ジロ・デ・イタリアが10月25日まで開催されているというのに、ブエルタ・ア・エスパーニャが20日に開幕する。ツール・ド・フランスを含めた三大大会の日程が重複するという前代未聞の現象はコロナ禍によってシーズンが後半に集約されてしまったためだ。他の2大会で不遇を味わった強豪選手が勢ぞろいするだけに、じつは意外と興味深い。
2019ブエルタ・ア・エスパーニャ第11ステージ ©Photogómez Sport
失意のフルームとログリッチがブエルタ・ア・エスパーニャで雪辱なるか
人生というものはなかなかうまくいかない。それは大会も選手も同様だ。
75回の記念大会となる2020年は当初、オランダで開幕し、フランスとポルトガルを歴訪するという過去最多の4カ国、通常より1日増の24日間の日程で開催される予定だった。しかしコロナ禍で大会延期。開幕から3区間を予定していたオランダでの開催が困難となり、さらに渡航禁止を通告してきたポルトガルのステージを断念。結局レースは20日間となった。
興味深いのはツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアで夢を果たせなかった選手らが活動計画を修正して参加を画策していることだ。
イネオス・グレナディアスのクリストファー・フルーム(英国)が3度目の総合優勝に挑んで参戦することが注目ポイント。ツール・ド・フランスであと1勝すれば最多勝利記録の5勝に並ぶフルームだが、2019年は直前の6月に落車骨折して出場を断念。今季になっても復調にはいたらず、ツール・ド・フランスを断念して目標をこのブエルタ・ア・エスパーニャに変更している。
2011ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝したフルーム ©Unipublic
チームには2019年のジロ・デ・イタリア総合優勝者、2020年はツール・ド・フランスでも活躍したリチャル・カラパス(エクアドル)が出場選手リストに加わった。フルームが完全に復調していれば頼もしきアシスト、もし復調できていなかったらエースとなる逸材だ。
ユンボ・ビスマもツートップでブエルタ・ア・エスパーニャに参戦する。本来ならトム・デュムラン(オランダ)にエースを託す作戦だったが、ツール・ド・フランスで最終日前日に逆転負けを喫したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)が出場することになった。ログリッチは前年のブエルタ・ア・エスパーニャ覇者だ。
いずれにしても悲喜こもごものヒューマンドラマが展開することは必至。
左から新人賞のポガチャル、山岳賞のブシャール、総合優勝のログリッチェ、ポイント賞の繰り上げジャージを着たキンタナ、総合2位のバルベルデ。2019ブエルタ・ア・エスパーニャ ©Photogómez Sport
密なところは無観客…ツールマレーやアングリル峠閉鎖
バスク政府とブエルタ・ア・エスパーニャ組織委員会は、2つの峠を完全閉鎖すると10月6日に発表した。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐためのソーシャルディスタンス確保が困難だと判断したことが理由。
バスク地方はスペイン北部のピレネー山脈にあるが、8月に地域保健省が感染拡大阻止の行政命令を発布。自転車レースの場合、エリアあたりの観客数は最大1000人で、観客は走行する選手と1.5mの距離を取り、マスクの着用が義務づけられる。この規定が物理的に困難となる20日の第1ステージのゴールとなるアラーテ峠、27日の第7ステージに通過するオルドゥニャ峠が無観客となる。
2018ブエルタ・ア・エスパーニャ第19ステージを制したティボー・ピノ © Luis Ángel Gómez
ところがスペイン含む欧州では感染拡大に歯止めがかからない。大会は急きょフランス領域のツールマレー峠、激坂で知られるアングリルなど7つの峠を閉鎖 することを決定。
「今年は自宅にいながらブエルタ・ア・エスパーニャを楽しむ必要性をファンに知せるためにコミュニケーションキャンペーンを開始した」と主催者。
また大会は業務用安全用品のパレデス・セグリダード社と契約 を結び、選手や大会関係者の感染防止策として、高機能マスクの提供を受けることになった。
ブエルタ・ア・エスパーニャのエステバン・チャベス。『栄光のマイヨジョーヌ』より ©2017 Madman Production Company Pty Ltd
2020ブエルタ・ア・エスパーニャ出場176選手
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