どうも、反中です。2018年 に引き続き2019年も参加してきました、Red Bull 400(レッドブル・フォーハンドレッド)。“世界で最も過酷な400m走”の異名を持つこの大会に再び参加することになろうとは。
予選ヒートで1位通過の反中祐介 ©Jason Halayko/Red Bull Content Pool
さて、Red Bull 400のコースプロフィールは2018年の記事 をご参照ください。 相変わらず数字だけではこの大会の過酷さが全く伝わらないのがとても悔しいです。 ちなみに獲得標高だけで考えると、さっぽろテレビ塔(147m)を地上からてっぺんまで登るイメージが近いですね。
2019年で3回目の開催となった同大会ですが、ついに大会参加者数1000人を突破。 会場である大倉山ジャンプ競技場に1000人以上がいる光景はまさに圧巻。非日常的でお祭りのような華やかな雰囲気はランニング大会としては異色なものです。 この空気感は中毒性がありますね。
©Jason Halayko/Red Bull Content Pool
前回大会から変更された点がいくつかあったのでご確認を
◾︎参加賞Tee:青色→水色(第1回目は灰色) ◾︎予選:(男子)全5ヒート→全6ヒート (女子)前回と同じく全2ヒート
◾︎決勝進出条件:(男子)各ヒートトップ通過者+各ヒートトップ通過者を除くタイム上位者55名の計60名が決勝進出→各ヒートトップ通過者+各ヒートトップ通過者を除くタイム上位者74名の計80名が決勝進出 (女子)各ヒートトップ通過者+各ヒートトップ通過者を除くタイム上位者38名の計40名が決勝進出→各ヒートトップ通過者+各ヒートトップ通過者を除くタイム上位者58名の計60名が決勝進出
参加者数が増えたことで決勝進出者が増。ヒートは年齢の高い順に出走するのは変わりなし。後半のヒートほど予選終了してから決勝までのインターバルが短くなるので若さでのアドバンテージがなくなる仕組みになっている。
©Suguru Saito / Red Bull Content Pool
まずは予選、第5ヒートに出走
直前の第4ヒートでは階段王ことワタナベリョウジ選手が3’48”32のコースレコードでフィニッシュ。そのせいなのか、第5ヒートはスタート直前からピリついた空気感。案の定、みんなスタートからかなりのハイペース。スタート〜100mあたりまではブレーキングトラック逆走の緩やかなくだり。足場が長めの人工芝は沈み込みやすくスピードを出すほどに足先のコントロールが難しくなる。10人近くの選手に先行されているが動じずにマイペースで走る。徐々にスピードを上げていき登りへ突入。
100m過ぎたあたりでは7、8番手。ランディングバーンを一気に登っていく。このセクションは人工芝の上に格子状の網(通称:ラーメンネット)が張り巡らされている。人工芝の上は滑るため、ラーメンネットにシューズのグリップをひっかけていく。踏ん張りが効いてパワーロスを抑えることができる。ランニングシューズよりはトレイルランニングシューズの方がグリップをひっかけやすくベター。
K点(赤ライン)では四つん這いの選手が現れ始める。このあたりから二足走行 or 四つん這いと選手のスタイルが分かれ始める。自分はなるべく早いタイミングで四つん這いにシフト。後半パート・決勝に向けて脚を温存する。このあたりから疾走感というものは皆無だ。淡々と登るのみ。
大倉山ジャンプ台を駆け上がる参加者たち ©Suguru Saito / Red Bull Content Pool
P点(青ライン)が200mあたり。ここで先頭にでる。その後、最大斜度37度に到達。急斜面すぎてほとんどクライミング状態。いかに上半身を使って登れるかがポイントだ。このポイントではほとんどの選手が四つん這いになっている。二足で登るにはかなりの体幹と脚力(特に腿周り)が必要になる。
ランディングバーン後半は徐々に斜度が緩やかになっていき、視野が広がってくる。 ここでリズムを落とさないのがポイント。接地が長いと負担がかかりやすくなり失速に繋がるため、短い接地を心がける。 ランディングバーンとカンテ(踏み切り台)のギャップを埋めるために設置された木段をクリアするとレッドブルのゲートが。ここからラスト100m。
