古民家ゲストハウス江口屋をベースにサイクリングしてみた

茨城県には貴重な地域資源である古民家が約3万2000戸ほど存在する。近年、同県内の古民家を活用したゲストハウスやレストラン、カフェ、コワーキングスペースなども続々とオープンし、古民家活用が活発化。特に注目されているのが霞ヶ浦湖畔にあるゲストハウス「江口屋」。さっそくここをベースにサイクリング旅を楽しんだ。

造り酒屋時代の屋号から「江口屋」という名前のゲストハウスになって生まれ変わった

霞ヶ浦サイクリングの、一番いい位置にある宿泊施設

琵琶湖に次いで日本で2番目に大きな湖、霞ヶ浦。この形を手でVサインをしてまねてみた時、人差し指と中指のちょうど二股の部分に江口屋はある。以前からこの近くの湖岸にはかすみがうら市水族館があって、トイレと気持ちのいい芝生もあるので最長130kmにもなる霞ヶ浦を走るサイクリストの絶好の休憩ポイントとなっていた。

2015年には隣接する敷地にかすみがうら市交流センターがオープン。広大な駐車場と、おみやげ販売とレンタルサイクル、ロッカー、トイレがある「かすみマルシェ」、地場食材の料理教室も開かれる「かすみキッチン」ができて、さらなるサイクリング拠点となった。

レンコンやサツマイモ、秋の味覚の栗や柿など地場の味覚がいっぱい
和室は8畳ほどで通常利用は2人、最大4人まで対応してもらえる
全3室の小さなゲストハウスだが、洋室タイプもひとつある

ここから歩いてすぐのところにある、かつての造り酒屋だった建物がリノベーションされたのだ。明治後期に建てられた築100年以上の建物はとても趣がある。大きな梁を使わないで母屋を建てるのがこの霞ヶ浦エリアの古民家の特徴のようで、ゲストハウスとして改装する時もその名残りが見えるように手を加えたのだという。

ナショナルサイクルロードに指定された「つくば霞ヶ浦りんりんロード」にも隣接しているため、サイクリングの拠点としても活用してほしいと、宿泊者は無料レンタルで自転車を楽しむこともできるようにした。これが「江口屋」がサイクリストに優しい宿として注目されるきっかけとなったのは言うまでもない。

宿泊者は無料でレンタルサイクルを借りることができる。母屋とは別の土蔵の中にも自転車がいっぱいある

もともとの梁や建具を生かした、木の温もりある和の空間。造り酒屋時代に使われていた看板や瓶なども一部再利用して飾り、訪れた人に家の歴史を感じてもらえるよう工夫しているという。客室は、畳の部屋と板間が用意されている。家族やサイクリング仲間、仕事仲間との一棟貸し切りでの利用も可能だ。

もちろん江口屋は旅館やホテルなどとは異なり、セルフサービスを基本とするゲストハウスである。共用エリアやオープンスペースなどもあって、それらを含めてわが家のようにリラックスして時間を過ごすのがいい。宿泊施設として提供するサービスは限られるが、利用者が気持ちよく、自由な滞在を楽しめるような気配りが随所に見られる。

自然と歴史を体感できる薪割りは宿泊者限定の無料プログラム
石窯でピザ作りに挑戦。宿泊しなくても、この体験プログラムのみの利用もできる

1泊朝食付きの料金はおとな1人7000円(以下すべて税別)。夕食付きのオプションや地酒を楽しめるセットもある。現在はすべてGoToトラベル対象で総額から35%引きとなる。

コロナ渦中にあって密を避けるため、当面は和室1、洋室1の2部屋のみ、金・土・日・祝前日のみ予約を受け付けているという。そのため満室の状態が続き、なかなか予約が取れない状況のようだ。

クルマに自転車を積んで訪れるのが楽だが、輪行で行く場合はサイクリングターミナルとして脚光を浴びるプレイアトレ土浦のあるJR常磐線・土浦駅から20km。湖岸のサイクリングロードを1時間ほど走り、湖畔から見えるかすみがうら市交流センターに到達したら、付近を探してみると道路沿いにある。

