フランス人が夢中になるツール・ド・フランスをダバディと浅田顕が語る

ツール・ド・フランスでのボランティアの実態などについて語る「フローラン・ダバディと学ぶボランティアで活かせるチームワーク」が9月22日(金)19時からオンラインで開催される。ゲストは浅田顕。参加無料。

フランス人が夢中になるツール・ド・フランスを知る!

好評だった「フローラン・ダバディと学ぶ」セミナーが開催される。世界のスポーツ界で活躍をする人にその経験や思考方法を聞くシリーズ第1弾。

東京2020オリンピックで日本代表ロード男子チームを率いた日本の自転車ロードレース界を代表する監督、浅田顕氏をゲストとして迎え、日々心がけているコミュニケーション術についての秘訣をフローラン・ダバディが聞く。

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大野均がフランス観光親善大使に…W杯フランス大会を盛り上げる

元ラグビー日本代表の大野均氏が2023年度フランス観光親善大使に就任した。2023年はラグビーのワールドカップがフランスで開催されるが、その事前プロモーションとして大野氏が起用され、日本戦の会場となる開催地を精力的に回っていた。

大野均さん

フランス観光親善大使のタイトルは2000年、フランス観光開発機構の前身であるフランス政府観光局が創設し、フランスに縁のある著名人の個人的な視点からフランスの魅力を発信してもらうことを目的にこれまで46人が任命されている。

フランスは2023年にラグビーワールドカップ、2024年にオリンピック・パラリンピック競技大会と二つの国際スポーツイベントの開催を控えることから、スポーツを観光プロモーションの主テーマに据え、スポーツ関連の著名人を観光親善大使として任命することを決定した。

大野均さんとフィリップ・セトン駐日フランス大使

任命されたのは元ラグビー日本代表で、現在は東芝ブレイブルーパス東京のアンバサダーを務める大野氏。大野氏は三度のワールドカップ出場と、国際試合98回の出場記録から、選手時代に遠征や合宿でルアーブル、ボルドー、リヨン、トゥールーズなどフランス各地に滞在した経験を持つ。

また2022年には、フランス観光開発機構が実施したラグビーワールドカップ2023年大会の開催地域への視察旅行(トゥールーズを含むオクシタニー地方、ニースを含むプロバンス・アルプ・コートダジュール地方、ナント)に参加し、さまざまなメディアを通じて滞在地の魅力を発信した。

フレデリック・マゼンク在日フランス観光開発機構代表、大野均さん、フィリップ・セトン駐日フランス大使

ワールドカップイヤーとなる2023年、フランス観光開発機構は大野氏を「2023年度フランス観光親善大使」に任命し、観光立国フランスの広報活動へさらなる協力を依頼した。


2023年5月31日にフランス大使館で行われた任命式では、フィリップ・セトン駐日フランス大使、カロリーヌ・ルブシェ フランス観光開発機構総裁が署名する任命状が、セトン大使より大野氏へ手渡されました。

アイアンマン世界選手権の男子がハワイではなくニース開催へ

米国のハワイ島カイルアコナ周辺でスイム・自転車・ランの3競技を連続でこなす鉄人レースとして始まったアイアンマンは、シリーズ最高峰のワールドチャンピオンシップレースをフランスのニースで男子、ハワイで女子を開催することを発表した。

ニースのプロムナード・デザングレ ©Atout France/Jean François Tripelon−Jarry

アイアンマンがついに発祥のハワイからフランスに飛び出した

アイアンマンはスイム3.8km、自転車180.2km、ラン42.2kmを連続して行う競技。世界の各地でシリーズ戦が行われ、その大会で出場権利を得た選手らが発祥地ハワイに集結してワールドチャンピオンシップを行うことが定着した。

2022年は初めて男女別に独自の開催日が設定され、ハワイ島で行われた。そして2023年は男子が9月10日にフランスのニースで、女子が10月14日にハワイでと別日程・別会場で開催される。2024年は男女の開催地が逆になり、このローテーションは2026年まで継続する。

2024ツール・ド・フランスは最終日がパリではなくニースにゴールする ©A.S.O. Fabien Boukla

ニースはコート・ダジュールと呼ばれる地中海沿岸の観光都市で、1982年に初めてトライアスロン大会を開催し、欧州での同スポーツのイニシアチブを取ってきた。

アルケア・サムシックがUCIワールドツアー昇格…伝統カラー継続

フランスのアルケア・サムシックが2023シーズンへの意気込みを語った。彼岸のUCIワールドツアーに昇格を果たしたチームは男女のプロチームを組織。赤と黒のチームジャージは継承された。

