フランス人はトイレできれいに手を洗うのにハンカチを持っていない

ツール・ド・フランスを追いかけて四半世紀。単純計算でボクの人生2年相当はフランスで生活しているので、とあることに気づいた。フランス人は衛生観念が比較的高く、トイレで必ず手を洗う。そして(女子は知らないけど)100%のフランス人がハンカチを持っていない。それはなぜか?

南仏マルセイユは石けんが有名。ツール・ド・フランスが2017年に訪問したときもマルセイユ産石けんをピーアール

もちろんそれは、ボクの仕事現場がサルドプレスと呼ばれるプレスセンターで、そこには欧州においては社会的身分が高い新聞記者、いわゆるジャーナリストが集まっているからかも知れない。でも大会の施工班や警備員らもいて、彼らとトイレが一緒になったときは必ずきれいに手を洗っているんですよね。石けんがあればそれを使い、たっぷりと時間をかけてていねいに手を洗う。よく、「人が見ているときは洗う」というケースが日本ではたまにあるけど、入口ドアをいきなり開けてもていねいに洗っている。

フランスは空気が乾燥しているので日本よりも雑菌が繁殖しにくいといわれる。だからフランスパンはテーブルクロスの上に置かれるし、レストランに届けられるパンは紙袋に入れて主人が出勤する前のレストラン店舗の玄関前に置かれたりする。だからかつては「フランス人が手を洗うところを見たことがない」と指摘する人もいたというけど、近年は疾病の予防を目指した衛生観念向上のために率先して手を洗うことを行政や民間が推奨していることは間違いない。

ツール・ド・フランス特別バージョンのマルセイユ産石けん

スタートとゴールごとに自治体が運営協力し、それが23日間続くツール・ド・フランスは絶好のキャンペーン機会でもある。だからツール・ド・フランスを招致する条件として、それはいろいろあるとは思うが、「ジャーナリストの集まるサルドプレスのトイレに必ずペーパータオルあるいはクリーンドライ(ハンドドライヤー)を置くこと、という義務が盛り込まれる。公共施設などでは既存設備としてこの条件をクリアするところもあるが、芝生の上に大型テントを仮設したようなサルドプレスは屋外レンタルトイレが置かれるケースもある。それでも手洗いの水道とその横にはペーパータオルが必ず置かれる。それが義務だからだ。

石けんは1kg単位7ユーロ(1000円)で量り売りされている

感心したのはツール・ド・フランスの名を冠した世界初の大会、ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムでもサルドプレスとなったさいたまスーパーアリーナのトイレにもペーパータオルが置かれていた。

「へー、ここまでツール・ド・フランスと同じなんだ」とボクだけがニンマリしたのである。

ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムが開催される、さいたまスーパーアリーナにもハンドタオルが置かれていた

クリーンドライはフランスではかなり普及している。例えば高速道路の休憩所。トイレとベンチしかない施設もあるが、そんなあずまやのようなトイレにも手洗い水道とシャボンとクリーンドライがセットになった設備が完備されている。これだけ整っていれば手がビショビショになるくらいまできれいに洗って、熱風で水気を吹き飛ばしてしまえるから気軽に手洗いできる。

クリーンドライ導入のメリットはペーパータオルのような紙ゴミを一切出さないので森林資源に優しいとされる(再生紙を使用している場合が多いので必ずしも環境破壊につながるとは言えない)。特にフランスに設置されているクリーンドライはものすごく強力で、30秒から1分あれば完全に手が乾く。よく見かけたのがダイソン社製のもので、とてつもないパワーを発揮する。皮膚がマシンに接触してしまったらヤケドをするような勢いだ。

マルセイユ石けんは多様なフレーバーが販売されている

パワーの源は当然のことながら電気だ。フランスは世界有数の原子力大国であり、近隣国に電力を輸出するほどの余裕があるので、コスト面においてはそれほど問題にはならない。この国は広い大地が主なので水力発電があまり期待できないのである。

だからといって原子力発電がいいのと言っているわけではなく、最近は風力発電の巨大な風車が立ち並ぶ光景をよく目にするようになった。 そして最後に特筆したいのはフランス人の省エネ精神。ホテルやオフィスの廊下やトイレには一定時間が経過すると消灯するスイッチがほとんどだ。過程でも無駄な家電製品の付けっぱなしはしない。それでいて手洗い後は強力パワーのクリーンドライ。うーん、メリハリが効いているね。

厳密に言うと石けん会社の多くはマルセイユではなく、隣町のサロンドプロバンスにある

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