運行で、所要時間8分。
首都圏からの自転車旅を満喫するなら2泊3日がベスト
2022年9月のシルバーウイークに首都圏発の2泊3日でチャレンジした瀬戸内サイクリング。新幹線利用の交通費3万7000円、朝食込み宿泊3万6000円、自転車配送1万2760円。補給食・夕食を加えて旅費総額は約10万円だった。2022年10月から実施される全国旅行支援を利用するとこれより安価で訪れることができるはず。
今回は台風により3日目に計画していた「安芸灘とびしま海道」を実走できなかったが、次の機会に再挑戦して紹介したい。
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