ピドコックがステージレースで初の総合優勝【アルウラー・ツアー】

サウジアラビアで1月28日に開幕した5日間のステージレース、2025アルウラー・ツアーは、最終日となる2月1日に第5ステージが行われ、大会2日目に首位に立ったQ36.5プロサイクリングチームのトム・ピドコック(英国)がそのまま逃げ切り、自身初のステージレース総合優勝を遂げた。

2025アルウラー・ツアー総合優勝のトム・ピドコック ©AlUla Tour Charly Lopez

第5ステージの優勝はピドコックをアシストしたマッテオ・モスケッティ(イタリア)。日本から参戦したJCLチーム右京は全5ステージで第1集団に選手を送り組む積極的な動きを見せ、この日もニコロ・ガリッボ(イタリア)が第1集団に加わった。

2025アルウラー・ツアー第5ステージで、首位ピドコックを牽引するチームメート ©AlUla Tour Pauline Ballet

最後はピドコックがスプリントのための牽引役に

サウジアラビアの乾燥地帯で行われた第5ステージは強風に悩まされることがあるが、まさにその通りになった。レース序盤からエシュロンと呼ばれる横風による集団の分断が発生し、リーダージャージを着るピドコックを守り抜きたいQ36.5プロサイクリングチームが警戒感を強めた。

レース前半の平均時速は50km。モスケッティを含む5選手がピドコックを牽引し、最後の1時間で先頭グループは35選手に絞り込まれた。チーム全体の強さを示すことになる。 

ゴールはラクダレースが開催されるキャメルカップトラックで、総合優勝を確実にしたピドコック自身が最後のスプリント勝負でリードアウトを開始し、モスケッティの勝利に貢献した。2024年7月のトレーニング中に激しい事故を起こしたモスケッティにとって非常に感動的な勝利となった。 

2025アルウラー・ツアー第5ステージ ©AlUla Tour Pauline Ballet

「信じられない。なんという1週間だったんだろう」とモスケッティはゴール直後に反応した。
「我々の目標はトムを安全に保つことだった。結局、我々が今週してあげたすべてのことをトムは報いてくれた。トムとチーム全員に感謝しなければならない。UAEエミレーツのモラノがスプリントを開始したとき、私はコース脇のバリアに非常に近かったが、いいスピードで通過し、最後の数mでモラノを追い抜いた。なんというスプリントだった。昨年は非常につらい時期を過ごしたが、今日は信じられない」(モスケッティ)

ピドコックは、風が総合順位のライバルたちに大打撃を与えた厳しい最終ステージを終えて胸をなでおろし、チームメイトを称賛した。

マッテオ・モスケッティがアルウラー・ツアー第5ステージ優勝 ©AlUla Tour Pauline Ballet

レッドブルが翼を与えてくれるように、Q36.5もそれを与えてくれた

「まるでおとぎ話のようで、ちょっと感傷的になってしまった。彼らにとってそれがどれだけ意味のあることか、そしてこのように締めくくることができたことは信じられない。今日、僕たちはチームとして走った。12月までどんな選手かを知らなかったし、1月に初めて会った選手もいた。そんな僕たちが一緒につかんだものは、ただただ信じられない」

ピドコックにとってキャリア通算8回目の優勝だが、エリート選手として総合優勝したのは初めてだ。 

「正直に言うと、この総合優勝は僕のキャリアにとって大きな一歩だ」とレース終了後にピドコックは語った。このレベルでリードを守るには集中力が必要だ。ワールドツアーではないし、たった5日間だが、どれだけ難しいかはわかっている。大きな一歩だ。今の気持ちをうまく表現できない。レッドブルが翼を与えてくれるような感じだが、Q36.5も翼を与えてくれる」

2025アルウラー・ツアー総合優勝のトム・ピドコック ©AlUla Tour Charly Lopez

2025アルウラー・ツアー
【第1ステージ】山本大喜ファーストアタック、メルリールが制して首位に
【第2ステージ】ピドコック難関コース制覇…危険な下りでレース中断も
【第3ステージ】チーム右京3日連続の先行…最後はメルリールが2勝目
【第4ステージ】ピドコック2勝目…小石祐馬が再びアタック

2025アルウラー・ツアー ©AlUla Tour Charly Lopez

第4ステージでピドコック2勝目…小石祐馬再びアタック【アルウラー・ツアー】

サウジアラビアで開催中の2025アルウラー・ツアーは1月31日に第4ステージが行われ、第2ステージを制して首位に立っているQ36.5プロサイクリングチームのトム・ピドコック(英国)が優勝。その座を守り、総合優勝に前進した。