「フランスのブルターニュ地方のアンバサダーとして、最高峰のカテゴリーでシーズンを戦えるのはうれしい」と、エマニュエル・ウベール監督。

オーストラリアのサントス・ダウンアンダー(1月17〜22日)でシーズンイン。7月の地元レース、ツール・ド・フランスではワレン・バルギルらフランス勢の活躍が期待されている。

●アルケア・サムシックのホームページ

フランスの夏のスキーゲレンデはMTB愛好家のパラダイスだった

フランスでは夏場のスキー場もアクティブなサイクリストでにぎわっている。MTB専用コースが縦横無尽に整備され、上りのリフトに自転車を積載して標高を稼ぐこともできる。そこからは一気にダウンヒルだ。電動パワーが使えるeMTBなら上り坂も楽に進める。アルプス北部に位置するアボリアズはMTB好きの若者たちのパラダイスだった。

リフトを使ってダウンヒルバイクを上げてトレイルを楽しむ。スイス国境にも行けるという

総延長はなんと650km。パスポートを持ってスイスまで

アルプスのモルジンヌから20kmほど上ったところにあるスキー場が標高1800m超のアボリアズだ。数年に1回はツール・ド・フランスのゴールにもなるところで、滞在型レジデンスが林立し、フランス人はここに複数日宿泊してさまざまなアクティビティを楽しんでいる。

自転車はリフトの背面部に簡単に搭載できる

冬はもちろんスキーだが、夏場はハイキングやMTBだ。夏の訪問客のために期間限定でゴンドラやリフトが稼働。リフトには数基に1基の間隔で自転車が引っ掛けられるようになっている。脱着はリフト保安員が手慣れた手付きでやってくれる。

アボリアズはツール・ド・フランスでよく登場するスキーリゾートだ

アボリアズは欧州最大のバイクパークで、専用トレイルは総延長650km。下りを楽しむダウンヒルバイク、アップダウンをこなせるエンデューロバイク、電動のeMTBのコースがそれぞれあり、さらにコースの難易度が多様にあるので、上級者から初級者まで遊べるのが特徴だ。トレイルは尾根道のみならず、谷底、森林地帯、牧草地、岩、急流などさまざまなフィールドが楽しめるように設計されている。

レジデンスは想像以上に快適だ。こういったところでのんびりバカンスを楽しみたいなあ

アボリアズのスキー場がバイクパークになるのは2022年の場合、6月17日から9月11日まで。そのうちリフトは7月2日から9月2日まで稼働する。アウトドア系スポーツが好きな人なら、花が咲き乱れるゲレンデでMTBを持ち込もうという発想は、フランス人のライフスタイルの一部で、自然な成り行きだ。

自転車専用トレイルのゲート

MTBトレイルとハイカーが歩くルートは分離されていることに気づいた。MTBトレイルの入り口にはそれを示すゲートがあり、誤ってハイカーが通行しないように配慮されている。両者が交差する場所は網やロープで注意喚起をしているので、接触する可能性はほぼない。

eMTBの最長コースは80km。トレイルは舗装路よりも路面抵抗があって、通常はこんな距離を走破するのは難しいが、電動アシストの恩恵で自分の体力をはるかに超えた冒険も可能になる。観光局が用意した地図によれば30kmほど離れたスイス国境まで行くことができ、「パスポート必携」と明記されている。

稜線を走ってスイス国境を目指す。下りきった先にもスイス方面に上れるリフトがある

MTBトレイルに挑戦するのは若い男性が多かったが、ファンパークと呼ばれる簡単なコースには母親と子供の姿もあった。またライディング教室やレンタルMTBも自転車ショップで行われている。ライド後はキッチン付きのレジデンスで料理をしたり、MTBツアーの追加オーダーとしてバーベキューも申し込める。

楽できるところにはお金をかけるのがフランス流

リフト乗車券は大人1回840円、1日4620円、複数日は割引となり例えば7日で2万860円。MTB搭載料は乗車券と別に大人1回882円、複数回は8回4480円など。すべて1ユーロ140円で計算。

スキーゲレンデにはスラロームコースが作られていた

為替相場によりフランスの物価は全体的に割高に感じるが、一部の裕福な層や十分な休日が取れる人の娯楽とは感じなかった。フランスの若い世代も「楽して楽しめるところにはお金をかける」とばかり積極的にリフト活用していた。

