クリストフが初日を制して首位に…ツール・ド・フランス開幕

第107回ツール・ド・フランスが2カ月遅れで開幕。地中海に面したニースを発着とする第1ステージは、UAEエミレーツのアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)がゴール勝負を制し、2年ぶり4回目の区間勝利。総合成績でも首位となり、黄色いリーダージャージー、マイヨジョーヌを獲得した。

2020ツール・ド・フランス開幕地はニース ©A.S.O. Pauline-Ballet

大会はアルプスやピレネーという難所に加え、選手とスタッフを合わせて30人のチーム内から2人以上の感染者が出たら大会から除外されるという特別規定を背負って、これまでにないほどの張り詰めた空気の中、フランス一周の激闘を始めた。

2020ツール・ド・フランス第1ステージ ©A.S.O. Alex Broadway

長時間の有酸素運動をする出場選手でさえ、スタート直前までマスク着用。華やかな開幕でありながら、人影がまばらな沿道。加えて天気さえ試練を与えた。紺碧の海で知られるニースを発着とする第1ステージだが、暗雲が立ちこめ、大粒の雨が路面を濡らした。

初日から有力候補がクラッシュ。ドゥークニンク・クイックステップのジュリアン・アラフィリップ(フランス)が落車に巻き込まれ、アスタナのミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)が下りカーブでスリップしてコース脇の建造物に突っ込んだ。グルパマFDJのティボー・ピノ(フランス)も落車で傷つき、4分04秒遅れでゴールしたが、残り3kmを切っての落車は国際規定によってタイム差なしとされ、救済された。

地中海を見ながら進むツール・ド・フランス第1ステージ ©A.S.O. Alex Broadway

雨脚の強さに有力選手らが安全走行のためにスピードダウンすることを指示。この日のレースの山場は、ニースの目抜き通りでのスプリント勝負となった。

降雨でのスリップを避けるため、トニー・マルティンが集団をスローダウンさせた ©A.S.O. Alex Broadway

だれもが初日に勝利したい。トップでフィーニッシュラインを切れば区間勝利だけでなく、総合成績でも1番になれる。今大会は2日目から山岳ステージが設定され、上りで大きく遅れるスプリンターにとっては、この日がマイヨジョーヌ獲得のチャンスだった。

クリストフは残り1kmでアシストをしてくれるチームメートを失っていたが、ゴールを目指して一気にスピードが上がるとボーラ・ハンスグローエのペテル・サガン(スロバキア)の背後をマーク。最後に団子状態から抜け出して1着に。区間優勝と同時にマイヨジョーヌを手に入れた。

2020ツール・ド・フランス第1ステージ ©A.S.O. Alex Broadway

「数日前に転んでしまっていい状態ではなかった。でもこれ以上の夢は描けないよ」とうれしさをかみしめるクリストフ。ノルウェー勢がマイヨジョーヌを着用するのは、2004、2006、2011年のトール・ヒュースホウトに続く2人目の快挙だ。

「マイヨジョーヌは、33歳のボクのキャリアとボクの子どもたちにとてつもない影響をもたらしてくれるだろうね」

©A.S.O. Charly López
アレクサンドル・クリストフが2020ツール・ド・フランス第1ステージでマイヨジョーヌ ©A.S.O. Alex Broadway

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEエミレーツ)
マイヨベール(ポイント賞)アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEエミレーツ)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ファビアン・グレリエ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
□マイヨブラン(新人賞)マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)

©A.S.O. Charly López

【もの知りコラム】ツール・ド・フランスの発祥は?

100年以上の歴史があるツール・ド・フランスの「なるほど!」と思わせる逸話を連日紹介。まずは大会の発端から。

今から120年前、スポーツ新聞社が企画した「パリ〜ブレスト往復自転車レース」が大ヒット。ブレストは「地の果て」と言われるブルターニュ半島の最西端で、1200kmを自転車で走るという冒険レースが人々に感銘を与えた。ライバル新聞のロト(現在のレキップ)は販売部数を大きく落とし、「もっとスゴい自転車レースを」と考えたのがフランス一周。ツールは一周するという意味なので、つまりツール・ド・フランスだ。当時は自転車に変速機もなく、自転車でフランスを一周できるとは考えられなかった時代だ。