ピドコックがステージ2勝目をあげ、アルウラー・ツアー総合優勝に王手 ©AlUla Tour Charly Lopez

日本勢はこの日もJCLチーム右京の小石祐馬が第1集団に加わって、その存在感を示した。

アルウラー・ツアー第4ステージはガラス貼りの建造物の前をスタート ©AlUla Tour Charly Lopez

ピドコックはゴールまでの上りの途中で集団を抜け出し、ゴールまでの非常に長い直線で向かい風が吹いたにもかかわらず逃げ切った。アラン・ハザリー(ジェイコ・アルウラー)とライナー・ケップリンガー(バーレーン・ヴィクトリアス)に12秒の差をつけてゴールし、残り1ステージを残して総合2位に29秒差をつけた。

アルウラー・ツアー第4ステージでも小石祐馬が先頭集団に加わった ©AlUla Tour Pauline Ballet
2025アルウラー・ツアー第4ステージ
2025アルウラー・ツアー第4ステージの高低図
アルウラー・ツアー第4ステージ ©AlUla Tour Charly Lopez
日本チャンピオンの小林海も苦戦 ©AlUla Tour Pauline Ballet

2025アルウラー・ツアー第5ステージ(2月1日)

2025アルウラー・ツアー第5ステージ
2025アルウラー・ツアー第5ステージの高低図

2025アルウラー・ツアー
【第1ステージ】山本大喜ファーストアタック、メルリールが制して首位に
【第2ステージ】ピドコック難関コース制覇…危険な下りでレース中断も
【第3ステージ】チーム右京3日連続の先行…最後はメルリールが2勝目

チーム右京3日連続の先行…第3ステージはメルリールが2勝目【アルウラー・ツアー】

サウジアラビアで開催中の2025アルウラー・ツアーは1月30日、ヘグラ〜タイマ砦間で第3ステージ行われ、欧州チャンピオンジャージを着用するスーダル・クイックステップのティム・メルリール(ベルギー)が第1ステージに続いて優勝した。総合成績では前日の山岳を制して首位に立ったQ36.5プロサイクリングチームのトム・ピドコック(英国)がその座を守った。

アルウラー・ツアー第3ステージでメルリール(左)がフルーネウェーヘンを制して2勝目 ©AlUla Tour Pauline Ballet

この日は、アルウラー地域の古代の美しさを巡るコース。2008年からユネスコ世界遺産に登録されているヘグラは、ナバテア文明の最も重要な保存遺跡で、紀元前1世紀に作られたファサード装飾を持つ記念碑的な墓所が有名だ。ゴールのタイマ砦は考古学的に重要な遺跡で、かつてのこの地域の栄華を証明する宝物が発見されている。

アルウラー・ツアー第3ステージ、日本チャンピオンの小林海も紀元前1世紀に作られたファサード装飾を撮影 ©AlUla Tour Charly Lopez
2025アルウラー・ツアー第3ステージ
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2025アルウラー・ツアー第3ステージの高低図

レースは3日連続で日本のJCLチーム右京が第1集団に加わった。小石祐馬と山本大喜がアタックしてメイン集団から抜け出すことに成功。山本はアグレッシブライダー賞を争うポイントで競り合ったが高得点を獲得できず。それでも終盤には単独になるなど積極性を見せつけた。

アルウラー・ツアー第3ステージで小石祐馬と山本大喜が第1集団に加わる ©AlUla Tour Pauline Ballet

ステージ勝利争いはスプリント合戦となり、メルリールがオランダのナショナルチャンピオンジャージを着るディラン・フルーネウェーヘン(ジェイコ・アルウラー)を制して2勝目。メルリールは2024年も2勝していて、大会通算4勝目。フルーネウェーヘンの3勝を上回って単独首位に立った。

アルウラー・ツアー第3ステージ ©AlUla Tour Charly Lopez
アルウラー・ツアー第3ステージで後続との差を確認しながらレースを進める小石祐馬(右端)ら ©AlUla Tour Pauline Ballet

ピドコックはゴール前でパンクして遅れたが、ゴール手前3kmを切ってからのアクシデントは救済されるというルールに救われ、1位選手と同タイムに。首位を守った。

アルウラー・ツアー第3ステージで首位を守ったピドコック ©AlUla Tour Charly Lopez

2025アルウラー・ツアー第4ステージ(1月31日)

2025アルウラー・ツアー第4ステージ
2025アルウラー・ツアー第4ステージの高低図

2025アルウラー・ツアー
【第1ステージ】山本大喜ファーストアタック、メルリールが制して首位に
【第2ステージ】ピドコック難関コース制覇…危険な下りでレース中断も

