陸上部でも実業団所属でもない一般のランニング愛好家が、どうやって自分なりの記録を伸ばしていけるか? GPSと光学式心拍計搭載のデバイスを使い、メーカーが無償提供するアプリを有効活用して、記録更新を目指してみました。
マラソンの実力がなかなか向上せずに悩むばかり…
東日本大震災を契機に、その復興支援と銘打った宮城県気仙沼市のハーフマラソンに初参加したのが2012年。その前年の震災直前にビギナーズラックで初当選して参加した東京マラソンは5時間22分55秒という平凡な記録。そんな普通の愛好家の挑戦がそこから始まりました。
さかのぼって、マラソン初挑戦は20代前半。日刊スポーツ河口湖マラソンに参加したのですが、当時の記録証は残っていません。それでも手帳の大会開催日に「3時間48分」とメモ書きした数字があって、これが生涯のターゲットタイムとなります。当時は大学ラグビーの練習くらいしかしていなかったのですが、「フルマラソンと言ったらサブスリーかな」と意気込んで、30km地点までそのペースで頑張った記憶があります。
ところが30km過ぎは未知の領域。自分でも「あれ?」という感じで、脚が止まってしまいました。あとはゴールまで歩くことしかできず、それでもスタートからのハイペースもあって、「3時間48分」でゴール。これが自己ベストとして刻まれました。
この自己ベスト、絶妙(微妙)なんですよね。50代にしてはレベルの高い目標とはなりますが、時間をかけて地道に練習を積んでいけば届かないタイムではない。でも漫然と週に2〜3日走っていたのではそのレベルに絶対に近づけない。そこで導入したのが、モチベーション維持と自分のレベル把握が可能となるガーミンデバイスでした。
これまでのコラムでもガーミンデバイスの有効活用法を紹介しています。
マラソン初級者のメリットは「伸びしろ」しかないこと
今回はその集大成として、60歳で迎える2023東京マラソンで40年近く前のベストを更新できるか? 気仙沼のハーフマラソンはその後も毎年参加していて、常に 2分半ほどタイムを伸ばしています。要するに、ランニング出身者ではないので「伸びしろ」しかないんです。
しかしフルマラソンは手ごわい。ウェブサイトで検索した専門家のトレーニングプランを手あたり次第読みながら、最終的に「ガーミンコネクト」が無償提供する「トレーニングプラン」を頼ることにしました。
ガーミンコネクトの「トレーニングプラン」は、「ラン」「バイク」「トライアスロン」という3種目において、合計45のコースが選択でき、コーチがアプリ上でメニュー作成をしてくれます。厳密には「ガーミンコーチプラン」と呼ばれています。基本的な流れは、メニューに挑戦して、その取得データをアップロード。アプリが自動的に分析してその人の実力を判断。次のメニューを提示していくという手法です。
メニューを作ってくれるのは実在のコーチ3人ですが、パーソナルなやり取りがあるわけではありません。つまり蓄積されたメガデータからその人に最も有効と思われるメニューを提案してくれるわけで、100%効果的ではないけれど、いい方向に導いてくれることは確かです。なにしろ世界中から24時間、いろんなレベルの人の実走データが集積しているわけで、それを解析すれば成功例が見えてくるからです。
コロナに翻弄された東京マラソンは2年かけてのチャレンジに
ボクの東京マラソン挑戦はビギナーズラックの2011年を最初に、8年ぶりに当選した2019年が2度目となりました。当日はまさかの冷たい雨となり、大迫傑選手さえ途中棄権するほどの悪コンディションで、4時間55分15秒というどうでもいいタイムでゴールしましたが、意外と楽しかったマラソンでした。
2021年に三たびの当選を果たしたのですが、コロナ禍により大会そのものが中止・参加料全額返金と出場権利移行。2022年はまさかのボク自身が罹患欠場・参加料全額返金と出場権利移行。1大会の出費でまるまる2年も継続的トレーニングができる幸せな日々を送ってきました。
フルマラソンは長期的な準備が必要です。まずは1年という長期を分割することにしてそれぞれの目標を設定。それに応じたトレーニングプランを選択しました。過去2大会から学んで浮かび上がってきた課題は、持久力ではなくスピードです。ある程度のタイムを目指すなら、スピードをつけないと話にならないのです。
まずは2022年10月の東京レガシーハーフマラソンをターゲットにした練習です。「ガーミンコーチプラン」で「ハーフマラソン」を選択。目標タイムを設定し、それに応じて提示されたメニューをこなしていきました。その結果は1km、1マイル、10km、そしてハーフマラソンの自己ベストを更新しました。もうすぐ還暦という年齢でした。
最初はハーフ、次に10kmのメニューでスピード養成
ハーフはどのくらいやったら自己ベストが出るか手応えをつかむことはできましたが、フルマラソンは集中力が必ず途切れるはずです。40年近く前の記録を超えられるかと言われたら、うまくやったらできるけど、ミスしたら全然届かない。それを克服することが半年前からの課題になりました。
そこで第2フェーズとして「ガーミンコーチプラン」で「10km」を選択。
実は、ハーフ、10kmとガーミンコーチのメニューを選んだ本当の理由は、ガーミンコーチプランに「フルマラソン」という選択肢がないんです。*後述しますが「セルフガイドプラン」に複数のフルマラソンメニューがあります。
フルマラソンの3カ月前にスピードを付けるために10kmの練習を取り入れよう。たいていのフルマラソン練習方法でも、その時期は改善期としてケイデンス(1分間の回転数)を高めるドリルをやったり、高負荷トレーニングを取り入れたりすることを推奨されています。
今回は、誰でも参加できる市民10km大会に参加することにして、東京マラソンへの刺激入れにしました。そのためにガーミンコーチプランで10kmのメニューを選択。距離1kmのラップタイムは4分30秒で、これがしっかりと走れるようになればマラソンの目標ラップタイム5分25秒は楽に走れるようになるはず。
そんな思惑で、練習をこなした結果は。これまでの10kmランのベストはまあ低レベルなんですが、4分半更新しておきました。59歳でも地味にメニューをこなすのがどんなに大事なことか、再認識することができました。
スピード練習を積んでおけば、そのおかげでフルマラソンの設定タイムを軽く走れるようになった。陸上競技経験のないボクにとってはこんな練習方法もあるんだなと目からウロコのできごとだったのです。
さすがにスピード練習はストレスがかかり続けたので、3カ月前からはペースを落として長距離を走り込むメニューに。テキトーに走れば楽しいマラソンになりますが、とにかくボクは伸びしろしかないので、ポジティブにあと2カ月過ごしていきます。
いろんなことがわかりました。手首計測機器によるVO2MAXで数値を上げるには短い距離をハイペースで走れば簡単。メニューとしてそういう時期も必要ですが、鍛錬期には長距離をレースペースでこなさないと実力にはなりません。
取得データをぼんやり見ていると、レース日に向けたピーキングのやり方が分かってきたように感じます。
セルフトレーニングプランでマラソン練習メニューを作る
60歳でもやるべきことをやれば確実に速く走れる
たった10万円足らずの機材で、無料アプリの支援を受けると一般レベルでもやり方とやる気が身につくはず。肌の老化や老眼はどうにもなりませんが、やればできることを実証できてうれしい限り。
3月5日、40年近く前に出したベストを更新するつもりで、ケガなく健康でスタートラインに立てるだけで幸せです。
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