レッドブルゲートをくぐり、はるか遠くに見えるフィニッシュゲートを目指しアプローチ(助走路)を登る。アプローチのサーフェスは木とゴムの2パターン。両方の感触を確かめながら走る。ゴムのほうがシューズのグリップが効いて滑りにくい。ゴムの上を、途中歩きや走りを繰り返してどの動きが自分に合っているかを確認しながら進む。
ちょうど半分です ©Jason Halayko/Red Bull Content Pool
■第5ヒート:1着 4’09″93。総合5着で決勝へ
平均心拍数:160bpm(131-182)
決勝に向けていろんな動きを試して、いいイメージのあるまま予選を通過。想定通りである。余力もかなりある。あとは決勝までにいかにリカバリーするか。リカバリーは会場に戻ってからでは遅い。ゴール直後すぐに補食を摂取するのがベスト。摂取のタイミングは早ければ早いほどいい。ランニングショーツのポケットにしまっていた【サカナのちから】 と【MEDALIST AMINO DIRECT 5500】 を2袋ずつ摂取。筋疲労の激しいときにはアミノ酸とクエン酸は必須。会場に戻りすぐエネルギーに変わる糖質系エネルギーとじっくりと長く効果の出る脂質系エネルギーをそれぞれ摂取。少量で高カロリーな脂質系エネルギーを少し多めに摂るのがポイント。今回のような負担の大きい種目でもハイパフォーマンスを持続させることができる。私は脂質系エネルギーでは【Trail Butter】 、糖質系エネルギーには【TRAIL HUT ENERGY JELLY】【MEDALIST ENERGY GEL】 をそれぞれ摂取するようにした。どれも美味しいのでストレスなく摂取可能。
ケータリングではカツ丼やバナナなどが用意されているが、後半のヒートは決勝までのインターバルが短いためパンチのあるご飯はリスクが大きい。補給食を各自用意しておくことをオススメする。
最終ヒートでは上田瑠偉選手 が3’31”80とコースレコードを更新してフィニッシュ。大会を2連覇している高坂凌太選手は3’58”80の3番手でフィニッシュ。 決勝は大荒れの予感しかしないんですけど。
©Suguru Saito / Red Bull Content Pool
そして、決勝へ
2018年と比べて気温が高く日差しも強い。2018年の決勝のボーダータイムが約5’40”だったのに比べて2019年は約5’20”。2018年からかなりレベルが上がってきたのが見てとれる。無難な展開で無難な結果を出すくらいなら、自分の全てをぶつけて果敢に攻めることを決意してスタート位置についた。
張り詰めた空気の中一斉にスタート。スタート直後から先頭に飛び出して登りに突入。登りに入ってからも勢いをキープしていたが、若干のオーバーストライドで脚が一気に棒になる。ペースを上げるには高い心拍数を維持する必要がある。しかし、脚が棒になっていては心拍数を上げることができない。上がらない心拍数に苛立ちながらももがき続ける。K点あたりからどんどんと抜かれていく。最大傾斜到達時には7番手。1~3ははるか先だが4~7までの差はほとんどない。
レッドブルゲートをくぐり、ラスト100mに差しかかる。
観戦者との距離が近いアプローチでは声援をどこよりも間近に受けることができる。しかし、動かない身体を動かし続けてここまできた時には全身の疲労はピークに達している。腿周りはパンパンでいろんな雑念が頭をよぎる。短いようで濃密な100mだ。ゴールは見えているのに全く近づいてこない。身体が追い込まれてくると気持ちもすり減り始める。疾走感というものは一切ない。もがくように這いつくばるようにただただ進む。前の選手は手を伸ばせば追いつけそうなところにいるのだがその一歩が遠い。気持ちだけは途切らさず身体を動かし続けるが順位は変動せず。フィニッシュ直後マットに担ぎ込まれる。脚を酷使しすぎた結果、心拍数は上がりきらずただただ身体が動かなかった。
■決勝:7位 4’00″66
平均心拍数:138bpm(111-167)
惨敗だ。2018年から約1秒タイムは更新したもの順位ははるかに後退。前半のオーバーストライドが大きく影響したレースとなったが今の自分ができる全てを出し切ることはできた。自分の未熟さを痛感することとなったが不思議と悔いはない。苦しくも有意義な時間であったのは間違いない。
たかが400m、されど400mなのである。
