碓氷峠ならだれでも山岳スペシャリストの気分になれる

峠道はキツければいいってもんじゃない。適度になだらかで、スピード感を味わいながらピークを目指したい。そんな上りが苦手なサイクリストにピッタリなのが群馬・長野県境に位置する碓氷(うすい)峠だ。交通量の多いバイパスを避けて旧道を行く。目指すのは国内有数のリゾート地軽井沢。10月からは紅葉が色づき始めるベストシーズンとなる。

奇岩が屹立する妙義山に到着

勾配4%の緩斜面なので意外なほど飛ばせる

道路構造令で規定された勾配値は上り坂の厳しさの目安となる。たとえば8%という数字は「100m走って高度が8m上昇する」という意味。12%という標識が立てられている上り坂では、もう立ちこぎしないと進めないほど厳しい。スペインのブエルタ・ア・エスパーニャでは22%なんていう激坂も出現するが、プロ選手でも大きなギヤに交換しないと登り切れない。

一方で勾配値4%の道路は意外といいペースで走ることが可能。スピードに乗ると左コーナーでは自転車を倒し込んでクリアする必要があり、「もしかして上りが強くなったんじゃないの?」と勘違いすることができる。そんな錯覚をもたらす峠が関東にもある。しかも多くの人が知る有名な峠だ。群馬県松井田町と長野県軽井沢町を結ぶ碓氷峠。標高960m。距離15kmで高低差600mを上る。つまり勾配値4%だ。

碓氷峠の人気スポットは廃線となっても残る碓氷第三橋梁。橋の上は遊歩道になっている

サイクリングコースとしては初級者でも登り切れるはず。多くのクルマは上信越自動車道や碓氷バイパスを利用するので交通量が少ないのも初級者にはうれしい。信越本線のうち廃線となった区間とほぼ並行して走っていて、その遺跡であるレンガ造りのアーチ橋「碓氷第三橋梁=通称めがね橋」も訪れることができる。

西上州もみじラインは路面がいいので緩やかな下り坂を飛ばしていける

日本有数のリゾートを発着として一周コースに

今回は軽井沢を発着として約65kmの周回コースを設定した。軽井沢にある複数のゴルフ場脇を南下し、県境となる和美峠をダウンヒルして「西上州もみじライン=別名姫街道」へ。峠直下の下りはかなり急だが、それを過ぎれば美しい舗装路を快適に飛ばすことができる。下仁田の手前で進路を妙義山方向に取ると上り坂となるが、それほど急ではなく、上りが苦手な人は妙義山をパスして松井田まで進むことも可能。

下仁田こんにゃく観光センターは休憩スポットとして便利

松井田に出たら国道18号に進路を取り、「峠の釜めし本舗おぎのや」のある横川へ。国道18号はここでバイパスと旧道に分かれるので、交通量の少ない旧道を選ぶ。すぐに関所跡があり、それを過ぎるとかつての坂本宿で、美しく整備された直線道をゆっくりと上るのが楽しい。

坂本を過ぎると、ここからがだれでも山岳スペシャリストの気分になれるルートだ。勾配値4%の上りが続く碓氷峠旧道。コーナーごとに数字が打たれていて、それを数えながら上るのだが、わずかなカーブでも数字が振られているのでどんどん数が増えていくのが小気味いい。最後は184で県境の碓氷峠に到着する。

妙義山へのアプローチは勾配値5.7%

ローカル情緒も楽しい

今回のルートを逆の右回りで走ると、碓氷峠がなだらかな下りとなり、和美峠が上りとなる。下りでスピードを出しすぎるとコーナーでオーバーランしてしまう可能性があり、終盤の和美峠が激坂になる。

碓氷峠のコーナー数は184だが、どんどんカウントアップできるのでうれしい

クルマに自転車を積んでいくのが楽でオススメだが、輪行して電車で行くならJR信越本線終点の横川駅、あるいはサイクルトレインもある上信電鉄終点の下仁田駅を拠点とする。都内から日帰り可能だが、冬場は日が短いのでトンネルがなくても前後ライト必携。

1泊2日なら軽井沢周辺に宿を取ってリゾートサイクリングも加えたい。オシャレな飲食店が随所にあるので、カップルにオススメ。秋は冷え込むので指付きグローブとウインターウエア推奨。

クリックすると実走ルートへ。GPSデバイスに転送することもできます
軽井沢のレンタルサイクルは一般車のみなので、碓氷峠はロードバイクで行こう

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