椿大志がおおいたアーバンクラシックで日本勢最高の5位

大分市で8月11日まで開催された「J:COM presents OITAサイクルフェス!!!2019」。この日はメインレースとなる「おおいた アーバンクラシック」が行われ、5選手で挑んだKINAN Cycling Teamは椿大志が日本人選手最上位となる5位でフィニッシュ。前日の「おおいた いこいの道クリテリウム」に続く上位フィニッシュを決めた。また、終盤に追い込んだ山本元喜も7位と続き、2選手がUCIポイントを獲得した。

椿大志がおおいたアーバンクラシックで5位 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日は大分駅前で「おおいた いこいの道クリテリウム」が実施され、積極策を実らせた椿大志が2位入賞。ハイスピードかつテクニカルなコースでの戦いで、優勝こそ逃したがよい形で終えることができている。

連戦となるこの日は、前日とは打って変わってアップダウンの連続する変化に富んだレイアウトが特徴的。1周11.6kmのコースは住宅街を抜け、周回終盤に控えるハードな上りは勝負どころになる可能性も高い。これを13周回・150.8kmのレース距離に加えて、気温30度を超える暑さも相まって、サバイバル化することが予想された。

このレースへは、クリテリウム同様に国内外の18チームがエントリー。KINAN Cycling Teamからは、山本元、椿のほか、大久保陣、山本大喜、中島康晴の5選手がスタートラインへ。なお、UCIアジアツアー1.2クラスにカテゴライズされ、トップ10フィニッシュでUCIポイントが付与される重要レースでもある。

戦前の予想通りとなったレースは、3周目に20人の先頭グループが形成される。スタート直後から集団前方に位置し、あらゆる動きに対応できる態勢を整えたKINAN勢は、山本元と椿が20人のグループに加わる。有力チームのほとんどが最低でも1人は選手を先頭へと送り込んだこともあって、後続に対してリードを得ながら進行していく。

実質の追走グループとなった第2集団では、先頭へメンバーを送り込むことができなかったチームや、全戦への厚みを加えたいチームがアシスト陣を使って前を目指す。この中には山本大と中島が待機する形に。先頭グループと第2集団とのタイム差は1分台で推移した。

形勢に変化が生まれたのは7周目。1分台だった両グループの差は一気に3分台にまで開くと、第2グループではこの状況を嫌った選手たちによるアタックが散発。出入りが激しくなる中、9周目に中島を含む4人が追撃を本格化。徐々に先頭グループとのタイム差を戻していき、11周目を終える頃には約30秒差にまで縮小させた。

タイミングを同じくして、先頭グループでも動きが出始める。11周目に入って1人がアタック。これをきっかけに、勝負どころを見据えた動きが少しずつ見られるようになる。それでも決定打はないまま進んでいき、山本元と椿は重要局面に備えて落ち着いて走り続けた。

そして残り2周、序盤から続いた先頭グループの態勢についに変化が訪れた。アタックをきっかけに椿らが反応すると、5人がそのまま抜け出すことに成功。残された選手たちは牽制状態となり、椿ら5人がそのままリードを広げていく。その後、後ろから3選手がブリッジを成功させて先頭グループは8人と膨らむが、後続に対してリードを広げて逃げ切る構え。この周回の終盤に1人が飛び出すと、さらに活性化し、優勝争いは完全に椿らのグループに絞られることとなった。

迎えた最終周回。先行していた選手をキャッチし、この時点で先頭グループは6人まで絞られる。各選手が勝負どころを探る中、残り3kmで椿がアタック。下りを利用して加速を狙うが、ここは優勝争いのライバルたちの厳しいチェックにあってしまう。これに代わって残り2kmから1人が加速し、椿は追う側へ。残り500mを切ってコーナーを過ぎると、あとはフィニッシュまでの上り基調。

最後の上りへ5番手で入った椿だったが、先に最終コーナーを過ぎた4人の勢いには勝てず。残り300mから始まった上りスプリントにはわずかに加わることができなかった。それでも番手を下げることなく、5位を確保。前日のクリテリウムに続く上位進出を決めた。

この結果により、椿は今大会の日本人選手最上位に。先着4選手がいずれもUCIアジアツアーでのライバルでもあり、あと一歩のところで敗れたことを悔やんだが、連日で一定の成果を残したあたりは大きな収穫に。これにより、UCIポイントで15点を獲得した。