ちなみにパリ〜ブレストはフランス菓子の名前にもなった。形が車輪に似ていることから今も庶民に親しまれている。

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🇫🇷ツール・ド・フランス2020特集サイト
🇫🇷ツール・ド・フランス公式サイト

山本大喜がJプロツアー初優勝。西日本ロードクラシック1独走

国内レースの最高峰である「Jプロツアー」の広島2連戦が8月29日開幕。広島県中央森林公園サイクリングコースを舞台に行われる「西日本ロードクラシック」のDay-1は、KINAN Cycling Teamが終始優勢にレースを展開。最後は山本大喜(まさき)が独走に持ち込み、Jプロツアーでのシリーズ初勝利を挙げた。

山本大喜がJプロツアー初優勝。西日本ロードクラシックDay-1で独走 ©︎KINAN Cycling Team / Midori SHIMIZU

幾多の名勝負が生まれた広島のコースで行われる伝統の一戦。この日は、今節に照準を合わせた山本大のほか、山本元喜、トマ・ルバに加えて、前日のバンクリーグを走った新城雄大も出走。4人での出場と他の有力チームと比較し少数で挑むこととなるが、勝負どころとなる終盤に攻撃を仕掛けていく戦術で勝機を見出していくことに。

その見立て通り、残り2周で発生したアタックからKINAN勢が確実に反応していく。ライバルのチェックに動いた山本大を含む3人が先行すると、その後ろでは山本元を含む追走グループも形成される。最終周回に入るタイミングで山本元らが先頭に合流し、山本兄弟を含む5人がレースをリード。さらには、後ろで余力を残していたトマも前方へと上がり、先頭グループにはKINAN勢3人が入る数的有利な状況を作り出す。そこからは、3人が断続的にアタックを仕掛け、先頭グループを崩していく。

ライバルの消耗を誘いながら抜け出すポイントを探っていた山本大がアタックを決めたのは残り3km。下りを利用しての加速で、10秒、20秒と後続との差を広げていく。そのまま単独で最後のストレートへと到達。最後は体全体で勝利の喜びを表してのウイニングライドとなった。

山本大をトップに送り出した山本元、トマは最終盤での追撃の芽をしっかりと摘み取るアシスト。最後は山本元がスプリントで3位を決め、KINAN Cycling Teamはワン・スリーフィニッシュを達成。トマも4位で続いている。

優勝した山本大は、チーム加入1年目だった2018年の全日本選手権U23個人タイムトライアル以来の公式戦勝利。もちろん、Jプロツアーでは初勝利。好調なチームは、これでシーズン3勝目となった。

広島での戦いは、翌30日のDay-2へ。この日は欠場となった椿大志と中島康晴が合流し、6選手で出走する。(Text: 清水翠、Edit: 福光俊介)

西日本ロードクラシック広島大会(61.5km)結果
1 山本大喜(KINAN Cycling Team) 1時間30分47秒
2 西村大輝(宇都宮ブリッツェン) +27秒
3 山本元喜(KINAN Cycling Team)) 
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 
5 阿曽圭佑(eNShare Racing Team) +28秒
6 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 
13 新城雄大(KINAN Cycling Team) +1分44秒


山本大喜のコメント

山本大喜

「めちゃくちゃうれしい。いまはそれに尽きる。今季KINAN Cycling Teamとしては3勝目。例年はUCIレースに挑戦しているが、今季は新型コロナウイルスの影響もあり、国内をメインに走っている。レース数が少ない中で、Jプロツアー3勝目はうれしい。
レースが後半に動くだろうと想定し、脚を抑えて、勝負どころで戦おうとチームとしてまとまっていた。前方に3人入ることができて、最終局面でそれぞれの選手が仕掛けるという共通認識を持って戦えたことが勝利につながったと思う」

山本元喜のコメント

山本元喜

「(山本)大喜が飛び出した場面は、もし(大喜が)捕まったとしても自分がスプリント勝負できるように脚を残して走っていた。その場合は自分ががんばらなくてはと。トマが合流してくれたことで、チームとして有利な展開になり、これは勝たなければならないと思っていた。予想される展開を絞り、個人ではなくチームで勝てることを一番に考えた作戦がきれいにはまったと思う」

●キナンのホームページ