上田瑠偉が圧倒的な強さを見せて優勝 ©Jason Halayko/Red Bull Content Pool
Red Bull 400の攻略ポイントをまとめると
◾︎シューズはトレランシューズがベスト。アウトソールのグリップパターンがこのコースとの相性抜群で確実にグリップしてガシガシ登れる。アウトソールのグリップがゴツくて、ミッドソールの前足部の厚みと後足部の厚みの差が少ないものが理想。私が今回着用した【Salomon S-LAB SENSE 7 SG】 もこのタイプの一つ。レーシングモデルで、走行性抜群。今回のようなコースでのパフォーマンスはもちろん、トレイルランニングレースでも幅広く活躍する。私以外にも女子2位の選手も着用している。
◾︎テーピングをすることでパフォーマンスアップ&疲労軽減に効果がある。私が使用しているテーピングは【GONTEX】 。膝から腿にかけて貼ることで腿周りの筋肉を補助してくれる。テーピングの糊面がストライプ状になっており、汗で蒸れたりかぶれたりしない。
◾︎ほとんど四つん這いの体勢なのでグローブは着用すべし。ロープを強く握ったときに手のひらがかなり擦れる恐れあり。ランニング用ストレッチグローブよりは【SALOMON FAST WING GLOVE U】 のような手のひらが補強されているタイプがオススメ。
元プロ野球選手の森本稀哲さんもゴール ©Suguru Saito / Red Bull Content Pool
◾︎レース前の補給食は大事。脂質系と糖質系をバランスよく摂取しよう。少量で高カロリー、美味しいものが摂取時のストレスがない。アミノ酸系・クエン酸系もリカバリーの促進にはとても効果的。
◾︎斜度がきつくなったときは無理せずできるだけ早く四つん這いになった方がいい。下肢の負担を減らし効率的に登ることができる。体幹・脚力に自身があるならば二足で登るのも有効。パワーは出るが、その分かなりの負担がかかる。二足で登るためにはそれなりの特訓が必要だ。
◾︎この大会は「気力」「全身持久力」「集中力」この三位一体がとても重要。ひとつでもダメになると全てがバランスを崩してしまう。この400mという限られた距離の中でこの3つの力をいかに高い次元でコントロールするか。これがこの競技の難しさであり病み付きになってしまうポイントなのかもしれない。
©Suguru Saito / Red Bull Content Pool
この記事をまとめている今でも、すでに2020年の大会のことを考えている
この大会特有の不思議な魅力はなんでしょうね。例えるならばやんちゃなバイキング に近い感覚でしょうか? 腹八分目を超えてもまだ食べ続けるから、もう2度と食べなくてもいいかもってなりますよね。でも、時間が経ってお腹が空いてくると次はいつ食べに行こうかなってバイキングを意識する自分がいる。
まさにその感覚に近いものがこの大会にはあるような気がします。走っている時は脚ガクガク心臓バクバクで苦しいのですが、時間が経って疲労感が抜けてくると次はどれくらいの記録が狙えるかなってRed Bull 400を意識している自分がいるのです。
その時の経験が苦しければ苦しいほど時間が経ってしまえば記憶の中では美化されてしまうんでしょうね、きっと。
苦しさも難しさも楽しむことができてしまう。Red Bull 400はヤバい。
反中祐介 (たんなかゆうすけ) トレイルランナー。ランニングチームのランニングコーチとしてビギナーランナーからシリアスランナーまで幅広いレベルのランナーの指導を経てトレイルランニングを始める。大学在学時には健康運動実践指導者を取得。ランニング以外にも、自然を楽しみつくすべく様々なアクティビティを提案・発信している。北海道のSAPPORO EXPERIENCE BASEサロモンストアにアドバイザリースタッフとして勤務している。[反中祐介のfacebook] [反中祐介のInstagram] [Sapporo Experience Base]
【2019年大会速報】誰でも生まれたての子鹿になれる! レッドブル400は上田瑠偉圧勝 【2018年のレポート】世界で最も過酷な400m走に挑んだ! 反中祐介のRed Bull 400参戦記
©Suguru Saito / Red Bull Content Pool
コメントを投稿するにはログインしてください。