ピドコック難関第2ステージ制覇…危険な下りでレース中断も【アルウラー・ツアー】

2025アルウラー・ツアー第2ステージがサウジアラビアの丘陵地帯で1月29日に行われ、五輪で2度のマウンテンバイクチャンピオンに輝いたトム・ピドコックが、今季移籍したQ36.5プロサイクリングチームのユニフォームを着て優勝した。

アルウラー・ツアー第2ステージは旧市街をスタート ©AlUla Tour Khalid Alhaj

ピドコックはビルジェイダ山の最後の上りをうまく利用し、残り500mからアタックを決めて後続を振り切った。最後はライナー・ケップリンガー(バーレーン・ヴィクトリアス)と世界マウンテンバイクチャンピオンのアラン・ハザリー(ジェイコ・アルウラー)を抑えてゴールラインを越えた。今シーズンのこの初勝利により、ピドコックは総合首位に立つことになり、総合リーダーのグリーンジャージを着ることになる。

ピドコックがアルウラー・ツアー第2ステージを制した ©AlUla Tour Pauline Ballet

JCLチーム右京がこの日も第1集団に加わる

118選手が出走。ステージのスタート地点は旧市街。絵のように美しい迷路のような通りを散策し、郊外に出て戦いが始まった。コースはアルウラーの南西まで157kmを走り、今大会で最も過酷な上りの1つであるビルジェイダ山への3回の上りを予定していた。

アルウラー・ツアー第2ステージは旧市街をスタート ©AlUla Tour Khalid Alhaj
2025アルウラー・ツアー第2ステージ
2025アルウラー・ツアー第2ステージの高低図

スタートしてすぐにJCLチーム右京のシモーネ・ラッカーニ(イタリア)、マレーシアのムハンマド・ロスリとアブド・ハリム(トレンガヌ)、タイのティマチャイ(ルージャイインシュランス)、レインダース(ワグナーバジンWB)の5人が集団から抜け出した。リードは、7.5km地点で早くも2分5秒に広がった。

アルウラー・ツアー第2ステージは旧市街をスタート ©AlUla Tour Pauline Ballet

前日の逃げにも参加し、最優秀アクティブライダーのオレンジジャージを着るロスリが最初の中間アクティブスプリント(77km)を先頭で通過し、その差は3分20秒になった。その後、先頭の選手たちは苦戦し始めた。最初に脱落したのはティマチャイで、すぐにロスリとハリムが続き、トップは2人だけとなった。後続集団はQ36.5、ジェイコ・アルウラー、ピクニック・ポストnlの3チームがペースメークしてその差を詰めていった。

アルウラー・ツアー第2ステージで飛び出したJCLチーム右京のシモーネ・ラッカーニ(先頭) ©AlUla Tour Pauline Ballet

危険な下り坂でレースを一時ニュートラル化

最終周回に入り、ラッカーニが1回目のフィニッシュライン(103km)を先頭で通過し、2回目の中間アクティブスプリント1位を獲得したが、下り坂に砂利が多く、選手の安全上の懸念から、レースの距離を短縮する決定が下された。最後の周回コースは2周から1周に変更され、さらに下り坂はレースをニュートラル化してペースを制御。下りきってから先頭の2選手とメイン集団との差を従来のタイム差に調整してレースを再開。残り5kmで先頭の2人は28秒のリードで、最終的にゴールから3km手前で追いつかれた。

第2ステージはアルウラー・ツアー最大の難所 ©AlUla Tour Charly Lopez

ビルジェイダ山の最後の上りで、ラファル・マイカ(UAEチームエミレーツ・XRG)が激しいペースを設定し、数人のライダーだけが追従した。ケップリンガーが最初にアタックした後、決定的な動きが見られたのは残り500mでピドコックが攻め込んだときだった。最後の300mで引き離し、ケップリンガーに4秒、2024年のUCIマウンテンバイク世界選手権でピドコックに勝っていた南アフリカのハザリーに7秒の差をつけて勝利を収めた。

移籍後初勝利のピドコック(左)をチームメートが祝福 ©AlUla Tour Charly Lopez

ツール・ド・フランスなどに続き6度目の勝利を集中

ピドコックは、2022ツール・ド・フランスのステージ優勝や2024年のアムステルゴールドレースなどの成功に続き、プロロードレースでキャリア6度目の優勝を果たした。これにより、25歳の2度のオリンピックチャンピオン(2020東京と2024パリ)は、総合リーダーのグリーンジャージを獲得。総合2位ケップリンガーに8秒差をつけた。ピドコックはポイント賞でもトップに立つ。

2025アルウラー・ツアー第3ステージ(1月30日)