優勝争いの後方では、山本元が抜け出すことに成功し、最終的に7位でフィニッシュ。こちらもUCIポイント圏内で、5点を獲得している。また、中盤から猛追した中島は18位。先頭グループ合流目前で動きがあったことから、最後まで前を追うことを余儀なくされたが、粘り強く走り切っている。

これで、大分での2連戦は終了。椿の連続上位進出をメインに、UCIポイント合計20点を獲得するなど、日本人選手だけでのメンバー編成でも戦えることを示した機会となった。ビッグレースが控える今後に向けても、各選手の状態のよさも含めて戦力・戦術の幅が広がっていくことが期待できる。

KINAN Cycling Teamの次戦は、8月19日から23日までのツール・ド・インドネシア(UCIアジアツアー2.1)。チーム力や総合力が試されるタフな戦いに挑むことになる。出場選手については近日中に発表を予定している。

J:COM presents OITAサイクルフェス!!!2019 おおいたアーバンクラシック(150.8km)結果
1 ドリュー・モレ(オーストラリア、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム) 3時間36分31秒
2 マラルエルデネ・バトムンフ(モンゴル、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム)+0秒
3 イーヴァン・バートニク(カナダ、エックススピードユナイテッドコンチネンタル)+3秒
4 ニコラス・ディニズ(カナダ、エックススピードユナイテッドコンチネンタル) +6秒
5 椿大志(KINAN Cycling Team) +10秒
6 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング) +28秒
7 山本元喜(KINAN Cycling Team) +1分21秒
18 中島康晴(KINAN Cycling Team) +3分0秒
DNF 山本大喜(KINAN Cycling Team) 
DNF 大久保陣(KINAN Cycling Team)

椿大志のコメント

椿大志

「本当に悔しい。レース展開や脚の具合からして、どうやっても勝てる手ごたえがあった。最後はみんな疲れている様子が見てとれたので、思い切ってアタックしたがチェックされてしまい、よくない状況から抜け出せなくなってしまった。結果的に余力の差が出てしまった。チームとしてはプラン通り走ることができ、みんなそれぞれに重要な動きには対応できていた中で勝負を託してもらったが、自分がやるべき仕事の部分で力負けしてしまった。
“完全復活”というには、まだまだあと二段階くらいは上げていく必要があると思っている。この先のレースプログラムが多数控えているので、シーズン後半の形をしっかりと作りたい。
個人的には久々にレースができている感覚がある。UCIポイント獲得については、今回は最低限。もちろんゼロで終わってしまうよりマシなので、チーム全体としてよい結果だったとポジティブにとらえたい」

●キナンのホームページ

ダイネーゼがU23、ピエテルスが女子の欧州チャンピオンに

UEC(ヨーロッパ自転車競技連合)ヨーロッパ選手権は2019年8月10日、オランダのアルクマールで2クラスの個人ロードレースが開催され、女子ロードは地元オランダのアミ・ピエテルスが、男子U23ロードはイタリアのアルベルト・ダイネーゼが優勝した。

欧州選手権女子ロード。先頭からエレーナ・チェッキーニ、リサ・クライン、アミ・ピエテルス ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2019

女子ロードはピエテルス、イタリアのエレーナ・チェッキーニ、ドイツのリサ・クラインが先行し、3人のゴール勝負をピエテルスが制した。

オランダのアミ・ピエテルスが欧州選手権女子ロードを制した ©Luca Bettini/BettiniPhoto©2019

U23は大集団によるゴール勝負となり、アルベルト・ダイネーゼがデンマークのニクラス・ラールセン、エストニアのライト・アルムを制して優勝した。

欧州選手権U23のゴールスプリント ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2019

ヨーロッパ自転車競技連合は1995年創立。現在は50の国と地域が加盟している。当初はU23男子を対象とした大会だったが、2016年からはエリート男子と女子も追加。個人ロードと個人タイムトライアルが開催される。

エリート男子ロードのこれまでの優勝者は、スロバキアのペテル・サガン(2016)、ノルウェーのアレクサンドル・クリストフ(2017)、イタリアのマッテオ・トレンティン(2018)。

最終日となる11日にはエリート男子ロードが開催される。

欧州選手権U23ロード ©Luca Bettini/BettiniPhoto©2019
欧州選手権U23を制したアルベルト・ダイネーゼを中央に左が2位ニクラス・ラールセン、右が3位ライト・アルム ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2019
欧州選手権女子ロードを制したアミ・ピエテルスを中央に左が2位エレーナ・チェッキーニ、右が3位リサ・クライン ©Dario Belingheri/BettiniPhoto©2019