椿大志がおおいたいこいの道クリテリウムで2位

大分県大分市を舞台とする自転車の祭典「OITAサイクルフェス!!!2019」が8月10日に幕開け。この日のメインイベント「おおいた いこいの道クリテリウム」が大分市街地にて行われ、5選手が臨んだKINAN Cycling Teamは椿大志が2位入賞。優勝こそ逃したが、レース序盤、後半と効果的な動きを成功させ、積極策を実らせた。

椿大志が「おおいたいこいの道クリテリウム」で2位  ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

レースイベントとして国内はもとより、海外からの注目度も高まっている今大会。2019年もクリテリウムに始まり、翌日にはUCI公認のロードレース「おおいたアーバンクラシック」が実施される。今回は国内外から18チームがエントリー。これまでの秋開催から真夏へと移行し、より熱く、より華やかにレースや関連イベントが展開されていくことになる。

大分での2連戦にあたり、KINAN Cycling Teamは山本元喜、椿大志、大久保陣、山本大喜、中島康晴の5選手を招集。オール日本人編成で勝利を狙っていくことになる。

「おおいた いこいの道クリテリウム」は、大分駅前の目抜き通りを使って1周1kmのサーキットコースを設定。これを30周する総距離30km。オールフラットで、レースの重要ポイントとなるのは180度ターンと4カ所の鋭角コーナー。勝敗を分けるのは、コーナーワークとポジショニングとなる。周回最後のコーナーからスタート・フィニッシュが置かれるコントロールラインまでは約350m。スプリント勝負が予想される中で、このコーナーをどの番手でクリアするか、そして緩やかなカーブになっているフィニッシュ前でいかに最短ラインを確保できるかも上位進出へのカギとなる。

レースはまず、序盤の探り合いから5人がリードを開始。この中に椿が乗り、プロトンの活性化につなげる。メイン集団に残った4選手もスタートから前方を固め、レース展開を見ながら動きを定めていく構え。椿が加わった逃げグループは、1回目の中間スプリントが設定された10周目を前に集団へと引き戻されたが、チームとして上々の形でレース前半の流れを作った。

1回目の中間スプリントを狙った動きから、2選手が新たにリードを開始。10秒から15秒ほどのタイム差でメイン集団は続く。やがて1人、また1人と先を行く2人を追う動きが見られ始め、力のある選手たちが逃げグループへと合流していく。

選手たちが着々と残り周回を減らしていく中、このレースの重要な局面が残り8周で訪れた。新たに形成された4人の追走グループに椿がジョイン。再び前をめがけてスピードを上げた。この動きを成功させると、先頭グループは一気に8人に膨らんだ。複数メンバーを送り込んだチームを中心に逃げ切りに向けた機運を高めると、メイン集団とのタイム差は20秒ほどに拡大。集団ではスプリントを狙うチームを中心にペーシングを本格化させるが、勢いづく先頭グループとの差は簡単には縮まらない。椿は先頭交代のローテーションに加わりながらも、余裕をもってハイペースに対応。レース終盤に向け、態勢を整えていく。

メイン集団に残ったKINANメンバーでは、残り3周で山本元がアタックを試み先頭への合流を狙うが、厳しいチェックにあい集団へと戻る形に。残り2周では山本大が集団からリードを奪ったが、スプリンターチームにその差を埋められ、集団へと引き戻されてしまう。

一方で形勢を優位にしたのは、椿らの先頭グループ。1人が脱落し、7選手で最終周回へと突入。後続とのタイム差を維持し、逃げ切りを濃厚なものとさせた。

そして運命の最終局面。ここで持ち前のスピードを発揮したのは、2選手を先頭に送り込んだチームブリヂストンサイクリング。窪木一茂選手からのホットラインで今村駿介選手が抜け出し、そのままフィニッシュへ。椿はこの2選手をマークし、最後の直線で今村選手を追ったがわずかに届かず。それでも他選手の追撃は許さず、2番手を確保。2位を確定させ、表彰台の一角を押さえてみせた。

椿にとって、今シーズン初となる上位進出。昨シーズンからけがや不調で不本意な時期を過ごしてきたが、いよいよ本来あるべき姿に戻ってきた。順調にトレーニングを積み、それをレースで発揮したところは本人はもちろん、チームにとっても大収穫のレースとなった。かたや、「詰めが甘かった」と椿が反省するように、あと一歩勝利に届かなかった点もチーム全体が真摯に受け止めている。

椿以下、メイン集団でスプリントに備えた残りの4人では、中島が12位。山本元、大久保、山本大もフィニッシュラインを通過し、出走全選手がしっかりと完走を果たしている。

翌11日は、大分スポーツ公園へ主会場を移して「おおいた アーバンクラシック」へ。周辺の住宅街を縫って進んでいくコースセッティングで、アップダウンが連続する変化に富んだレイアウトも特徴。1周11.6kmのコースを13周回する、総距離150.8kmで争われる。こちらはUCIアジアツアー1.2クラスの国際公認レースで、上位10選手にUCIポイントが付与される。クリテリウムを終えたKINAN Cycling Teamは、このよいムードを本戦ともいえるロードレースにつなげていくことになる。タフな戦いを得意とするチームの真価を発揮すべき一戦だ。

おおいたいこいの道クリテリウム(30km)結果
1 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング) 41分30秒
2 椿大志(KINAN Cycling Team) +0秒
3 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) 
4 イーヴァン・バートニク(カナダ、エックススピードユナイテッドコンチネンタル) 
5 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) 
6 内間康平(チームUKYO) 
12 中島康晴(KINAN Cycling Team) +21秒
38 山本大喜(KINAN Cycling Team) +37秒
49 大久保陣(KINAN Cycling Team) +51秒
55 山本元喜(KINAN Cycling Team) +1分12秒

椿大志のコメント
「序盤と中盤は逃がすと危険だと感じる動きだけチェックするようにしていて、チームとしては残り10周から確実に動いていこうという考えだった。結果的に逃げ切りとなった動きは、力のある選手たちが飛び出したので、対応できるポジションにいた自分がチェックにいった感じ。先頭が8人になった時点で、そのまま逃げ切りを決めようとしている選手が多くいたのと同時に、メイン集団の動きも見えていたので、自分の感覚でも“これは決まったかな”と思いつつ走っていた。あとは脚を残しながら、最後に備えていた。

今まで、調子が良いのに上手くいかないことが続いていて、ここにきてようやくかみ合ってきたかなと思えている。レース中に余裕が生まれているあたりは個人的にも大きな部分。この結果は自信につながる。チームとしても暑さの中でのタフなレースは得意なので、サバイバル化する中でも連携をとりながら戦っていきたい。個人的にも最後までしっかり残って結果につなげたい」

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