2025アルウラー・ツアー第3ステージ
2025アルウラー・ツアー第3ステージの高低図

2025アルウラー・ツアー
【第1ステージ】山本大喜ファーストアタック、メルリールが制して首位に

山本大喜ファーストアタック、第1ステージはメルリールが制して首位に【アルウラー・ツアー】

ツール・ド・フランス主催者A.S.O.がプロデュースする5日間のステージレース、アルウラー・ツアーが2025年1月28日に中東サウジアラビアを舞台として開幕。欧州チャンピオンジャージを着るスーダル・クイックステップのティム・メルリール(ベルギー)が第1ステージを制し、大会通算3勝目。総合成績で首位に立った。

サウジアラビアの岩石地帯を行くアルウラー・ツアー ©AlUla Tour Charly Lopez

2024アルウラー・ツアーで2つのステージを制したメルリールが初日を制覇し、2025大会を華々しくスタートさせた。この日は比較的平坦で、予想通りに集団スプリントで決着した。6選手が長い逃げを見せたが、ステージ終盤の周回コースで捕らえられた。ベルギーのスペシャリスト、メルリールは、UAEチームエミレーツ・XRGのファン・モラノを制してゴールした。メルリールは総合首位のグリーンジャージも獲得した。

2025アルウラー・ツアーに挑む日本のJCLチーム右京 ©AlUla Tour Pauline Ballet
2025アルウラー・ツアーの全体コース
2025アルウラー・ツアー第1ステージ
2025アルウラー・ツアー第1ステージの高低図

この日は118選手が第1ステージのスタート、旧アルマンシヤ駅に集まり、レースが始まった。アルウラー・ツアー地域の美しい名所を巡る142kmの周回コースだ。理想的な気象条件とそれほど強くない風の中、午後1時前にスタートした。  

日本のJCLチーム右京が3年連続で参戦 ©AlUla Tour Charly Lopez

山本大喜が最後まで逃げるがアクティブジャージ獲得ならず

スタートしてすぐに6人のアジア勢が集団から抜け出すことに成功した。カザフスタンのアレクサンドル・ヴィノクロフ(XDS・アスタナ)、サウジアラビアナショナルチームのアル・アブドゥルムニムとアル・クライフ、日本の山本大喜(JCLチーム右京)、マレーシアのムハンマド・ロスリ(トレンガヌ)、タイのティマチャイ(ルージャイインシュランス)だ。先頭の6人は5km地点で1分35秒の差をつけた。スプリンターを擁するジェイコ・アルウラー、チューダー、スーダル・クイックステップが追撃を開始したが、5km後には2分10秒の差をつけられた。

2025アルウラー・ツアー第1ステージで山本大喜(左から2人目)ら6選手が序盤からアタック ©AlUla Tour Pauline Ballet

73km地点での最初の中間アクティブスプリントは、集団が1分30秒後ろに接近する中、ロスリが制した。先頭集団が壮観なアシャール渓谷に入ると状況は一変した。ガラス張りのマラヤコンサートホールを通過した直後の急な登りで、サウジアラビアの2人が脱落し、最終的に追いつかれ、先頭はわずか4人となった。集団はペースを上げ続け、周回コースに入るころには射程圏内に。

2025アルウラー・ツアー第1ステージ ©AlUla Tour Pauline Ballet

優勝候補のクリストフが残り5kmで落車

山本が最後まで逃げたが、残り約15kmで最初のゴールラインを越えた直後に集団は再びひとつに。スプリンターチームのコントロール下で、集団は最後の瞬間までコンパクトなままだった。残り5kmで、ステージ優勝候補のアレクサンドル・クリストフ(ウノエックスモビリティ)とアルヴィド・デクライン(チューダー)がクラッシュで転倒。  

サウジアラビアを走るアルウラー・ツアー ©AlUla Tour Pauline Ballet
欧州チャンピオンのティム・メルリール(ベルギー)がアルウラー・ツアー第1ステージ優勝 ©AlUla Tour Pauline Ballet

最終決戦までさらなるアクシデントはなかった。スーダル・クイックステップのチームメイトにうまく先導された32歳のメルリールは、早めにスプリントを開始し、誰にも追い抜かれることはなかった。シーズン初、キャリア51回目の勝利により、現欧州チャンピオンのメルリールは総合リーダーのグリーンジャージを。彼はポイントランキングでもトップ。フランク・ファンデンブルック(ピクニック・ポストnl)は最優秀若手選手のホワイトジャージを獲得した。マレーシアのロスリは、この日獲得した5ポイントにより、最もアクティブなライダーランキングでトップに立った。

スーダル・クイックステップのティム・メルリール(ベルギー)。総合成績とポイント賞でトップに立った ©AlUla Tour Pauline Ballet

2025アルウラー・ツアー第2ステージ(1月29日)

2025アルウラー・ツアー第2ステージ
2025アルウラー・ツアー第2ステージの高低図

●アルウラー・ツアーのホームページ