毎朝、羽釜で炊きあげる。火力が強いので火にかけるのは15分ほど。それからしばらく蒸らすとおいしくなる
おこげがなつかしいので食べたいとオーダーする宿泊客も多いという

JR常磐線・高浜駅からも同様に行けるが、走り始めは湖岸のサイクリングロードがないので、ナビや地図を頼りに霞ヶ浦沿いに出るといい。

江口屋はもともと蔵元だったのでゲストハウスとなった今も地元の銘酒を取りそろえている。写真はサイクリング利き酒セット。ナショナルサイクリングルート沿道のお酒をセレクトした

霞ヶ浦の湖畔で最高の朝に出会える宿「江口屋」7月23日開業

料金詳細や朝食のメニューなどを紹介した過去記事はこちら。

霞ヶ浦のイメージはいいが、ひたすらの修行

さて、「カスイチ」などと呼ばれて親しまれる霞ヶ浦をロードバイクで走ったことは何度もある。午後には風が強めになる傾向なので、前半が逆風となる回り方をするのが「カスイチ」のコツだ。サイクリングコースと言われる湖畔の道路は自転車・歩行者専用ではなく、一般車両も通行する(ごく一部に自転車・歩行者専用道あり)が、地元の人や釣り客が利用する程度で交通量はほとんどない。

Y字の形をした霞ヶ浦を1周すると130kmほど、霞ヶ浦大橋を使ってショートカットすると90kmになる

ただしよくあるPR写真の軽快なイメージで走り出すと、30分もするとそれは間違いだったことに気づく。自転車の醍醐味とは、厳しい上りをクリアした時の安堵感、下りを疾走する壮快感、コーナーで車体を倒しながら曲がっていく臨場感なのだと確信しているが、それがまったくないのが「カスイチ」だ。

ひたすらのまっすぐな平たん路が続くのが霞ヶ浦で見る悪夢。ロードバイクで、おまけにパッド付きレーシングパンツ着用でこれだからレンタルのクロスバイクでは地獄としか考えられない。ひとことで言えばこれはまさに修行。霞ヶ浦にサイクリングの醍醐味があるとしたら1周を遂げた時の達成感だと断言できる。

●江口屋のホームページ


霞ヶ浦サイクリングで泊まりたいおすすめの宿

水郷旧家磯山邸は1棟貸切スタイル

磯山邸は古き良き時代の潮来の佇まいを残した古民家

120年前に建てられた文化財古民家を改築したゲストハウスの水郷旧家磯山邸。1棟貸切スタイル。つくば霞ヶ浦りんりんロードの東の玄関口、潮来市にある。客室への自転車の持ち込み可、施錠可能な場所で保管も可。メンテナンススペースや自転車の洗浄場所もあり、出発前の軽食サービスもある。茨城県のサイクリストに優しい宿に認定されている。

最大10人まで宿泊可。1日5万円、2泊目3万円、3泊目2万円(以上すべて税込み)4泊目以降は相談。最大6泊まで。GoToトラベル対象。
●水郷旧家磯山邸のホームページ

星野リゾート初の自転車を楽しむホテル

星野リゾートBEB5。Go To トラベルキャンペーンで気軽にお得な旅を

星野リゾート初の自転車を楽しむホテルが星野リゾートBEB5土浦。JR土浦駅に直結するサイクリングリゾート〈PLAYatre TSUCHIURA〉内にあり、自転車と一緒にチェックインとチェックアウトができる「サイクルイン・サイクルアウト」や、自転車と一緒に練り歩いてもストレスがないゆとりのある設計が特徴。茨城県のサイクリストに優しい宿に認定されている。
●星野リゾートBEB5土浦のホームページ

りんりんロードとなった筑波鉄道事業者の旧邸で仕事する

宿泊型複合コワーキング、シェアスペース

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