集落にはいくつかの自転車ショップがあり、レンタルやライディング教室などを行っている

欧州の温暖化は切実…自転車に優しいまちづくりが対策の切り札

欧州では地球温暖化や燃油高騰の打開策として多くの市民がクルマから自転車に乗り換えている。行政も予算を倍増させて自転車に優しい環境づくりを推進している。ツール・ド・フランス取材で訪れてきた町々も、10年前と比べると自転車通行のインフラ整備が格段に充実していることを目撃した。現地より欧州自転車周辺事情をレポート。

カレー市庁舎が見える鉄道沿いに素晴らしい自転車・歩行者専用橋が

欧州全体が自転車に優しいまちづくりのために巨額を出資

ミシュランの格付け制度をまねて、その町がどれほど自転車に優しい環境であるかを評価する「ビル・ア・ベロ」をツール・ド・フランス主催者が2021年から始めた。ビルは町、ベロは自転車という意味のフランス語で、英語訳すればサイクルシティとなる。

3年ぶりに訪れたパリは自転車レーンが倍増。車道と同じ幅のレーンがセーヌ川沿いに伸びる

星ではなく自転車マークで格付けされ、最高格は自転車4台。首都パリとオランダのロッテルダムの2市だ。そして2022年、自転車3台にツール・ド・フランス第4ステージのゴール、カレーが登録された。

パリのレンタルサイクルシステム、ベリブがeバイク化していた
シャンゼリゼの街路樹が熱波によって葉が乾燥して、秋のように落葉していたのはショック

カレーの駅からすぐのところに、運河をまたぐように最新の自転車・歩行者橋が作られていた。橋の上から運河を見下ろせば、その河岸にも幅の広い自転車レーンが伸びている。自転車通勤・通学する人はクルマが走る車道と交差しないで駅まで快適に移動できる。だからぜひ自転車を利用してもらおうというねらいが行政にはある。町の随所に駐輪場を設置することも積極的だ。

欧州連合の欧州地域開発基金とオードフランス地域がこのエリアの再開発として共同出資した金額は186万8897ユーロ(約2億6000万円)というから驚きだ。

デンマークのオデンセの駐輪場にはコンプレッサーが常備。上部は鉄道駅の向こう側まで伸びる自転車専用橋

「カレーは今回のツール・ド・フランス招致をきっかけに、英国との交通の要衝という役割に加え、美しい海水浴場を備えた観光名所として海外にアピールしていきたい」という。自転車インフラへの投資は市民の健康寄与、交通事故防止、環境問題を解決するだけでなく、訪れた観光客が住みやすい魅力的な町としてのイメージを持ってもらえるという戦略だ。

欧州の自転車はスタンドがない。おしゃれな自転車ラックが随所に設置される

2022年のビル・ア・ベロはカレーと、同じ地域にあるアラスだけが登録された。アラスの格付けは自転車2台だが、クルマとの共存を都市整備の中核に掲げている。コミュニティバイクという公共レンタル自転車配置計画に充てられた予算は前年度の10倍。「最高の格付けに昇格できるようにしたい」と意気込んでいる。

デンマークには興味深い自転車がいたるところにある

車道と自転車レーンに段差を設けて物理的に分離

欧州各国の自転車レーンの作りは似ている。フランスではかつて、クルマが90km前後で走行する国道では、サイクリストがその風圧で飛ばされないように緑地帯を隔てた自転車専用道を設置した。これは現在も利用されているが、新たに市街地での自転車レーン整備が急速に進められている。車道と自転車レーンに段差を設けることで、両者を完全に分離させた。さらに歩道も区分けされるので3つのレーンが存在することになる。

クルマ、自転車、歩行者のレーンは段差を作って分離している

電気で動くeバイクの普及も著しい。道路交通法によってアシスト力が制限される日本とは違って、アシスト比率が高いeバイクも多い。乗車するだけで坂道を音もなく進んでいく電動スクーターも多く見かけた。どちらも公共レンタルできるものがたいていの町中に設置されていた。

環状交差点は接触する可能性のあるポイントだが、それを注意すれば自転車レーンに誘導される

日本の環境を考えるとすべて参考になるとは言えないが、欧州の自転車環境はここ数年で確実に改善されている。道路周辺にゆとりがあること、町と町をつなぐ道路がそもそも少ないという立地条件もあるが、自転車を日常のアイテムとして愛着を持っていることが円滑な環境整備の後押しをしてる。